夏休み最後の日
誤字報告、感想をありがとうございます!
おはようございます。
長いようで短かった夏休みも今日が最終日です。
今日の天気は今にも雨が降りそうな曇りです。
明日からの新学期に合わせて、今日は昼御飯を食べたら学園に向かいます。
一応飛び級した生徒に、軽い説明が行われるためです。
遠い地方の出身の人達の為に、入寮は一週間前から可能で、新一年生の入学式は昨日で終わっているので、学園は落ち着いているはず。
今日の昼にはお城から居なくなる俺達に、寂しくなったのか、朝御飯から双子王子がべったりしてきます。
双子王子の教育係の教師達も、仕方がないと笑って、午前中は好きにさせてくれるらしく、午前中一杯双子王子と遊び倒しました。
途中クレモアナ姫様の婚約者な他国の王子が交ざって来たのは驚いたけど。
彼の名前はサディステュー・ランデール。
三つ隣の国の第二王子で、緑髪緑目の知的青年。歳はクレモアナ姫様の二個下で二十歳。
普段は目立たない穏やかな青年だけど、よくみるとそこそこイケメンだし、百八十は超える身長に、厚みは足りないけど動きは機敏。
クレモアナ姫様が惚れ込んだ実務能力は素晴らしいらしく、まだ重要な仕事は任されてないけど、細々とした雑務をこなす能力だけで、宰相さんがベタ褒めするくらいだから、仕事の出来る男なのだろう。
前世なら間違いなくモテる男である。
アイドル的な華はないけど、身近にいる良い男ポジション。
で、このサディステュー王子、とてもとても子供好き。
自国に居た時は、ふれあう機会が少なくてそれ程関心を持ってなかったらしいけど、正式に婚約者としてクレモアナ姫様共々、王族として生活する内に、最初はおっかなびっくり接してた双子王子に振り回されて、思わぬ自分の子供好きな面を発見したらしい。
勿論イヤらしい意味の好きではない。
思いもしない考えや、行動に振り回されるのが、楽しくてしょうがないらしいよ。
仕事の合間に頻繁に顔を出すサディステュー王子に、双子王子は速攻懐いた。
クレモアナ姫様と一緒の時には見せない、屈託のない笑顔を見て、クレモアナ姫様が不貞腐れた程。
王様と王妃様が、クレモアナ姫様も含めて、微笑ましいやり取りに笑ってた。
双子王子用に整えられた芝生の広場を、双子王子に手を繋がれながら走り回る。
肉体強化を使っているので、難なく一緒に走れるが、ただ走り回る事が楽しくてしょうがない様子は、とても微笑ましい。
何が楽しいのかは、随分と前に童心を無くしたおっさんの俺には分からないけど。
走り回る俺達に交ざって、中型犬くらいの大きさになったソラとハクも、走り回る。
ラニアンは、まだまだ自身の大きさを変えられないので、ただただ追いかけて転んでを繰り返してるけど。
そんな俺達を、ちょっと離れた所で眺めてるアールスハインの横には、サディステュー王子もいる。
二人は穏やかに何か話している様だが、声は聞こえない。
両脇の二人がずっと大笑いしてるからね!
体力が無尽蔵か?ってくらい走り回った双子王子に、シェルが休憩を取るように声を掛けると、やはり走ってテーブルに向かう双子王子。
果実水で喉を潤し、次は何をするかで話し合う双子王子。
カルロ王子を膝にのせたサディステュー王子の笑顔が全開です。
ネルロ王子はアールスハインの膝の上。
三人分の子供椅子も用意されてるけど、真っ先にサディステュー王子とアールスハインの膝に乗り上げた双子王子。
俺は子供椅子に座ってますよ。
当然の様にサディステュー王子とアールスハインを巻き込んで遊ぶ話をしている双子王子。
以前やったロクサーヌ王妃様との鬼ごっこをしたいらしい。
あのたまに水魔法玉の飛んでくる、大人には危険な遊び。
サディステュー王子だけがピンと来てないけど、双子王子は止まらない。
アールスハインが双子王子に向けて、水魔法玉を打ちながら走り回れば、納得したのかサディステュー王子も水魔法玉を打ちながら走り出した。
俺は、そんな大人二人の死角から水魔法玉を打ち込むお仕事です。
大人二人がビシャビシャになるたびに、キャーッとばかりに大声で笑う双子王子。
シェルがお昼ご飯の知らせを言いに来る頃には、なぜか護衛として立ってただけの助までびしょ濡れになってた。
お昼の前に軽く風呂に入り、双子王子とサディステュー王子、アールスハインに俺、とクレモアナ姫様とでお昼を食べて、王様に挨拶して学園へ。
見送りに来た双子王子が涙目だったのを、サディステュー王子が慰めて、その両足に一人ずつ抱き付いてたのは可愛かった。
午前中はなんとか降らなかった雨が、学園に着く頃には本格的に降りだして、馬車を降りた途端土砂降りに。
バリアがあるので濡れないけど、そのまま寮へ。
途中、土砂降りの中に立つ元女神の姿を見かけたが、関わると碌な事がないのでスルー。
一体何が目的で、男子寮近くに突っ立って居たのだろうか?誰かに声を掛けられるのを待っていたのだろうか?
未だ逆ハーレムを諦めていないのだろうか?
あのエネルギーはどこから来るのか。
複数の男に言い寄られる状況など、面倒臭くないのだろうか?
前世でも、四男秀太がハーレム物のギャルゲーをやっていたが、一人の彼女でも手一杯で、でもすぐに振られてた俺からすると、複数の女性と同時に付き合う等、考えただけで恐ろしく、面倒以外の何ものでもなかったけど。
そう秀太に言ったらば、奴はフィクションだから楽しめるけど、現実では考えられない。と言ってたので、なんだかほっとしたのを覚えてる。
そんな事を考えながら寮部屋でお茶を飲んで一息付いて、今度は学園の指定された教室へ。
我らが担任インテリヤクザなカイル先生が、今年から担任では無くなってしまうのはちょっと寂しい。
指定の教室には、既にユーグラムとディーグリーが居て、軽く挨拶。
数分後にイライザ嬢も来て、後は教師を待つだけ。
と思ったら、違う教室に行った筈の助とシェルが教室に入ってきて、もう一人、やたらガタイの良い生徒も一人入ってきた。
近くの席に来た助とシェルに、
「どうした二人とも、別の教室に呼ばれてたろう?」
とアールスハインが聞けば、
「飛び級する生徒は、学科関係なく一緒の注意事項があるんで、一遍に聞けって、ここに来るように言われました」
助が答えて、成る程、と納得。
さらに数分後、建て付けも悪くないのにガタガタ音をさせて扉を開き入ってきたのは、丸眼鏡に天パーの小柄な男性。
ちょっとだぶついたスーツを着て、ミルクティー色の髪と目をしたその男性は、
「遅れてすみません。皆さんお揃いですね?ええと、私が今年度三年Sクラスの担任になります、チチャール・ルフレです。よろしくお願いしますね」
チチャール先生は、制服を着てれば学生に見える程の童顔で、どこか頼りなさそうな印象。
しかし魔力は多く、それが体内の隅々までしっかりと巡っている様子から、只者ではない感じ。
チチャール先生の説明は、特に変わった事もなく、突然三年生に飛び級したりすると、嫉妬ややっかみから、変に絡まれる事もあるかもしれないから、その時は自分一人で抱え込まず、相談してほしい的な事と、年明けからの後期からは、選択式の座学も多くなることの注意点等だった。
三十分もしないで終わった説明、これぐらいなら書面で良くね?と思ったけど、チチャール先生は去年二年生の担任だったので、一応顔合わせをしときたかったらしい。
その後は折角先生が目の前に居るのだから、許可を貰って、室内訓練所の鍵を借り、肉体強化の訓練をして過ごした。
訓練後の汗を流して、遅めの夕食に食堂へ来ると、ど真ん中の席でイチャつく元女神とキャベンディッシュ。
テーブルの上の料理は食べ終わっているのに、二人の世界に浸って、人目も憚らずイチャつく二人。
興味津々で見ているのは、新一年生だろう生徒だけ。
二.三年生はいつもの事と見向きもしない。
何時もの隅の席に座り、注文して待っていると、イライザ嬢が弟のクリスデールを連れて食堂に入ってきた。
楽しそうに話す二人に、さっきまでキャベンディッシュとイチャついていた元女神が突然近寄って行って、クリスデールの手を取った。
突然の事に呆然とするイライザ嬢、手を取られて真っ赤になるクリスデール。
何事?と思って、取り敢えずバリアの遮音を切る俺。
元女神の無駄にデカイ声。
「昼間はありがとう!お陰で風邪をひかずにすんだわ!お礼にお夕飯をご馳走させてくれないかしら?」
上目使いですり寄る元女神に、ますます真っ赤になってアワアワするばかりのクリスデール。
そこに、
「いえ結構です。弟はこれからわたくしと食事を取りますので」
と、ズバッと断るイライザ嬢。
その事で初めてイライザ嬢の存在に目を向けた元女神は、態とらしく怯えたような仕種でクリスデールの影に隠れ、
「そ、そんな!私はただ、昼間のお礼をしたかっただけなのに!そんな睨まなくてもいいじゃないですかぁ~」
とウルウルした目で訴えた。
狼狽するばかりのクリスデール。
溜め息を吐くイライザ嬢。
「貴女は既にキャベンディッシュ殿下と食事を済ませているでしょう、弟に構わないで下さい」
「な、なんでそんなひどい事を言うんですか~、私はただお礼を」
ポロポロ涙を溢しながら訴える元女神。
「昼間の事は弟から聞いています。お礼をされる程の事ではありません。なので弟の手を離して下さい」
「お礼をしたいのは私の気持ちです!あなたに関係ないじゃないですかぁ~、そうやってまた私を苛めるんですね!私、負けませんから!」
「変な言いがかりを付けるのは止めて頂けます?貴女が仰った苛めとは、全て自作自演の狂言だったと証明された筈ですが?」
「ほら!またひどい事を言う!これが苛めじゃなくて何なんですかぁ~」
更にポロポロと涙を流す元女神。
近くに寄っていったキャベンディッシュも、苛めが狂言であった事は知っているので、何も言えずに元女神の肩を抱くだけ。
最初の慌てぶりが落ち着いてきたのか、段々冷静になってきたクリスデールが、やんわりと元女神の手を外し一歩離れて、
「姉の言う通りです。私は大した事をしていないので、お礼は結構です。失礼します」
きっぱりと断って、姉を促し離れた。
元女神は、キャベンディッシュに抱き付き、ワッと泣き出した。
キャベンディッシュは、イライザ嬢を一睨みしてから、元女神の肩を抱いて食堂を出て行った。
一連の騒動を見ていた二.三年生の顔がスンとなる。
それを見ていた一年生のほとんどが、奴らの厄介さを理解したようだ。
食事をしながらそんな騒動を見ていた俺達。
自分の出番が無かった事にほっとしてるアールスハイン。
後でクリスデールにも、認識阻害の魔道具をあげようと思った俺でした。




