夏休み 9
いつもと違う時間と曜日ですが、な、な、な、なんと、ブクマが千を越えてました!
ありがとうございます!
嬉しかったので、一話投稿します。
短い空の旅の後は、スラムの子供達が住む廃墟に向かう。
少年が足取りも軽く、皆の元へ向かう後を付いていく。
「みんなーただいまー!」
大きな声で帰った事の挨拶をすれば、そこら中の瓦礫の隙間や、建物の影からワラワラと子供達が出てきた。
その数三十人程。
全員がまだ冒険者登録が出来ない歳なので、十歳にも満たない子供が、更に幼い子供の手を引いたり、抱っこしたりしている。
中には獣族の特徴らしい、尻尾や獣の耳等を持つ者もいる。
全体的に毛艶は悪いが、血色は良い。
栄養は足りているようだが、身嗜みには手が回って無い感じ。
子供達がワチャッと集まって、少年におかえりと大合唱してる。
中には涙ぐむ子も居て、本当に無事帰れた事を喜んでいる様子に、ホッコリする。
子供達の集団の中から、年嵩のリーダーの少年が、こっちに寄ってきて、
「約束守ったな!」
俺に向かって言うので、
「けーたうしょちゅかないよ!」
と返してやれば、
「あいつは、大丈夫なんだな?」
心配そうに聞いてくるので、
「だーじょーぶ、しゅごいげんち」
と答えたら、ホッとした顔をして、
「じゃー何でお前らまで来たんだよ?もう用は無いだろ?ルルー兄とあいつだけで良かったのによ!」
とか言うので、ちょっと意地悪してみたくなり、
「ふーん、ごはんもってちたのに、いりゃないんだー?(ふーん、ご飯持って来たのに、要らないんだー?)」
聞いてみれば、一瞬だけウグッとなったが、
「べつに、恵んで貰わなくても、自分の飯くらい用意出来るし!」
とか言う。中々に意地っ張りな様子。
とても微笑ましい。
「やわわかいパンときゃー、やしゃいも、にきゅもいっぱーのしゅーぷときゃー、んまーいやわわかいにきゅもいりゃないんだー?(柔らかいパンとかー、野菜も肉もいっぱいのスープとかー、旨い柔らかい肉もいらないんだー?)」
「は?柔らかい肉って何だよ?そんなん有るわけねーだろ!」
「ありゅよー、んまーいよー、ねーるるーしゃん?(あるよー、旨ーいよー、ねールルーさん?)」
「フハハ、有るな!あれは旨かったなー!」
「ルルー兄、本当かよ?そんなの一人占めなんて狡いぞ!」
「バカめ、あの特別な肉は、一流の冒険者にならないと食えないんだよ!」
「じゃあ何でそのチビは食ってんだよ!」
「このチビっ子は、こう見えて物凄くつえーんだよ!だから食えて当たり前だよ!」
「はあ?そんなん信じられるか!」
「お前が信じよーが、信じなかろーが、このチビッ子がつえーのは事実だっつーの!お前だって、あいつを治した時の魔法を見ただろうが!」
「あ、あ、あれは、何かの見間違いで、そっちのキレーな面したにーちゃんがやったんだろ!」
「いえ、私は何もしてません」
ユーグラムを指差すリーダー少年に、ユーグラムが速攻否定する。
顔に似合わないその低いバリトンボイスに、リーダー少年と、近くに居た女の子がビクッとした。
「そ、そ、そ、それが本当なら、何か魔法見せて見ろよ!」
リクエストを貰ったので、やって見せましょう!
部屋全体を覆うようにバリアを張り、アールスハイン等とルルーさんを除く、子供達全員に洗浄魔法を掛けてやりました!
これからご飯食べるからね!
心なしかベト付いていた子供達の髪が、サラッとして、元の色が判別出来ない程汚れていた服が、穴や擦り切れは有るが、汚れが綺麗に落ちた。
突然の事に、ただただ驚く子供。
全員が口をパカーンと開けて、同じ顔をしているのに、ディーグリーが笑いだした。
「まほーみしぇただん!」
ドヤ顔で言ってみたら、ハクハクと口を動かすだけで、何も言えないリーダー少年。
女の子達が特に大騒ぎしてキャーキャー言ってる。
獣族らしい子の尻尾と耳もフカフカになった!
近くに居た狸っぽい獣族の男の子の尻尾にマフッと抱き付いたら、ギャッと叫ばれた。
ごめん欲望に負けちゃった!
ちゃんと謝ったら許してくれて、尻尾で撫でられた。
女の子達のご機嫌とりも終わったので、調理場に案内してもらう。
アンネローゼくらいの女の子に代わる代わる抱っこされ、チビッ子に手を繋がれながら、着いたのは、一応厨房の形が残っている場所。
魔道具の調理器具は壊れて使えないけど、普通に薪で火は着けられるし、近くに井戸があるので、ちゃんと水甕に水も満たされている。
調理台も清潔を心掛けているようで、酷い状態では無かったので、部屋全体に洗浄魔法を使ってから、調理を開始しますかね!
キャベツ人参じゃが芋、玉ねぎセロリトマト、ベーコンと鶏肉、全部が巨大な○○に似てる野菜だし、肉は魔物の肉だけど。
それらをぶつ切りにして巨大なべにぶちこむ。
トマトは前世よりも小さめなので、ヘタをとってそのまま。
ベーコンは固いので、うすーく切った。
それに大量の水を入れてコトコト煮込む。
製粉技術の上がった薄力粉、ベーキングパウダー的な働きをする草を乾燥させて粉にした、膨らし粉、塩少々、水適量、それらを混ぜてこねて少々休ませたら、程好い大きさに分けて、フライパンに油を薄くしき、潰すように押し付けながら焼いていく。
チビッ子がキャッキャしながら丸める姿は可愛らしい。
お城のパンにはかなわないけど、意外とモチモチした食感のナンもどきの完成!
火加減などは出来ないので、グラグラ煮たったスープの鍋を火から下ろし、塩と胡椒で味付け。子供が多いから、胡椒はほんの一振り。
味見をして~、ポトフもどきの完成!
コンソメが無いから物足りない気もするけど、優しい味のスープですよ!
さてさてメインは肉!
これは前に草原の先の里山みたいな森で捕まえた、巨大鶏みたいな魔物の肉。
その腿肉を使って、まず青パパイアを擦りおろし、肉に揉みこむ。
暫くおいて、塩を多めに振りフライパンで焼く。
砂糖は高級品だけど、メープルシロップは割りと庶民でもお手軽に買える食材だし、スラムの端の方には正式名では無いが、甘い木と言われる木から、メープルシロップっぽい物が取れるそうなので、割りと身近な食材っぽい。
肉に、メープルシロップ、レモンの絞り汁、マスタードを混ぜたソースを回し掛ける。
ソースとよく絡めるように焼いて、ハニーマスタード焼き、いや、メープルマスタード焼き完成!
人数分の食器は持って無いので、スラムの子供達が元々持ってた器を、洗浄魔法を掛けてから、各々によそっていく。
小さい子から順番に、文句を言う子もおらず、とてもお行儀が良い。
並んでる子が、たまにはみ出して、鼻をひくつかせるのも微笑ましい。
全員に行き渡ったところで、リーダー少年が、神への祈りなのか何事か呟いて、全員が一つ頭を下げていただきます。
ハフハフ言いながら、
「「「「おいしーーー!!!」」」」
と大好評で何よりです!
近くに居るリーダー少年に、
「にきゅ、やわわかいれしょー?(肉、柔らかいでしょー?)」
と自慢げに聞いてみれば、
「これって、貴族様の食うような、ものすげぇ高級な肉か?大丈夫か?こんな肉俺達に食わせて、売った方が良くないか?」
心配されました。
「ハハハッ!大丈夫だよ~、この肉は東側の浅い森で取ったビックバードの肉だから、君らも後五年もすれば簡単に取れるよ!」
ディーグリーが明るく答えたけど、
「うっそだー、ビックバードの肉なら、前に何度か食べた事有るけど、こんなに柔らかくなかったし、もっと臭かったぞ!」
「フフフ~ン、それはね、仕留めた瞬間に身体中の血を抜いたから、臭くないし固くならないんだよ~!まあ他にも色々やり方はあるけど!」
「ふーん、それだけでこんなに旨い肉になるなら、俺も早く冒険者になって、狩に行けるようにしないとな!」
「そんなに早く行きたいなら、今度出来る学校に通えば良いよ~」
「はあ?そんな金ねーよ!」
「フフン、今度出来る学校は、お金じゃなくて、学校の依頼を受ければ、授業料がただになるんだな~」
「………それ、兄ちゃん騙されてるぞ!そんな上手い話が有るわけないだろ!」
「それがあるんだな~、国の偉い人達が作る学校だから、安心して良いよ~」
「………………そんでそのがっこう?で俺らは何をさせられるんだよ?」
「んー、させられるってのは違うと思うんだけど、授業料の代わりになる仕事は、冒険者ギルドの見習いがやるような仕事とか、兵舎の掃除とかの、大変だけど簡単な仕事になると思うよ?それで、その仕事をちゃんとやる代わりに、文字の読み書きや、計算の仕方なんかを教えて貰うんだよ、あと魔法とかね!」
「字の読み書きや計算は、そりゃ覚えてーけど、本当に騙されてねーのかよ?後からすげぇ金払えとか言われねーの?」
「近い内にスラムの端の空き地に、学校の建物が建つだろうし、その時に説明もしてくれると思うよ。それに、冒険者ギルドの協力も得られれば、新米冒険者に役立つ情報も教えて貰えるだろうし、一回騙されたと思って行って自分で確かめたら良いよ~」
「…………………考えとく」
そう言ったきり、リーダー少年は他の子達の所へ行ってしまった。
「あんなんで学校行くかな~?」
「ああ、行くだろうよ。奴も馬鹿じゃない、自分達にとって得なのはどっちか、嗅ぎ分ける力くらい有るさ!お前さんが強制しなかったのも良かったしな!」
「ま~ね~、ああいうタイプの子は、強制なんかしたら絶対反発して近付きもしなくなると思ったからね~!」
「ああ、その通りだよ。まあスラムのガキは、大体そんなもんだけどな!警戒心が強い割に、一回上手く行くと、コロッと騙される」
「経験談ですか~?」
「ああ、そんでも俺は、運良くお人好しな奴等に拾われて、立て直せたがな」
苦い顔で笑うルルーさんは、立て直しの効かなかった仲間がいたのかもしれない。
まあ、子供達への学校の勧誘は、概ね成功したと考えて良いだろう。
ヤンキー顔のアールスハインや、無表情のユーグラムに任せなかった、宰相さんの知恵だね!
かなりな量を作った食事も、完食されたので、鍋と野菜を子供達にプレゼントして帰りました。




