三年新学期 3
誤字報告ありがとうございます!
おはようございます。
今日の天気は快晴です。
今日から演習の始まりです!
何時もより早く起きて食堂で朝御飯を食べたら、馬車に乗ってダンジョンへ行きます。
馬車の揺れはブランコを吊るして何とか凌ぎました。
女性騎士科の生徒にキャッキャされました。
今回は何時ものメンバーにシェルだけ別行動。
一時間半程で到着したダンジョンは、巨大な砦の様でした。
冒険者タグを見せて中に入ると、巨大な穴の入り口があり、その入り口には多くの冒険者と騎士達が居ました。
騎士科の生徒は一班ごとに騎士が一人付き、三年Sクラスの生徒の班には冒険者が一人引率?に付きます。
俺達の担当はなんとルルーさんでした!
他の班はCランクかBランクの冒険者なのに、何故俺達の班はAランク冒険者なのか?まあ、ルルーさんならテントの事もバレてるし、気を使わなくて良いけどね!
列に並んで受付を済ませいざダンジョンへ!
外から見た時はただ暗い穴に見えたけど、中に入ると意外と明るかった。
壁の所々にボンヤリと光る石があり、そのお陰で視界は悪くない。
ただし空気はあまり良くない。
思わず顔をしかめていると、
「ハハ、チビッ子には空気の違いが分かるか?浅い層の空気はあんま良くねーだろ?五層より下に行けば普通になるからそれまで我慢な!」
ガシガシ頭を撫でられた。
「そんでよ、お前らの実力なら一気に十階層くらいまで行けるんだけど、どうする?そこまで行けば、獲物の取り合いも減るし、邪魔しようとする冒険者も減るが?」
「そうだな、十層くらいまでなら特殊個体も少ないと聞くし、行ってしまうか?」
「異存はありません」
「い~ですね~!」
「十層くらいまでは、獲物の取り合いが面倒だからな!」
「んじゃ決まりで!ボードでひとっ飛びしようぜ!」
全員の意見が一致したのでサクッと進みます。
天井は五メートルくらい高さがあるので、前を歩く人達の頭上をスイッとね!
騎士や学園の生徒はたまに飛んでる姿を見られてるので、それ程驚かないようだけど、冒険者の人達の驚き様はちょっと愉快だった。
まあそれもルルーさんが軽く手を振るだけで解決してたけど。
慣れた道なのか、ルルーさんを先頭にスイスイ進んで十層に到着。
十層から下に降りるにはダンジョンボスと言われるボスを倒さないといけないらしい。
ボス用の特別な部屋があり、ボスを倒すか、ボスに倒されるかしないと出られない部屋なんだって。
大体のCランク冒険者は、ここで躓くらしい。
ここを無事に越えられると、ほぼBランクに昇格出来るそうな。
十層のボスはモス。森でも会ったね。
森のモスとは違うのは色。森のモスは燻銀色だったけど、ダンジョンのモスは茶色。
特殊個体ですか?と思ったら、モスは強くなる程色が濃くなり大きくなるそうです。
確かに今目の前に居るモスは、森のモスより一回り小さいような?
森でも一度狩っているので、ユーグラムが状態異常を掛けてサクッと狩りました。
固さもそれ程でもなかった様子。
俺はただ見てただけで終了。
ダンジョンと言うのは特殊な場所で、狩った獲物は部位を残して消える仕様になっているらしい。それをドロップ品と言うそうです。
ゲームでも聞いた事のある単語ね?
モスのドロップ品は、角と皮と肉。
肉。肉の塊が、ドドンと巨大な皮の上に載っている。
「にきゅ」
思わず呟けば、
「…………………モスのドロップで肉が出るなんて聞いたことねーけど?!」
ベテランAランク冒険者のルルーさんでも、初のドロップ品らしいよ?
「グフッ、ケータの食欲に反応したんかね?」
皆に笑われました。解せぬ!皆だって食欲は旺盛だろうに!
まあ、血抜きの必要もない高級肉を手に入れられたので、文句は言いませんよ!
ボス部屋の隅には、転移部屋と言う小さな部屋があり、この先に進まない人は、転移部屋で登録した後、何かしらの宝石を置いて魔力を流すとダンジョン入り口の横にある転移部屋に瞬間移動できるらしい!凄くね!?
是非とも使われている魔法陣を見てみたいところ!
意気込んで転移部屋に入って、魔法陣を見てみたが、理解出来ない言葉でした!言葉って言うか模様?複雑に絡み合った図形に模様が書かれてる。俺が理解出来ないだけで、言葉なのかも知れないけど、理解出来ねば書けぬ!残念!
登録は簡単で、魔力を流せば済みました。
瞬間移動とか夢があって良かったのに、出来ないことに少し不貞腐れてたら、ボス部屋を出た途端にホームランされました!
バリアがあるので無傷だし、なんなら自動反撃してるので、相手にダメージ食らわしているんだけど、物凄く驚いた!
そして自分をかっ飛ばした相手を見たら、なんと!冒険者のおっさんだった!
その手に持つ棍棒は折れ曲がって、冒険者のおっさんの指が何本か折れて、おっさんは痛みに呻いてるけど!
「ギャハハハハ!ざまーみろ自業自得だ糞アバド!おい!隠れてんだろ?さっさと出てこねーと、この糞アバドを更にメコメコにすっぞ!」
ルルーさんが吠えております。
かっ飛ばされた俺からは、扉から少し離れた曲がり角に隠れている糞アバドと呼ばれたおっさんの仲間らしき奴等が丸見えである。
最初、かっ飛ばされた俺を見て驚いた顔をしていた奴等は、すぐにおっさんアバドの方に向き直り、俺には完全に背を向けている。
そりゃそうだ、簡単にかっ飛ばされる幼児を、強いと認識する奴は中々いない。
ルルーさんの様子から見ても、あまり性質の良くない奴等だと予想がつく。
ならばやることは一つ。
マジックバッグから取り出した魔道具に魔力を流して、奴等目掛けて投げるだけ。
ブワンと空気を震わすような音の後、四人居た奴等は厚く頑丈な布で、ミイラのようにグルグル巻きにされて転がった。
口と目だけは辛うじて出ているものの、魔法を撃とうとしてた奴も、剣を構えてた奴も弓で狙ってた奴も一切身動き出来なくなった。
「グフッ、出てくる前に倒されてやんの!ブフゥ、ギャハハハハ!」
ルルーさん爆笑しております。
それを呆然と見てたおっさんアバドは、急に暴れだし、不意を突かれたルルーさんを転ばせた。
すかさず助に捕らえられてたけど。
流石に助も騎士団で訓練を受けているだけあって、捕縛はお手の物なのか、どっかから出した紐でおっさんアバドを縛りあげた。
起き上がったルルーさんが、おっさんアバドを引き摺って、こっちに来て五人をまとめると、
「さて、お前ら、覚悟は出来てんだろーな?このままギルドに突き出せば、お前らの冒険者人生は終了だ、それだけじゃねー、今まで運良く捕まってなかったが、調べられりゃーボロボロ余罪が出てくんだろーな!そうなりゃ奴隷落ち確実だな!」
「ちょっと待ってよルルー!私はなにもやっちゃいないわ!このチームにだってつい最近入ったばかりだし!ねえ、私だけでも解放してよ!」
ミイラ状態の中の唯一の女性が、ウゴウゴしながら訴えているが、彼女を見るルルーさんの視線はとても冷たい。
「馬鹿か!このチームの評判の悪さは冒険者なら誰でも知ってるだろう?それにも関わらずチームに入ったお前が、何もしてないわけねーだろ!お前が駆け出し冒険者をカモにして、散々金を貢がせた挙げ句、借金奴隷に落とした事は有名なんだよ!」
「そんなの馬鹿な男共が悪いんじゃない!ちょっとすり寄ってやれば鼻の下を伸ばして、勝手に貢いで来たのよ!私は悪くないわ!」
「へー、そこのアバドと組んで美人局してたのも有名だが、それもお前は悪くないのか?」
「あ、あれは、アバドに無理矢理やらされてたのよ!」
「はあー?ふざけんな!テメーがうまい話があるから協力しろって言って近付いて来たんだろうが!」
「はん!知らないね!そんな証拠は無いだろう!」
「このアマ!」
醜い罵り会いを制したのは、ルルーさんの静かな声。
「うるせーな、お前ら全員の同罪だろうが、ギルドに突き出すのは決定事項だっつーの!」
そのままルルーさんの手によって引き摺られたアバドは、何とか逃げようと踠いたが、抵抗虚しく引き摺られて行った。
アールスハイン、ディーグリーが一人づつ、助が二人を引き摺ってルルーさんの後を追う。
俺とユーグラムは周りの警戒。
出てきた扉を潜れば転移部屋。
そこにミイラ状態の四人とアバドを重ねて置いて、動けないように更に拘束、入り口を見張る兵士か出入りの管理をしてるギルド職員に向けて軽く説明の紙を付ける。
ちゃんとアールスハインとルルーさんの署名を入れて。
兵士ならばアールスハインの名前が、ギルド職員ならルルーさんの名前が効果を発揮して、事細かく調べてくれる事だろう。
一仕事終えて、 また扉を出たのだが、何だか勢いを削がれてしまったので、取り敢えず休憩所に向かう事になった。
出てくる魔物を狩りながら進む。
十階層の魔物は主に動物系。
狼に兎にたまに熊、どれもかなりな大きさだが、森にいた魔物よりは弱い感じ、状態異常を掛けなくても難なく狩れる。
そして漏れ無く落ちる肉。
何故か俺の食欲のせいにされて、ドロップするたび笑われる。
一時間もせずに到着した休憩所、事前に調べた通り水場は二ヶ所?小川のような細い川があるだけで、区切られているわけでもない。
高低差があるので、高い方で水を飲み、低い方で用を足す感じ。
仕切りもないただの小川を跨いで用を足すのは、抵抗無いのだろうか?
まあ俺には必要ないし、なんならテント内のトイレもある。
小川は常に一定の流れがあるので匂いが籠る事もない。
ダンジョン入ってすぐの場所よりは、空気も正常に近い。
休憩所の広さは教室くらい、今は俺達以外に一組だけ。
なんかやたらとグッタリしている彼等は、驚く程軽装で荷物も少ないが、大丈夫なんだろうか?マジックバッグ持ってんの?
冒険者は基本、自分と仲間達以外との接触を嫌う。それは様々なトラブルを回避する為に仕方の無いことで、よっぽどの事でもない限り守られる基本的なルールである。
だが実力のある冒険者で、お人好しなルルーさんは、疲労困憊であり得ない軽装な彼等をほっとけなかったらしく、俺達に待機を命じた後、警戒しながらも彼等に声を掛けた。
「よー、ちょっと聞きてーんだけど、なんでお前らそんなに疲れてる上に、荷物少ねーの?」
声を掛けられて初めてルルーさんに気付いたかのように驚く彼等は、
「ああ!あんた、Aランクの迅風だろ?頼む!助けてくれ!俺達アバドの奴等にやられて、荷物を全部奪われちまったんだ!」
「あー、お前ら被害者かよ?アバドの奴等なら、さっき転移陣に乗せて入り口に送り返したぞ?」
「そりゃありがてえ!だが俺達、武器も取り上げられて転移部屋までどうやって行こうかって途方に暮れてたんだよ。何度か素手での戦闘を試したんだが、ラビットくらいなら何とかなるんだが、ウルフやベアーには全く敵わなくて、休憩所から出られなくなっちまって、悪いんだが、予備の武器を持ってたら売ってくれないか?使い捨てる寸前の物でも構わないから!金が足りなければ、ここを出た後にギルドを通しての支払いでも構わねー!頼む!」
アバド達が倒された事に喜びと安堵の表情になった彼等は、ルルーさんに武器を売ってくれと頼んでいる。
ダンジョン内での商売は違法ではないけど、同じ商品でも外の値段の倍以上が相場になる。
更に深い階層に行けば、更に三倍なんて事も。
危険な場所での商売なので上乗せされてしまうんですね!食料品なんかは五倍が相場。
ってな事をディーグリーがこそっと教えてくれるのを聞きながら様子を見てれば、ルルーさんがこっちに来た。
「あー、奴等はわりと顔の知られたBランク冒険者のチームで、悪い噂は聞かない奴等だから、武器を売るのは構わないんだが、俺は予備の武器を持っちゃいねー、奴等に売っても構わない武器を持ってる奴はいるか?」
「俺は模造剣は何本か持っているが、それじゃあ役に立たんだろう?他はちょっと障りがあるし」
王子の持つ武器ですね!高い奴ですね!
「私はそもそも武器と呼べる物を持っていませんし」
棒は鈍器だけどね!
「あー、短剣なら何本か売ってもいいけど?」
ディーグリーの言葉に、Bランク冒険者の一人が喜んでいる。短剣使いですか?
流れで皆の視線が俺に向けられたので、以前森の肉狩りの時に拾った、オークの斧をそっと出してみた。
「お前さんが装備するには無理があるんじゃないか?なんで持ってた?」
ルルーさんが呆れた顔で聞いてきたので、
「もりでひどった(森で拾った)」
「ああー、オークの斧か!」
合点がいった様子。
なので彼等は短剣を何本かと、オークの斧を通常価格の倍の値段で買ってった。
オークの斧を持ったリーダーが、ちょっとヨロヨロしてたけど大丈夫?
三メートルの筋肉ダルマが持ってた斧だからね。頑張れ!




