学園
誤字報告、感想をありがとうございます!
おはようございます。
今日の天気は晴れです。
今日からまた学園での生活です。
朝食を食べに食堂へ。
部屋の前で助と合流。
ユーグラムとディーグリーに挨拶をして、朝食を食べる。
食堂中央の席では、キャベンディッシュと元会長、元女神が普通に食事をしている。
何て事の無い風景だが、なぜか元女神がソワソワと周りを見回している。
何かをするつもりなのかと見ていると、元女神の近くを通り掛かった令嬢が擦れ違う瞬間、ガシャンと、まるで令嬢に押されでもしたかの様に、食器を倒す元女神。
その行動に黙ってないのが二名。
「貴様!今フレイルに何をした!!」
「大丈夫ですか?フレイル。ああ、制服が汚れてしまった!急いで着替えを用意しないと!」
「当然汚した本人である貴様が弁償するのだろうな!」
突然通り掛かりに怒鳴られた令嬢は、驚いて声も出せない。
そこへ、元女神が弱々しい声で、
「ディッシュ様、ハウアー様、私は大丈夫です、こんなの洗えばすぐ綺麗になります。だからあまりその人を責めないで上げて下さい」
と声を掛けた。
いかにも自分は我慢していると言わんばかり。
実際は指一本触れて無いのに。
「ああ、君は何て心の広い人なんだ!こんなにも嫌がらせを受けているのに、健気にも相手を責めないなんて!」
「そうだな!フレイルは優しく聡明で、素晴らしい女性だ!それに比べて、この学園の多くの女生徒達の行いには、呆れ返るしかない!品性を疑う!このような下劣な者の集まる場所にフレイルをこれ以上置いて置けない!さぁ、さっさとこの場を立ち去ろう!」
やたら大声で叫び、去って行く三人。
因縁を付けられた令嬢は、友人らしい令嬢に連れられて、別の席に行った。
何だったんだろうか、酷い茶番を見せられた。
何だかモヤモヤした気分のまま教室に行くと、イライザ嬢がソワソワとした様子で近寄って来た。
「ごきげんよう皆様」
「おはようイライザ嬢」
「「おはようございますスライミヤ嬢」」
「あの、アールスハイン殿下、その、昨日は姉と甥とがお世話になって…………」
「ああ、その事なら何の問題も無く解決している。今夜辺りお父上からも報告があるだろう」
「ああ!ありがとうございます!すみません、わたくし気が急いてしまって!」
「いや、気になるのも仕方無い事だろう」
ほっとした笑顔になるイライザ嬢。
うん今日も可愛い。
「かーいーあかたんらったねー(可愛い赤ちゃんだったねー)」
「はい、それはもう!」
頬を染めてはにかむイライザ嬢も可愛いですよ!
「ああ、もうお生まれになったんですね!おめでとうございます!洗礼のご予約はお済みですか?」
ユーグラムが聞けば、
「ありがとうございます!はい、予定では来週の週末に!」
「それは良かった、無事洗礼が行われる事を祈ります」
「ありがとうございます。それではわたくしはこれで」
何時もより心なしか弾んだ足取りで去って行くイライザ嬢。
ディーグリーだけが事情を知らない様子に、
「ミルリング王国の王太子殿下に嫁がれた、スライミヤ嬢の姉上が、ご出産と洗礼の為に、帰国されているんですよ」
「ああ!もうお生まれになったんだね~!年始めに、宰相様が直接店に来て、赤ちゃん用品を爆買いしてった事が噂になってたよ~」
「宰相様でもそうなるのですね?洗礼のご予約も妊娠発覚後すぐに、宰相様が直接予約を取りにいらしたようですし」
「でもさ、ミルリング王国では、スライミヤ嬢の姉上の不貞の噂があって、王太子殿下のお子では無いって、結構な数の貴族が疑ってるらしいね?」
ディーグリーの声を潜めた話に、
「その事なら、昨日の内に解決している。ケータの作った魔道具でな!」
頭を撫でられました。
「さーすがケータ様!でもその魔道具は、また物議を呼びそうな魔道具だね!」
ウィンクされました。
俺のせいではありません!
「さいしょーしゃんに、たのまりた!(宰相さんに、頼まれた!)」
なので俺のせいではありませぬ!
「まあ、そりゃそうだよね~。自分の娘の不貞を疑われて、しかもそれを一発で解決しちゃえる魔道具を作れそうなケータ様がいたら、頼むしかないよね~」
「ですが、今後は親子の真偽を調べたいと思う貴族が、多く出るでしょうね?」
「調べたいと思うのは、貴族だけじゃないだろうしね~」
「今はまだ噂の段階だが、問い合わせは幾つか来ているらしい。乱用は避けたい所だがな」
アールスハインが苦い顔で言った所で、カイル先生が教室に入ってきたので、其々の席へ。
「おー、おはよー。今日は特に連絡事項もねーな。そんで休み前に言った、飛び級を受ける奴は、今日から三日以内に俺の所に来るように。遅れた奴は試験を受ける資格も失うから、そのつもりでいろよ!」
「は~い、せんせ~!俺、飛び級試験受けま~す!」
「何だはえーな!んじゃ今聞くか?他に飛び級試験受ける奴は?」
アールスハイン、ユーグラム、イライザ嬢が手を上げる。
「取り敢えず四人は確定な?他の奴は、まぁ悩んでも良いが、三日以内に決めろよー」
ゆるーく言って、そのまま教室を出て行った。
次の授業の用意をしてると、爽やか君が近付いて来て、
「皆さん流石ですね!もう飛び級を決められるなんて!クラスメイトで無くなるのは寂しいですが、頑張って下さい!」
「ありがとう」
「ありがとうございます」
「ありがと~う!頑張るよ~」
爽やか君を筆頭に、クラスメイトが其々に応援してくれる。
授業に来た先生達も、全員が応援の声をかけてくれた。
その様子を見て残りの六人も、試験だけは受けてみる気になったらしく、放課後にはカイル先生が、俺のクラス優秀!と、職員室で自慢してたとか噂になってた。
それとは関係が無いが、元女神の行動もまた噂になっていた。
何故か令嬢の近くを通ると転ぶとか、教科書が焼却炉の中に有ったとか、お気に入りのペンが、他のクラスの令嬢の荷物に紛れてたとか、昨日の休みには、校庭の隅にある池に落とされたとか。
それらは全て、キャベンディッシュと元会長が夢中になってるフレイル・マーブルに嫉妬して、令嬢達がフレイルをいじめている!
と言う話になっていた。
そう、キャベンディッシュと元会長が叫んでいた。
とても迷惑な話である。
今となってはもう、キャベンディッシュも元会長も、誰も見向きもしていないと言うのに。
その後、数日たったがいまだ元女神の噂は流れている。
何故かキャベンディッシュと元会長の言葉に乗っかった男子生徒数人が、元女神の取り巻きに加わった。
廊下を歩くだけで周りを威嚇しているその姿が、笑い者になっているが、本人達は騎士気取りでいい気になっている。
まあ、そのお陰で、元女神の企みが不発に終わっているのだが。
一度、珍しく一人で歩く元女神を発見したので、認識阻害を発動させて後を付けたら、校舎の裏の目立たない場所で、壁を蹴りながら物凄く愚痴っていた。
「なんっっっで思い通りにならないのよ!魔道具は見つからないし!悪役令嬢はいないし!イベントは起きないし!あれだけ苦労して場を整えたんだから、ちゃんと!ミルリングは働きなさいよ!何で侵略してこないのよ!しかも仕込んどいた疫病が、何で!流行る前に特効薬の開発に成功してんのよ?!お陰でこの国は全然危機に陥らないじゃないの!このままじゃ、魔王の力が足りなくて、現れた途端倒されるでしょ!そもそも何でキャベンディッシュがあんなに馬鹿な設定になってるの?!あいつの母親だって、権力使って王宮内でもっと力を持ってる筈なのに!何で失脚してんのよ!?本当に使えないんだから!このままじゃ王妃にだってなれないじゃないの!」
ゲシゲシゲシゲシ校舎の壁を蹴っているけど、足が丈夫ですね?
そしてお前は王妃になる気だったのか?!
無理だろ!
ミルリングが侵略するとかは、あれだろうか、偉そうな大臣が差し向けた暗殺者によって、イライザ嬢の姉が殺される筋書きでもあったのだろうか?未来の王族を殺されたとかで、侵略しようとするとか?
イライザ嬢の姉は、この国に入った途端この国の騎士達によって護衛される立場になったので、暗殺者は騎士達に排除されたらしい。
この国の騎士達強いからね!
疫病の特効薬はあれだ、去年の演習の時に大量に捕獲したレア虫魔物から出来る薬か?
冒険者ギルドの副ギルドマスターが言ってた。
これで依頼が捗る!とか。
薬師ギルドってのがあって、そこの依頼で虫魔物の大量発注があったらしい。
画期的な薬の精製方法を発見したとかで、今までは作れなかった薬も作れる様になったとか。
よくよく話を聞いてみると、蒸し器の改良型の事みたい。
大量の素材を蒸して、蓋に付けた管から、薬効成分と蒸気だけを取る事に成功。
その成分が、今まで煮た絞り汁を使った薬の、遥か上を行く効果が出たとか何とか。
詳しくは知らないけど、そんな実験をするなかで、色々な薬の開発に成功したとか。
魔道具は、俺達が買い漁っちゃったし、魔王は元々そんなに強くないってギャル男神言ってたし!キャベンディッシュが馬鹿なのは、権力持ってた元王妃のせいだし。
うん、俺は悪くない!
そもそも自分の失態のせいで、人間に落とされたくせに、この地上でまで好き勝手しようとしてるのが間違いだ。
そんなん好きにさせる訳が無い。
別に狙ってた訳じゃ無いのに、悉く元女神の企みを阻止出来ていることがとても嬉しい。
ざまーみろ!お前の好きになんかさせるか!
何時か本人の前で言ってみたいね!