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物語ーモノオモイー  作者: 万里
7/10

異世界へ

空き教室前

琳:「え、異世界…!?」

(さらっと口から出されたその三文字は到底軽々しいものではありません。

それを軽々しく告げた奥村には改めて理解しがたい存在だと認識しました。

けれども今の鬼城からすればもう既に日常から非日常の扉は開かれた同然でした。

その分、異世界という三文字には期待しかありませんでした。)

琳:「おう…!

いつでも来いや!!!!」

楓:「君なら張り切ってくれると思ってた

じゃあ開けるよ」

(軽く微笑んだ奥村はドアノブに手をかけ、ついにそのドアは開かれたのです。


奥村は最後まで開けきり、後ろにいた鬼城にドアから見える向こうの全貌を見せました。)

琳:「…っ


すぅうげぇええーーっ!!!!!!!!」


(そこに広がるのはまさにファンタジーそのものでした。

現実離れしたような、けれどどこかレトロな雰囲気がしました。それでいて鬼城たちの世界では見たことのないような近未来な雰囲気もあったのです。

奥には山が見え、鬼城の視線いっぱいに煉瓦造りの建物や浮遊するあらゆるモノが見えました。

そして澄んだ空気が鬼城の身体を通り抜け、涼しさを感じました。)

琳:「なんだここ、本当にファンタジーだ…!」

楓:「ここは元いた世界線よりちょっとずれた場所。だから来たばかりでも空間に違和感は感じない。

この場所と僕らの世界の時空の差は100分の1くらいかな」

琳:「ひゃ、100分の1!?」

楓:「うん でも大丈夫

こっちに一時間居たとしても僕らの世界じゃ約6秒しか進んでいないのさ」

(鬼城のリアクションひとつひとつに関心しながら奥村も楽しそうに話しました。)

楓:「今はここで何かするってことはないけどね 多分近いうち必要になると思う

ただこういう世界があって、これから君もここを利用する一員になるってこと」

一員…。一体この場所で何をするんだ?

楓:「…ちなみに」

(幻想的な通りをゆっくりと歩いていましたが、突然少し前を歩く奥村が立ち止まりました。)

楓:「鉄平さんからはどこまで聞いたんだい?」

琳:「ん? あー、石のこと…いやマギアリトス?のことしか聞いてない

お前のこと知ってるようだったけどそれ以外は詳しく聞けてねぇ」

楓:「あ、そう…

マギアリトスね、よく知ってるね」

(どこかホッとしているようにも感じました。

褒められた奥村は自慢げに鼻を鳴らしました。)

楓:「鉄平さんが僕のことを知っているのは教え子だからだよ」

琳:「教え子…?なんの」

楓:「それは…近いうちにわかることだよ」

ちっ、こいつはよくはぐらかす。

近いうち、近いうちって

いつだってんだ。

(パッとしない奥村の返答にイライラしながら後をついていくと、鬼城は背後に異様な何かを察知しました。

勢いよく振り返るとそこにはまさにボッキュッボンな見目麗しい艶やかや女性が居たのです。)

「あらまぁ私めに気付くなんて、よろしゅう察知能力があること

少年…可愛いわねぇ 私めは気に入っちゃったわ」

(渋い赤茶を基調とした煌びやかな着物を纏った女性はクネクネした腰つきで近付き片手で鬼城の顎をクイッと持ち上げました。またもうひとつの片手には「きせる」を持っていました。

「きせる」とは主に江戸時代に使われたタバコです。

彼女のわたくしめ、という第一人称が特徴的に感じました。)

琳:「うっ、いや…あの」

なんだこの気持ち悪ぃおばさんは…!うぇっ。

…タバコ臭い。

(タバコの匂いが大嫌いな鬼城は反射的に避けました。

おばさんといえど、見た目は大人びた20代に見えます。)

「あらやだ タバコ嫌い?私めも吸いたくて吸ってるわけじゃないわ

見た目が良いから吸ってるだけなの」

(と言いつつも、吸口に唇をつけふぅーっと真横に煙をやりました。

手綱型の「きせる」は羅宇の部分がとても煌びやかでした。彼女にぴったりです。)

楓:「シャルド

あまり彼をいじめちゃダメだよ」

シ:「楓ちゃん居たのね 気付かなかったわぁ

それに、いじめてなんかないわ

「夫婦きせる」を持ってこなかった私めを呪うわ 今度また一緒に吸ってちょうだいね楓ちゃん」

楓:「…うん そうだね」

え、こいつタバコ吸うんか!!!!?

いいのか!?

(「きせる」のことなど知る由もない鬼城でもそれとなく会話を理解していました。

だからこそ会話の内容に衝撃が走りました。)

シ:「楓ちゃん この子なんて名前?」

楓:「…彼は近いうちに貴方の店に連れて行く予定だからその時にでも知ればいいよ」

(軽くあしらう奥村の言葉に敏感にシャルドは反応しました。)

シ:「あんら、エクソシストになる子ね!

楓ちゃんが連れるくらいなんだから…相当ね」

楓:「人材の確保よろしく頼むね」

シ:「もちろんよぉ 私めに任せなさい」

エクソシスト…?

なんだ、それ…。

(知らない鬼城は二人の会話に終始ついて行けない様子です。

それを見た奥村は、もしかして…と鬼城に話しかけました。)

楓:「エクソシスト…知らない感じ?」

琳:「おう知らねぇ なんかのブランド?」

(と言うと冷たい風と共に冷めた目線が鬼城に向きました。)

楓:「そっか なるほど…

まぁ後で話すよ とりあえずもう戻ろうか

またいつか、シャルド」

シ:「あらぁもう行っちゃうのねぇ

その可愛い子にちゃあんと教えてあげるのよ

待ってるわぁ」

琳:「あ、どうも…」

(軽い会釈をして悠々と歩く奥村の後ろに再びつきました。

先程と同じ道ですが黙々と歩いているせいか、歩き慣れてきたからか、この世界へと繋がるドアまでたどり着くのがやけに早く感じました。)

全然喋んないし、本当エクソシストって何なんだよ…。あんな冷たい目線向けられちゃ気になるだろう。

楓:「…気になってるだろうから話すけど」

(狙ったかのごとくジャストなタイミングに鬼城は内心驚きながらも耳を傾けました。

奥村は先程の鍵を取り出しドアノブに手をかけ、回すまでの間にこう言いました。

楓:「エクソシストって言うのは悪魔を祓うのが仕事の人を言う


僕らの世界じゃ『モノの想いを掬って悪魔から取り祓う仕事をする人にあたるかな」


(ここでモノと繋がった時、鬼城の脳内には静かにカチッとどこかがはまった音がしました。)



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