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物語ーモノオモイー  作者: 万里
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正体ーidentityー

あのあと

(楓は「君の貴重な時間を潰しちゃってごめん

大まかには君の知りたいことが聞けるんじゃないかな

鉄平さんはこのことを軽くは受け止めないだろうから」と言いました。その瞳は燻んだ蒼でした。

「あぁそうかい」と軽くあしらい鬼城はその場を後にしました。)


(帰宅後、リビングには父がテレビでニュースを見、母は食器洗いをしていました。)

琳:「ただいまぁ」

父母:「おかえり(なさい)」

(いつも通りのやり取りの後、しばらく近づいていなかった場所へと立ち寄るのです。

木造建築の古家に近い内装。長めの廊下をキシキシ鳴らし一番奥の部屋に着きました。)

…久しぶりだな。この部屋に入るのは。

じいちゃんとはたまにタイミングが合って軽いやり取りをするものの、こんな改まって会うことは今までに記憶がない。石の時だって、ただじいちゃんと遊んでいたその最後に渡されたものであって。

(変な緊張を抱きながら、いちをノックするべきかとコンコン響かします。)

「ほーい 入っていいぞー」

(いつもと変わらない声に安心した鬼城はいつの間にか緊張していたことを忘れガラガラと横開きの扉を開けました。)


琳:「…じいちゃん 何やってるの」

祖:「見れば、わかるだろう?

筋トレだ」

(はぁ、とため息をつきます。鬼城の祖父鉄平は筋肉バカと言ってもいいほど筋トレをこよなく愛しています。

筋トレ器具と、似つかない小難しそうな分厚い本が収納されたレトロな本棚、卓袱台な家具がいくつか置いてあるものの質素な部屋だといえます。)

祖:「珍しいじゃないか 琳からこの部屋にくるなんて

『高い高ーい』してほしいのか?」

琳:「いつの話だよ…」

確かに昔はよく『高い高ーい』と言われ片腕に捕まって上下移動し空中浮遊していた。

今考えればあれは『高い高ーい』と言えるのかすら危うい。

(ガッハッハと笑い、いつも以上に楽しそうな雰囲気を醸し出していました。)

琳:「じいちゃん そんなこと言ってる場合じゃないんだ」

祖:「ほう、なんだなんだ」

(興味津々になって耳を傾けてくる鉄平に尚更話の節を折られた気分になります。)

琳:「これなんだけど」

(と、リュックから小さい巾着袋を取り出し手渡しました。

その瞬間、中身を確認する以前から険しい表情へと変わったのです。

一瞬にして切り詰めた雰囲気へと変わり、鉄平は無言で意を決したように巾着袋から石を取り出したのです。)



祖:「…なるほど な」

(見るや否や、石に起こっている何かを即座に読み取ったようでした。

今までに聴いたことのない深く重い深呼吸と冷静な声色に、とてつもないことが起こっている。

それだけは、瞬時に理解できたのです。)

祖:「…琳」

琳:「…はい」

(まるで説教が始まるのかと言うほどピリピリした雰囲気の鉄平に反射的に敬語になります。)

祖:「言いたいことはたくさんある

だが、まず先に言おう


変化に気づいてくれてありがとう」

琳:「…え?」

今、あり、ありがとうって…。

そういや言われたことほとんどなかった…。

(だからか更に事の重大さに気付いてしまったのです。)

祖:「この変化に気付くには欠かさず磨いてなきゃいけないはずだ

しっかり守って磨いていたからこそ手遅れになる前に動くことができる」

(鉄平からの唐突なべた褒めに感動すら戸惑いすら覚えましたが、鉄平の話す間に冷静になってきた鬼城は)

琳:「そっか、なるほど

手遅れになるような事態を招く可能性があるほど重大なことなんだ」

祖:「…そうだ 」

(と言いながら再び深いため息をつく鉄平。)


祖:「どうやら、お前に話さなければいけないようだな…」

(複雑な思いをくぐり抜け意を決したような、たった一言はとても言い表せないほどの重みを抱えていたように感じました。

その意を掬い取り、鬼城は冷静に耳を傾けました。)

祖:「長い話になる 聞ける勇気はあるか

いや…聞いたが最後だ 後戻りは決して出来ない」

(その言葉にどういった意図があるのかは分かりませんでした。しかし鬼城からすれば奥村に出会い放課後起こった出来事の時点で既に後戻りはできないと感じていたため特に危機感はありませんでした。)

今更だ。人は慣れが早い、先程のことでこの緊張感には慣れてしまったようだな。

琳:「大丈夫だよじいちゃん

とっくに覚悟はできてた」

祖:「そうか それは心強いもんだなぁ」

(優しい笑みを浮かべた鉄平にいつぶりだろうかと思うほどでした。それほど緊迫感のある空間だったのです。)

祖:「これから話すことは全てがすぐに理解できるものではないと思うが、口を挟まずただ聞いておいてくれ いいな?」

琳:「…わかった」

祖:「それじゃあまず、石のことを話そう

その石はわかっていると思うがただの石ではない その石はー…」


(静寂な空間に呑まれるように目と耳に全神経を集中させました。)


祖:「モノの想いを掬う、ジョウカする力を持つ、いわば魔石だ」

琳:「魔石…?」

(壮大なスケールには思えませんでした。なんとも反応し難い事実が理解を苦しめているようです。)

祖:「琳、お前は小学生の時大事にしていた物を覚えているか?」

琳:「え?えぇと… あぁ!『バッグモン』の指人形とかかな…」

(唐突な振りに焦りながらも指人形の存在を頭から捻り出してきたのです。)

祖:「そうか じゃあこれで多分指人形は救えたかもしれない」

琳:「は…?どういうこと?」

(全く理解が追いつかない鬼城に鉄平は言いました。)



祖:「物…モノたちにも情が、自我があるんだよ」



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