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物語ーモノオモイー  作者: 万里
3/10

美少年と石

放課後。

(帰宅部の鬼城は帰りのSHRを終え、奥村の方向をじっと見ています。

朝と変わらず、いやそれよりも多い女子に囲まれ身動きが取れない奥村。)

…一向に動かねぇ。てか動けないのか。

早くしてほしいものだ。

なにせ俺は早く家に帰りたい。

(いつも通り軽めのリュックをひょいと持ち上げ奥村を何度見もして教室を出ようとした時です。)

龍:「琳帰ろーぜぇ」

(うぃーっと両手を上げて背伸びする大坂上に振り返ります。)

あ、そっか。別に二人じゃなきゃいけないわけじゃないのか。

(そう思い、あぁいいよと言おうとした直前です。全く目線が合わなかった奥村が全力でこちらに振り返ってきます。同時に全力で首を小刻みに横に振りまくっているのです。)

琳:「…あ 悪ぃ

先に帰っててくんね?」

(鬼城の目線の先を既に確認していた大坂上は、プッと笑いを堪えて軽く頷きました。

それなりの人数に見られた奥村は顔を真っ赤にして居心地悪そうに早々と立ち上がり、奥村を囲んでいた女子は「ええ もう帰っちゃうの〜?」などと言いたい放題。私達の奥村を取らないでと言わんばかりの会話に鬼城を非難するように思われましたが「まぁ琳君と二人っきりで帰るならそれはそれで…」と満足な様子。

眼福の問題のようです。)

楓:「すいません…」

相変わらずな様子だな。すげぇヘコヘコしてる。同い年なのに。

琳:「大丈夫? 行こうか」

(なかなか鬼城のもとまでたどり着けない様子だったため席まで迎えに行きます。それを見ている女子の目は輝いています。強行突破のために鬼城が奥村の腕を引っ張っているからでしょうか。)

たった1日でこんなに人気なるなんて大変だな。

しかし悪いが向き合う義理はない。

俺は早く家に帰るという使命がある。

いつも通り、自由にゴロゴロしたいのもあるが今日はそれだけではない。

じいちゃんに石のことを聞かなくては。気になって仕方ないんだから。

(またね〜と黄色い声を自分にも向けられていることを知らない鬼城と戸惑いながらも苦笑いを返す奥村は、ようやく教室から出たのです。)


琳:「ええっと、大変だね 来たばっかりであんなに女子に囲まれちゃあ…」

(奥村は淡々と歩くので、話し始める雰囲気すら感じられず沈黙に耐えられない鬼城はおどおどと話しかけます。)

楓:「え? まぁ…あんなことになるなんて思ってなかったから終始緊張していたよ

初めてだよ、人にあれだけ囲まれるのは」

琳:「へぇ?まぁ確かに落ち着いた雰囲気だからね ウチは人が少ないから転校生ってなると皆興味津々になるんだ」

俺もその一人だったが。

琳:「どう?海外とはやっぱ違うもの?」

楓:「うーん、来て間もないからよくはわからないけどゆったりと時間が流れていく感じが僕は好きかな」

琳:「…そっか」

ふわふわした雰囲気なだけあって時間の流れさえゆったりしたところを好むのか。騒がしいところが大好きな俺とは真逆ってわけだ。


(そんなギクシャクした会話をしているうちにやっとのことで正面玄関までたどり着きました。いつになったら話し始めるの?とソワソワしている鬼城。すると奥村は一緒に下校しようかと尋ねてきたときと同様の真剣な眼差しで鬼城を見るのです。)

なんだ、神妙な顔して…。

何か俺についてるのか?

琳:「…?どうし」

楓:「琳君、ちょっと こっちいいかな」

(そう言って誰も居ないであろう空き教室のドアを開けました。

しばらくの沈黙の末、口を開いたのは奥村です。)

楓:「君の持つその石、どんなものか知ってる…?」

琳:「…?いや特には ただ家宝みたいなもんで代々受け継がれている石だからって…」

楓:「なるほど その石は…」

(妙な間と逆光により真っ暗に見える背中に鬼城は息を呑みました。)



楓:「おじいさんから受け継がれた石だね?」


琳:「は…!!?」


(驚くのも無理もありません、言ってもいないことを言い当てられたのですから。

いえ正確には、知っていたように感じたのです。その顔はとても複雑そうで、悲しい表情だったのでした。

奥村はさらに続けました。)

楓:「君のおじいさん、鉄平さんでしょう」

琳:「…!!

さ、さっきから一体!」

楓:「落ち着いてよ 君にこんなに早く会えて話せるとは思ってなかったよ」

なんだこいつ…!まるで別人のように淡々と話しやがる…っ!

(期待感なんて完全に引っ込んで、最早恐怖しか感じれなくなっていました。)

琳:「何者なんだよ一体…!

石のこと、知ってるのか?」

楓:「…あぁ 知っているとも

けど 僕から言う話ではないかな」

なるほど、この場で言う気はないと。

つまりは

琳:「じいちゃんに聞け、ってことだな?

…もともとそのつもりだったよ」

(ひとつため息を深くつきながら察した鬼城を見て奥村はふふっと弱々しく笑みをこぼしました。)

楓:「そういうこと

確か、明日は土曜日だよね」

琳:「あぁそうだが」

(ならー…と、ゆっくり鬼城に近づく奥村。

神妙な笑みを浮かばせこう言うのです。)


楓:「明日この教室で会おう」


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