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夏休み 14

感想をありがとうございます!

 おはようございます。

 今日の天気は薄曇りです。

 突然ですが、


「うーーみーーー!!!」


 肉体強化まで使って、目の前の海に向かってテテテテテと走り、ダッパーンと飛び込む。

 後ろから何やら言ってきていたが、テンション上がりすぎて、聞こえなかった。


 異世界の海は環境汚染が無いせいか、どこまでも青く、それはそれは美しかった。

 つい感動のあまり、馬車が止まった途端駆け出して飛び込んでしまう程に!


 だが油断してはいけなかった!

 異世界の海は、波打ち際から三メートル程行ったら、突然深くなっていた!

 ガボガボと沈んで、慌ててバリアを張ると、バリア越しに衝撃!

 何事?と思って振り向くと、そこには巨大な蟹がハサミを振り上げ、こちらを攻撃しようと構えている所だった!

 デカイ!青い!脚が多い!

 畳二畳分位の大きさに、全体が青く、脚が二十本くらいある蟹!

 それが巨大なハサミで攻撃しようとしてこっちに向かってくる!

 脚が多いせいか、横だけで無く前にも進める様子。

 だが、俺が最初に思ったのは、恐怖でも驚きでもなく、食欲だった。う~ま~そ~!

 この世界に来て一年、魚は何度か食べたけど、蟹は食べてない!魚介類に飢えてた俺は、助に止められてたにも関わらず、スチャッとカッターを出し、水魔法を纏わせて日本刀モドキに仕立て、巨大蟹のハサミを掻い潜り縦に真っ二つに切ってやった!

 すかさずマジックバッグに収納し、ゆっくりと浮上。

 海上に出て、バリアごと砂浜に立つと、ムニッと頬っぺたを摘ままれた。


「けーいーたー!お前は!なにやってんの!?双子王子が真似したら危険だろうが!」


「ふぇんしょーあがっかっか!」


「テンション上がっちゃうのは分かるけど!子供の前で危険行為は控えなさい!」


「うぇーい、ごめちゃーい」


 回りの皆が苦笑するなか、助に説教されてしまった。

 散々ムニムニされた頬っぺたが熱を持つ。

 見た目だけは幼児なので、双子王子は助の説教に首を傾げてるけど。




 何故俺達が海に来たかと言えば、理由は簡単。

 閉じ込められた双子王子が爆発したからだ。

 王族専用の建物だけでも、当然広大な敷地があるのだが、何時も城中を好き勝手に走り回る双子王子にしてみれば、範囲を限定されるのは我慢ならない事だったらしく、ある日秘密の通路から城下への脱出を試みた。

 結果は失敗に終わり、通路の中で迷子になって二人してギャン泣きしている所を、デュランさんに発見されたそうだ。

 双子王子は、王様と王妃様と姫様にこっぴどく叱られたが、その後も懲りずにまた、お付きのメイドを振り切って、秘密通路の探索をしていた。

 怒られても懲りない二人に、ストレスを感じているのだろうと、発散させるべく、海辺の別荘に来ることになった。

 引率は特に仕事の無いアールスハイン。

 アールスハインの誘いで、ユーグラムとディーグリー、俺と助とシェルも当然同行。

 あとは双子王子と、双子王子専属のメイドさんが三人、いずれ双子王子の侍従になる候補の五人の貴族子息な少年。


 お城を出て東の街門を通り、里山的な森の脇を抜けて更に東に。三日程馬車に揺られてたどり着いたのが海辺にある王家所有の別荘。

 滞在は三日程。


 途中で泊まった高級宿の食事が、悉く食えなかった俺は、飢えていた。

 部屋でこっそり芋とかは食ったけど、飢えていた。

 ついつい海を見てテンション上がっちゃうくらいには。


 一通り説教されて、悪い見本のように子供達に説明されて、別荘に到着。

 早朝に宿を出て今は昼前。

 地元出身の料理人が昼食の用意をしてくれるらしい。

 それまではまったりとお茶を飲んで休憩。

 俺はいそいそと厨房に向かう。


 仕込みで忙しそうな料理人さんには悪いが、ひとつ頼まれて欲しい。


「りょーりにーしゃーん、カニやいてー」


「ケータ様?カニとは何ですか?聞いたことの無い食材ですが?」


 質問してきたのはちゃっかり付いてきたシェル。

 シェルって、俺が食材持ってると意外と嗅ぎ分けるよね!

 料理人さん達も不思議そうな顔でこっちを見てる。

 流石にこの厨房で巨大蟹を出す事も出来ないので、厨房の勝手口から外へ出て、ドドンと巨大蟹を出す。

 真っ二つに割られた巨大蟹に腰を抜かす料理人さん。


「んな、な、な、な、これは!青海蜘蛛ではないですか!は、早く兵士を呼ばないと!」


 真っ青になって腰を抜かしたまま後ずさる料理人さん。


「これは、死亡しているようなので、兵士は必要ありませんが、ケータ様?これをどこで?しかも先程これを焼いて、と仰いましたが、食べるおつもりですか?」


「かに、おいちーよ?」


「美味しい?!虫を食べるのですか?!」


「むち?かによ?むちちがう」


「これは青海蜘蛛と言う虫ですよ?」


 蟹は虫扱いでした!まぁ見た目は虫っぽくなくもないかな?

 料理人さんは料理してくれそうもないので、自分でやってしまいましょう!

 シェルも食べて美味しいければ、納得するだろうし!


 なので調理開始!

 カッターを取り出し、水魔法を纏わせて日本刀モドキに、サクッと全部の脚を切り落とし、甲羅の腹の部分を肉体強化でパカッとね!

 驚いた事に、異世界の蟹は味噌ではなく魔石が詰まってました!大きめの魔石の他は蟹の身がギッシリ。

 正直、蟹味噌はそんなに好きでもないので、身が多いのは大歓迎です!

 アミアミにしたバリアで蟹を持ち上げて、下から火魔法で焼いていく。

 巨大なので、上に蓋のようにバリアも張ったよ!

 蟹は茹でた蟹より焼き蟹が好きです!

 パチパチと良い音と匂いがしてくるね!

 青かった殻が、火が通るごとに赤くなっていくのも食欲をそそる!

 口内にジュワッと唾液が溢れてくる!

 隣で恐々見ていたシェルも、今では鼻をひく付かせているし!

 い~い感じに焼き上がった蟹を、その場で収納し、一本だけ残しておいた一番細い脚、それでも俺の腹回りくらいの太さがあるけど!を、フォークで身を取り出し、小さく切って醤油をちょっとだけ付けてパクッとね!


「んんんんんま~~~い!」


 ホロッと口内で崩れる身を噛み締めれば、ジュワッと溢れる旨味!甘く、香ばしく、記憶に有るなかで最高の味ですな!

 ハフハフいいながら食ってたら、隣から視線が!シェルが涎を垂らさんばかりに近距離でガン見してくる!なので取り出した身に、醤油をちょっとだけ付けてあーん。

 パクッとしてモグモグして、口許に手を当て、


「……………………大変美味ですね」


 と、どこか複雑そうな顔で言うのに笑った。

 虫だと思ってたものが、めっちゃ美味しかったからね!


「むちららいでしょー?」


「そうですね、これは虫ではありません!カニ?です!」


 開き直ったようで、自分のフォークを取り出し、ガツガツ食べ出した!

 流石に俺の腹回りくらいある身を、二人で食べきれるわけもなく、残りは収納しました。

 俺達二人が蟹を食ってる間、ドン引きしてた料理人さんに、お昼ご飯準備の再開をお願いして、室内に戻った。

 何食わぬ顔でリビングに戻ったが、近寄ってきた助が、ふんふん匂いを嗅いできて、


「ねえケータ、すげぇ良い匂いするんだけど、俺達に隠れてなに食べたの?」


「あじみーちた!あとでーだしゅよ?(味見した!後で出すよ?)」


「ふーん、それは楽しみだ!なんか懐かしい匂いだし!」


「んんまーーいよ!」


「お食事の用意が調いました、皆さまお席へ」


 メイドさんの声で皆が移動。

 其々に席に着き、運ばれてきたのはお城の料理とそんなに変わらないメニュー。

 しかもお城で改良される前の。

 つまり俺の食えない料理各種。

 一品ムニエル的な物もあったけど、やたら辛いソースがベッタリと掛かってて、結局食えない。

 なので俺的メインメニューの蟹をドドンとね!

 シェルに頼んで巨大な皿を出してもらったし!

 俺の出した蟹を、皆が驚いて声も無く見ている。

 そこにシェルがすかさずやってきて、鮮やかな手付きで蟹の身を切り分けていき、其々の皿へ。

 俺の目の前に置かれた皿にも、こんもりと蟹の身が!


「おい、おい、ケータおい!これって!」


「んふ~、んま~いよ!」


「まじか!あんのかこの世界に!」


 助がふるふるしながら、蟹の身にフォークをぶっ刺し一口。


「んーーーーーー!ああーー!うまいーー!まじ旨い!何これ超旨い!」


「れしょー!まだまだあるよー!いっぱー食べれ!」


「まーじか!ケータ最高かよ!」


「んふふー」


 俺と助の食べっぷりと絶賛具合に、ただ見ていただけの面々も、ちんまりと掬い恐る恐る食べ始める。


「あ、美味しい!何だろうこれ?柔らかいのに噛み締めると、旨い汁が溢れ出て、香ばしい香りとこの身の香りが凄く良い!」


 ディーグリーの感想に、


「「んまーい!!」」


 双子王子もニッコニコで口一杯に蟹の身を頬張っている。

 お付きの侍従候補達も無言でハグハグ食ってるし、アールスハインも味わっている。

 そんな中、ユーグラムだけはまだ一口も食べていない。

 虫嫌いのユーグラムは、何かを察知したのか、疑い深い顔でこっちを見てる。


「どうしたのユーグラム、すげぇ旨いよ?」


「……………………ケータ様、これは何の肉か伺ってもいいですか?」


「かにー」


「かに、とは聞いたことの無い名前ですね、この辺の呼び名はご存知ですか?」


「あお、うみぐも―」


「「「「「「……………………………………」」」」」」


 明るく言ってみたけど、バクバク食ってた皆が、一斉に口を押さえた。

 ユーグラムなんか、壁際までズザザッと下がってしまった。

 口許を押さえたまま、アールスハインが、


「ケータ、これは本当に青海蜘蛛なのか?色が違うが?」


「やいたーかだね!」


「これは本当に食べて大丈夫なのか?」


「だーじょぶーよ!おいちーよ!」


「いや、確かに旨いが……………」


「あお、うみぐも―も、まものれしょ?まもののにく、たびるのといっしょよ?」


「まあ確かに。旨いし、ケータが食ってんだから、毒は無いだろうしなー、でも食う前に一言言っとけよー、びびるだろう!」


 助がグチグチ言いながら、また食べ始めたので、皆も其々に食べ始めた。

 ユーグラムのみが、未だ壁に張り付いているが、


「ユーグラム、別に無理に食べろとは言ってないよ?青海蜘蛛以外にも食べる物はあるんだし、席に着いたら?」


「……………………そうですね、本体が有るわけではないので、まだ耐えられます」


 シェルが身を取り出した後の殻は、すぐにメイドさんが片付けてくれたので、皿の上には身の部分だけしか置いてないから、ユーグラムでも耐えられるそうです。


「おいちーのに、もったーないねー」


「確かに旨いな」


「食べたこと無いものだけど、美味しいよね~」


「あああ、旨い!」


 子供達はモクモクと食べ進め、俺達の感想に、ユーグラムが複雑そうな顔をする。

 殻を剥いた身は、白と赤の美しい見た目だから余計に。


「ひとくちたびるー?」


 隣のユーグラムに、小さめに切った身をあーんしてみる。

 ユーグラムは、ムグググとなったあと、思いきったようにパクッと食いついた。

 口許を押さえ、ゆっくりと咀嚼したあと、


「……………………………美味しい、ですね」


 と小さな声で呟いた。


「れしょー、こりは、くもじゃなくてー、かによ!」


「そうそう、蜘蛛だと思うから抵抗有るけど、これはカニ!メチャメチャ旨い魚介類!」


 助が自分に言い聞かせるように言えば、ディーグリーがウンウン頷いて、


「うん、俺も今日からこいつをカニと呼ぼう!そして食おう!めっちゃ旨いし!」


「しょーしょー、かにうまーいでいーでしょー」


「…………………そうですね、本体の見た目を気にしなければ、実に美味しい食材です」


 シェルに取り分けてもらったカニをモリモリ食べ始めるユーグラム。

 無事開き直れたようで何より。

 見た目グロいのはオークだって同じよ?あれって、顔と色以外人型だからね!

 それでも肉は食うんだから、同じ様なもんだよ!

 まだ大量にある蟹の脚を一本、シェルに預けたので、メイドさんや、料理人さんにも食べてもらいましょう!


 腹一杯蟹を食って、食休みしたら海で遊びました!水着はハーフパンツ型、俺と双子王子はグレコな繋ぎのお揃いの水着、子供達は波打ち際でチャプチャプ遊び、大人組は深い所に泳ぎに行って、何故か皆立ち泳ぎなのに笑って、助がクロールと平泳ぎを教え、カニも三匹程獲ってきたので収納しました!

 思う存分体を動かせた双子王子は、夕飯後、バタンキューで寝ました!俺もね!






カッターと言えば、エヴ○か進撃と言われましたが、どちらかと言うと、ケータと助の想像では、ホラー映画のチ○ッキー辺りが浮かんでいると思います。

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4巻の発売日は6月9日で、公式ページは以下になります。 https://books.tugikuru.jp/202306-21551/ よろしくお願いいたします!
― 新着の感想 ―
助さんや なぜケータと同じ世界の前世を持っていて、青海蜘蛛と聞いた途端にビビるのでしょうか? よくわからん
この世界で食べられてないものなんだから、食べる前に鑑定した方が… 異世界なんだから、毒持ちかもしれないよ…?
[良い点] チャッキーのカッター怖いガクガク:(´◦ω◦`):ブルブル
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