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フェンリル視点 非常に下品

誤字報告、感想をありがとうございます!

『ブワーッハッハッハッハッ!アッハッハッハッハッ!ハッハッハッハッ、グフー、グワッハッハッハッアッハッハッハッハッ!…………………』


『おい、確かに前代未聞の珍事であるが、笑い過ぎだろう!グフッ、ククククク………』


『グッフ、貴様とて笑いを堪えきれておらぬだろう!グフッ、グワーッハッハッハッハッ!』


『まあな、クククク、それにしても愉快な生き物にされたものだククククク、性根の醜さが滲み出ておるクククククク…………………』


『ブワッーハッハッハッ!違いない!鼻が曲がりそうだ!グフッアーッハッハッハッ……………』


『クククククク、して、元女神の成れの果てを確認したところで、そなたは我が子を迎えには行かぬのか?』


『アハッアハッ、ヒーー、フハッ、まだ体が癒えておらぬし、我が子は今、聖獣にはあり得ぬ早さで急激に成長しておる。様々な経験と共にな。これを妨げるは親として出来るものでは無い。なに、聖獣の寿命は長い、いずれ共に暮らせれば構わぬ』


『そう言うものか?我が身を損ねる程必死に守った命だろう?』


『当然だ、親だからな!だが我が子は今、命の危険の欠片もない場所で、安全に真っ直ぐに成長しておる』


『まあそうだろうな。あの小さき聖獣は、下級神にも匹敵する魔力を持ち、しかしそれを決して破壊には使おうとしない。これ程穏やかな聖獣も稀有なものよ』


『ああ、あの小さき聖獣は、異なる世界から来たそうだ。穏やかな世界から来たのだろう』


『本人の性質も大いにありそうだがな?』


『それはどうだろう?』


『と言うと?』


『あの元女神への処罰を見るに、ただ穏やかな性質でも無さそうだが?グフッ、アッハッハッハッハッ』


『クククククク、それは確かに!ただ殺すのでは無く、世界中から嫌われるように仕向け、更に丈夫で長生きとは!ククククク、己の行いを省みさせるとはな!ククククク』


『アッハッハッハッハッ!只者ではない!おい、見ろ!奴がドラゴンに食われたぞ!』


『クククククク、小さき聖獣の話では、糞となって出てくるらしいぞ!クッククックックッ』


『糞とな!アッハッハッハッハッ!こりゃ傑作!是非見物しようぞ!アーッハッハッハッハッ!』


 聖獣にははっきりとした寿命は無い。

 聖輝石が酷く損傷すれば、消滅する場合もあるが、その力故に滅多に損傷どころか傷が付くことさえないからだ。

 聖輝石が無事であれば、時間は掛かるが何度でも復活する。

 故に世界にも数体しか存在しない。

 フェンリル、フェニックス、麒麟、青龍、玄武、エンシェントドラゴン。

 今居るのはこの六体のみ。

 いや、新たに小さき聖獣が加わった。

 聖獣は、世界の魔力を循環させる存在である。

 世界の各地にある聖域にて呼吸をするように魔力を世界に循環させる。

 これは神に与えられた使命である。

 が、あの小さき聖獣は、少々他の聖獣とは違うようだ。

 聖獣の生まれ方は二通りあり、まず聖輝石を神から与えられ、聖域にてその形を徐々に形作っていき、しっかりと形を成して初めて聖獣である意識を持ち、使命を理解する場合。

 それとはまた別に、長い年月を生きた聖獣の力が体に満ちた時に、その聖輝石から溢れるように生まれた新たな聖輝石に命が宿る場合。

 後者の場合は、力の満ちた聖獣と同じ形を取り、その聖獣が導き手となり己の使命を伝えていく。

 聖獣は基本、聖域で魔力を循環させるだけで必要なエネルギーを得られるので、他の生き物のような食事や休息を必要としない生き物だが、あの小さき聖獣は、人としての生活が身に馴染み過ぎているので、不必要な食事や睡眠を取り、より力を蓄えている。

 それは我が子にも言える事だが、我が子は正に成長途中、与えられるエネルギーは、純粋な聖獣の聖魔法であることも、急激な成長に繋がっている。


 聖域は時に神々の界と交わり、その折には神々の語らいの場に遭遇し、招かれる事も希にある。

 神々の語らいの場では、世界の事、力の事、生き物の事などが語られるが、この世界に新たに任命された若い女神が世界を動かしだして暫くの後、世界に穴が空いたと言う話があった。

 すぐに塞がった穴は、当時は偶然として片付けられ、それ程の問題とは思われなかった。

 若い女神は世界を良く観察し、より良くするために異なる世界の様子も良く観察して、聖獣を集め、魔力の循環の様子などを報告させた。

 我もその呼び出しに応じ、形を定めたばかりの我が子を連れて女神の元に参じた。

 女神は我が子をいたく気に入り、側にと所望されたが、それは聖獣の使命に反する行為であるため丁重に断った。

 途端、怒りを露に神力を使って我から我が子を奪い、我の口を塞ぐ為か、神力でもって攻撃を仕掛けられた。

 長い年月を生きた聖獣とは言え、神力には敵わず、我は聖輝石を損傷し意識を飛ばし下界に落とされた。

 気付いたのは我が肉体を食らおうとする魔物の群れが、我が周りを取り囲んだ時だった。

 損傷した聖輝石では上手く魔力を集められず、ろくな反撃も出来ずに命からがら逃げ延びて、聖域に辿り着いた我は、暫くの間気を失うように眠りに落ちた。

 次に気付いたのは、世界が揺れるような気配の後に、ずっと追っていた気配が神界から消えている事を感じ取った時だった。

 我が子を奪った憎き女神の存在が、神界から消え、我が子の気配が地上から感じられる。

 だが我が子の気配は、酷く歪められ、苦痛に喘ぐように何かを訴えている。

 急いで行かねば、それしか考えられず、周りの状況や、女神の存在等には目もくれず我が子の元へ急いだ。

 我が子の悲痛な気配を辿って、怒りのままに目の前にある建物を薙ぎ払い、我が子を探す。

 見付けた我が子は酷い有り様だった。

 呪いと瘴気と失われて久しい暗黒魔法に苛まれ、今にもその存在を失いそうな有り様。

 長い年月を生きてきて、これ程の怒りを感じたのは初めてだった。


『貴様等が我が子を害したのか!』


 聖獣の咆哮には力が宿る。

 我を忘れて放った咆哮は、我が子すら巻き込み近くに居た者に向かった。

 気付き慌てたが、我の咆哮はあっさりと防がれた!

 しかもそれを防いだのは、年端もいかぬ人の赤子。

 我が子共々バリアの内で、呆けた顔で見上げてくる。


「わがきょ?」


 声までも幼い。

 その姿に虚を突かれ、我も少々正気付き、改めて問い質すと、我が子を使って魔王を作り出そうとした女神の企みを知った。

 一気に気が削がれ、力を使い過ぎた体に意識を失いそうになったが、最後の気力を振り絞り、我が子に力を分け与えた。

 見たこともない聞いたこともない小さき聖獣を前に、虚勢を張って見せたが、既に体は限界だった。

 小さき聖獣に害意は無く、一時的に我が子を預け、聖域にて眠りについた。


 浅い眠りの中、如何に元女神へと復讐しようかと思案するなか、聖域に覚えのある聖獣が現れた。


『久しいな、フェンリルであるそなたが、それ程弱るとは、長く生きてきて初めて見たぞ?』


『フェニックス、そなたも一度力を失い掛けたと、風の精霊に聞いたが?』


『ああ、元女神と共に落ちた下級神が、精霊に落とされた時に力を奪われた』


『力を取り戻すのが早いな?』


『ククク、偶然会った小さき聖獣に力を分けて貰えたからな』


『小さき聖獣とは、人の赤子姿の?』


『よく知っているな?精霊に聞いたのか?』


『いや、実際に会った』


『ほう?』


『元女神の企みで、取り上げられた我が子を失いそうになったところを助けられた』


『あの元女神が奪ったそなたの子か?』


『そうだ。元女神は、我が子の聖輝石を使って、魔王を造ろうと企んだのだ』


『それでよく助かったな?』


『小さき聖獣のお陰だ』


『……………あの小さき聖獣は何なのだ?下級神並みの魔力を持ちながら、力を使うことにはなれておらず、その姿もいとけない赤子の姿。しかし魂の形は成長仕切った者のそれ、あのような存在を我は知らぬ』


『我も知らぬ。しかし小さき聖獣の魔力は濁りも無く、清浄であった』


『ああ、それは確かに』


『だから暫しの間、我が子を預けた』


『ああ、あの小さき聖獣なれば、子の成長には最適だろうて』


『ああ。見たこともない速度で成長しておるわ』


『ククク、それは楽しみな事だ。そうそう、楽しみと言えば、とても愉快な話がある』


『ほう?』


『クククク、彼の元女神が、人間に落とされた事はそなたも知っておろう?』


『ああ』


『あの元女神は、人間に落とされてもなお、傍若無人な振る舞いをして、とうとうあの小さき聖獣に制裁を加えられたぞ!ククククク』


『そんな事が可能なのか?落とされたとは言え元女神だろう?』


『新たな神から神器まで授けられ、その武器をもって制裁を加えたらしい。ククク』


『?それの何が愉快なのだ?確かに迷惑な存在が消え失せたのなら、多少は溜飲が下がるが』


『ククククク、消え失せてはおらぬな!クククククお主も一度見に行けば、意味が分かろうて!クククククク』


『なんだ?そなたがこれ程笑うとは?』


『クックックッ、案内しよう!ほれ、尻を上げろ!』


 フェニックスは何時に無く笑いながらヒラリと飛び上がった。

 興味を引かれた我もその後に続く。


 案内されて着いたのは、ファイアドラゴンの住みついている火山の火口。

 意味が分からず首を傾げていれば、


『ほれ、よう見てみろ、ククク、あのマグマの中で蠢いている物を』


『マグマの中?うむ、確かに奇妙な物が浮かんでおるが、直に溶け消えるだろう?』


『ククククク、それはどうかな?なにせあれは、小さき聖獣の制裁を受けた元女神の成れの果てだ!ククククク』


『なに!?なぜあのような様になった?』


『ククク、あの小さき聖獣は、奴を綺麗に消すよりも生かす事を選んだのだろうククク』


『成る程。しかし、それにしても、あの姿は…………………ブフッ!』



 そして冒頭に戻る。


『ほれ見て見ろ!ドラゴンが糞をするぞ!ブフッ、アッハッハッハッハッ!』


『ククククク、見えておるわ!この為にここに留まっておるのだからな!クックックッ』


『おうおうおう!長い糞じゃ!そして臭い!グワッハッハッハッ!』


『クックックッ、あのファイアドラゴンが奴を呑み込んだ時の顔も見ものだった!』


『アッハッハッハッハッ!あれは傑作だった!日頃暴れ回る魔物の暴君が!悶え苦しみ転がり回っておった!グワッハッハッハッ』


『そして三日三晩苦しんで、やっと糞として出てこようとは!アッハッハッハッハッ!』


『グフッグフッ、ほれ出てくるぞ!グフッ』


『ほれいきめいきめ!もう一息!』


『グワッハッハッハッ!ほら、出てきたぞ!アッハッハッハッハッ!』


『おうおう、臭い臭い!これは耐えられぬ!クックックッ!』


『あああ臭い!臭いぞ!更に臭くなった!アッハッハッハッハッ!鼻が曲がる!』


 二匹の聖獣の笑い声は、糞から這い出した元女神がその場を去るまで続いた。


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4巻の発売日は6月9日で、公式ページは以下になります。 https://books.tugikuru.jp/202306-21551/ よろしくお願いいたします!
― 新着の感想 ―
ケータさんの異常なまでの強さ、下級神並みだったのね、強いはずだ~~(*´▽`*)
[良い点] あー。笑ったー。下品だけど! ↓ ホントにドラゴンさん、不憫w
[一言] あの…一番の被害者はドラゴンさんでは…
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