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軽めのパーティーって何さ?

誤字報告、感想をありがとうございます!

 おはようございます。

 今日の天気は晴れです。

 今日は試験明けのお疲れパーティーのある日です。

 パーティーはお昼少し前から夕方まで開催され、パートナーと一緒に担当の先生に申請して、ダンスの審査をして貰えば後は好きにして良いそうです。

 このダンスパーティー用に、平民な生徒には礼服とドレスの貸し出しもしているそうです。

 朝食を食べに食堂に行くと、令嬢達の姿がほとんど居なくて不思議に思っていたら、パーティーの支度に忙しくて食事どころでは無いそうです。

 令嬢って大変。

 アールスハイン達の待ち合わせは開始ちょっと前。

 男子が遅れるのはマナー違反なので、早目に用意を済ませ女子寮の前に集合。

 シェルが張り切ったのか、俺までジャケットと半ズボン、ベストの三つ揃いのスーツを着せられた。

 短い髪にもワックスのようなクリームを塗られ、蝶ネクタイをされる。

 甥っ子の七五三に連行されたのを思い出した。

 アールスハインは年始のパーティーに着てたみたいなお洒落軍服に、ピッカピカに磨かれた靴を履いてる。

 凄く格好いい、無駄に長い足が強調されてる。

 シェルは燕尾服をちょっと丈を短くした感じの服。こっちも格好いい。

 集合場所の女子寮の前に行くと、ユーグラムとディーグリー、助は既に到着していた。

 ユーグラムはヒラヒラのシャツに、長いジャケットに細身のズボン。

 ディーグリーは刺繍の派手な短いジャケットにゆったりしたズボン。

 助は騎士服の豪華版みたいな服。

 全員の靴がピッカピカ。

 男子の靴がピッカピカなのは、ダンスを踊った後に踏まれた跡を確かめる為だって!シビア!


 一番先に来たのは助のパートナーの先輩女性騎士。

 深い緑のグラデーションのドレスを着て、濃い茶の髪をアップにした、ちょっとだけ肩回りの筋肉が発達した令嬢。

 十分綺麗なんだけど、ガッツリ肩の出たドレスは、本人的には恥ずかしい模様。

 恥じらう姿が微笑ましい。

 助が礼をして手を差し出し、令嬢が応えて手を乗せると、ちゃんと褒めて二人は仲良く会場へ。

 次はシェルのパートナー。

 淡い茶髪を緩くアップにして、クリーム色のフワフワのドレスを着てる。可愛らしいお嬢さん。

 助と同じ流れで会場へ。

 通りすぎていく令嬢達が、パートナーそっちのけでこっちをガン見していく。

 次に来たのは待ち人ではなく、元ダ女神。

 白い髪をハーフアップにして、淡い緑のヒラヒラドレスを着ている。

 ドレスの色が反射して白い肌が青白く見える。

 何だか不健康そう。

 しかし、パートナーだろうキャベンディッシュか元会長の姿はまだ見えない。

 俺達の近くでウロウロしていて、時々チラ見してくるのがウザい。

 知らん顔してるのに、何とか視界に入ろうとしてるのか、無駄にチョロチョロしてるし。


 やっと待ち人が来たときも、俺達の前をウロウロしていて、とても邪魔だったのだが、まずディーグリーが、次にユーグラムが礼をして、アールスハインの場合は先にイライザ嬢が礼をして、各々にパートナーに褒め言葉を掛けて会場へ。

 元ダ女神の事は全員がガン無視。

 令嬢達が多少気にはしてたけど、パートナーがモテる男なのは知っているので、元ダ女神に声を掛ける事はなかった。

 何故か俺はアールスハインにエスコートされるイライザ嬢に抱っこされてるし。

 会場へ向かう途中に、無駄にキラキラしい衣装のキャベンディッシュと、黒を中心にラメラメな衣装の元会長と擦れ違ったが、二人は何故か擦れ違う瞬間、こっちを見てフンと鼻で笑って去って行った。

 どう見てもこっちの令嬢達の方が綺麗なんですけど?


 ディーグリーのパートナーは、ハッキリした目鼻立ちの赤い髪の大人びた令嬢。

 真っ赤な肉感的なドレスが迫力がある美人。

 ユーグラムのパートナーは、クリーム色の髪の垂れ目の可愛らしい令嬢。黄色のフワフワのドレスがより彼女の柔らかい雰囲気に似合っている。

 イライザ嬢は、紫の目に合わせた濃い紫のグラデーションのドレス。ダンスをする為なのか、スカートの部分にスリットが入って、歩く度にレースが透けてとても綺麗。

 髪はドリルを纏めてるので、とても嵩張っているけど!


 会場は、パーティー用の初めて入る建物で、巨大シャンデリアのいくつもぶら下がった、キラキラしい会場だった。

 元が根っからの庶民なので、巨大シャンデリアを見ると、綺麗さとか豪華さとかよりもまず、落ちてこないかの心配をしてしまう。

 楽団が華やかな音楽を奏で、会場の片隅には立食形式の食事が置いてある。

 所々にちょっと座れる場所が有るのは慣れないヒールでダンスを踊る令嬢達の為らしい。

 本物の貴族のパーティーでは、置かれる事は無いそうです。

 イライザ嬢が時々俺を撫でながら説明してくれた。

 イライザ嬢のお姉さんが出産の為に里帰りしていて、甥っ子が生まれたんだけど、寮生活で中々会えないのがつまらないらしい。

 物凄く可愛い!を連発してた。


 始まるにはまだ少し早い時間なので、雑談をしながら待っていると、会場がざわついた。

 皆が入り口の方を見ているので、そっちを見てみれば、キャベンディッシュと元会長の二人にエスコートされた元ダ女神の姿。

 以前の二股女よりは、多少マシな密着具合だけど、下品には違いない。

 キャベンディッシュと元会長への憧れとか、好意とかの無くなった令嬢達の視線がとても冷たい!怖い!

 それを向けられてる本人達は、自分達の世界に籠っているので気付いてもいないけど!


 カラーンカラーンカラーン


 鐘が鳴って曲調が変わった。

 どんなパーティーでも、最初にダンスを踊る場合は、身分の高い者か主催者から。

 今日の場合は、王子であるアールスハインと、公爵令嬢であるイライザ嬢から、なのだが、キャベンディッシュ登場。

 当然連れているのは平民な元ダ女神。

 同じ王子であるなら年上のキャベンディッシュが出ても構わないのだが、連れている令嬢の身分が全く違うので、この場合はアールスハインが最初に踊るのが常識。

 それなのにも関わらずキャベンディッシュが堂々と会場の中央へ。

 アールスハインもエスコートされたイライザ嬢も唖然としている。

 会場の雰囲気も微妙な空気に、楽団の音楽も止まった。


「何を図々しく出てきているか貴様!私よりも身分が上になったつもりか?!さっさと下がれ!」


「下がるのは兄上の方でしょう、同じ王子である私たちに身分の上下は無いが、パートナーの身分には雲泥の差が有ることが分からないのですか?」


「学園に身分差を持ち込むとは、学園の教えをまるで分かっていないのか貴様は!」


「この行事は貴族のパーティー出席時のマナーに準じるものであることもご理解していないのですか?」


「そもそも年下である貴様が、私よりも身分は下に決まっているだろう!」


「何か役職に就いているわけでもない学生の身であれば、同じ王の子であるだけで身分に差はありません」


 アールスハインが呆れながらも反論するが、キャベンディッシュにはいまいち通じてない様子。

 そもそも自分の立場を、アールスハインよりも上と思っているのが間違いだと気付いてもいない。


「アールスハイン王子殿下の仰る通りでございます!この場合は王子であるお二方に身分の差は無く、パートナーの身分を尊重し、ファーストダンスはアールスハイン王子殿下とスライミヤ公爵令嬢が踊られるのが、貴族のマナーとして正しいですわ!」


 二組に割って入ったのは、三角眼鏡の今にもザマス!とか叫びそうな細身の女性。

 アールスハインが会釈して、イライザ嬢も軽く頭を下げている。

 それに軽く微笑んで、ふんぞり返るキャベンディッシュに厳しい視線を送る女性。


「な、なぜキルギス夫人がここに?!貴女は王族専門のマナー講師ではないか!」


「学園長様に頼まれて、ダンスの審査に参りましたの!それよりもキャベンディッシュ王子殿下、あなた様の先程からのお振る舞い、マナーが全く身に付いておられないご様子、これは報告させて頂きますわね!それと明日からの連休は、マナーの講義を受けて頂きますわ!」


「まて、マナーの講義等私には不要だ!連休中には予定がある!」


「その予定とやらはキャンセルしてくださいまし、キャベンディッシュ王子殿下は、公務が有るわけでもないので、遊びの予定で御座いましょう?それよりもマナーの講義を受けて頂く方が重要ですわ!」


「そんな事を勝手に決めるな!私にだって大事な用事がある!」


「王族の恥を晒すようなマナーしか身に付いておられない方に、マナーを学ぶ以上に重要な用事等有りません!」


「な、横暴だぞ!」


「あなた様のそのお振る舞いこそ横暴で御座います!」


「貴女では話しにならん!父上に申し上げる!」


「そうですわね、わたくしからも報告させて頂きますわね!」


 キャベンディッシュは言い返す事も出来なくなり、元ダ女神を連れて何処かへ消えていった。


「皆様、お騒がせ致しました。パーティーをお続け下さい」


 キルギス夫人も、綺麗なカーテシーを披露して、定位置らしい場所に戻って行った。

 まだざわめきの残る会場の中央に立ち、楽団に目配せしてからアールスハインがイライザ嬢に礼をして、イライザ嬢の手を取る。

 イライザ嬢も礼をしたところで楽団の華やかな音楽がなり響き、軽やかに二人が踊り出した。

 その美しい踊りに、会場中からため息が溢れ、雰囲気が一気に華やかになった。

 一曲踊り終わった二人は、優雅に礼をして中央からはけてくる。

 多くの人にうっとりと見つめられ、拍手までされる二人は、照れ臭そうに微笑んでいた。

 視界に入ったキルギス夫人も、満足そうに笑顔で頷いている。

 ファーストダンスさえ終われば、人数の多いパーティーの事、後は身分の差は無く踊っても許されるので、多くの生徒が踊り出した。

 ファーストダンスを踊ったアールスハインとイライザ嬢を除いては、多くの生徒が踊る会場で、審査を受けるためには何度か踊る必要がある。

 続けて何曲も踊るのは婚約者か夫婦だけなので、程好く時間を置いて何度か踊る。

 その間、審査に全く関係の無い俺は、やはり関係の無いインテリヤクザなカイル先生と、料理を荒らしてた。

 食えるものが少ない!俺が噛み切れずに断念したものはカイル先生が食ってた。


 ちなみに、アールスハイン、ユーグラム、シェルの靴は最後までピッカピカで、ディーグリーは少々踏まれた跡が有り、助の靴はメコメコだったよ!シェルがそれを見て爆笑してた。

 パートナーの先輩女性騎士さんの靴も酷くて、シェルがバイブモードしてた。





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4巻の発売日は6月9日で、公式ページは以下になります。 https://books.tugikuru.jp/202306-21551/ よろしくお願いいたします!
― 新着の感想 ―
うーん、この国の『王家』には、国を治める器はないようですねえ…国王1人の不徳の致すところではあるけれど。
ロッテンマイヤーさん現るw
[良い点] 私は結構キャベンディッシュ好きです。 身分を弁えろ!と言い放った直後に、 学園に身分差を持ち出すな!という矛盾w きっと登場人物達も、読者も「え?!」って、 マトモに受け取っていると、 だ…
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