三年新学期 2
誤字報告、感想、ブクマありがとうございます!
おはようございます。
今日の天気は曇りです。
新学期が始まって六日目の朝です。
昨日の放課後にお城から帰還命令が下り、翌日朝一で急遽お城に帰って来ました。
緊急の帰還命令なんて、アールスハインも初めての事らしく、ちょっと慌ててボードを飛ばしてお城に帰ったら、満面の笑みを浮かべたリィトリア王妃様とクレモアナ姫様が出迎えてくれました。
その時点で俺は悪寒を感じたのですが、アールスハインには伝わらなかった様子。
シェルと助はうっすら気付いたのにね!
二人に連れられて王様の執務室へ向かうと、王様さえ何の事か知らされていなかった様子で、アールスハインの帰還に不思議そうな顔をしていた。
同室に居た宰相さんも同様に。
「……………それで母上、私達を呼び出した理由をお聞きしても?」
「ウフフフフフ!惚けちゃって!驚かせようとしたのかしら?」
「フフフ!サプライズが下手ね~」
「フフフ、そんなところも可愛いけれど、ドレスに付けるにはそれなりに事前の加工が必要なのよ!本当に驚かせたいのなら、わたくしを味方に付ければ良かったのに!そうすれば、飛びきり豪華な装飾に仕立ててあげたのに!もう、本当に不器用なんだから!自分の時には、ちゃんと事前に相談なさいね!」
それはそれは嬉しそうに王妃様と姫様が会話しているが、一体何の事を言っているのかが、ここに居る男性陣にはサッパリ分からない。
「…………………母上、さっきから何の事を話されているのですか?サッパリ分からないのですが?」
「そうだぞリィトリア、クレモアナ、二人だけで通じる話をされても、何の事か分からん」
王様の同意に不思議そうな顔をする二人。
血は繋がってないのにその表情はそっくりである。
「なにって、惚けているのではなくて?」
「……………リィトリア母様、本当に惚けているのではなく、この顔は分かっていない顔ですわ」
「ええ!では本当にあれだけしか無いってこと?どうしましょうもうマダムに注文を出してしまったわ!」
「リィトリア母様、もう注文を出されたのですか?!それは早すぎますわ!まだ数も確認していませんのに!」
「ああ、わたくし興奮してしまって、ちょっと先走ってしまったわ。今から断りの連絡をしてくるわね」
「ちょっとお待ち下さい!まずは正確な数の確認が先ですわ!」
「え?ああそうね!」
なにやら二人でこそこそ話した後に、グリンとこっちを見た二人。
その勢いにアールスハインが一歩下がった。
「さあ!アールスハイン、ここに例のものを全て出しなさい!数を確認しなくては!」
フンスとばかりに鼻息荒くテーブルを示す王妃様。
「………………ですから母上、さっきから何の事を言っているのですか?サッパリ分かりません。例の物とは一体何の事ですか?」
いまいち噛み合わない会話に、困惑した声で言うアールスハイン。
他の男性陣も分かっていない様子。
そんな男性陣を見て、クレモアナ姫様が、
「本当に分かっていないようね?私達が言っているのはパールの事よ、一昨日の晩餐の後に、料理長から料理に使った貝の中からパールを発見したから確認してほしいと見せられたのよ。それは見事な真円のパールだったわ!そしてその出所はケータ様だって言うじゃない?何故報告しなかったの?」
困惑顔で全員に見られる俺。
「パーリュって、そんなにだーじ?(パールって、そんな大事?)」
前世ではわりとポピュラーな宝石だったよ?妹も持ってたし。
「……………………………………成る程、ケータ様はパールの価値を知らなかったのね?」
「そうなのかケータ?」
「しょんなにきちょー?(そんな貴重?)」
「ええ、その辺の宝石等目じゃ無い程に貴重で希少ね!」
王妃様が迫力ある笑顔で答える。怖い!
成る程、この世界の真珠は、魔物から偶然取れる希少な宝石なのね?前世では人工飼育が普通だったから、そんなに貴重で希少とは知らなかった。まあ前世でも高額ではあったけどね!
「それでケータ様、パールはまだあるのですか?」
「ありゅよー」
演習前の一週間は、準備期間なんだけど、俺達は肉狩りの時の装備やテントなんかをそのまま使うので、特に準備するものも無く、アールスハイン達は訓練に明け暮れた。暇な俺は、お城から料理長を呼び出して、海での海産物の処理と料理に明け暮れた。
特に大量にある貝の処理が大変だった!巨大だし!俺が丸ごと中に入れるくらいの大きさの貝って!貝柱もバスケットボールくらいあるし!その貝の中には、パールの入った貝もあった。
でっかいパールが一個だけとか、小さい粒が大量に入っているのとか、貝によってバラバラだったけどね。
料理長は、料理に夢中でパールの希少性を教えてくれなかった。
蟹とか海老とかの新食材に夢中だったせいもある。
なのでパールは大量にあります。
マジックバッグからパールを取り出す。
でっかいボールのようなパール、粒々なパール、変形したパールを一度にゴソッとね!
テーブルに乗りきらず、コロコロ転がり落ちるパール。
「「「「「…………………………………」」」」」
一同無言。
「だちたー、こででぜんぶー」
「「「「「…………………………」」」」」」
更に無言。
なにさー、出せって言うから出したのに、皆さん無言で固まって、誰も動き出さない。
仕方ないので転がり落ちた巨大パールを、テーブルの側まで転がして来た。
絨毯は敷いてあるが、その下は石床なのでゴロゴロと転がるパールの音だけが部屋に響く。
「ああああ!ケータ様ダメよそんな事をしては!パールに傷が付いてしまうわ!」
一番の先に我に返った王妃様が、俺ごとパールを回収した。
それ凄く重いのに、王妃様力持ちね?
中身のみっちり詰まったパールは、ボーリングの玉より重い。
片手に俺、片手に重い巨大パールを持ってる王妃様。なんかシュールね!
「…………………これは、凄いな?」
王様の感想はそれだけでした。
宰相さんはまだ固まってるし。
シェルと助といつの間にか部屋に居たデュランさんが、落ちたパールを回収してる。
クレモアナ姫様は、なんかブルブル震えてる。
「凄い!凄いわケータ様!これだけあれば二人分の婚礼衣装に存分に使ってもまだ余る程だわ!」
キャーっと悲鳴のような歓喜に震えるクレモアナ姫様に、ブチューっとされました。
「いえ、それは!わが娘の婚礼衣装にまでパールを使って頂くのは!」
「もう大体のデザインは決まっているの!そこにこのパールを惜し気もなく飾り着ければ、我が国の権威を示せますわ!しかも、同時に婚礼を挙げる花嫁二人が仲の良い様を見せ付ければ、付け入ろうとする輩への牽制にもなります!素晴らしい!ケータ様感謝いたします!」
そしてまたブチューっとされました。
俺の頬っぺたは既に真っ赤です。
宰相さんも、姫様の興奮した声に逆らえる筈もなく、無言になってた。
更に女性二人は、デザイン違いのドレスに、同じ飾りを着けるには、どんな風に飾るのが良いかの話に移ってしまったので、男性陣は口を出せません。
来週末はイライザ嬢を呼び出して、更に案を練るそうです。
女性二人はそれはそれは生き生きと話しながら部屋を出て行った。
デュランさんが中心になってパールを片付けて、シェルが皆にお茶を淹れた。
何だか女性陣の勢いに押されて、グッタリする男性陣。
「ケータ殿、あのパールを全部出してしまって良かったのか?」
王様に聞かれたけど、特に使い道もないので、
「いーよー、ケータつかーないちー」
温く答えた。
「ああまあそうだろうが、して、金額が幾ら程になるか?」
「?ただよ?拾ったらけらし」
「いやいやいや、それはあまりにも!」
「かい、たべたかったらけらし(貝、食べたかっただけだし)」
「いやしかし!」
「んじゃーおいわいってことでー」
「流石に貰いすぎだろう?!」
「えー、もとはただよー?」
「いや、そうだとしても!」
「ケータおかねいっぱーもってるち」
「ううーん」
王様が考え込んでしまった。
結論から言うと、元々貝の副産物扱いで、特に必要でも無かった物なので、格安で売ることになった。
幼児からただで譲られるのは、王様的なプライドに関わるのかね?もしくは国の威信とか?よく分からんけど、格安とはいえパールなので、また結構な金額が俺の懐に入ってしまった。
使わないのに!
シェルが言うには、裕福な伯爵くらいの資産を持ってるらしいよ?なにそれ怖い!
お昼に料理長特製の海鮮料理を食って学園に帰った。
帰る前に見送りに来てくれた王妃様と姫様に両方からブチューっとされて、イライザ嬢への手紙を預かった。
午後はストレス?発散の為に訓練をしたよ!
訓練用人形を改良して怒られたけど!
イライザ嬢への手紙は、お城への呼び出しだったらしい。
急な呼び出しに慌ててたけど、事情を話したら、気絶しそうになっててこっちも慌てたけどね!
誤字の指摘が細かくて、やる気を削ぎませんか?的な、ご心配を頂きました。
いえ、全く有りません!
ブクマを貰えばオオオとなり、評価を貰えばヒャーッとなり、感想を貰えばニヤニヤが止まらなくなります。
誤字の指摘を受ければ、自分の迂闊さに凹みますが、細かい所まで目を通してくれている事に感動するばかりです。
これからもよろしくお願いします。
いや、誤字が無い事が一番なんですがね!………はい、頑張ります!




