お~ま~え~か~!!
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妖精達に睨まれながら先導されて着いた里は、まだ出来立てなのか小さな里で、巨木を囲むように、木や蔦や葉っぱで編んだような小さな家が幾つかと、巨木の根本の泉が綺麗なだけの場所だった。
妖精達は泉の近くまで行くと、
「大妖精様、大妖精様、聖獣様が御光臨されました!我が里もこれで神に認められたも同然でございます!」
言ってる事が、自分達に都合が良すぎる事に気付いて無いのだろうか?
「えええ~!それって凄いじゃな~い!ほらね!あたしが言った通りにすれば、良いことあったでしょ~!さすがあたし!」
喧しい声と共に、泉からザブンと出てきたそれに、見覚えがあるのは気のせいですかね?
「うふふ~、聖獣様、初めまして~!あたしは大妖精のウトマリで~す!なるべく長く滞在してくださいね~!」
『…………………………』
「なんか、あの大妖精?に見覚えがあるんだけど~?」
「そうですね、何故か私も見覚えがあります」
「確か、以前見た時は大精霊と名乗ってなかったか?」
「本物の大精霊に全否定されてた上に、何か罰が下るみたいな事だったけど、精霊って、妖精に落ちるんだな?」
「んん?何で人間がいるの~?この里に人間が来るなんて、気分悪いんですけど~!」
「しぇーれーちっかくなったくしぇに、うるしゃいんでしゅけろー(精霊失格になったくせに、五月蝿いんですけど~)」
「はあ?妖精に落とされたけど、速攻大妖精になった実力を評価しなさいよ!」
「また、なんかーぬしゅんだのー?(また何か盗んだのー?)」
「ば、ば、ばか!今回は何も盗んでないわよ!元々持ってた物は私の物よ!」
「あー、前に盗んだ世界樹の実を隠し持ってたんだ~?」
「な、な、な、何で知ってるのよ?!」
「まえにもあったれしょー(前にも会ったでしょ)」
「え?前に?…………………アアアーーー!!あんた!あんたのせいで、あたしは妖精に落とされたのよ!責任取って魔力寄越しなさいよ!」
「しぇかいじゅーのみー、ぬしゅんだのじぶんれしょー。じごーじとくらよ!(世界樹の実、盗んだの自分でしょ。自業自得だよ!)」
『そもそもこやつは大妖精でもなかろう?魔力が歪み過ぎておる』
「まーりょく、ゆがむってー?(魔力が歪むって?)」
『こやつの魔力をよう見てみよ、体を巡る魔力が歪み、滞っておる。捨て置けば、自らの魔力の歪みで、その内体内に魔力を貯めておけなくなろう』
「ふぇ~」
「ちょっと!それってどうゆうことよ?!意味分かんないんだけど!」
「まーりょく、なくなりゅってことれしょー?(魔力無くなるって事でしょ?)」
『歪んでおるからの』
「魔力無くなったら死んじゃうじゃない!どうすんのよ?!」
「え?ちららい(え?知らない)」
「知らないって?!酷くない?」
「かんけーないち(関係無いし)」
「助けなさいよ!」
「にゃんで?」
「あたし死んじゃうかも知れないのよ?」
「ケータにかんけーないち(ケータに関係無いし)」
「可哀想だと思わないの?!」
「じぶーのせいれしょー(自分のせいでしょう)」
「なによ、なによ!なによ!薄情もの!!」
とても理不尽な難癖をつけられております!
「ちょ、ちょ、ちょっとお待ち下さい!一体どう言う事でしょうか?そちらにおられる大妖精様は、偽者と言う事でしょうか?我々は騙されていたのでしょうか?!我々はどうしたら?!」
悲痛な声で聞いてくるお年寄り。
『そんなものは知らん。己の命運を握る者の本質も見抜けんとは、そなた等もまた自業自得』
「そ、そ、そ、そんな!我々は騙されていたのです!」
『これだけの歪みを抱えた者を見抜けぬ妖精等、あまりに愚か。理に従って消えるがよい』
「なんと無慈悲な!ああああーーーーー」
地団駄踏んで、五体投地で号泣してます。
さっきまで俺達に向けてた敵意が、自称大妖精に向けられてるし。
ちょっと妖精族、どうかと思う。
微妙な空気に、帰って良いかな?と考えていたら、上空からボタボタと降るように降りてきた沢山の妖精。
巨木の根本の広場を埋め尽くさんばかりの人数。
そしてその中の一際大きい妖精が、
「聖獣様!何故このような場所に御光臨為されたのですか?!我々は正しく森を守り、日々力を磨いて参りました!それなのに何故?!このような者の前には御光臨され、我々の里には見向きもされないのでございます!?我々にどの様な不手際が御座いましょう?」
うわぁぁぁーーー、と、登場と共に捲し立て、号泣する大きめの妖精。
一緒に降ってきた妖精達も、泣いてたり悔しがってたり。
ほんと、妖精族どうかと思う。
俺達全員がドン引きしてると、ラニアンとイチャイチャしてたラニアンママが、
『喧しいの、妖精族はそんなに滅びを望んでおるのか?』
ひっっくい声で聞いた。
目が半眼です!
ビクッと凍りつく妖精族。
『何故お前達は、我と我が子の再会の邪魔をする?他の地の妖精族は、聖獣に心酔し、恭順の意を示すと言うのに、それ程破滅したいのなら、我の手を煩わせず、魔の森へでも行けばよかろう』
妖精達には一瞥もくれず、ラニアンをベロンベロンしながら言うラニアンママ。
妖精族はもう息も絶え絶えで、指一本動かせない様子。
『フフフ、良い魔力が体を巡っておる。素晴らしい成長よ。小さき聖獣よ、感謝するぞ!フェンリルにしては少々形が違うが、これもまた愛らしい!そなたの影響を受けておるのだろうが、歪み一つ無い!フフフ、ここまで育てば世界樹の実も食せよう。更なる成長が楽しみだ!』
周りの雰囲気ガン無視で、子供の成長を喜ぶラニアンママ。
どっからか取り出した世界樹の実をラニアンに差し出す。
ラニアンは、以前それを俺が食ってたのを覚えていたのか、咥えて俺に差し出す。
「ちがーよ、しょれは、らにあんがたべるぶーよ(違うよ、それはラニアンが食べる分だよ)」
言葉の通じる賢いラニアンは、それをちょっと不思議そうにしながら、パクッゴリッゴリッ、と噛み砕いてあっと言う間に飲み込んだ。
俺にはその実は噛めません!
ラニアンは、体をブルブルッと震わせると、ビカッと強く光り、光が収まると、そこには真っ白なグレートピレニーズが居た。
ただ、前世知識のグレートピレニーズよりも毛が長い、そしてちょっと鼻先が尖り気味?
そして何よりデカイ!
百九十センチはあるアールスハインの、胸に届くくらいの位置に頭がある。
一気に育ち過ぎじゃない?!
俺、世界樹の実、五個は食ってるんですけど?!
たった一個でそんなに成長するって、おかしくない?!
ラニアンママに話を聞きたいのに、我が子の成長にはしゃいでて聞いちゃいない!
ラニアンも自分が成長したことが嬉しくて、一緒にはしゃいでるし!
大きさ考えて!妖精族が踏まれそうだよ!
ついでに俺達もちょっと危険な感じにはしゃいでるので避難した。
ワッフワッフと声まで低くなったラニアンは、でもまだ体に慣れていないのか、しょっちゅう転んでは、ラニアンママとじゃれている。
超大型犬がじゃれる姿は和むけど、周りにはかなりの被害が出るよね!
木や蔦で編んだような小さな家が、跡形もなく踏み潰されてますよ!
ヒィヒィ言いながら避難した妖精達が、泣きながら自分達の住み処が壊されるのを見てる。
多少哀れには思うけど、元々の性質を思うと、ねぇ?
一頻りはしゃぎ回った親子は、漸く落ち着いて来て、
『ではな、また成長した姿を見られるのを楽しみにしている』
ラニアンママはそう言って、俺の顔をベロンと舐めて去っていった。
何故舐めた?
大きくなったラニアンは、ママが去ったのを見送った後は、ソラに絡んでる。
一気にソラより大きくなったので、自慢したいらしい。
張り合ってソラも大きさを合わせたりしてるし。
ハクまで大きくなってるし!
一匹だけ大きさが変えられないプラムが、ディーグリーとユーグラムに慰められてるし!
号泣したり絶望したりの妖精達の横で、はしゃぐペット達。
なんとも言えない空気の中で、さて俺達はどうしよう?
幻術も解けた事だし移動しても良いかな?
テントをしまって、ボードや魔道具を出した所で、一つ問題が!
でかくなったラニアンは、魔道具に乗れますか?
試しにラニアンのみを乗せようとしたら、大きさが変わらなかった!
次に俺が乗って何時もより魔力多目に込めたら、ラニアン乗れる?
ダメでした!
大きさの上限は、人間の大人二人分程度のよう。
小さい俺とラニアンとソラとハクとプラムだったから、全員でも乗れたけど、でかいラニアンは大人一人分以上として、制限を超えてしまうらしい。
どうしましょう?
ラニアンは、まだ小さくなることは出来ないらしい。
クゥ~ンキュ~ンと切ない声で鳴いている。
しょうがないので徒歩で移動。
妖精族?放置ですよ?
だって人間を見下してて、話聞かないんだもの。
深い森の中を徒歩で移動は時間が掛かる。
急ぐ旅ではないので、ゆっくり歩きでも良いんだけどね。
デカイ体に慣れないラニアンは、しょっちゅう転ぶし、そこら中にぶつかっている。
真っ白な艶々の毛が、色んな汚れで大変な事に!
まあ、汚れてもフェンリルの毛なので、洗えばすぐに艶々に戻るけど。
出てくる魔物はそんなに珍しいものは出てこなくて、たまにある岩場にリザード系の魔物が出るくらい。
勿論食料として確保しますよ!
半日歩いて夕飯時になったので、テントを出して夕飯の準備。
本日のメニューは、良いロックリザードの肉があるのでステーキ。
付け合わせのサラダと、わかめスープ、主食はご飯。
肉の解体も肉体強化でサクサク進み、分厚く切った肉に塩コショウしてニンニクと共にジュージュー焼く。
仕上げに醤油を一回し。
何とも言えない香りが漂う。
全員揃っていただきます!
旨い肉を豪快に焼いて食べるのは、とても贅沢だね!
ラニアンも、でかくなった体に見合う量の生肉を食ってるし。
これからは更に肉の確保は重要になるね!
お茶を飲みながらまったり。
してたんだけど、そろそろ無視できなくなってきたので、しょうがなくテントの外へ。
ギャンギャン泣き叫びながら、暴れている元精霊、現、自称大妖精の姿。
何を叫んでいるかは意味不明。
俺達が壊滅した妖精の森を出てから、ずっと後を付いてきてた。
どうして欲しいのかは不明だが、攻撃っぽい魔法も使ってきてるし、何よりウザイ!
バリアに反撃されて、一回も掠りもせずに自爆してるけど、ずっとやってるし。
「もう、うるしゃい!」
つい、何時もより力入った攻撃をしちゃうよね!
切ったり突いたりはグロいので、風の魔法で衝撃波みたいなのをお見舞いしてやった。
手加減はしたよ?
風の壁に突然ぶつかったような衝撃を受け、ちょっと離れた所にボトッと落ちる奴。
散々自分から攻撃してきたくせに、こっちからの攻撃に心底驚いている様子。
「にゃんでついてーくんの?(何で付いてくんの?)」
「だって!あたしこのままじゃ死んじゃうって言われたし!」
「ケータかんけーないだん!(ケータ関係無いじゃん!)」
「何とかしなさいよ!」
「やらよ!(やだよ!)」
「あたしが死んでも良いの?!」
「べちゅに、いーよ(別に良いよ)」
「なんでよ!?あたしが死んじゃうのよ?!」
「おまいがちんでも、ケータこまんないち(お前が死んでも、ケータ困んないし)」
「あたしが困るでしょ!!」
「ふぇ~」
「ケータ、ケータ、鼻くそほじるの止めなさい!何か癖になってんじゃない?」
「らってー、きくいみないちー(だって、聞く意味ないし)」
「ま~ね~。俺達、ただ因縁付けられてるだけだしね~」
「自業自得の罪を、他人に解決させようとするとは、呆れ果てますね」
「元々の思慮も足りないのだろう」
「なによ、なによ、なによ!何で助けないのよあんた達!あたしは大妖精よ!人間は妖精に従うものでしょう?!さっさと助けなさいよ!」
「人間が妖精に従う、何てのは聞いたこともねーな?」
「常識ないの?!」
「そんなお前に都合の良い常識ねーし!」
「力の弱いものは、強いものに従うのが、自然の掟でしょうが!!」
「?おまーより、ケータのがちゅよいのに、にゃんでー、おまーにちたがうとおもーの?(お前よりケータのが強いのに、何でお前に従うと思うの?)」
「はあ?あたしの方が強いに決まってるからでしょ!そんなことも分かんないの?!」
「自分の強さを過信し過ぎじゃない?フェンリルにも、ほっとけば魔力貯められなくなって死ぬって言われてたよね?」
「だ、か、ら!どうにかしようと、あんた達に付いてきたんでしょ!」
「そんなん言われても、俺らでどうにか出来る訳無いじゃん」
「もう!分からず屋!薄情もの!人間失格!!絶対絶対あたしは死なないから!そんであんた達に復讐するから!覚えておきなさい!」
「う~わ~、完全な逆恨み!」
「救いようが無いですね」
「返り討ちに合っても文句言うなよ!」
「二度と会わないのが、お互いのためだぞ!」
「ばいば~い!もうくんにゃ~!」
去っていく後ろ姿に、思い思いの声を掛けて、さっさとテントに戻り、風呂入って寝ました。
あ~、面倒臭い一日だった!




