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物語ーモノオモイー  作者: 万里
5/10

マギアリトスーμαγεία λίθοςー

鉄平の部屋

(息がつまるほど苦しい沈黙と、神妙な雰囲気が鬼城と鉄平を包み込みました。

鉄平は平然と話続けたのです。)

祖:「だからといってこの世に存在する全てのモノに自我があるわけではない


人が情を注いで初めてモノは感情というものを覚える いや覚えてしまう」

琳:「それがどう、なの…?」

祖:「自我を持ったモノは動物同然で、見放されると悲しくなる

しかし動くことも訴えることもできないモノは

どうやって悲しみから逃れようとすると思うか」

(鉄平は鬼城に問おうとしましたが答えられなさそうなのを見て、話を続けました。)

祖:「人の中に入るんだ」

琳:「…人の中、に?」

祖:「あぁ、浸け入ろうとする

そして自分のことを忘れていた期間をー…


蝕む」


琳:「記憶を消すっていうのか…」

(鉄平は無言でひとつ頷いて再び話を続けます。)

祖:「正確にはモノのみがしていることではない

自我を持ったモノは人よりも単純な感情でしかない だから悪魔に憑けいられやすい

魔がさしたモノたちが悪魔に憑けいられ人に侵食しようとするんだ」

(話はまだ続くようです。)

祖:「モノの自分を思い出してほしいという感情と悪魔の人を侵食したい生態が相まってそのようなサイクルになっていると考えられる

記憶を貪られた人の脳は急激な負荷により正常な働きを行うことができず、徐々に機能を失い最悪の場合は植物状態になる

これがモノの自我を持つことによる悪影響だ

はるか昔はモノ自体さほど多くはなかったから上手く共存していた

モノはそのモノとして機能しなくなった途端魂も消え輪廻転生を繰り返しているとされていてー…」

(大人しく話せない鉄平は部屋をうろちょろ歩き回っていました。相槌すら入れる間もなく続けられた話が唐突に切れた原因は鬼城にありました。)

…やっべぇ。駄目だ…

じいちゃんの話すことには驚かないで平常に聞く勇気はあったが、睡魔には…勝てない。

(それに気付いた鉄平は再びガッハッハと笑い始めました。)

祖:「琳、やはりお前にはまだ早かったか!」

琳:「…ん、な! ことねぇよ!今日は疲れたの!」

慣れた気でいたが、どっと疲れがくるものだ。今日一日で今までの時間を覆すことがありすぎた。

長ったらしい話はあまり耳に入ってこなかったがこれだけは理解した。



これから普通ではないことが起こる。


日常というシャボン玉が弾けたその時、俺はどんな非日常へとたどり着くのか。

どんなことが待っているのかー…。

祖:「とりあえずここまでにしておこうか

ただひとつ聞きたいことと守ってほしいことがある」

(と言いながら親指、人差し指を順々に折っていきました。)

祖:「この魔石のこと、俺以外に言ったりしてないか?」

え…?

(ギクッとする鬼城。如何にも知られてはいけないような口調だったからです。)

琳:「え、えとぉ… いつもより輝きが少ないって龍二郎には言ったけど特に気にしている様子じゃなかった」

(あとー…と直前まで言うのを躊躇いましたが意を決して力強く言いました。)


琳:「この石のことも、じいちゃんのことも知っている奴がいた」

祖:「…!!なんだと…!?

俺のことを知っている…?」

(とても理解し難いことのようでした。

それとも、理解したくないことなのか。

鬼城にはわかるはずがないのでした。)

琳:「今日転校してきた奴でー…

奥村楓って」

(鬼城が言い終える前に鉄平は身を乗り出してきました。)

祖:「奥村!!!!?


奥村 楓…そう、そうか…」

(その苗字に激しく反応した様を見れば、近しい存在だったのではないかとすぐに勘付くことができたのです。そして以外な人物であったことすらも感じとれます。

しかしながら少しの間を経て小さく呟いたその声はどこか全てを見透かしたような様にも見えたのです。

咳払いをし切り替えた鉄平は再び話をし始めました。)

祖:「もうひとつだけ、守ってほしいことがある いや、守ってもらわなくては困ることだ」

琳:「うん 何…?」

(ゴクリと息を呑む鬼城。鉄平の真っ直ぐで揺らぐことのない眼差しに煽る緊張を身に覚えました。)

祖:「このことは全て誰かに言ってはいけない

それは友達にも親にも、だ」

琳:「親にも…!

じゃあ、楓は…?」

祖:「楓…はいい 知っている奴に隠す必要はないからな」

(そう言われればそうだよなと納得した鬼城。)

琳:「ちなみに、どうして言っちゃいけないんだ?」

祖:「バレちゃまずいからさ

信用問題ではあるがルール上関係ない者に流出することは禁じられている

もし、それが発覚したのならー…


俺はいくらお前でも抹殺しなければいけない」


…っ!!!!

抹殺…そんなにヤバイ機密情報なのか!

(今までで一番の重圧感を感じた鬼城は、とんでもない出来事へと足を踏み入れてしまったことを深く再認識したのでした。

最早鉄平を直視することすらできなくなっている鬼城。鉄平は落ち着いた声で卓袱台へ戻り巾着袋を下敷きに置かれた石を手に取り、話を切り替えました。)

祖:「…ひとつ豆知識を教えてやろう

俺らの世界ではこれのことを魔石、とは呼ばねぇ


マギアリトスー…

どうだぁ?かっこいいだろう」


(そう言っていつも通り、ガッハッハと笑い声を響かせたのでした。)


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