五日目 夜 と六日目朝
すみません、なんか色々間違えました。
以後気を付けます。
本日の投稿は全部で五話です。
一度に色々あったので、アールスハインの部屋に戻ると、ソファに座った途端気絶するように寝てしまった。
夕飯の時間がきて、シェルに起こされ、半分寝ながら食事して、皆が食後のお茶を飲んでる間もウトウトしてたら、
ーーバンーー
て、ドアを叩き開けるような音にビクッとして目が覚めた。
「父上!リナを修道院に送ったと言うのは、どういう訳ですか?!」
「何だ、騒々しいぞキャベンディッシュ」
「兄上は黙ってて下さい!今はそれ処ではないのです!聖女であるリナが、修道院に送られたのですよ!父上!訳をお聞かせ下さい!」
キャベンディッシュの剣幕に、双子王子が怯えている。
「……………訳は話してやるが、先ずは落ち着け」
王様が眉間に皺を寄せて言うが、
「これが落ち着いていられますか!女神様から遣わされた聖女であるリナが、居なくなったのですよ!」
「………………はぁ、その女神様が代替わりされたのだ。それに伴って聖女であるリナは、聖女の資格を失った。聖女でもないただの少女を城に置くわけにはいかん。したがって修道院に預けた。それだけの事だ」
「な!そんなバカな!神の代替わりなどと!そんなの有り得ない!」
「信じないのはお前の勝手だが事実だ。明日にでも教会に行ってみれば事実の確認が出来よう」
「ですが!それでは!リナがあまりに哀れではありませんか!異なる世界から連れて来られて、この世界の事は何も分からないのですよ!誰かが助けてあげなくては!」
「修道院にも人はおる。当然事情も話してある」
「ですが!彼女は女神様から授かった、特別な力を内に秘めているのですよ!それをむざむざ手離すなど…………」
「そのような特別な力を示した等と報告は入っておらぬ。万が一その特別な力とやらが有ったとしても、女神が居なくなったのだ、直に消えるだろう」
「しかし、そんな」
キャベンディッシュは反論する言葉が無くなったのか、グヌグヌしてる。
「キャベンディッシュ、これは教皇とも協議した上での決定だ」
教皇猊下まで出されては、キャベンディッシュに抗う術は無く、グヌグヌしながら、挨拶もせずに出て行った。
全員の口からため息が漏れる。
「父上、神の代替わりとは本当ですか?」
今日は、市街地の見回りに出掛けていたイングリード。
「あぁ、事実だ。明日にも教会から、正式な発表がなされるだろう」
「………………そうですか、神の代替わり、そのような特別な体験が出来るとは、ハハッ我々は運が良いのかもしれませんな!」
「フフフ、そうね、一生に一度どころか、数世代に一度でも起こり得ない、貴重な体験ですものね」
イングリードの前向きな意見に、重かった空気が軽くなる。
それに乗っかった王妃様が、自分にしがみついている双子王子の頭を撫でながら笑うと、
「きちょー?」
「きちょー?」
意味が分からず、同じ角度で首を傾げた双子王子に、
「スッゴくスッゴくめずらしいって事よ!」
アンネローゼが、腰に手を当てとても偉そうに説明する。
キャッキャする双子王子、とても癒される。
寝落ちする俺Zzzz………
バチッと目覚めると、早朝、まだ暗い時間でした。
昨日は、何故あんなにも眠かったのか分からないが、目覚めはすこぶる爽やか!
朝の柔軟体操を済ませ、部屋の中で歩く練習をする。
下はフカフカの絨毯が敷いてあるし、オムツの心配は無いが、すぐに転倒する俺の服には、尻の部分に小さなクッションが入っている。
つまり、オムツのように尻が膨らんでいる。
が、今は寝巻きのワンピース的なものなので、慎重に歩きますよ!油断さえしなければ、だんだん普通に歩けるようになってきた。
急な方向転換はバランス崩すけどね!
筋力と、頭の重さが問題です!
窓際に到着したので、カーテンを掴んで、スクワットもやったよ!手足が短く軽いので、この体で、足上げの腹筋と背筋はメチャ楽なんだけどね。
それでもアールスハインが起きるには、まだ早いので、リビングに行こう。
遥か頭上のドアノブにも飛べば届くし。
リビングには早朝なのに助がいた。
「たしゅきゅ、はよー」
「おう、恵太はよー、随分早いな?」
「きのー、いっぱーにぇた。たしゅきゅーは?」
「あー、何か、鬼属になってから睡眠時間短くなったんだよ」
「ふぇー、おにじょくてー、ほきゃににゃにちやうのー?(へー、鬼属って他に何が違うの?)」
「んー、力は強くなるし、頑丈にはなる、魔法は変わんねーし、あ!けーたけーた、触ってみ!」
そう言って頭を差し出すので、取り敢えず触ってみると、頭頂部の少し前辺り、髪に隠れて二本の、
「ちゅーのー!」
「な、アハハハハ!笑うだろ!角だぜ角!そんでこの角、メッチャつえーの!グリーングリズリーの薙ぎ払いを無傷で止めんだぜ!ヤベーだろ?!」
「ぐでぃーんぐでぃずでぃー、ちゅよしゃわかんにぇー(グリーングリズリー、強さわかんねーー)」
「あー、まだ城から出たこと無いんだっけ?」
「しょーしょー、まもにょって、いっぱーいんの?」
「いるいる、うじゃうじゃいる」
「ふぇー、しょりぇもめぎゃみーのしぇーかー(へー、それも女神のせいかー)」
「何それ、どゆこと?」
「めぎゃみーのしぇーで、にんぎぇんふえないちゅってたー(女神のせいで、人間が増えないって言ってた)」
「あーなー、一瞬しか見てねーけど、何かダメな感じはしたなー」
「しょりぇな!じっしゃいだめだめらったし(それな!実際ダメダメだったし)」
「まぁまぁ、もう居なくなったんだし、気にしなくていんじゃね?」
「まーにゃ」
「………………それにしても恵太よ」
「んー?」
「縮んだねー、赤ん坊としてもちっさくね?」
「にんぎぇんららいらしーよー(人間じゃないらしいよ)」
「え?ららいら?」
「しぇーじゅーらって」
「……………聖獣?人型の聖獣なんているの?」
「ここにいりゅれー」
「へー、人間と違いあんの?」
「しぇにゃかにはねはーてりゅねー(背中に羽生えてるねー)」
「まじで!?見して見して!」
寝巻きのワンピースをペロンと捲られて、
「おー、ちっさいけど、ちゃんと羽だねー、何か宝石的なのも埋まってるけど、これ痛くねーの?」
「べちゅにー、いわりぇりゅまでちららかったしー(別に、言われるまで知らなかったし)」
「んー、でもこんなちっさいと、流石に飛べないかー」
「はねはちゅかーにゃいけど、とべりゅよー(羽は使わないけど、飛べるよ)」
ふわんと飛んで、助の頭の上を一周してやると、
「うえーすげー!飛んでるー!ナハハハハハ!まじで人間辞めてるーウケるー何でー?」
「にゃんかー、かみしゃまがー、かりゃだちゅくってくりぇりゅってちて、こーにゃってた(なんか、神様が体作ってくれるって言って、こうなってた)」
「神様製の体ってどんなチート?こわっ」
「にゃっちゃったら、しょーがにぇーよ」
「お前はそーゆーとこほんと大雑把ね!」
「たしゅきゅはこまかーとこ、きにしゅしゅぎー」
「いやいや、細かく無いからね!自分の体の事だろうに」
「たしゅきゅらって、おににゃったじゃー」
「家の一族は先祖が鬼属だったから、たまに出てくるんだよ、そんな異常なチートでも無いし」
「にゃっちゃったもんしゃーないれしょー」
「まぁそうなんだけどね」
「かりゃだより、ことばぎゃだめだめよ(体より言葉がダメダメよ)」
「言ってる事は何となく分かるんだけど、舌が回って無い感じ?」
「しょー、あたまれかんがーこちょが、くちかりゃでりゅと、まわっちぇにゃいかんじー(そう、頭で考える事が、口から出ると、回ってない感じ)」
「慣れるしかないんじゃない?もしくは成長」
「しぇーじゅーって、しぇーちょーはやい?」
「いや知らんけど」
「ブー」
「不貞腐れても可愛いだけだから」
「ブーブー」
「ブーブーも可愛いな!ま、諦めて地道に練習しなさいな」
「ふぇーい」
「……………………………………………あー、けーたよー…………弟達、泣いてたぞ」
何の事かはすぐに分かった。
俺が事故死した時の事だろう。
「あー」
「事故の原因になった、喧嘩してた二人も、葬式に来て、土下座で謝ってたし」
「ありゅいみ、あにょふちゃりも、びっちおんにゃのひがーしゃらよなー(ある意味、あの二人も、ビッチ女の被害者だよな)」
「あー、そのビッチ女の親が、二人に慰謝料請求したらしいぜ。
娘が娘なら、親も親だよな。
ま、監視カメラに一部始終が映ってて、そもそもの原因がビッチ女だったって事で、慰謝料請求は取り消されたらしいけどな。
ビッチ女の葬式では、更に三人も股かけてた事が発覚して、今は二人は心から反省してるって、泣いて謝ってたよ」
「まー、わりゅいおんにゃにしっかかったっちゅーことらら(まー、悪い女に引っ掛かったって事だな)」
「………………それだけ?もっと恨み言とか無いわけ?」
「んー、あんときおりぇ、ちゅかりぇてたかりゃ、にゃんかぼんやりとちかおぼーてにゃいんらよ(んー、あん時俺、疲れてたから、なんかぼんやりとしか覚えてないんだよ)」
「確かに。俺も会社出た後、二日爆睡して、起きたら恵太が死んだって知らせが来て、夢見てんのかって、暫く理解出来なかったわ」
「かーしゃのほーは?」
「あぁ、会社の方は、労働基準局に訴えるまでもなく、社長の長男が全部解決してくれて、葬式でも号泣しながら、謝ってたよ」
「にゃんでしゃちょーのちょーなん?」
「社長の長男って、入社当時は腫れ物に触るみたいな扱いだったのに、恵太が指導係りになった途端、扱いが他の新入社員と変わらなくなったって、それでちゃんと仕事を覚えることが出来たって、凄い感謝してたよ?」
「?しゃちょーちょーなんいたっけー?」
「………………気づいて無いとか!その事に衝撃受けるわ!ま、その長男が頑張ってくれて、最終的に、社長と三男とボンレスは首になって、俺らには一月の有給と、慰謝料が払われて、納得して解決したよ」
「あー、しょりぇなりゃよかっちゃよ」
「まーね、何であの長男の父親と弟が、あんなんなったのかは疑問だけどね?
そんで、恵太んちの兄弟達は、三人して実家の近くにデカイ家建てて、一緒に住みだすらしいし、妹二人もすぐ近くに引っ越して、皆でワチャワチャ暮らして行くってさ」
「しょー、なりゃしんぱーにゃいな!」
「軽いなー?」
「おみょくにゃっても、いきかーりゃにゃいしー、じぶんもらろー(重く言っても生き返らないし、自分もだろー)」
「まーね、でも俺の場合、こっちで生まれた記憶もあるからなー。ぼんやりとは記憶もあったし」
「いちゅかまえららいの?(五日前からじゃないの?)」
「人の顔とか名前とか、はっきり思い出したのは、五日前。でも、その前から何となく、自分が育った場所はここじゃない感があったね。前世ねーちゃん三人だったのに、今世にーちゃん四人だし、違和感半端ねーわ!ま、どっちも乱暴者で、恋愛体質なのは笑うけど!」
「こいしゅしゅぎねーちゃんな!」
「そんで今度は、恋し過ぎにーちゃんな!」
「「ナハハハハハハハ!」」
二人して朝っぱらから馬鹿笑いしてたら、音もなく部屋に入って来たシェルに、
「おはようございます、朝から楽しそうですね」
と、声をかけられ、二人してビビクッとした。
「「シェルおはよー」」
「はい、おはようございます、お二人は楽しそうに何を話されてたんですか?」
「じぇんしぇのー、きょーだいにょこちょー」
「お二人は前の世界に、ご兄弟がいらしたんですか?」
「しょー、おりぇがちょーなんで、たしゅきゅもちょーなんなん(そう、俺が長男で、助も長男)」
そんな話をしていると、アールスハインも起きて、身支度も済ませて寝室から出てきた。
「おはよう、皆」
「おはよー」
「「おはようございます」」
「朝から賑やかだな」
「兄弟の話をしてたんですよ」
「兄弟?ティタクティスには兄が四人だったか?」
「はい、で、前の世界には、姉が三人、恵太は双子の妹と、弟が三人いたんですよ」
「二人とも長男なのか」
「まぁ、俺の場合、姉三人が強すぎて、俺は下僕扱いでしたけどね!」
「こいおーきみくりゃーきょーだい!」
「俺を入れんなよ!」
「しょっちゅーふりゃれてて?」
「しょっちゅうでは無いだろー?」
「ねんにはおーいろー?」
「多いですね」
「多いな」
「ナハハハハハ!」
「それでも!ねーちゃんたち程じゃ無かったわ!」
「あー、ありぇはびょーきらったな」
「………………今の兄貴達も同じなんだけどな」
現状を知っているのか、アールスハインが、同情を込めて、助の肩を叩いている。
その間にシェルが、着替えさせてくれた。
「ケータ様のご兄弟はどんな方達何ですか?」
「んー、いーもーとは、ふたぎょで、ちゅよいかーちゃんで、じーなんは、かきゅとーぎまにあ、しゃんにゃんは、かちんこちんにょまじめーで、よんにゃんはおたきゅ!(んー、妹は双子で、強いかーちゃんで、次男は格闘技マニア、三男は、カチンコチンの真面目で、四男はオタク!)」
「そんで全員重度のブラコン」
「ぶりゃこんつーじんにょ?(ブラコン通じんの?)」
「通じるねー、何故か」
「昨日話を聞いていた時にも思ったんだが、二人は前の世界では幾つだったんだ?」
「よんじゅうにたい」
手で4と2を作り見せながら答えると、シェルとアールスハインが、とても複雑そうな顔をする。
「アハハハハ!今のこの姿からは想像出来ないでしょうが、俺も恵太も、王様と同年代の大人だったんですよ、恵太なんて、甥っ子が11人もいて、その全員が男で、しかも恵太に瓜二つ!お前が生んだのかと思った!チョー受ける!アハハハハ!」
「うっしぇー、たしゅきゅらって、ねーちゃんしょっくりらったら!」
このネタは、生前さんざん言われた事だった。
何故か弟妹達は、休みの日になると、実家ではなく俺の家に押し掛けて、子供を置いて二人で出掛けて行くのだった。
弟達は、やはり子供を置いて趣味に走りさって行ったし。
実家に預けろと注意したら、「この子達に母の料理はまだ早い」と言われた。
母にも同じ事を言ったらしく、子供に食べさせても安全なレシピなるものを、散々書かされた思い出。
アールスハインとシェルが、俺達の話に笑ってるうちに、珍しく誰も来ない朝食。
この後は、王家全員で、王家専用の礼拝堂に、神像が無事設置されたかの確認に行くそうな。




