夏休み 4
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お城に戻り、王様に面会の申し込みをして、指定された部屋で待っていると、バンッとドアを叩き開ける様に、将軍さん、イングリード、宰相さん、王様が入ってきた。
将軍さんが、早速とばかりに、
「魔王を発見したって?」
「いえ、厳密には魔王になる前の状態の少年を発見しました」
「で?何処にいる?」
「信頼できる方に預かってもらってます」
「何故連れてこない?」
「まずは順を追って説明します」
全員が座り聞く体勢になったので、路地裏で元女神を見付けたので、様子を窺っていたら、魔王の話が出たこと。
その後、元女神に付いていた精霊を説得して、元女神から解放した事、話に出ていた魔王を探していたら、知り合いの冒険者に助けを求められ、着いた先に居たのが、魔王と思われる少年だった事。
呪いに苦しんでいたのを俺が解呪したこと。
少年を落ち着かせるためにも、二.三日後に再び訪問する約束をして、信頼できる冒険者に預けて来た事。
以上を話すと、沈痛な面持ちで黙り込む面々。
「奴は、本当に魔王を造っていたのだな?」
「ええ、そのようです。ケータの話では、呪いと魔道具と、その他にも何らかの方法で、魔王を造ろうとしていたようです」
「その魔王にされようとしていた少年は無事なんだな?」
「はい、今のところは。少年が落ち着いた頃に、もう一度様子を見に行く予定です」
「今何処にいる?」
「スラムです」
「それは安全なのか?」
「保護を頼んだのは、Aランク冒険者のルルー殿です」
「ああ、奴か、なら安心か」
「ルルーと言う冒険者を知っているのか?」
宰相さんの問いに、
「ああ、以前遠征中にかち合った事がある。礼儀はなっちゃいなかったが、良い奴だったよ」
「そうか、しかしスラムか……………」
「彼は多くの子供達に囲まれておりますし、何より元女神が学園の寮に居る以上、貴族街に居る方が危険は多いかと考えました」
「成る程。だが一度は城に呼んで話を聞かねばならん」
「その時はルルー殿に同行を願おうかと思っております」
「そうだな。魔王にと見出された以上、なにがしかの特異な能力があるのやも知れぬ。無駄に怯えさせる事も無いだろう」
「ええ、彼はまだアンネローゼと同じ年頃の子供です。しかも元女神によって、檻に閉じ込められていた様子。こちらが強制などすれば、怯えて何も話せないでしょう」
「檻に、元女神とは、人間を何だと思っているのか!」
ガン、と机を叩く将軍さんの肩を宰相さんが、宥めるように叩く。
「少年から回収した呪いの塊は、ケータがマジックバッグに保管しております。折を見て持ち主に返そうかと考えております」
それを聞いた大人組が、それはそれはい~い笑顔でニヤリと笑った。
一応テイルスミヤ長官に、呪いの塊を確認してもらってから、チャンスがあれば、呪い返しを行って良いとの許可も出て、影と呼ばれる隠密さんに、元女神を見張らせる事にもなった。
「しかし、あと二体の精霊が奴には付いているんだろう?それも何とか出来ればいいが」
「先に解放された三体が、残りの二体を誘うなりしてくれれば助かるがな」
「その可能性は無いのか?」
「分かりません。ですが、このまま元女神に力を貸し続ければ、いずれ力を使い果たし消えて失くなると言っていました」
「元女神は、全く魔力を持たないのだったか?」
「そのようです。精霊の力を自分の力のように装って、学園に入ってきたようですから」
「だが今、学園を出されるのは不味いな、自棄になって何をやらかすか分かりゃしねー」
「ですが学園に居る時に、呪いを返す訳にはいきません。周りにどんな被害が出るかも分からないので」
「学園の前期は演習中心だろう、その時にでもチャンスはないもんか?」
「我々はダンジョンでの演習希望を既に出してしまったので、今更変えられるかどうか?」
ふう、と王様が息を吐いたのに、全員の注目が集まる。
「そう焦る必要は無いだろう。何より魔王はこちらの手の内にある。魔力の無い女一人、何とでもなる」
「フフ、そうですな。元とは言え、女神だからと大袈裟に恐れすぎたやもしれません」
「まぁ、そうだな!いざとなれば、ぶっ潰せば良いだけだ!」
「それは考えが無さ過ぎだ!」
将軍さんと宰相さんの何時ものやり取りに、場が和んだ事で、この場は終了。
二日後に、魔王な少年の体調を見て、お城に連れて来る約束をして、解散になった。
テイルスミヤ長官を訪ね、事情を話して、呪いの塊を確認してもらう。
あまりに大量の呪いの塊に、最初は言葉も出なかったが、バリア越しに蠢くウニョウニョが、意思あるもののようにバリアを動かそうとするのに、その中心に魔石らしき物があるのに興味を引かれたのか、熱心に観察し始めた。
「ケータ様、この中心にある魔石のような物は何ですか?」
「まおーの、しぇなかにー、うまっちぇた」
「背中のどの辺りでしょう?」
「けーこーこちゅのあいだのへん」
「……………ケータ様の聖輝石が埋まってる辺りですか?」
「たびゅん?」
「…………………これは、本当に聖輝石なのかもしれません」
「それは本当ですか!」
ヌルッと現れた怪しい男ジャンディス。
聖獣研究をしているジャンディスにしてみれば、垂涎の的だろう聖輝石の話がでて、思わず体が反応したのか、もしくはこっそり俺を観察してたのか。
呪いの塊の入ったバリアに張り付くように観察し出した。
「ああー、呪いが邪魔で良く見えないー!これ呪いを解いてもらうことは出来ないんですかー?」
「それは無理でしょうね。呪いの核になっているのがその石ですから」
「でも聖輝石かも知れないんでしょー!聖輝石だけでも取り出せれば、色々研究出来るのにー!」
「それはそうですが…………」
チラッとこっちを見るテイルスミヤ長官。
「んー、こにょいちごと、にょりょいまとめちぇ、ばいがえちしょーとももったのにー(んー、この石ごと、呪いと纏めて倍返ししようと思ったのに)」
「この呪いの塊をそのまま返されるだけで、普通の人間なら、死に至りますよ!それを倍返しとは!」
「もとめぎゃみーよ?しょれくりゃいちなくちゃ!(元女神よ?それくらいしなくちゃ!)」
「それは勿論、賛成しますが、簡単に死なれては納得いきません!」
「しょーねー。このいちで、にゃんかまーどーぎゅちゅくってやろーか?(そーねー、この石で、何か魔道具作ってやろうか?)」
「それにはまず、この石を取り出さなくてはいけませんが、出来そうですか?」
「わかんにゃいけろー、やってみりゅ!」
聖魔法手袋をして、ズムムとバリアに手を突っ込み、魔石らしき物をわしっと掴む。
魔石らしき物を小さなバリアでくるみ、ズボッと手を抜く。
バリアに異常が無いのを確認して、小さなバリアでくるまれた魔石らしき物を、テイルスミヤ長官に差し出す。
ジャンディスも寄ってきて、二人で凝視している。
「バリアに遮断されて、魔力の流れが見えませんが、ただの魔石ではないことは確かですね!」
「そーっすねー、でも他にも何かおかしな魔力を感じるんすけど、これ何すかねー?」
ジャンディスの言葉に、俺も近付いてよくよく見てみると、石の表面に何か文字のようなものを発見。
MA.RYO.KU.HE.N.KA.N.A.N.KO.KU.MA.RYO.KU
「まーりょきゅへんかーん、あんこーきゅまーりょく?(魔力変換、暗黒魔力?)」
「は?ケータ様今何と?」
「いちにかいてりゅよ?(石に書いてあるよ?)」
石を指差せば、バリアに張り付くように凝視したあと、
「!確かに!書いてあります!と言う事は、この石自体が魔道具の役目をしていると言う事ですか?!」
「そーれはおっそろしーですねー、この石が本当に聖輝石なら、無尽蔵に空気中の魔力を吸収して、それを暗黒魔力とやらに変換しちゃうとは!ところで暗黒魔力って聞いたこと無いんですがー?」
「私も聞いたことがありません。ですが響きからも、聖魔法の正反対の性質のように感じます」
「んーでもー、その魔王にされ掛けた少年ってー、よく耐えられましたねー、無尽蔵に送られてくる暗黒魔力とやらを、その身に受けてて、かなりな呪いも受けてたんでしょー?普通なら精神崩壊してー、見境無く破壊行動を起こしてても不思議じゃないのにー?」
「そうですね、この呪いの量に耐えるだけでも、尋常ではない精神力と相当の魔力が必要になるでしょう」
「その少年ってば、よっぽど頑丈なんすねー」
「会ってみないことには何とも言えませんが、人間ではない可能性が大きいですね」
「それにしても、どうやって聖輝石なんて手に入れられたんすかねー?聖獣見付けるだけで、人の一生でも足りないのにー」
「それよりも問題なのは、聖輝石とは聖獣が亡くなると同時に失われると考えられていましたが、ここに存在する、と言う事は…………………」
「……………聖獣を殺して奪った可能性が大っすねー。すげー罰当たり!」
「元女神であることを考えれば、配下の聖獣がいてもおかしくはないですが。それに、聖輝石自体に魔法陣を刻めるだけの技術が有ることにも驚きます」
「魔力無しの元女神に出来る芸当じゃー無いっすね!」
「配下の精霊に命じても、聖輝石に文字や図形を書くには、物理的な力もなければ不可能ですし、精霊程の魔力が無ければ文字や図形として定着させる事も出来ませんし」
「何か他に特殊な方法でもあるんすかねー?もしくは、それを可能にする配下が居るとかー?」
「そうですね、どちらにしても厄介な事に違いありません。暫くは様子を見るしかありませんね。影の方達には、他にも配下が居ないかの確認も合わせてお願いしなければ!」
「んー、それで、この聖輝石は、魔力変換の魔道具だった訳っすけどー、これは研究用として預けてもらえるんすかー?」
「ああそうでした!ケータ様よろしいですか?」
「どーじょー、れものりょいは、もとめぎゃみーにかえしゅよ?(どーぞー、でも呪いは、元女神に返すよ?)」
「もし出来るのならば、小分けにして返すと良いですよ。そうすれば、多少の耐性が身に付くので、より多くの呪いを返せます。一度に返すと間違い無く即死しますので!」
「……………やってみりゅ」
テイルスミヤ長官の忠告に従って、バリア内の呪いを、バリアごと千切るように半分に。
中の呪いのウニョウニョが、ビタンビタン暴れてるけど、構わずドンドン千切って、小さな塊に分けていく。
「こりぇくらいー?」
野球ボールくらいの大きさを見せると、
「相手は魔力無しです。アールスハイン王子が受けていた呪いの半分程でも、かなりの倦怠感と苦痛を味わうでしょう」
更に小さく分けて、俺の手のひらサイズになったところで、OKが出た。
それでも返すのは、半日に一回程度だそうです。
長くかかりそうね。
テイルスミヤ長官とジャンディスに、聖輝石の魔道具を渡して、部屋を後にした。
アールスハインが夕飯に誘ったけど、ユーグラムとディーグリーは遠慮して、と言うか王族の晩餐は格式が高いからと、逃げるように帰って行った。
クレモアナ姫様と王妃様が居ると、緊張しちゃうらしいよ!
王様は?って聞いたら、慣れつつあるのが怖いって言って、シェルを笑わせてた。
二日後の魔王な少年には、一緒に会いに行くそうです。
何だか色々あった一日でした。




