肉狩り 5
誤字報告、感想をありがとうございます!
精霊が居たせいで近寄れなかった魔物達が、精霊の力の残滓を求めて、泉の周りに集まって来た。
俺達は小川を下りながら襲ってくる魔物を狩り、拠点のテントを目指している。
血抜きをする間も無く魔物を倒し、マジックバッグに詰め込む。
虫魔物が多いせいか、ユーグラムがずっと眉間に皺を寄せている。
そんなユーグラムがブチキレるのを阻止するために、ディーグリーがユーグラムの側に居て見張っている。
陣形が崩れている中、ソラとハクが大活躍!
虫魔物はハクが触手で捕まえて、頭をプスッとして俺の前にポイ。
大物魔物はソラがまず足の腱を切って動けなくした所に、アールスハインと助が首を切って終了。
ルルーさんは周りへの牽制と警戒。
ユーグラムは遠くからこっちに向かってくる魔物の牽制。
ディーグリーはユーグラムの見張りと、虫魔物をユーグラムに近付けないように倒している。
俺は回収係。
ルルーさん以外は肉体強化を使っているが、目の前に魔物が居るせいか、爆笑はしていない、が、ニヤニヤが止まらない様子。
ルルーさんがドン引き。
拠点に着く頃には、数えるのも億劫な程の虫魔物と、六十体を超える熊と猪の魔物、ドードー、猿の魔物他、多くの魔物がマジックバッグに詰め込まれた。
幸い拠点の周辺には、虫魔物の姿が無かったので、焦げてはいるが平和な元野原に、まずディーグリーが安堵のため息をついた。
ユーグラムは周りを警戒しているのか、未だフフフ笑いが止まってないけど。
俺達は常にバリアを張ることが習慣になっているから、森を歩き回り魔物と戦おうが、それ程汚れる事が無いんだけど、ルルーさんは大分汚れている。
俺達を見て、自分を見て、
「俺はさ、Aランクの中でも戦い方がスマートだって評判でさ、冒険者ギルドの受付のねーちゃん達にもキャーキャー言われるくらいにはモテるんだけどさー…………………」
拗ねました。
膝を抱えて座り込み、焦げた野っ原の草をイジイジしています。めんどくせーな!
なので無理矢理腕を掴んでテントに放り込みました。
テント入口のマットを踏んだ瞬間に、身体中の汚れが落ちました!
後はモヨモヨクッションに投げとけば、何とでもなるだろう。
その間に昼御飯を作りましょう!
玉ねぎ人参キャベツを適当な大きさに切って、猪魔物の肉を薄めに切って軽く塩コショウして炒める。
トマトを煮込んで作ったトマトソースと、料理長特製コンソメを入れて炒め煮に。
なんちゃってポークチョップの出来上がり!
切るのも炒めるのも助がやったけど、味付けは俺がやりました!
玉ねぎのスープも作ったし、昼御飯は簡単に。
パンを添えて完成。
いい匂いが漂い始めれば、皆がさっさと席について、拗ねてたルルーさんも無言で席に座ったので、いただきます!
皆無言で食べてたけど、かなりのお代わりもしていたので、味は良かった模様。
腹が膨れて、マッタリとお茶を飲んでいると、
「あー、でよ、何か俺は色々と聞いちゃいけないことを聞いた気がするんだが、これは聞いてもいいのか?」
「まぁ、聞いてしまったものは仕方無い、今回のは不可抗力だからな」
「いや、聞いちゃ不味いことなら聞かねーけど?」
「と言っても、重要な部分は先程の話で殆ど出てしまったからな」
アールスハインが苦笑と共に言えば、
「あー、突然の神々の交代劇が、元女神の失態とか、その元女神が人間に落とされてあんたらが確認したとか、魔王に力を与える為にそこのチビッ子を捕まえようとしたとか?とんでもねー話だったなー、それが全部本当の話だったりすんのか?」
「信じたくはないが、全部本当の話だ。ついでに言えば、元女神に召還された、異なる世界から光臨した聖女は、その資格を失い、教会の施設に入っている。その光臨に巻き込まれたのがここに居るケータだ」
アールスハインに頭を撫でられる。
それを見て、ルルーさんは首を掻いて、
「んー、俺にはよく分かんねーなー、女神とか聖女とか魔王とか、娼館の女が寝物語に読む絵本の中でしか聞いたことねーし、俺に分かるのは、そこのチビッ子が、常識外れに魔力があるっつーことくらいか?」
頬をツンツンされた。
スラム出身のルルーさんは、普通子供の頃に読む絵本を、娼婦さんの寝物語に読んでもらったそうです。
娼館の言葉に、ユーグラムが真っ赤になって、アールスハインが苦笑し、ディーグリーと助がニヤついた。
「まあ、元女神は、今は全ての力を奪われているし、魔王の力も大分弱ったようだし、魔物の増加と凶暴化も騎士団での対処で今のところ問題も起きていない」
「魔物の増加と凶暴化は、冒険者の間でも噂にはなってるが、強い魔物程良い素材が取れるってんで、冒険者の間では歓迎されてるな」
「流石に逞しいね~、商人達の噂でも、辺境に行く程凶暴化が激しいって言うけど、騎士団の巡回も頻繁に行われているし、逆に商機と見て辺境に向かう商人も結構いるしね~」
「教会にもその噂は届いています。見習い神官は腕試しの為に辺境への異動願いを出す者も多いですし」
「そもそも辺境伯は、それなりの規模の私兵団を持つことを許されてるんで、今頃家の奴らが張り切って魔物を狩り捲ってますよ。そのぶん給料も増えますし」
「逞しい限りだな」
アールスハインの言葉に全員が頷いている。
「まぁ、俺がどうこう言う問題でもねーか」
「それじゃ~、もういっちょ魔物狩りに行きますか~、今度はまた別の方向へ!」
「あまり虫の居ない所でお願いします!」
「森の中で虫の居ない所って、無理があるでしょ~?」
ワイワイ言いながら森を進む。
先頭のソラがご機嫌に尻尾を振って歩く。
ハクはユーグラムに気を使っているのか、虫魔物を弾くだけで、捕獲はしていなかった。
ユーグラムに撫でられて、胸ポケットに納められてる。虫除けですね!
そうして暫く歩いて見付けたのは、珍妙な生き物の群れ。
その姿は毛の無いカピバラ。
のへーとした顔をして、もしゃもしゃと虫魔物を食べている。
額には魔物の証である角が三本。
大きさがセントバーナードくらい。
全くもって癒されない。可愛くない!
ぬかるんだ地面を覆うように大量に群れている。
ギリギリ目視出来る場所で、
「ありぇは、おいちいの?(あれは美味しいの?)」
「いや、食ったことねーから知らねー。あれは泥カバつって、群で行動するんだが、奴の皮は、伸び縮みするし、かなり丈夫だから冒険者の肌着なんかにはよく使われるな」
「ん~、一応狩っとく?」
「食いではありそうだ!」
「そうですね、肉は多そうです」
「……………お前ら、ホントに肉しか目的じゃねーのな」
フハッと笑うルルーさん。
「まぁ、一匹攻撃すると群で襲ってくるから気をつけろ」
笑いながらもアドバイスをくれる。
「ではまず私が状態異常を掛けましょう」
「んじゃーけーたも、はんぶーやりゅよ(んじゃーけーたも、半分やるよ)」
「ええ、ではケータ様は右を、私は左で」
「あーい」
ちょっとだけ近付いて、気付かれない場所から魔法を撃ちます。
俺とユーグラムが使ったのは、眠りと麻痺の魔法。
近場の泥カバからバタバタと倒れて行く。
遠くの方の泥カバが何匹か逃げたけど、殆どの泥カバに状態異常を掛けられました。
後は首を狩る作業。
ソラもその鋭い爪でバッサバッサと首を落として行きます。
麻痺って動けない相手を一方的に狩って、四十分程で五十体の泥カバを狩りつくしました。
マジックバッグにポイポイして終了。
泥カバは触った感じ、もちっとした感触で、薄いビニールに包まれた大福のような触り心地だった。意外と癖になる。
その先は湿地帯なので進むのを断念して戻りました。
途中で凄く派手な原色の羽を持つ鳥が多く居て、食べられないけど高く売れるらしいので、ユーグラムと一緒に状態異常をばら蒔いて、バタバタ落ちて来たのを回収したら、ルルーさんがホクホク顔になってた。
拠点に戻り、早いけど夕飯作り。
メニューは鳥つくね。
醤油、白ワイン、砂糖を混ぜたタレを作る。
ユーグラムがミンチにしたドードーの肉と、みじん切りの玉ねぎ、卵白、すりおろした生姜と小麦粉を少々を混ぜる。
本当は片栗粉を使いたかったけど、無いので仕方無い。
後は丸めて焼いて、タレを入れてよくからめて千切りキャベツの上に乗せて出来上がり!
余った卵黄も焼いてから乗っけといたよ!
生で食べるのはちょっと不安。
昔、古い卵を生で食べた母親が、食中毒になった事があるからね!管理されてない卵を生で食べては危険です!
スープは具沢山味噌汁。
ご飯が欲しい味だけど、パンに挟んでも美味しかったから、まだ米は炊かぬ!
今日も、食事の後暫く休憩したら、ルルーさんの訓練に付き合って自分達も訓練をする面々。
真面目!
ルルーさんは、昨日よりも少しだけ速い速度で飛べるようになった。
アールスハインと助が肉体強化で対戦して、ユーグラムが撃ち出す魔法をディーグリーが、短剣で弾いたり避けたり。
森の近い場所ではソラとハクが魔物を警戒しながら倒している。
皆働き者ですね!
幼児な俺は、夕飯を食ったら眠くなったので、一人でさっさと風呂に入って寝たよ!
こんなこともあろうかと、風呂場には盥を用意しといたからね!