リス町
誤字報告、感想、ブクマをありがとうございます!
たまにフライングしてみたり
おはようございます。
やっぱり霧に霞む町。
朝食を食べに食堂に下りていくと、グッタリとしたクラックが、机に突っ伏していた。
「クラックおはよ~」
「「「「おはよー」」」」
皆して挨拶すると、
「ああ、皆さん、おはよーでやす」
「何だかお疲れだね~?魔法練習上手くいってないの?」
「ああ、いや、皆さんと別れた後は、リヤさん、新しく付けて貰った教師役の妖狐族の姉さんに、練習を見て貰ったんでやす。ただ、あの姉さん、見た目穏やかそうなのに、物凄いスパルタだったんでやす」
「しごかれたのね!」
「でやす。皆さんと別れた後、今朝合格を貰うまで、一睡もしてないでやす」
「おおう!予想以上にスパルタ!」
「まあ、お陰で、狐火は自由に使えるようになったでやす」
「ハハハーー、お疲れ!今日はゆっくり休みなよ!」
「いや、でも皆さんを案内しないとダメでやす」
「まあまあ、俺達は、のんびり町をぶらつくだけだから、特に案内はいいよ~。昨日も特に問題無かったし、そんなに広い町じゃなさそうだから、明日辺り、他の町に行きたいから、明日から頑張って案内してよ!」
「…………そうでやすか?それなら、俺っち、今日は休ませてもらうでやす」
「うんうん、朝食食べたら、ちゃんと寝なよー」
「ありがとうでやす」
お疲れなのか、朝食食べたらフラフラしながら部屋へ戻ったクラック。
妖狐の里で揉まれたのか、微妙に言葉使いも変わってたし、大丈夫?
また俺達は町をブラブラ。
見かけた種族は、ケットシーと言う姿形も猫、でも洋服を着て、人語を解する猫。
何故かソラを滅茶苦茶崇めてた。
そのソラに乗っかってる俺とプラムを、引き摺り下ろし、滅茶苦茶説教してきた。
ソラの威嚇の鳴き声一発で、物凄く謝られたけど。
ケットシーは、弱肉強食の精神が強く、妖獣のソラは、猫界のトップなんだって!
ふふーん、うちのソラは優秀だからね!
ケットシーは、強くなると、妖狐族と同じく尻尾が二股に分かれたりするらしい。
魔力はそんなに多くないので、二股までらしいけどね。
それって、猫又じゃない?
次に見付けた種族は、なんか子供。
俺とそんなに大きさが変わらないのに、やたら素早い動きで、声を掛ける暇もなく隠れてしまったので、話は出来なかった。
昼御飯を食べながら聞いた話では、リトルマンと言う種族で、森の中で暮らす種族らしい。
魔力は少ないが、姿を隠したり、相手を幻惑させて、姿を眩ます魔法は得意なんだとか。
臆病な性格で、偶然にも捕まえたりすると、驚いて死んでしまうこともあるそうな。
そっとしといてあげて!って、食堂のおばちゃんに強目に言われました!
仲良くなると、珍しい木の実なんかを、家のドアの前に置いてくれたりするんだって。
ファンタジーってより、メルヘンだね!
その他の種族には会えなかった。
いないのか、隠れて姿が見えないのかは分からないけど、たぶん、食堂のおばちゃんの様子から、姿を隠してる種族がいる様子。
無理に見つけ出す事もないので、幻獣の町は、今日で最後かな?
その事をおばちゃんに言うと、残念なような、ホッとしてるような、複雑な顔をしてた。
なので本日は、早目に夕飯を食って終了!
おはようございます!
昨日一日寝てたクラックも復活して、今日は幻獣の町を出ます。
そんなクラックは、食堂のおばちゃんに、また来な!ってドシーンと背中を叩かれてた。
入るのは難しいけど、出るのは呆気ない幻獣の町を後にして、近くの町から色々寄ってみる予定。
一番近いのは、リス町だそうです。
街道を一時間程歩くと、木柵に囲まれた町に到着。
冒険者タグを見せて町に入る。
ワサワサです!
町を歩き回る人々の尻尾が、ワサワサ。
中には尻尾の無い人もいるけど、見渡す限り、六割の人の尻尾がワサワサ。
元々小動物だからか、人獣さんでもそんなに体格は良くない人が多いけど、尻尾はデカイ!
体格と同じくらいの大きさの尻尾を、皆さんワサワサさせている。
獣人さん達は、更に体格が小さく、人間の子供くらいの身長。
そしてよく見ると、齧歯類だからか、皆さん前歯が出てる。
ついつい皆して、ボケッと見てたら、
「ああ、珍しいでやすか?初めてリス町に来た人は、皆そうなりやす」
「あ、あー、うん。何だか見たこと無い光景だね~」
「そーでやすねー、でも気を付けた方が良いでやす!あの大きな尻尾は、時に凶器になるでやす!」
「ええ?!あんなに柔らかそうなのに?」
「あの尻尾は、全体重を支えられる程強靭でやす!叩かれたり、掴まれたりは危険でやす!」
「へー、そうなんだー」
「なんなら一度経験してみますか?」
不意に声を掛けられて、全員が驚いて、声のした方を見ると、ディーグリーの胸の高さくらいしかない身長の、美少年が居た。
クリクリのどんぐり眼に、天使の輪が光る茶髪、口も鼻も小さく、チラッとだけ出た前歯。
なんて言うか、美少年。
四男秀太が見てたアニメに出てきそうな美少年が、ニコニコ笑顔で居る。
「よう、ニコラス!今日の当番でやす?」
クラックが軽く声を掛ければ、
「久しぶりクラック!当番じゃないけど、君達を待ってたんだよ!なかなか来なくて、どっかでくたばったかと思ったよ!」
「そんなヘマしないでやす!」
「えー?じゃあ何で僕は三日も待ち惚け食らったのさ?」
「?そもそも何で待ってたんでやす?」
「ジュボーダン様から、近々大事なお客様が行くから、案内頼むって知らせが来たよ?」
「あー、行き先は言ってなかったでやすよ?」
「近隣の町に知らせが届いてるみたいだよ?なのに、どこの町にも行ってないって言うし、もう一日待っても、どの町にも現れなかったら、捜索隊でも出すかって、話になってたよ」
「幻獣の町に居たでやす」
「えええ!入れたの?!」
「そうでやす。何の問題も無くすんなり入れたでやす!そして俺っち、実は妖狐族だったでやす」
「はあ?妖狐族って、女しか生まれないんじゃないの?」
「何十年かに一人とか、生まれるそうでやす」
「えええーー!そうなの?聞いたこと無いんだけどー!」
「そうらしいでやすー。お陰で、狐火教えて貰ったでやすー」
「え?え?妖狐族なのに、魅了とか習わなかったの?」
「男の妖狐族は、魅了じゃなくて、精神操作の魔法が使えるらしいでやす」
「へー!それはまた厄介な!」
「ジュボーダン様に迷惑掛けられないでやすから、それは習ってないでやす」
「あーまー、そうね。妖狐族ってだけで、未だに警戒する年寄りは多いからね!」
「そうでやす、無駄に問題を起こしたくないでやす」
「りょーかい!まあ僕は言いふらしたりしないよ!それより、こちらの方々を紹介してよ!ジュボーダン様のお客様なんでしょ?普通の冒険者に見えるけど?」
「今は普通の冒険者やってます、グリーです!よろしく~」
「ユーグです」
「タスクだ」
「アールだ」
「ケータでつ!」
「ああ、初めまして!リス町警備隊長のニコラスです!今日は、皆さんの案内役を致します!」
「ああ、敬語はなしでお願いします、普通に冒険者扱いして下さい」
「ジュボーダン様のお客様ですよね?」
「力が有るのは親なんで!俺等はただの駆け出し冒険者ですから~」
「……………うん、わかった!そう言うの嫌いじゃないし!」
含みを持たせたディーグリーの言葉は、正しく理解されたようで、い~い笑顔で了承され、敬語も無くなった。
見た目美少年は、警備隊長だけあって、ただの美少年ではないらしい。
「さて!じゃーどこ見たい?」
「リス町の特産とか、名物とか見たいです!」
「うん、うちの特産は、なんと言っても木の実の種類の多さだね!ただ、収穫時期とはずれるから、見てもただの森だしねー、露店は多いから、そっちを紹介するね!名物、ってのは特に無いかなー?」
「あれは?ミソの実!ラバー商会の依頼で育て始めたって聞いたでやす」
「あれもまだ試験栽培だから、名物って言える程ではないよー」
「へー、ミソの実はリス町に頼んでるんだー?」
「うん、去年から試験的にね。ただ、アマテ国とは微妙に味が違うから、販売出来るかは微妙?」
「不味いでやす?」
「うーん、どうなんだろう?ミソの味自体良く知らないし?」
「あじみしゅる?」
「ええ!持ってるの?!貴重な物でしょ?」
「今はそんなに貴重って程でもないよー!」
結構売り歩いたからね!
「へー、人間族では結構広まってるのかな?」
「俺も売り歩いてるしね!」
「?冒険者なのに?」
「冒険者は副業で、本業はラバー商会の行商です!」
ディーグリーが、自慢気に商会紋の入った行商札と呼ばれる鉄板を見せると、
「へー!若いのに、ラバー商会の行商を任されてるって凄いな!成る程、だから味見ね!それは是非お願いしたいね!」
「了解でーす!」
「じゃあまずは、去年収穫した実の保管庫に行こうか!」
ニコラスを先頭に町中を歩く。
ニコラスは警備隊長だけあって、人気者で、色々な人に声を掛けられては、色んな物を貰ったりしてる。
そして何故か俺も、やたらと菓子を貰う。
笑顔でお礼は言いますよ!でも、食える菓子は一個も無いですよ!
山盛り貰った菓子をバッグに詰めていると、
「お菓子は嫌い?」
ってニコラスに聞かれました。
「しゅきよー、れもー、かったいおかちは、はーないなる(好きよ、でも、固いお菓子は、歯が無くなる)」
「んん?」
「あー、ここの菓子は、ケータでは、歯が立たないんです」
アールスハインのフォローに、
「ああ!人間族の赤ちゃんですもんね!リス族とは違いますよね!」
「ああいや、ケータは突然変異の妖精族です」
「へえ!初めて聞きました!まあでも赤ちゃんには違いないですからね、ごめんねー、この町には、柔らかいお菓子は置いてないんだよー、何せ僕らは、歯が頑丈だからね!」
ちょっとすまなそうな顔で言ってくるニコラスに、曖昧な笑みで返す。
そうですね、リスって、クルミを自力で噛み砕く生き物だものね!
後になって試してみた所、人間族では、リス町の菓子は誰も食えませんでした!
クラックでもギリギリだった!
リス族恐るべし!
すみません、書き方が下手なせいでちょっと勘違いをさせてしまったようですが、旅に出た後辺りからは、其々の呼び方を冒険者風に、アール、ユーグ、グリー、タスクとしています。
タスクがタスクなのはケータがずっとそう呼んでたからです。




