三年新学期 1
すいません遅れました!
誤字報告、感想をありがとうございます!
おはようございます。
今日の天気は雨です。
新学期一日目です。
今日は教室で席を決めたら、講堂に行って学園長の挨拶を聞いた後は、一学期一杯続く演習の班決めです。
この辺は去年もやったので大丈夫。
着替えて朝食を食べに食堂へ行けば、何時もの様に食堂中央に不快なカップル。
それをスルーして隅の席に行くと、ユーグラムやディーグリー達と共に、朝食も食べずに佇むイライザ嬢と弟のクリスデール。
認識阻害のバリアを張ったまま近付くと、突然現れた様に見えたのか、バリアの範囲に入った途端姿が見えた俺達に、クリスデールがウワッと短い悲鳴を上げた。新鮮な反応ですな!
イライザ嬢は笑顔でこっちを見てるけど。
婚約式から縦ロールを止めたイライザ嬢は、とても清楚な令嬢に見える。
本人はキツそうな見た目と違って、いたって穏やかな、たまにツンとするだけの可愛らしい令嬢なんだけどね!
「皆様おはようございます!あの、実はご相談があって…………」
もじもじしながら上目使いでこっちを見る姿は、元女神とは違って、媚や打算や欲望が無い分より可愛く感じるね!
「おはようイライザ嬢、朝食がまだなら一緒にどうだ?」
とアールスハインが同席を促せば、話を聞いてもらえることにほっとしたのか、笑顔が更に明るくなる。
「ではお言葉に甘えて」
と席に着けば、クリスデールも軽く会釈してイライザ嬢の隣に座る。
相談の内容を聞かない様にか、ユーグラムとディーグリー、助とシェルは隣のテーブルに着いた。
俺達も席に着いた所で、昨日思ったことの実行。
マジックバッグから取り出した、認識阻害の魔道具な靴の中敷きをクリスデールに差し出す。
「くりしゅでーる、はいどーじょー」
いきなり渡された物の意味が分からず、戸惑って受け取らないクリスデール。
困ったような顔で、
「え?ええと、それは何ですか?」
「まあ、ケータ様!わたくしの相談内容が分かっていたのですか?」
「んう?」
「あの、相談したかったのは、クリスがキャベンディッシュ殿下と一緒にいらっしゃる彼女に、頻繁に絡まれる事についてなのです。昨日、クリスは雨の中佇んでいる彼女に声を掛けてから、どこに行っても現れて、何かと絡まれるそうなんです。なので出来れば以前わたくしが頂いた、認識阻害の魔道具をお譲り願えないかと思いまして、相談に参りましたの」
「「「「「「あー」」」」」」
結局隣の席に座ってた面々にも話の内容は伝わって、全員が納得の声を上げてしまった。
「クリスは彼女に興味は無いのだな?」
一応、アールスハインがクリスデールに確認すれば、クリスはコクコク首を縦に振り、
「なんと言うか、彼女は令嬢にしては距離が近すぎて、物言いも何かを勘違いしているような事ばかり、私には理解できません」
困惑の多分に含まれた声と顔でそう言うので、
「なら、ケータの渡した魔道具を受け取ればいい。移動の時に発動すれば絡まれる事も減るだろう」
「あ、有り難うございます!」
やっと俺から中敷きを受け取ったクリスデール。
「ケータ様、ありがとうございます」
イライザ嬢にもお礼を言われました。
「いーよー、いっぱー持ってるち」
その後はイライザ嬢から使い方を説明されながら、クリスも一緒に朝食を食べて、食堂を出る時に早速発動。
態と元女神のすぐ近くを通って食堂を出たが、相手に気付かれなかった事に感動したのか、笑顔で何度もお礼を言われた。
問題解決して何よりです。
クリスと助とシェルと別れて教室へ。
既に殆んどの生徒が教室に居て、なにやら揉めている様子だったが、挨拶して席に着く。
三年生になっても、身分が一番高いのはアールスハインなので、アールスハインがさっさと席を決めて、次にイライザ嬢、ユーグラムが席を決めて、席に着こうとしたら、なんだか派手で意地悪そうな令嬢と、根性悪そうな令息の二人を先頭に、何人かの生徒が近寄ってきた。
「おはようございます、アールスハイン殿下、下位の者から声を掛ける失礼は、クラスメイトと言う事でお許し下さい。私はロッコリー・シールズ、侯爵家嫡男です。こちらの美しい令嬢は……」
根性悪そうな令息が紹介しようとしたのに、ズズイっと自ら前に出て、
「ごきげんようアールスハイン殿下、わたくしはガブリエラ・トマスティーでございます。侯爵家の長女ですわ!」
「ああ、二人ともおはよう。それで、俺に何か用事が?」
「いえいえ、ただのご挨拶です。新しくクラスメイトになられた殿下に、いち早くご挨拶に参っただけで」
「ええ!これからクラスメイトとして、わたくしとも是非!仲良くしてくださいましね!」
「ああ、まあよろしく」
アールスハインの気の無い返事にも、満面の笑みで答えるガブリエラ嬢。
まさに肉食系令嬢!アールスハインを見る目がギラギラしてる。
その後、一応身分が上のイライザ嬢とユーグラムにもおざなりに挨拶して、二人は去っていった。
周りに居た生徒は、軽く頭を下げる程度で、自己紹介もしなかった。
「見事に視界から締め出されたね~」
「ね~、にゃかよちのこーを、じゃけんにされたら、きぶんわるーのにねー(ね〜、仲良しの子を、邪険にされたら、気分悪いのにねー)」
「その辺まだまだだね~、明らかに仲良くしてるのが分かってるんだから、一応声くらい掛けとけば、印象が全然違うのに~」
「みぶーんたかくて、じぶーがえらいと、かんちがーちてるのねー(身分高くて、自分が偉いと、勘違いしてるねー)」
「んでも、嫡男って事だから、あのまま大人になる可能性は高いよ?」
「しょ、それは、りょーみんがくろーしゅるねー(それは、領民が苦労するねー)」
「そ~かもね~、今も結構な税金取られてて、他の領地に移りたいって人は多いみたいよ?ギリギリ違法じゃないから、国も動けないって話だし」
「Sくらしゅらから、そこそこゆーしゅー?」
「ん~、でも剣術大会でも、魔法大会でも、特に目立った結果は出して無かったと思うよ~?」
「しょんたく!」
「ぶふっ、忖度って、難しい言葉知ってんね~?」
「まえのしぇかいで、はやってた(前の世界で、流行ってた)」
「なにそれどんな流行り~?」
「せーじかかんけー」
「成る程!どこの世界も色々あるよね~」
「にんげーらからねー」
見事にスルーされた俺とディーグリーが、緩く話してる間に、クラスの席が決まって、Sクラスの中では唯一の平民なディーグリーの席も決まった。
誰も座りたがらなかったアールスハインの前の席。
アールスハインの隣はユーグラムで、斜め前にイライザ嬢、前の席にディーグリー。
仲良しで固まった。
まあ、他の席でも同じような状態だけどね。
ロッコリーの周りも、ガブリエラ嬢の周りも、一緒に居た取り巻き達が囲んでるし。
席が決まって程なくして、我らが新担任の童顔眼鏡なチチャール先生が、教室に入ってきて、その顔に驚愕の表情を表した。
なにごと?
「お、おはようございます皆さん。ええと、もう席が決まったのですね?今年はまた随分と早い」
席がすんなり決まって驚いているようです。
何時もはもっと揉めてたのね?
誰もが無言で知らん顔するので、チチャール先生も何も言えなくなって、そのまま注意事項を告げるだけになった。
「それでは皆さん、講堂へ移って下さい」
チチャール先生の声で、其々が立ち上がり移動を始める。
俺達は何となく最後尾を歩っていたんだけど、更に後ろにいたチチャール先生が、何か考えながら、
「………成る程カイン先生の言っていた事は、こう言う事だったのか?ええ、それなら今年の僕ってば楽できる?胃薬がいらない?!ええ、ほんとに?!」
ブツブツしてます。
バッチリ聞こえてるけど、ディーグリーが笑いを堪えてて、ユーグラムが密かにフフフってしてる。
アールスハインは振り向きはしないけど、気の毒そうな顔をしてる。
アールスハインに抱っこされた肩越しに、俺はチチャール先生を見てる。
チチャール先生も、見るからに我の強そうな生徒に苦労してたのね!
前を歩くガブリエラ嬢達の集団が、チラチラチラチラこっちを見てくるけど、それはスルーで!
講堂での学園長等の話は、程ほどに長く退屈。
去年と大して変わらない内容だしね。
また教室に戻って来て、今度は演習の班決め。
イライザ嬢をちょっと心配したけど、無事、ガブリエラ嬢の取り巻きではない令嬢の班に入れた様子。
俺達は一番最初に班の申請を済ませ、無事助とも組むことが出来たので、先に教室を出て図書館へ。
今年の演習は、ダンジョンでの演習になるので、下調べはちゃんとしないとね!
無駄にハイテクな図書館で、ダンジョンの資料を広げる。
今度演習に使われるダンジョンは、洞窟型と言われるもので、地下へ行く程強い魔物が出て来るらしい。
その辺は前世のゲームで見たのとあまり変わらないらしい。
王都からそれ程離れていないダンジョンは、有名らしく、騎士団での訓練にも度々使われる事もあるんだとか。
アールスハインは騎士団で訓練はするけど、冒険者登録をしていなかったので、ダンジョンの訓練には参加出来なかったらしい。
ダンジョン内では、幾つかのルールがあって、休息所と言われる、魔物の入ってこれない場所がダンジョン内には幾つかあって、その場所の利用方法が、一番守らないといけないルールらしい。
主にトイレ的な理由ね!
休息所には、大体二ヶ所水場が有るんだけど、一ヶ所はトイレ用、一ヶ所は水飲み用って決まってて、ダンジョン内の通路とかで勝手に用足しすると、他の冒険者に大顰蹙を買う。
そりゃそうだ。
昔、ダンジョンのルールがまだ作られて無かった頃、ダンジョンのいたるところに排泄物が放置され、一時ダンジョンに入る冒険者が激減して、スタンピードが起こったらしい。
その事で、王都にも結構な被害が出て、お城と冒険者ギルドとで話し合いが持たれ、ルールが出来たそうな。
何故かスタンピード後には、休息所の水場が二ヶ所に増えてたらしいし。
そんなことを笑いながら話し、それなりに資料を揃え、チチャール先生のチェックを受けて終了。
三年生の演習は、最初の一週間は様子見の為、日帰りしても良いが、残りの日程は一週間の内四日間は泊まり込みの必要があるので、色々大変。長く泊まり込む程点数が加算されるしね。
でも俺達には全員マジックバッグがあるので、何の問題も無い。
荷物チェックの時に、チチャール先生にこそっと教えれば、心底羨ましそうに見られたけど!
早々に用意を終えた俺達は、昼御飯を食べたら、チチャール先生に訓練所の鍵を借りて、訓練に励んだ。
肉体強化の訓練なので、皆がずっと爆笑してたのはスルーで!
ソラとハクがやる気満々で訓練に参加してたのもスルーで!
俺はずっと訓練所の片隅で、ラニアンと遊んでたよ!




