表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/313

5日目

 おはよーございます。

 今日は朝から生憎の雨模様です。

 何時もの様に柔軟体操をした後は、シェルに長袖シャツと、サスペンダー付きハーフパンツに着替えさせてもらって、何時ものメンバーと朝食を取り、魔法訓練の為に部屋から出ると、知らない男がノックの体勢で突っ立っていた。


「ティタクティス、遅かったな!」


「ハイン王子、遅くなり申し訳有りません。少々面倒な事になりまして、事情を話したいので、後程お時間を頂けませんか?」


「ああ、構わないが…………」


 アールスハインと親しげに話す男を眺めてると、何故か無性に懐かしさを感じるのは何故だろう?

 身長はアールスハインの方が2、3センチ高いが、体の厚みは男の方があり、髪はソフトモヒカン、目は細いがそこそこ男前な顔…………?目が細い?


「たしゅきゅー?」


「あ?ハイン王子、いつの間に子供なんてつくっ?…………………………………………けーた?」


 意識して発した言葉では無かったが、男は俺を見て、その目に強烈な既視感を覚え、この世界では少々違和感のある発音の名前呼びを、前世で呼ばれていたのとピッタリ同じ音で呼ばれて、確信した。

 途端、アールスハインの腕から飛び出し、男の顔面に張り付いてやった。


「たしきゅー!なんでーでかいにょー!あんときおちててったの、いちてたかー!(助ー!なんででかいの!あん時落ちてったけど、生きてたかー!)」


「おう!恵太!アハハハハハ!何でお前縮んでんだよ!アハハハハっお前、甥っ子と同じ顔してんじゃねーか!甥っ子よりちっせーし!」


「たしきゅはおちょこまえーなってよかっちゃらー、めーほしょいままらけろー!アハハハハハ(助は男前になって良かったなー、目は細いままだけど!)」


「「アハハハハハハハ!!」」


 2人で向かい合って爆笑していると、「んんっ」て咳払いが聞こえて来て、見るとアールスハインとシェルが、とても不可解そうな顔で俺達を見てた。


「2人は、知り合い、なのか?」


 疑問一杯のアールスハインの問い掛けに、シュタッと姿勢を正し、俺を片手に抱えたまま、


「失礼しました!ハイ、えー、知り合いです。その事も含め、話を聞いて頂いた方がいいと思いま」


「2人は知り合いなんだな?」


 食い気味に確認してくるのに、つい、助と見つめ合ってから、アールスハインに頷いた。


「シェル」


 アールスハインが一声掛けただけで、意図を理解したシェルが、足早に去って行った。


 取り敢えず部屋に入り、ソファーに座る。

 無言のアールスハイン、俺は助に抱えられたまま。

 数分で帰ってきたシェルが、


「お会いになられるそうです」


「分かった、ティタクティス、ケータ移動して話を聞こう」


 それだけ言って先に歩きだしたアールスハインについて行くと、見慣れた部屋。

 ドアを開けても見慣れたメンバー。

 しかし、途端に助が緊張して固まりだした。


「どちたー?」


 顔をペチペチしてやると、


「バッカおまっ、この国の天辺の方々だぞ!緊張しねーわけねーだろ!こんなに間近に会うのなんか、一生に一度有るか無いかなんだぞ!」


「まーにちあってりゅよ?」


「まーにち?毎日?は?何それ拷問?緊張し過ぎて死ぬわっ!」


「しんじょーぎゃノミにぇー(心臓が蚤ねー)」


「いやいやいや!お前の心臓に剛毛が生えてるだけだから!俺が普通だから!」


 ブフッて声に振り向くと、シェルが腹を抱えてバイブモードになっている。

 前を向けば、アールスハインが苦笑して、他の面々は不可解そうな顔をしている。


「あー、まぁ何やら事情が有りそうだが、説明の為にも先ずは座ったらどうだ?」


「ももも、申し訳ありましぇん!」


「かんだ」


 グフッ、シェルはバイブモード継続中。

 助はほんのり顔を赤くして、


「お前ちょっといいから、黙ってて!」


 俺に小声で注意して、姿勢を正すと片膝をつき、


「失礼しました、私は………」


「いいから、お前の事は皆知ってるから、先ずは座れ、そして落ち着け」


 アールスハインの言葉に、他の人も頷いてるので、礼をしてからアールスハインの隣に座る。


「それで、ハイン王子、今日は何事が有りましたか?」


 宰相さんの声で仕切り直し。


「ティタクティスが予定より一週間遅れて、先程戻ったのですが、ケータと知り合いの様子、ティタクティス自身何か事情が有る様だったので、皆さんにも聞いて頂いた方がいいと考えました」


「成る程、今朝戻った者が、五日前に現れたケータ殿と知り合う機会は無かった、が、先程のやり取りから見ても、2人は知り合いの様子。ティタクティス、ケータ殿、説明をして貰えるだろうか?」


 宰相さんの纏めに、助が緊張して言葉が上手く出ないので、


「じぇんしぇーのおじゃにゃにゃじみ(前世の幼馴染み)」


 と簡潔に説明してみた。


「んん?それは、異なる世界で、と言う事だろうか?」


「しょー」


「時間が合わないように思うが?」


「たしきゅーが、とちゅーはじかりたー」


「恥かいた?」


「めぎゃみーの、ひかりのみちかりゃ、はじかりたー」


「女神様の光の道から弾かれた?」


「ウム、分からん!ティタクティスよ、お前から話せ!何やら以前と気配も変わっている様子、その辺の事情もな!」


 将軍さんにバッサリ切られた。

 声をかけられた助はビクッと体を震わせた後、


「は、あ、えー、おれ、いや私は………」


「おちちゅけー」


 アールスハインの膝の上から、隣に座る助の腿を軽く蹴ってやると、


「わ、分かってるよ!えー、事情と言いますのは、単刀直入に申し上げますと、五日程前に鬼属の覚醒が有りまして、それと同時にぼんやりとしていた前世の記憶が戻りました。

 その事で親父、いや、父が大変興奮して、突然私を当主に据える、等と言い出し、兄達とかなり揉めまして、同時に魔の森から魔物の襲撃があり、その対処に追われ、やはり覚醒した鬼属の力は、想像以上なもので、少々、感覚を掴むのに時間がかかりました。

 私は、当主になる気はサラサラ無く、その事を兄達にも伝え、先ずは鬼属の覚醒を城に報告する事が最優先であると、父を説得し、急ぎ戻りました。魔物の後処理の為、父からの正式な報告は、後程となります。

恵太とは、前世の幼馴染みです」


 うんざりしたような顔で報告した助に、


「あー、先ずは、鬼属の覚醒おめでとう、当主云々の話は、辺境伯が来たらまた話すとして………………前世の記憶と言うのは、君自身も異なる世界で、死亡した後この世界に来た、と言うことだろうか?辺境伯にはその事も?」


 宰相さんに質問された途端、ビクッとする助。


「いえ、父には鬼属の覚醒の事のみ話しました。前世の記憶等と言っても父は理解しないでしょうから」


「成る程、辺境伯は少々頭の固い所があるからな………五日前と言うのは、ケータ殿と聖女様が降臨した日。当然関係は有るだろうな。

 酷な事を思い出させるようで悪いが、君が前世で亡くなった時の事を聞いてもいいだろうか?それとこの世界に来た時の状況も」


 宰相さんに声を掛けられる度に、ビクッとする助が面白くて、足でツンツンしてたら、アールスハインに向きを変えられた。


「はい、えー、私が死んだのは、恵太が死んでから一月後位で、恵太の葬式の後、会社、あー、この世界で言う商会に勤めていた私達は、商会と揉めていまして、恵太の事故も働きすぎによる過労も一因で有ると、商会に認めさせ、揉め事の処理が終わり、同僚達と恵太を偲んで呑んだ帰りに、恵太の事故があった歩道橋に行ったら、トラック、いや、私も事故に遇いました。

 それで、死んだなー、と思ったら、空から落ちて誰かを巻き込んで更に落ちて、白い世界に着いたら、恵太がいて、女に難癖つけられて、魔法で吹き飛ばされて、空から落ちて、光の穴に落ちて、途中俺だけ弾き出されて、気付いたら今の俺でした」


「ウム、やはり分からん!兎に角2人は別々に死んだのに、一緒にこの世界に来たって事か?ケータ殿は、一月の間何をしていた?」


 この世界では通じない事も多くあるので、つっかえつっかえの助の説明も、将軍にバッサリ切られた。


「たびゅん、くもにうまっちぇた(たぶん、雲に埋まってた)」


「くも?」


「しょー、かみしゃまのしぇかいのくも(そう、神様の世界の雲)」


「神の世界とは雲の上に有るのか?」


「しゃー?そりゃとくもちかにゃかった。あと、かみしゃま(さー?空と雲しかなかった。あと神様)」


「女神様に会ったのか?」


「ぎゃりゅおちん(ギャル男神)」


「ぎゃりゅ?」


「おとこのかみしゃま」


「女神様の配下の神か?」


「?どっちかっちゅーと、うえのかみしゃま?」


「………………女神様の上級神?聞いたことが無いが、まぁひとまずそれは後で聞くとして、その神の世界の雲とやらに、一月も埋まっていたのか?」


「じきゃんは、わかんにゃいけろー、かみしゃまとはなちちてるとちに、たしゅきゅがうえかりゃおちててた」


「神様と話してる時に、ティタクティスが上から落ちてきた?」


「しょー」


「……………神の世界ともなれば、時の早さが違う事も有るだろうが、ティタクティスはその男性神とは会ったのか?」


 将軍さんの声にもピクッとしてから、


「いえ、私は恵太が言ったように、ただ落ちただけなので、何かを巻き込んだ感触以外は分かりませんでした」


「……………女神様には会ってないのか?」


「たびゅん、おりぇとたしゅきゅをぶっとばちたのが、めぎゃみー」


「ぶっ飛ばす?」


「あー、恵太が埋まってた雲の更に下に、雲で出来た部屋?の様なものが有り、そこに居られたのが女神様かと。

 私と恵太が突然落ちて来た事に、お怒りになったのか、その御力で、私と恵太は吹き飛ばされました」


「…………………何と言うか、理由も聞かずに吹き飛ばされたのか?」


「めっちゃきりぇてた」


「?めっちゃ?きりぇ?」


「酷くお怒りのご様子でした」


「…………………女神様とは、慈悲深い方のはず、何か失礼な事でもしたのか?」


「おちたらけー」


 将軍さんの言う女神と、俺達の見た女神には随分とギャップが有るらしい。

 全然萌えないけど。

 この世界の宗教の位置付けがどうなっているのか分からないので、下手な事は言えないけど、ギャル男神曰く、クソバカダ女神らしいので、あまり期待しない方が良いと思うよ。

 微妙な沈黙の中、


「失礼致します、国王、教皇猊下が至急のお目通りを、と、申されておられます」


 ザ・執事なデュランさんが、王様に言った。


「用件は?」


「女神様に関する事だと、詳しい事はお会いしてから話されるそうです」


 今まで女神について話していた所に、教会のトップが登場。


「わかった、皆も来てくれ」


 王様に言われたので、皆で移動。


「ハイン王子、俺もですか?このメンバーに教皇様まで加わったら、俺の心臓が止まりそうなんすけど!」


「ティタクティス、仕方あるまい、お前も当事者の一人だ」


「あー、心臓の前に胃がぶっ壊れる!」


 助は、前世でも会議やプレゼンの前には、胃薬をラムネのように食うやつだった。

 却って胃を壊しそうだったので、一度中身をミントタブレットに代えてやった事があったが、緊張し過ぎて全然気付かなかった。

 会議後に「からっ!」と、大騒ぎしてるのを、皆して笑った記憶がある。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4巻の発売日は6月9日で、公式ページは以下になります。 https://books.tugikuru.jp/202306-21551/ よろしくお願いいたします!
― 新着の感想 ―
[一言] あぁ… ここで堕ちた神か精霊が後々のアレなのね?( ̄▽ ̄;)
[一言] ティタクティス!! ……やべぇ、成人してかなりになるけど、俺、言えんわ(;^ω^) そしてとうとう友人と合流か。とりあえず良かった!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ