ドワーフの谷 2
誤字報告、感想をありがとうございます!
ユーグラムに抱っこされて調理器具屋さんへ。
ドワーフ族は平均身長が人間よりも低いので、階段の段差は低い。
それでも俺は全身を使っても登れないけど!肉体強化してジャンプすればなんとか。
ただ一歩踏み外せば真っ逆さまに、谷に落ちそうで不安になるらしく抱っこされました。
忘れてるかも知れないけど、俺、飛べますよ?
まあ楽だから良いけど。
調理器具屋さんの兄ちゃんは、朗らかに迎えてくれて、注文した品は完成していた。
ホットサンド器はちゃんと洗えるように上下を外せるようになっているし、たこ焼き用鉄板も、一つ一つの穴は大きめだけどちゃんと半球になっている。
その他の細々したものも良い出来。
そして問題のパスタマシーン。
調理器具屋の兄ちゃんは、布で試したみたいだけど、これは実際にやってみないとね!
兄ちゃんの家の台所を借りて、パスタマシーンをお試し!
流石調理器具屋さん、凄く充実した台所!
魔道具のコンロやオーブンもある。
では、まずパスタから!
パン用の強力粉と植物油と卵と塩、それを混ぜてこねて表面がツルンとしたら葉っぱに包んで暫く置く。
その間にソースは簡単な物で、トマトソースとクリームソースの二種類。
トマトソースにはベーコンとアスパラを炒めて入れます。
クリームソースにも同じ具材+玉ねぎ。
それとニンニクと唐辛子とベーコンのペペロンチーノの三種類を作る予定。
ソースが出来たので、生地を伸ばしてパスタマシーンへ。
ハンドルを回すと均一に切られた麺がニューンと出てくる。
成功ですな!
兄ちゃんに親指立てて見せれば、満面の笑みが返ってきました。
麺を茹でてソースと絡める。
ネズミ町で買ったチーズを削り入れて完成。
大変好評でした!
ズゾゾーーーと啜るのはどうかと思うけど、この世界には二本爪のフォークしかないので、上手く巻けないのだ。
仕方無いので、三本爪のフォークも注文しなおしました!
そして、パスタに感動した兄ちゃんが、パスタマシーンを量産するそうです。
すかさずディーグリーが交渉に入りました!
麺の太さを調節できると良いよね、って希望したら、改良してくれるそうです。
また別の料理を振る舞う事になりました。
雑談してたら、温泉に興味を持った兄ちゃんが、一緒に温泉に行くことになった。
今さらだけど、兄ちゃんの名前はコシューと言うそうです。
温泉に入りながらコシューの話を聞く。
コシューは元は料理人志望だったんだけど、ドワーフは基本、肉とビールがあれば他は別にって種族なので、作りがいと言うか張り合いがないので道具を作る方に変更したらしい。
なのでこの街にはラバー商会のレストランも無いそうです。
コシューは温泉にも感動して、今まで入らなかった事をとても悔しがっていた。
温泉から上がってコシューとは別れ、午後は訓練。
ボードに乗りながらの戦闘訓練は、たまに巨大鳩の魔物が乱入してきて、訓練ではなくなることもしばしば。
羽を毟る方が時間が掛かったけど!
羽まみれになったので、もう一度温泉に入ってから、再びコシューの店に。
夕飯は道具の使い心地を確かめるためにたこパです!
たこ焼きパーティー!
ダンジョンでタコを狩ってから楽しみにしてたので!
粉と卵と薄めた出汁を入れて、キャベツとス漬けの生姜を入れて、熱した鉄板に油をひいたら生地を流し込む、ぶつ切りのタコを入れ、程好い焼き加減でクルッと返す。
焼けたタコ焼きにソースと鰹節、マヨネーズを掛けて、ふ~ふ~してパクリ!
ハフハフ言いながら食べるタコ焼き最高!
タコにドン引きしてたコシューも、周りが争うように食べるので、恐る恐る一口食べて、アチーーってなってたけど、お気に召した様子。
途中、味変でチーズ入れたりベーコン入れたりしながら、焼いて食べて焼いて食べてを繰り返してました!
タコ焼き鉄板も量産するそうです。
本日はこれで終了。
おはようございます。
注文した剣と調理器具が出来るまでの二日間は、アールスハイン達は訓練と訓練と温泉で過ごし、俺はコシューの家で料理三昧でした。
コシューの嫁に行ったお姉さんが、コシューの作った調理器具に興味を持ち、タコパの時に余ったタコ焼きを取って置いたコシューから奪い取り食べてはまったそうです。
そして調理を担当してくれる事になったので、俺だけ別行動になった。
コシューのお姉さんの名前はマシュー。
マシューもコシューに負けない食いしん坊なので、料理の腕も中々のもの。
角煮、ミートソース、ボロネーゼソース、カレー、豚汁、ビーフシチュー、そしてラーメンスープ。
豚骨と鶏ガラと鰹出汁の三種類。
普段は滅多に作らない、時間の掛かる料理を大量に作り置きしました!
マシュー大興奮。
ただし、俺のマジックバッグ以外は時間経過ありなので、日持ちはしません。
味見と食事以外は全部収納しました。
実際に調理したのはマシューなので、大丈夫だろう。
ちゃんと後から作り方を書いたメモも渡しますよ!
料理しながら、こんな調理器具があると良いよね~、と話していた物がいつの間にかメモされて、コシューに渡っていたのは中々抜け目無い感じ。
紐を引っ張るだけでみじん切り出来る、チョッパーが開発されたのは嬉しかったけどね!泡立ても出来る優れもの!
パスタもラーメンも、コシューマシューに大好評でした!
勿論他のアールスハイン達にもね!
ラーメン食いながら、助が泣いてて笑ったけど!
そして約束の二日後。
先にコシューの店で改良されたパスタマシーンと三本爪のフォークを受け取る。
お代はタダです。料理代だって!
それとは別に、パスタマシーンやタコ焼き用鉄板、三本爪フォーク、みじん切りチョッパーの特許料もくれるらしい。
販売はラバー商会でも扱うようで、俺とディーグリーはホクホク顔でお店を出ました。
足取り軽く元締めの店に行くと、娘はおらず、カウンターには元締め本人が、腕を組み仁王立ちしてた。
俺達が挨拶すると、顎をしゃくって奥へ入っていき、今日は最初から何もない部屋に通された。
まずアールスハインが渡された剣は、細身の長剣、鞘から抜いた剣の刀身には、渦巻くような波打つような模様が描かれ、それはそれは美しい剣となっていた。
最初から魔力を纏わせるように言われ、その通りに魔力を刀身に流すアールスハイン。
「うおっ!…………これは、恐ろしく魔法の通りが良いな!」
いつもの調子で流して、いきなり刀身が伸びたように見えたのは、魔力の通りが良すぎたかららしい。
次は助。
幅も厚みもある大剣。
その剣にはアールスハインの剣とは違う、炎を型どったような模様が描かれている。
魔力を流せばやはり最初は暴走気味になったが、すぐに調整できてた。
ディーグリーの短剣には、雷マークみたいな直線的な模様、ユーグラムの棍には、精密機械の基盤みたいな複雑な模様が描かれ、先の二人の様子を見てたので、最初から慎重に魔力を流してた。
素晴らしい出来に、四人掛かりで褒めてたら、褒められ過ぎて元締めが照れたのか、応接室に移動した途端、ビールをがぶ飲みしてた。
俺達の前にも出されたビール。
アルコール度数が異常なビール。
取り敢えず、大きなボウルの中にガーゼのような布で、ビールを濾して粒々を排除、ちょっと水で薄めて、指先から二酸化炭素を勢い良く噴射するイメージ。
前世のお家で炭酸水が作れます!みたいなイメージ。
ジョワーーーっと泡立つビールを、キンキンに冷やして元々のジョッキに戻す。
俺用のはコップだったので、両手で持って一口。
「ぷはーー!んまい!」
おっさんの本性が丸出しになりました!ビール飲んでるんだからしょうがないね!
助も続いてプハーーー!してるし、アールスハイン達も続く。
元締めがとても不思議そうな顔で見てるので、残ってたビールを差し出してみる。
大きなボウルに直で口を付けグビグビ飲んで、
「プハーーー!ゲブゥ。な、な、なんだこりゃーーー!ゲブゥ」
ゲップが止まらない様子。
ちょっと刺激が強すぎた?
まあ、1分程でおさまって、ボウルの方のビールを物凄く凝視してるけど。
そしてまた一口。
「プハーーー!ゲブゥ。………………ゲブゥ………………旨いな。粒が無いだけじゃなく、シュワシュワが強くなって、冷やしたんだな、それがこんなに旨いとは!おい坊主、このシュワシュワが強くなったのは、水を足さなきゃダメなのか?この強い方じゃ出来ねーのか?」
ボウルの中身を全部飲み干し、自分のジョッキに入ってるビールを濾した元締めおじさんが、ボウルを差し出しながら俺に言う。
やりましたよ。
指先から二酸化炭素を勢い良く噴射して、炭酸を強くしました。
ブクブクーーーっと泡が増えたけど、それを冷してやれば少し泡がおさまって、また元締めおじさんの方へ戻してやれば、ボウルに直で口を付けグビグビーーー、プハーーー!ゲブゥの繰り返し。
「ウメーーーー!なんっっっだこりゃ!おい坊主、冷やすのは俺でも出来る!だがこのシュワシュワを強くするのはどうやりゃ良いんだ?魔力が強くなきゃ無理か?黄色魔力の俺でも出来るか?」
興奮気味に詰め寄られる。
この世界の魔法はイメージが重要なので、二酸化炭素を指定しなくても、炭酸を強く!とイメージすれば、出来ない事も無いだろう。
試しに元締めに説明してやらせてみる。
隣でユーグラムもやってみてる。
俺の説明に慣れているユーグラムは一発で成功。
元締めは、ユーグラムを見て、何度か失敗した後に成功させた。
ブクブクーーーっと泡が出たタイミングですぐに冷やす、それは二人とも問題なく成功。
プハーーー!っと自分が強炭酸にしたビールを飲んで、満足そうな元締めおじさん。
暇なのでつまみを並べて食べている他のメンバー。
元締めは、肉が柔らか過ぎる!と文句を言いながらも、角煮を貪り食ってた。
ひとしきり飲み食いして満足したので、ホロ酔いのまま商談。
剣のお値段は、王都の富裕層区画で一軒家が買えるお値段でした!
それでもだいぶおまけしてくれたみたい。
旨いビールが飲めたからな!とか言ってた。
お互いにホクホク顔で商談を終えました。
宿に帰るために階段を登っている。
途中、マシューに会って立ち話。
肉至上主義の旦那にカレーを作って食わせたら、物凄い食い付きで、食べ過ぎて寝込んだらしい。
バカでしょ~!とか笑って話してる。
近所の奥さん達にもお裾分けしたら、旦那に食べさせる前に完食したとか、作り方を教えてくれと懇願されたとか、子供が辛くて泣きながら食べてたとか。
お礼にサービスするから、店に寄ってって!と連行されたりとか。
マシューの旦那さんは、服飾関係の職人で、ボタンやドレスに付けるための宝石の加工とかをしてる店の店主だった。
俺達には必要な物が見当たらないお店でした。
そして、マシューの旦那さんのヒヨルドが、俺の持ってるマジックバッグのチャックに食い付きました!
チャックの仕組みを見て、構造を調べ、これは使える!今後の服飾業界を変える!とか大袈裟な事を言い出し、離してくれません!
そしてヒヨルドの友人の店に拉致られました。
細かい鉄の加工品を請け負う職人ドワーフさんで、チャックを見せ二人で話し込んでしまいました。
マジックバッグから離れられない俺は、ずっと付き合わされました!
アールスハイン達は酔い醒ましにボードで散歩に行きました!
まあ、俺も昼寝してたけど!
たっぷりと昼寝して起きても、二人はまだ話し合っていて、けど俺のマジックバッグは必要無い段階まで来てたので、マシューに連れ出されて無事にマシューのお店に戻れました。
夕方に迎えに来たアールスハイン達と温泉に入って、夕飯を軽く済ませて本日は終了。
よそ見している間にストックがだいぶ減ってしまい焦り気味。
なるべく休まない様に頑張ります!




