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あ~あ

間違えたーーーー!!

丸々投稿抜けました!

ごめんなさーーーーい!!

 ボムン

 そんな空気の震えで起こされました。

 まだ外は真っ暗の時間。

 一緒に寝てたチビ妖精達も起きて、キョロキョロしてる。

 ボムン

 また空気の震え。

 ボムン、ボムン、ボムボムボムボム

 立て続けに起こる震動に、ただ事ではない様子。

 テントの外に出てみると、妖精町の入り口、しめ縄の外には黒い靄。

 魔物の襲撃?と思ったのだがどうも様子がおかしい。

 攻撃するでもなく、ボムボムさせながら、入り口から入れないことを不思議がってるように見える。


「けっかい、はじかれてるね~」


「けっかい?」


「よ~せ~のまちぜんたいに、けっかいはってある~」


「じゃあくをはじく~」


「でも、しってるまりょく~?」


 何やらチビ妖精達で会議が始まった模様。

 その間もずっとボムボムボムボムしてる外に居る黒い靄。

 ガサッと後ろからの音に見てみれば、複数の妖精の顔が木々の間から覗いている。

 お爺ちゃん大妖精は、顔だけでなく半身が出てて、とても訝しげな顔になっている。

 何人かの大人妖精が、サササッと近寄ってきて、ペコッと頭を下げた後に、チビ妖精達を素早く連れていった。


 そ~~~っと近寄ってきたお爺ちゃん大妖精。

 他の何人かの大妖精も近寄ってきて、チビ妖精達がけっかいと言っていたものに、更に魔力を追加している。


 散々ボムボムボムボムしてた黒い靄は、どうやっても入れないことを理解すると、本格的に攻撃の体勢に入り、魔力を練り出した。

 警戒を強め、更に結界に魔力を込める大妖精達。

 そこへ、


「あああああ!!お前は!お前のせいで我々はこのような姿にされたのだぞ!お前のせいで!お前のせいで!決して許さぬ!力は削がれたが、お前のような奴は、我々が成敗してくれる!皆の者続けーーー!」


 木々の間から現れた小さな影が、結界を越えて外へ。

 五センチくらいのそれは、よく見ると、一番最初に森で迷子になった時に、いちゃもん付けてきた年寄りの妖精だった。

 それに続くのは、やはり森で言い掛かりを付けてきた妖精達。

 元精霊のウトマリに騙されて、勝手に妖精の町を出ていった彼等が、結界の外の黒い靄に向かっていった。


 と、言うことは、あの黒い靄は、元精霊現自称大妖精のウトマリ?

 ラニアンママ曰く、魔力が歪んでるから、その内魔力を失うって事だったけど、その前に魔物化でもしたのだろうか?

 よ~くよ~く見て感じてみれば、確かに知ってる魔力の気配もある、気がする。

 歪んで澱んで、変質もしているようで今一はっきりしないけど。

 よくこの状態で、チビ妖精達は知ってる魔力と判断出来たものだ。

 そこは素直に感心する。


 お年寄り妖精の号令で黒い靄に突撃していった妖精達、その数三十程は、黒い靄を囲んで次々に攻撃魔法をぶち込んでいく。

 が、黒い靄は魔法を吸い込むように吸収してるだけで、一向に攻撃が効いてる様子は無い。

 風も火も水も土も、全ての魔法を吸い込むだけで、弱っている様子も避ける様子も全く無い。


 暫く続いた攻撃も、一切効いてないことに気付いたお年寄り妖精が、一旦攻撃を止めるように言うと、今度は黒い靄が動き出した。

 近くに居た妖精から次々と黒い靄に取り込まれ、ブワン、ブワンと黒い靄が脈動するように震えた後に、コロンと靄から転がり出たのは、植物の種?

 それを見た妖精達が、一気にザワ付き悲鳴をあげる。

 結界内のこちらでも同様で、


「あれは、何があったんだ?」


 アールスハインがお爺ちゃん大妖精に聞くと、


「あ、あれは、妖精の核となる植物の種じゃ、実でも芽でもなく、あのように種にまでされてしもうては、妖精としての復活は望めまいて、なんと惨い事を!」


 ワナワナと震えながら教えてくれた。

 実や芽ならば、妖精の力を全て無くしたわけではないので、時間はかかるが復活は可能。

 妖精が寿命で死ぬ時は、その魔力を全て使いきった状態で、死体の代わりに種が一粒残される。

 それを地に還すのが、妖精族の葬儀なのだとか。


 話している間にも、次々と取り込まれ、種として転がる妖精達。

 世界樹の実を、盗んでまで力を求めたウトマリの、これが成れの果て。

 どう見ても魔物。


 粗方吸収し尽くし、種として転がる妖精達も居なくなった頃、結界に再度攻撃を仕掛けようとし始めたウトマリの成れの果て。

 大妖精達が、一層の力を結界に流すが、妖精達を取り込んで力を得たウトマリの成れの果て相手では、少々分が悪そう。

 こちらは全体を守らなくてはいけないが、向こうは一点突破で良いので、守る方は不利になる。


 義理は無いが、チビ妖精達の為にも、加勢しますかね!

 お爺ちゃん大妖精の魔力に合わせて、結界の外側にもう一枚バリアを張る。

 反撃効果も付与しますよ!


 黒い靄のウトマリが、魔法で鋭い槍を作り出す。

 巨大な槍は回転しながらこちらを狙い、勢いを付けるように何度か前後に動かされた後、かなりの速さで結界に衝突した。

 大妖精達も更に結界に力を流し対抗している。

 ゴムが伸びるようにこちらに迫る槍先。

 しかし一定の距離まで伸びた結界は、破れること無くその勢いのまま跳ね返された。

 スコーーン

 と軽快な音と共に反撃された槍は、黒い靄のど真ん中に命中し、中の何かに当たり間抜けな音を立てて消えていった。


「いいいっっったーーーーい!!」


 叫び声と共に、黒い靄の中から見覚えのある姿が透けて見えた。

 なのですかさずバリアで黒い靄ごと囲い込み、バリア内を聖魔法の水で満たしてやった。

 ガボガボと溺れるウトマリ。

 元々は水の精霊だったので、死ぬことはないだろう。

 暫くゴボゴボしてたが、黒い靄もだいたい消えた所でバリアを解く。

 ボタッと落ちる塊。

 地面で仰向けに倒れ、ゼイゼイと全身で呼吸をする、以前は自称大妖精ウトマリだったもの。

 念のためバリアで包囲してから近寄ってみる。

 お爺ちゃん大妖精も付いてきた。


 半透明なバリアの中にいるものは、未だに黒い靄を滲ませながら、恨めしそうな顔でこちらを睨み付けている。

 その姿は、妖精でもなく、勿論精霊である筈もなく、魔物に半身を食われたような、上半身が元々のウトマリ、下半身は獣型の魔物と言うおぞましい姿だった。


「元は精霊であったものが、ここまで落ちるとは。魂も汚れ魔力も歪み、既に死する以外の救済は望めん所まで来てしもうておる」


 お爺ちゃん大妖精が沈んだ声で言うのに、


「うるっさいわねー!あたしは!何としてでも生き残る為に頑張ったのよ!元はあんた達があたしを大妖精と認めなかったのが悪いんじゃない!だから復讐してやるために来たのよ!覚悟しなさい!」


 どこまで行っても話が通じない。

 自分の欲望にしか目が向かない。

 前にも見たことのある人物像。

 元聖女も、元女神も、そして今目の前に居るウトマリも、一切周りを気にすること無く自分の欲を満たすためにしか動かない。

 全く理解できない。

 何故そこまで傲慢に振る舞い、自分勝手に行動出来るのだろう?


「これ以上我々の町に攻撃をするのなら、全力で殺しにいくが、それでも良いのだな?」


「何よ!そんなのずるいじゃない!あたし一人に寄って集って攻撃するなんて卑怯よ!」


「はなしつーじなーね(話し通じないね)」


「元々人の話等聞く耳を持っておらんのじゃろう、問答するだけ無駄じゃった。そのせいで妖精族も少々混乱したが、この姿を見れば従うものは居なくなるじゃろう。後は妖精族総力で戦うのみ」


「なに勝手に決めてんのよ!あたしは妖精草を取りに来ただけよ!邪魔しないで!」


 さっきと言ってることが違うし。


「お前のような邪悪なものを町に入れる訳にはいかん!それでも無理に入ろうとするのなら、戦うしかないじゃろう!」


「邪悪って失礼ね!あたしは大妖精!あんたと同じ立場じゃない!」


「魔物に食われかけてなにを言っとる?己の姿も確認出来んのか?!」


「だから妖精草がいるって言ってんでしょ!魔力さえ有れば、こんなのすぐに治るわよ!」


「むりららい?(無理じゃない?)」


「何でよ!」


「しぇーまほーで、くりゅちむのは、まーものれしょ?(聖魔法で苦しむのは魔物でしょ?)」


「まだ魔物じゃないわよ!」


「少なくとも、妖精草には聖魔力もこもっておる。それを今のお前が体に取り込めば、内側から浄化され、滅びを早めるじゃろうの。それが望みならば妖精草を分けてやろう」


「なによそれ!それじゃ意味無いじゃない!あたしは元に戻りたいの!精霊だった種族と力を!」


「むりららい?」

「無理じゃな!」


 お爺ちゃん大妖精とかぶった。

 その俺とお爺ちゃん大妖精の返事に、


「じゃあ、どうすれば良いのよ?!あたしを元の姿に戻しなさいよ!」


 叫びながら泣き喚き出した。


「お前のその姿は、お前のせいじゃ、自業自得じゃ、誰に治せるものでもない。その姿のまま滅びる以外やりようは無いじゃろ」


「嫌よ!絶対に嫌!あたしは絶対に死なないから!」


 そう叫んだウトマリの魔力が突然膨れ上り、バリアは破られ、ウトマリは目にも止まらぬ早さで逃げ出した。

 呆気に取られる俺達と妖精達。

 どこにあんな魔力を隠していたのか、油断してたわけじゃないけど、呆気なく破られたバリアに呆然とする。


 お爺ちゃん大妖精に声を掛けられ、取り敢えず町に戻る。

 続々と集まっていた妖精達も無言のままお爺ちゃん大妖精を見ている。

 そこには、小さくされた妖精達も集まっていて、


「お前達、あの姿を見たか?あれが勤めを放棄し己の欲に振り回された成れの果てじゃ。妖精でさえ無くなったあの姿を見てもまだ、他を見下し傲慢に振る舞うと言うのなら、わし等は全力で消しに掛かるからの!妖精族には妖精族の役割がある、努々忘れんことじゃ」


 呆然と涙を流す小さくされた妖精達。

 ウトマリの言葉に踊らされ、自分達は特別な種族であると傲り、傲慢な態度を取って勤めを放棄していたもの達は、ウトマリのおぞましい姿を見て、言葉もなく泣いている。

 お爺ちゃん大妖精の、このまま態度を改めなければ、自分達もいずれはああなる、との言葉もかなり効いたのだろう。

 俯いて己の行動を思い返している様子は、本当に反省しているように見える。


 お爺ちゃん大妖精の言葉で、今夜は解散。

 大妖精だけで、更に結界を強化して休む事に。

 モヤモヤは残るけど、どこに行ったか分からないものを追いかけるのは無謀なので、言葉に従って寝ました。



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4巻の発売日は6月9日で、公式ページは以下になります。 https://books.tugikuru.jp/202306-21551/ よろしくお願いいたします!
― 新着の感想 ―
[一言] なんかおかしいなと思ってたけど この回が欠けたピースだったのか
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