三年新学期 魔法大会
誤字報告、感想をありがとうございます!
おはようございます。
魔法大会当日です。
今日の天気は薄曇りです。
今日も着ぐるみをきせられました。
真っ白な着ぐるみ。
ラニアンですな。
腹のポケットにラニアンをイン出来る仕様。
インするとそっくりな色で見分けがつかぬ。
ソラはアールスハインの肩に、ハクはシェルの頭の上、プラムは俺以外で一番先に懐いた助が抱っこしてる。
俺は腹にラニアンをインして、魔道具で飛んでます。
その状態で食堂へ行けば、ユーグラムが心底羨ましそうにこっちを見てくる。
シェルが笑いながら頭の上のハクを手渡せば、モニモニしながら無表情で喜んでおります。
朝食を食べ、ディーグリーと分かれ貴賓室へ。
貴賓室の前で、イライザ嬢と弟のクリスデールと会ったので挨拶してそのまま一緒に貴賓室へ。
今日の応援は、王様、王妃様、イングリード、教皇猊下に宰相さん。
イングリードが来たので将軍さんはお留守番。
今日の本選にはイライザ嬢が出場するからね!
各々に激励を貰って、またもや王様にパスされ、皆を見送った。
ーーガガーンガーンガーンーー
銅鑼がなって貴賓席に移動。
剣術大会と違って派手な魔法が飛び交う。
去年の大会を見ていた多くの出場者が、攻撃魔法とバリアを併用しようと頑張っている。
一年生で本選まで残ったのはクリスデールだけ。
優秀な子のようです。
拍手してたら宰相さんに撫でられました。
撫で方上手いね?抱っこも慣れてたし、良きパパなのですね!顔怖いけど!
クリスデールも善戦したけど三年生には敵わずに敗戦。
勝ち残ったのは、アールスハイン、ユーグラム、イライザ嬢と見たことのある三年生女子が二人と見たことのある二年生女子一人。
ディーグリーと助は残念ながら敗退。
ディーグリーはクラスメイト二人に挟み撃ちされ、助はイライザ嬢に吹き飛ばされてた。
昼食に招待されたクラスメイトと元クラスメイトの女子三人はガッチガチだったけど、イライザ嬢と王妃様が気を使って話し掛けてたら、食事が運ばれる頃には大分落ち着いてた。
午後からの準々決勝は、三対三の二戦。
三年生女子と二年生女子とユーグラムが戦い、アールスハインとイライザ嬢、三年生女子が戦う。
ーーガガーンガーンガーンーー
銅鑼がなって出場者が舞台に上がる。
貴賓席に向かって一礼すると距離を取ってお互い向かい合う。
審判の始めの合図で、全員が一歩踏み出したタイミングで、
ブーブーブーブーブーブーブーブー
学園中に警報音が鳴る。
その場の人間が全員警戒体勢を取るなか、魔法大会用に普段より弱められたバリアが、上空でバリバリバリと破られ、何やら人形をした黒い靄の塊がゆっくりと舞台の上に降りてきた。
舞台上に居たユーグラムと二人の女生徒と審判は即座に避難して離れた場所で警戒している。
舞台上に降りた黒い靄の人形は、聞き覚えのある甲高い声、だがなぜか二重に重なったような声で、
「「今こそ怨みを晴らそう、わたくしへの無礼、私への非難、わたくしへの屈辱、私への不当、全ての怨みを思い知れ、そしてわたくしの前に平伏せ、私に許しを乞うがいい!」」
そう言うなり黒い靄が会場中に広がり始めた。
靄に触れた途端、靄はウニョウニョになり、女性達は肌が爛れ、男性は酒に酔ったようなトロンとした顔になり、黒い靄の人形にウットリとした目を向け始めた。
「…………これは、呪いと言う名の毒と魅了ですね!ケータ様、お力をお借りできますか?」
教皇猊下がきっぱりと断言して魔法を使い始めた。
慌てて教皇猊下の魔法を真似して、後押しするように浄化の聖魔法を会場中に広げる。
そこここでバチバチとスパークする呪いと浄化、力は拮抗しているようでも、ややこちらが優勢。
徐々に広がる浄化の範囲に焦ったのか、靄の濃度がどんどん濃くなり、対象が男性にのみ絞られていく。
肌の爛れが治まり、浄化されて平常に戻った女性が、黒い靄にウットリしながら近寄って行こうとする男性陣を次々拘束していく。
貴賓席の面々は呪いや状態異常を防ぐ魔道具のお陰で正気のまま、咄嗟に張った俺のバリアは貴賓席の範囲にしかないので、戦闘態勢でバリアの外に一歩出たイングリードの魔道具がパリンと罅が入ってしまったので動けなくなった。
呪いの効力が貴賓席付近は強いよう。
俺は浄化を優先してるので手が出せません。
その間にも女性陣の拘束から逃れた男性陣が、続々と舞台上に上がり、取り付かれたような顔で黒い靄の人形に群がり始めてる。
「「わたくしの下僕達、私に屈辱を与えた敵に制裁を!!」」
黒い靄の命令に、男性陣は正気を失ったような目を女性達に向け、戦闘態勢を取る。
さてどうしたものかと考えていたら、ダダダダダと舞台上に駆け上がる二つの影、戦闘態勢の男性陣をあっと言う間に薙ぎ倒し、黒い靄の人形を、挟み撃ちで殴り飛ばした
呆気なく飛ばされた黒い靄の人形は舞台から落ち、踞るように動けなくなっている。
殴り飛ばした二つの影は、片方は成人女性よりもやや体格の良い、水色の髪をポニーテールにした頬に傷のある女性、もう一人は金髪ツインテールの少女。
一年間のダイエットの旅に出た、この国の第一王妃ロクサーヌ様と、第二姫アンネローゼだった。
二人は各々剣とモーニングスターを手に、黒い靄の人形を睨み付けている。
「フフフフ、男性陣には危険そうなのでここでお待ち下さい。ではわたくしも行って参りますわね!」
場違いな明るく弾む声で告げて、バリアから軽やかに出て行ったのは第二王妃リィトリア様。
ドレス姿のその後ろ姿を呆然と見送る男性陣。
第二王妃リィトリア様は、観客席との段差など物ともせずに飛び降りて、ロクサーヌ様とアンネローゼの間に立った。
やっとその頃になって立ち上がった黒い靄の人形は、舞台上に立つ三人を見て言葉にならない金切り声を出し、一気に黒い靄を三人目掛けて吹き出した。
当然庇うよね!三人の動きを阻害しないように体に沿った柔らかいバリアを張る。
バリアに気付いた三人が、揃って敵から目を離す事なく右手を軽く上げる。
なんかカッコいい!
それからは敵は黒い靄をウニョウニョに変えて、鞭のように使い攻撃、ロクサーヌ様は剣、アンネローゼはモーニングスター、リィトリア様は、な、なんと扇子で戦った!鉄扇ですか?!
一番激しい攻撃をしているのはロクサーヌ様、アンネローゼの攻撃は一撃一撃が重い。
だが一番相手にダメージを負わせているのはリィトリア様!!
普段はおっとりと微笑んでいる穏やかな人なのに、戦い出したら強かった!
ヤバい!カッコいい!!
どんどん削られる黒い靄、やがてその本体が姿を現したが、それは、予想通りでもあり、予想外でもあった。
その姿は、既にその地位を剥奪された元第二王妃のクシュリア。
だがその顔に、元聖女の顔が二重写しになってダブって見える。
何がどうなってその姿になったのかは分からないが、醜く歪んだ二つの顔が時々入れ替わるように表面に出たり消えたりする。
酷く不快で不安を煽り、不気味な姿に言葉も出ない。
激しい攻防の末、クシュリアと元聖女の合成物は、黒い靄のほとんどを剥がされたようになり、動きも散漫になってきた頃、
「何をしている!さっさとこの会場を支配しろ!そのために力を与えてやったんだからな!私の最高の頭脳が作り上げた最高傑作を使ってやっているんだ!モタモタするな!」
甲高い、だが男の声での叫びに、そちらを見れば、ローブで全身を覆い隠した男が、会場の隅で大声を張り上げていた。
その足元には冒険者の装いの男がボロボロになって転がっている。
あれは探してた魔道具師だろう。
転がってんのはAランク冒険者のスコラウス?随分ボロボロになってるけど。
ローブ男の言葉に反応したのか、一層靄が濃度を増して、三人の王族に襲いかかる。
バリアの強度を上げて、聖魔法を強目に送ると、バリア表面がバチバチとスパークする。
お構いなしに三人はクシュリアと元聖女の合成物に攻撃を加え、程なくして行動不能になったクシュリアと元聖女の合成物。
舞台の下で踞りブスブスと煙のように黒い靄を体から吹き出すだけで動けなくなった。
「何をしている!ふざけるな!私の最高傑作がそんな女三人に敗れるわけが無いだろう!立て!私の命令を聞けーー!グガッ」
甲高い声で唾を飛ばし怒鳴っていた男が、突然奇声を発し倒れた。
良く見れば、ボロボロで倒れていたスコラウスが、短剣でローブ男の脇腹を刺していた。
倒れた途端ローブ男から転がり落ちた何かが、スコラウスから魔力を吸って、黒い靄を吹き出した。吹き出した黒い靄はクシュリアと元聖女の合成物に送られ、ブスブスと燻っていた黒い靄が、合成物を強化したように黒いバリアを形作った。
脇腹を押さえ這いずって転がり落ちた物を拾おうとするローブ男。
後数センチの所で、ガチャンと潰された。
「キュエエエエエエ!わた、わたしゅの!わたしゅの最高傑作があああああ!!」
気が触れたように叫びのたうつローブ男。
ローブが乱れ、現れた顔は窶れてはいるが美女と言って良い程整った顔で、それ以上に呪いに冒されおぞましい顔だった。
魔道具だろうそれを壊したのはアンネローゼのモーニングスター。
鎖でつながるトゲトゲの鉄球が、一撃で魔道具を破壊した。
黒い靄の供給源が壊れた為か、張っていたバリアはロクサーヌ様の軽い突きで壊れ、中からは正気を取り戻したのか、憎々しげに王妃二人を睨むクシュリアの顔。
「なぜ!なぜ!なぜなの?!なぜわたくしだけがこんな目に!お前達のような雌猫が、わたくしのジュリアス様を惑わすせいで、わたくしはこのような惨めな姿にされたのよ!お前達のような売女がいるせいで!わたくしは!わたくしは!」
「ブフゥ、ギャハハハハ!売女?雌猫?そりゃお前だろうよ!今まで自分の寝室に何人の男を連れ込んだ?王様に相手にされねーもんで、侍従のガキにまで節操なく手を出しといて、今さら被害者面すんなよ!俺だって金を積まれて仕方無く相手してやったろー?テメーの息子だって誰のガキか分かりゃしねーくせに!ギャハハハハ!ゲホッグハッ」
被害妄想のクシュリアに反論したのはまさかのスコラウス。
公衆の面前で浮気を本人にばらされたからか、黒い靄でスコラウスに攻撃したクシュリア。
「そんなことはどーでも良いのよ!それより私の乙女ゲーは?逆ハーでウハウハなチヤホヤの生活は?!どうしてくれんのよ!何よこの体!ババァに乗っ取られてブヨブヨのシワシワじゃない!私のピチピチでスベスベで華奢で守ってあげたくなる、最高に男受けする体を返しなさいよ!」
今度出て来たのは元聖女。
言ってる内にどんどんヒートアップしてきたのか、黒い靄が濃くなってローブ男をいたぶるように触手を伸ばして叩きまくる。
ローブ男はもう瀕死。
その頃になってようやっと会場の浄化がすんで、競技場と観客席をバリアで隔離出来た俺は、フヨッと飛んで強い強いバリアで、クシュリアと元聖女の合成物を閉じ込めた。
「おまえりゃのはなちはちゅまんねー」
「まあ!ケータ様!流石!可愛い!!」
アンネローゼに久しぶりにギュウギュウにハグされましたが、今が命の危機です!
慌ててアンネローゼから引き剥がしてくれたリィトリア王妃様の腕の中でゼイゼイしております。
「ああ!ケータ様ごめんなさい!つい、久しぶりで興奮してしまって!」
「アンネローゼ、いつも言っているだろう?何時如何なる時も冷静な心を持たねば、敵に不意を突かれると!」
「申し訳ありません!師匠!ケータ様の愛らしさに我を忘れました!」
「それは分かるが、加減と冷静さは忘れるな!」
「はい!」
なんだろうかこの緊張感の無いやり取りは?
本人達はとても真剣な顔をしているが、酷く場違いである。それは他所でやるべきだろう。
なんだか酷く微妙な気分になってる間に、他の人達はちゃんと仕事をしていたのか、ローブ男とスコラウスは速やかに捕縛され、クシュリアと元聖女の合成物は、更に複数人のバリアで包み、バリアごと運ばれて行った。
学園長の声で、魔法大会は中止になった事を告げられ、体調がおかしい人は治癒魔法を無償で掛けるので、会場外のテントまで来るようにと放送された。
ゾロゾロと会場を出ていく観客を見てると、王様達が舞台上まで上がってきて、王妃様達とアンネローゼを心配してる。
教皇猊下がクシュリアと元聖女の合成物がいた場所を念のため浄化して、他に呪いの痕跡等がないかを確認してる。
遅れてアールスハイン達も来て、学園長とテイルスミヤ長官とカイル先生も来た。
王様が怪我人の被害を聞くと、多少魅了にやられた男が数人、肌の爛れが気になるご婦人が数人、転んだ人が数人だけで、大した被害はなかった様子。
教皇猊下と俺の浄化が迅速だったお陰だと凄く感謝された。
その後はお城に帰ってまずはローブ男とスコラウスの治療と尋問。
アールスハイン達は学生なので、気にはなるだろうけど冬休みまで後十日も無いので、それまでは普通に学園生活をしとけって事になった。
元女神の動向も気になるしね。
奴は今回、全く表に出て来なかったので、関連を調べる事から始めないといけない。
クシュリアを匿っている筈の奴が無関係とかはあり得ないから、証拠を探さないとね。
あと、キャベンディッシュの出生の秘密とかもね。
今、調べると大変な騒ぎになるので、これも冬休みに持ち越し。
と言うことで、暫くはお城にも帰らずのんびり過ごします!




