彫像
先週はまんまと予約投稿間違えました。
そして昨日は一話抜けていたのを発見しました。
己の間抜けさに落ち込み中。
すんませんでした!
お昼ご飯を食べて、また彫刻屋さん?に戻ってきました。
さっき彫刻屋さん本人が言ってたように、注文の彫刻は終わっていたようで、店の奥で焼き串を齧っている彫刻屋さん。
その目の前には彫像が置いてある。
男女二人が見つめ合い手を取り合っている彫像。
「あれ、姉ちゃんはまだ来てないのか?」
「お前の姉ちゃんは常に時間を守った事等無いだろうが」
「ああ、悪いな」
そこへ勢い良く入ってきた女性。
「エルキュリア、出来てる~?あら、ラナイムラビルも居たの?あんた今物凄く重要な仕事がある!って帰ってこないけど、こんな所でサボってて良いわけ?」
「悪かったな、こんな所で!」
「あ!これね!うんうん良いわね~!この微妙に花嫁だけが似てない感じ!完璧よ!流石エルキュリア!天才!今回は無理言ったから、代金の他にこんな物を持ってきたわよ!」
ジャジャ~ン!と言いながら取り出したのは、剥き出しのノミ。
「どうどう?ドワーフの元締めって人が作った特別製のノミですって!偶然手に入った物だけど、エルキュリアには必要な物でしょ!」
「おいおいおい!ドワーフの元締めって!注文しても気に入らない客は断られるって人だぞ?良くあんたが手にいれられたな?!」
「ヘ~、そんな偉い人なの?ラバー商会に普通に売ってたけど?ちょっと値段は高かったし、イミュクレーヌちゃんが是非!って言うから買ってみたんだけど」
それをラバー商会に売ったのはディーグリーですね!
試作品だからって、指名客に売れるか!って怒鳴ってた元締めから安く買ったヤツです!
「は~、価値も知らねーで買ったのかよ?まあ、俺は得したから良いけどよ!支払いはこのノミで十分だわ!」
「えええ!それって私得し過ぎじゃない?さすがにちゃんと払うわよ?」
「あんたは価値が分かってないからそう言うが、これ、ドワーフの町に行って元締めに注文したら、この彫像十体は買える値段だからな!」
「あ~、試作品て言ってたから、安く買えたんじゃない?」
「試作品でも、元締めの作品ならそれなりの値がつくんだよ!」
「ふ~ん、ま、今回はどっちも得した!って事で!じゃ、これ貰ってくわね~!ありがとーまたよろしく~!」
「もう、納期に余裕のねぇ注文は受けねーからな!」
女性は入ってきた時と同じ勢いで鼻歌混じりに帰っていった。
俺達の存在にはまるで気付いてないようだった。
彫刻屋のエルキュリアさんは、手に入れたノミを早速使い出そうと、素材を準備しだした。
「おいおい、ちょっと待て!まずは俺の話を聞け!」
「あ?ああ、そうだった。んで?お前が自慢する題材って?」
エルキュリアさんの気を引けて満足そうなラナイムラビル族長。
片手を上げて、勿体振った仕種でこっちを示し、ニヤリと笑う。
示された通りに目線を動かしたエルキュリアさんは、不思議そうに顔を傾けたが、俺と目が合った途端固まって、ダーーっと涙を流しだした。
うん知ってた。予想はついてた。
店先にドドンと置いてある彫像は、全部聖獣だもの。
でもね、彫像作るなんて聞いてませんけど?!
ドヤ顔で俺を手で示しているラナイムラビル族長に、不満を全面に出した顔を向けてやる。
アワアワと慌て出したラナイムラビル族長は、
「こ、こ、こ、これはですね、族長会議での総意でして!」
「う~ん、それでも本人の了承は大前提ですよね?」
「そ、それは、そうですよね。申し訳ありません!私共が軽率でした!どうか、お怒りをお鎮め下さい!この話は金輪際いたしません!」
土下座して平謝りしてます。
物凄く反省してるのは分かるけど、その後ろにいるエルキュリアさんは、俺から一瞬も目を離しませんよ?瞬きもせずに見られてるので、目が血走ってきてますよ!これを諦めるように説得出来るの?
俺達が無言でエルキュリアさんの方を見てたら、気付いたラナイムラビル族長が、慌ててエルキュリアさんの目をふさいでいる。
それに抵抗するエルキュリアさん。
揉みくちゃに争う二人。
ちょっと面白い。
争いに勝ったのは、細くともマッチョなエルキュリアさん。
俺の目の前まで来て土下座で、
「お願い申し上げます!あなた様のお姿を彫らせて下さい!」
とか言ってる。
断っても断ってもしつこく迫ってきそうな気配がありありとする。
一応ディーグリーが事情を説明してみたが聞いちゃいない。
ギラギラした目でこっちをガン見してくるだけ。
ラナイムラビル族長を見ると、土下座で謝ってるだけ。
「ん~、ちゅくるのはいーけど~、かじゃりゃないで~ね!(作るのは良いけど、飾らないでね!)」
「ええと?」
「彫像を作るのは構わないが、大々的に飾るのは止めてくれ、と言っている」
「はい!はい!それはお約束致します!領主屋敷の最奥に置き、族長以外の目には触れないように致します!」
「ん~、じゃ~ま~い~よ~」
「どうにも止められそうに無いしな」
アールスハイン達も、エルキュリアさんのギラギラする目に苦笑している。
彫像を作って、飾られて変に崇められても面倒だからね!
エルキュリアさんは、ほっといても勝手に作りそうだし。
ポーズとかは要求されず、ストーカーのように付きまとわれるそうです。
エルフの街に居る数日間だけなので、許してあげることに。
宿の部屋等は立ち入らない約束もしたしね。
おはようございます。
今日の天気は晴れ。
彫刻屋さんのエルキュリアにストーカーされて四日目です。
常にギラギラした目で見られてるけど、特に害は無いのでもう慣れました。
今日は、世界樹のお薬が完成するそうです。
なので朝御飯を食べたら領主屋敷に。
薬を作るのに関わっていた族長数名が、とてもゲッソリしてるけど大丈夫ですか?
ラナイムラビル族長の言うことには、無駄に魔力多目に込めちゃっただけで、薬は素晴らしく良い物が出来たそうです。
族長達を先頭に、ゾロゾロと世界樹に向かう。
族長達が揃って世界樹に向かうので、何事かと一般人なエルフの人達もゾロゾロとついてくる。
集団で世界樹に集まり、族長の中でも一番年嵩の族長が、
「これは、我々エルフの叡知によって産み出された、究極の回復薬である!作り出すには我々の知恵と魔力と全精力を以てしても困難であった!だが!我々は作り上げた!」
ワーーーっとエルフ達が盛り上がる。
「これを、害虫によって傷付けられた世界樹様に捧げる!これで我々の世界樹様への献身は、更に伝わる事だろう!」
ワーーーっとまた歓声と拍手が。
何の儀式?それって世界樹の栄養剤だよね?
その栄養剤を捧げ持って、年嵩の族長は、ゆっくりと世界樹の前に行き、チョロチョロと蒔き始めた。
他の族長達も別の場所で栄養剤を蒔いている。
全部の栄養剤が蒔き終わると、元の位置に戻り、
「世界樹様!我々の供物をお受け取り下さい!」
ははーーっと頭を下げて祈りの体勢を取る。
それに続くエルフ達。
全員が頭を下げる中、事態についていけず棒立ちの俺達。
頭下げる?一応下げとく?と目で会話して頭を下げようとした時、目の前の世界樹から、ハラハラと葉が落ちてきた。
ハラハラ、ハラハラと次々落ちてきて、それは、頭を下げるエルフ達にも降りかかる程。
祈りを止めて頭上を見上げるエルフ達。
これが常態なのか非常事態なのか分からなくて、ボケーっと見てた俺達以外は、エルフの族長を始め一般のエルフ達は、固まって呆然としてる。
成る程、非常事態の方ですね!
「あ、ああ、えええ、うえあ◆★ЖЮ◇○❮&∋∩!!!!」
意味不明な言葉を発し、土下座して祈り始めた族長達。
それに倣って土下座で祈るエルフ達。
この世の終わりのような悲壮感を漂わせるエルフ達。
う~ん、世界樹さん物凄くご機嫌に枝や幹を振るわせてる様に感じるのは俺だけ?
ハラハラと落ちる葉が止まらない事と、枝や幹からもボロボロと樹皮が落ちてる事で、いよいよエルフ達の悲壮感が大変な事に!
世界樹にすがりついて、死なないでーーっと号泣してる。
この事態をどうしよう?
エルフ達がすがり付く上の方に飛んでいって、世界樹に触れる。
『ホォーーホォーホォーホォー、ホォーーホォーホォーホォー』
なんか鳴いてるけど、たぶんこれは笑い声だろう。
物凄くご機嫌じゃん!
エルフとの温度差が酷いです!
「ちょっちょー、えりゅふ、たーへんよ!(ちょっと、エルフが大変な事になってるよ!)」
『ホォーホォーホォー、ん?おお、小さき聖獣よ!ワシは嘗てない程の絶好調じゃ!ホォーホォーホォー!』
絶好調じゃ!じゃないよ!エルフが今にも死にそうだよ!
「えりゅふ、ちんじゃーよ!(エルフが死にそうだよ!)」
『ホォーホォーホ?エルフ?………何故こ奴等はこの様に泣いておる?』
「はっぱーもきーも、ぼりょぼりょらからでしょー?きー、かりぇるおもってーよ!(葉も幹もボロボロだからでしょ?木が枯れると思ってるよ!)」
『成る程の。じゃがワシは、今再生しておる!薬に入っておったフェニックスの力と、お主から貰った力のお陰での!』
ああ、入ってたねフェニックスの羽。フェニックスって不死鳥ってくらいだから、再生するんだね?
で、いつの間に俺の魔力取り込んでたのさ?まあ良いけど、この事態はいつまで続くの?
更に力を取り込めば、一気に再生する?ああ、力を寄越せって事ね!
どうぞ、これ以上放置すると、エルフが集団自殺とかしそうだし!
幹に手を付け魔力を流し込む!
俺の触れた所から一気に全体が光っていき、フワッと世界樹全体が光ったと同時に、葉や枝や幹の表面が、サラサラと粉になって落ち、その後には光り輝く新たな世界樹が!
言葉も無く号泣するエルフ、あまりの事に失神するエルフ、頭を掻き毟るエルフ、激しく上下に揺れるエルフ、人によって様々だが、激しく混乱しているのは確か。
なので、ワナワナしながら号泣している年嵩の族長の所に行って、両頬をパチーンと叩き、正気付かせた後にコソッと耳打ち。
「皆のもの良く聞け!ここに世界樹様の再生は相成った!これ程喜ばしい事はない!宴の用意をせよ!世界樹様の再生を祝し、祭りを行おうぞ!!」
混乱し取り乱していたエルフ達が、精一杯声を張り上げて祭り宣言した、年嵩の族長の言葉に、ウオオオオオ!!と雄叫びをあげている。
祭りの事は俺のアイデアではありませんよ!
年嵩の族長とは言え、まだ混乱してるのかも?
まあ一致団結して街に走っていくエルフ達が、喜色満面の顔をしてるので良いけどさ。
物静かに自然と共に生きる種族、ってイメージはだいぶ崩れたけどね!
一般のエルフ達が居なくなった場所では、族長達が世界樹から落ちた粉、と言うか灰をかき集めて、大量に袋に詰めている。
まだ微かに世界樹の魔力の残る灰は、貴重な薬の原料になるんじゃないかとの予想。
なので俺達も好きなだけ集めて持って帰って良いそうです。
ディーグリーが嬉々として集めてる。暇なので俺達も集めて貰っていくことに。
集めても集めても無くならない灰。
アールスハインが二人は入る大きな袋に、パンパンに詰めてもまだまだ積もってる灰。
袋に三つ分貰ったので、俺達はもういりません。
ディーグリーは五袋分くらい集めてたけど。
ちょっと遅くなったけど、お腹が空いたので街に戻ります。
210話が抜けていたので投稿し直しました。
読み直して頂けるとありがたいです。
本当にすみませんでした。




