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イヌ町

いつも読んでくださりありがとうございます!

お陰様で、ブクマが4000越え、評価ポイントが10000越えをしておりました!

ありがとうございます!

なのでシレッと一話投稿してみました。

 イヌ町の隊長さんがあんなだったので、町の案内は無く、クラックに案内されながら町を歩く。

 大きな町なので、活気はあるが、何処か乱雑な感じを受けるのは、服を着てるのに、四足で町を走り回る獣人が目立つせいだろうか?

 屋根の上でも、道のど真ん中でも構わず走り回って、たまに人とぶつかって揉めてたりする。

 クラックの説明によると、イヌ族は一旦走り出すと、本能のままに走り回らないと気がすまないらしく、途中で止まれなくなるらしい。

 あと、水溜まりを見ると飛び込まずにはいられないらしい。

 とんだワンコロである。

 人獣はそうでも無いが、風呂よりは水浴びを好むので、この町では公衆浴場よりもプールが多いんだとか。


 そんな習性を活かして作られたのが、いわばドッグレース。

 獣人による速さを競うレースである。

 会場は広い競技場のようで、入ってみるとそこら中で雄叫びや、遠吠えが響き渡る騒がしい場所だった。


 公然と賭けが行われるその場所は、皆が割符と呼ばれる賭け札を持ち、目当ての出場者に声援を送っている。

 とても五月蝿い。

 一人が遠吠えを始めると、周り中が吠えるし!

 思わず遮音のバリアを張ったら撫でられました。

 周りの様子からそろそろスタートするのが分かり、少しだけ音を戻すと、やっぱり五月蝿かったけど、まあ、前世の競馬場もこんな感じだったし、と思い諦めることにした。


 出走者は皆細身の獣人で、四足でスタートを待ってる姿は、服を着てるのが不思議な程。

 犬種は様々。

 詳しく無いので分からないけど、鼻先の長い、しなやかな体型の出場者が多い。

 特に解説とかは無く、スタート位置の前にバーがあり、それが二、三度上下に振られ、完全に上がった時がスタートになる。

 一斉に走り出す出場者。

 飛ぶように走るその姿は、爽快な気分になる。

 躍動する筋肉はしなやかで、力強く地を蹴って、矢のように進む。

 熱狂と野次の声が溢れる中、一番にゴールしたのは頭と首回り、足首と手首にだけモシャモシャと毛のある、プードルの獣人だった。

 ゴールした途端二足歩行で観客にアピールするプードルさん。

 野次と歓声が凄い事に。

 プードルさん、実はあんまり人気が無かった模様。

 賭け札の、犬種の欄だけ見てシャレで買った札が万馬券?万犬券?なんですけど!

 その後のレースも幾つか見て、競技場を出た。

 儲かったのは俺だけでした!

 まあ、最初の一レースしか当たらなかったけど!


 町をブラブラ歩く。

 目立つのは肉屋ではなく、骨屋。

 骨だけ大小様々売ってる店。

 子供も大人も嬉しそうに買っては、ガジガジ齧りなから去っていく。

 他には特に変わった物は見当たらない。

 たまにある井戸の側では、水を汲んではぶちまけて、泥だらけで遊んでる子供達を見掛けるくらい。

 人獣も獣人も、ごちゃ混ぜで遊ぶ姿は微笑ましいけど、近寄りたくは無い。


 さらにブラブラ。

 露店エリアを抜けて、居住エリアに入ったのか、喧騒が穏やかになった。

 走り回る獣人はたまに居るけど、ちゃんと避けられるくらいのスピードになったので問題なし。

 さっきまでは、バリアにぶつかって跳ね返されてる人が多数いたからね!

 見えないバリアなので、物凄く不思議そうな顔をして去って行ったけど!

 たまに子供達が纏まって走ってたり、ご婦人方が談笑してたり、ここだけ見るととても平和。

 散歩気分で歩く中、見覚えのある姿が道を横切って行った。

 何となく目で追っていると、その人が入って行った家から叫び声が!


「エルザ!エルザ!確りしろ!今医者を呼んでくるから!頑張れ!すぐに戻るからな!頑張るんだぞ!!」


 外まで丸聞こえな叫びのあと、バタンとドアを開けて、凄い早さで出ていった巨大な獣人。

 開きっぱなしの家からは、子供達の声。


「お母さん頑張れ!今、お父さんがお医者さん連れて来るからね!」


「おがーさーん、おがーさーん」


 たぶんリルコの励ます声と、レルコの泣き声。

 只事では無いようなので、そっと様子を窺っていると、医者を抱えた隊長が走って帰ってきた!


「エルザーー!!医者を連れてきたぞー!すぐに良くなるからな!確りしろ!そんな傷はすぐ治るさ!お前は強い女だ!頑張れ!」


「五月蝿い!治療の邪魔じゃ!出ていけ!」


 お医者さんも隊長に負けずに怒鳴っている。

 追い出された隊長は、ションモリと家の外まで出てきて、玄関先で膝を抱え出した。

 このまま見てる訳にもいかず、恐る恐るクラックが声を掛ける。


「ええと、ミルコ隊長、大丈夫でやす?」


 ボヤ~っと顔を上げた隊長は、クラックの姿を認めると、ブワッと涙を溢れさせ、タックルするようにクラックの足に抱きつき、


「エルザが!エルザが!」


 と、号泣し出した。

 その声に、外に出てきた子供達まで泣き出して、三人して大号泣。

 どうしたもんかと思ってると、家の中から小柄な人獣が出てきて、


「喧しい!泣いとる暇が有るなら、人獣の街へ行って、治癒魔法の得意な神官の一人も連れてこい!!こんな怪我が薬師のワシに治せるか!!」


 体に見合わぬ声量で怒鳴りながら、号泣する隊長の背中を蹴った!

 全然堪えて無いけど。


「ローレル先生、お久しぶりでやす。そんでエルザさんはどうしたでやすか?」


「お?おお、お主はクラックか?大きくなって!」


 親しげにクラックに声を掛けるお医者さん、


「いや、今はエルザの事じゃの!クラック、お前さん神官の知り合いはおらんか?」


「エルザさんはそんなに悪いでやす?」


「ワシは薬師じゃ、血止めの薬は作れるが、傷を塞ぐことは出来ん」


「なんでまた怪我を?」


「近くにポイズンベアが出ての、子供を庇って負った怪我じゃ。解毒はしたが、傷が大きくての」


 落ち込むように肩を落とす薬師の爺ちゃん。


「そうでやすか、俺っちの知り合いの神官は、治癒魔法が苦手でやす」


「そうか、いや、責めるつもりは無い。なに、エルザは強い女だ、自力で治るさ!」


 あからさまに空元気で言う薬師の爺ちゃん。


「ええと、お話し中すみません、治癒魔法なら使えますので、お手伝いしましょうか?」


 そっと申し出るユーグラム。

 その声にビクッと震える薬師の爺ちゃん。


「お主、本当に治癒魔法が使えるのか?人間族の者かの?」


「はい、今は冒険者をしておりますが、見習い神官の資格は有りますので」


「おおお!それはありがたい!是非とも力を貸して下され!」


 薬師の爺ちゃんにグイグイ押されて部屋に入っていくユーグラム。

 暫くしたあとに、ユーグラムだけ出てきて俺を抱っこしてまた部屋に。


 部屋の中にはベッドに寝てる大柄な女性獣人の姿が。

 この人がお母さんのエルザさん。

 傷が痛むのか呼吸は浅い。

 意識は辛うじてあるが、だいぶぼんやりとしている。


「傷は深く、内臓まで達しているようです。全身にある浅い傷は塞ぎましたが、深い傷は、私では………」


 ユーグラムの説明を聞きながら、エルザさんの体に魔法を通してみる。

 成る程、脇腹から背中に掛けて大きな傷、脇腹の傷が特に深く、背中の傷も深く広範囲。

 微妙に毒も残っていそう。


 それでは治療しましょうかね!

 久しぶりの治癒魔法ですよ!

 まずは、全身に解毒魔法を掛けて、傷全体が見えるように体勢を変えてもらって、脇腹から背中を撫でるように治癒魔法を掛ける。

 薬師な爺ちゃんには、子供が遊んでいるように見えたのか、こらっ!とかおいっ!とか言われたけど、ユーグラムが睨んで黙らせた。

 ゆっくりと手を這わせるように治癒魔法を掛ければ、みるみる塞がる傷。

 背中まで一気に治癒すれば、多少の傷跡は残るけど、傷は完全に塞がった。

 少しすれば呼吸も整ってきて、今はだいぶ穏やかになった。

 体勢を戻す前に、薬師な爺ちゃんに塞がった傷を見せ、俺が治療したことは口止めした。

 なぜなら面倒臭いから!次々こられても困ります!

 あと、誘拐とか考える人がいるとさらに面倒です!

 まあ誘拐なんかされないし、返り討ちにするけど!

 返り討ちは言わないで、誘拐とかの可能性を薬師な爺ちゃんに言えば、納得して黙っててくれる約束をしてくれた。

 エルザさんを仰向けに寝かしなおし、布団を掛けて部屋を出る。


 玄関の外に居る家族に、もう安心な事を伝えると、走って寝室に入っていって、大騒ぎしそうになったので、薬師な爺ちゃんがまた怒鳴ってた。

 もう治療も終わったし、声を掛けても聞こえないようなので、そろそろ夕飯の時間だし宿に行きます。


 クラックへの説明は、ユーグラムが治癒魔法を使って、俺が魔力を補佐した、ってことで納得してました。

 別にクラックには言っても良いんだけど、まあ、本人が怪我でもして、治癒魔法が必要になるまでは黙っとく方向で。

 前に人間の村で普通に治癒魔法使ったら、物凄くしつこく付きまとわれた経験があるからね!


 宿の夕飯は、巨大なTボーンステーキ。ただし、血抜きも筋取りも無いヤツ。

 つまり、固くて臭くて焦げてるヤツ。

 普段なら普通に食ってるクラックさえ、昼に食ったハンバーグを思い出しているのか、微妙な顔。


「お疲れ様で~す、この宿はどうですかね~?」


 出されたステーキを見てるだけで、なかなか食べようとしない俺達に声をかけてきたのは、副隊長と呼ばれてた眠そうな男。


「副隊長、お疲れでやす。この宿は部屋も清潔だし、風呂もついてるし良い宿でやす」


「ん~?その割に食は進まないみたいね?」


「あー、これは、まぁ、昼に旨いものを食い過ぎて、ちょっと躊躇しただけでやす」


「躊躇って、この宿の肉料理はこの町一番なんだけど?」


 困ったような顔で頭を掻く副隊長。

 こっちも何とも言えない顔になる。

 ここ何年かで、肉の血抜きや筋取りもだいぶ広まってきて、人間の町なら、だいたいのレストランでは柔らかい肉を食えるようになって来たんだけど、獣族の町にはまだ広まって無い様子。


「そんなに旨いものを食ったの?」


「あー、あれは生まれて初めての体験だったでやす~」


 思い出したクラックの顔がニヘ~っとゆるむ。


「それは興味深いね!どこで何を食べたのさ?」


 眠そうな目が開いてますよ副隊長!

 食いしん坊か!?


 その後クラックが、ニヘ~っとしたままポロっと、俺達が作った料理が旨かった事を話してしまい、興味の方向がこっちに向いた副隊長に質問攻めにあった。

 その間、食べられずに放置されたステーキを、不信に思った料理人が出てきて話に加わってしまい、何故かステーキを焼く羽目に。

 その前に肉の処理の仕方を教える流れ、と思いきや、肉は既に切り分けて保存されてたので、獲物を狩りに行くことになってしまった!


 何故こんな事に。

 町から出て夜の森を歩く現在。

 副隊長がとんだ食いしん坊で、料理人まで宿をほっぽり出して付いてきてる。

 狩り自体は別に嫌いじゃないけど、のんびりする気満々だったので、ちょっと不貞腐れるのは仕方無いと思うの。


 夜の森は獲物は多いけど危険も多い。

 副隊長は流石と言うか、全く油断の無い体勢で、より良い獲物を探してる。

 料理人は大物を狙ってる?

 俺達は、邪魔な小物を狩っている。

 いや、俺達は何もしてないけど、我がペット達が張り切っている。

 俺を乗せてるので、ソラは不参加だけど、ラニアンが匂いと音で獲物を見つけ、ハクとプラムが仕留めてる。

 ハクさんや、あなたスライム狩り過ぎじゃない?もう二十匹超えてるんですが?

 自分もスライムなのに、同族を狩る事に何の躊躇いもない。

 魔物は同族では無いんですか?そうですか。

 プラムが狩っているのは、主に虫魔物。

 ユーグラムもだいぶ慣れてきたので、そんなに距離を取る事はないけど、小さな声でフフフフフフって笑ってるよ!

 以前一度、希少な虫魔物を仕留めた時に、ディーグリーが大喜びしたのを覚えていて、それ以降積極的に虫魔物を狩るようになった。

 我がペットの中では、一番弱いプラムだが、妖獣なので他の魔物よりは強い。何の危なげもなく、大量の虫魔物を狩っている。

 ラニアンはただ遊んでる感じ。

 見つけたよ!こっちだよ!と、案内するのが楽しいらしい。

 能力はかなり高いんだけど、自分で狩るより、ただ、誰よりも早く魔物を見つける事を楽しんでる。




記念の番外編などが書ければ良いんですが、今のところ忙しさで儘ならないので、続編の一話投稿でお茶を濁してます。

その内何か書けるといいな~?

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4巻の発売日は6月9日で、公式ページは以下になります。 https://books.tugikuru.jp/202306-21551/ よろしくお願いいたします!
― 新着の感想 ―
[一言] 前回の感想の訂正 迷子じゃなくて鉄砲玉でしたね 子供だけじゃ出歩いちゃいけないのに飛び出した 人助けして仇で返されたらたまらないですわな あとやわらか肉ももっと布教しないと積極的に
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