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065 インディの豹変

 海底を歩いてマージョのいる島の浜辺に到着した。


 島に接近するにしたがって、海底の昆布が多くなり、身体中に昆布が巻きついているが気にしないで浜辺に上陸した。


 一見、普通の大きな島のイメージであり、中央に大きな山が見える。


 浜辺に面した場所に学校のような建物が見えた。


 広い砂浜を校舎の方向へ歩いて行くと10人程の司祭服の若者が、戦闘訓練らしき事を行なっている。


 無手で5人対5人で乱取りをしているようだ。


「すみません。ここはオンタリオ島でしょうか?」


 10人の司祭がこちらに振り返って驚いている。


【呆れた。普通は見つからないように行くものでしょう!】


 インディに突っ込まれるが、何もない砂浜じゃ無理でしょ?


【ステルスモードを忘れてます?】


 忘れてたが、使っても無理っぽいな。

 全身の昆布まみれの黒騎士姿を見てため息をついた。

 体が見えなくなっても体に巻きついてる昆布は消えないからな。


「貴様なにものだ! メアル、教官を呼んできてくれ不法侵入者だ!」


「わ、わかりました!」


 小柄な司祭が、走って建物の方向へ走っていった。

 残った九人に囲まれる。


「我らに囲まれたら逃げれないぞ!」


 先程叫んだ司祭が、警戒しながら構えた。


「遭難者です。争うつもりはないので、マージョにあわせてもらえますか?」


 機械化の影響かロメロ司祭などの改造されていても生身の人に全く負ける気がしないので、緊張感もなく温和に会話してみた。


「お前は、何者? 遭難者がなぜマージョ様を知っている? 魔女か?」


「魔女ではないですね。ロメロ司祭に言われてマージョに会いに来たのですが船が沈んでしまったので、泳いでここまでは来た感じですか?」


「ロメロ司祭? 西大陸司令官じゃないか! わかった暫く待ってくれ」


 ロメロ司祭の名前を出したら、緊張がなくなった感じになる。

 ロメロ司祭は、偉い奴だったんだな。


【昇、無事にロメロ司祭とレベロが大陸に到着したわよ。ロメロ司祭はリジェネレータだったので、発射時に衝撃で脛骨骨折して着水時にレベロをかばって右手を骨折したようですが、既に完治してレベロを背負ってルナの所へ移動中。レベロは、発射時に脳震盪で気絶。着水前になんとか回復して外装を破壊して着水衝撃は、ロメロ司祭が守ってくれたので右足の骨折で済んだようです】


 お! 無事に着いたのか! こちらも大丈夫だと伝えておいてくれ。


【連絡出来る自体で無事な認識かと】


 何故か呆れた感じで回答された。


 連絡出来る事と無事とはイコールじゃないんだが、やはりインディとは価値観がずれる。


 脳内でインディと話している間に、メアルと言われた司祭が銃器で武装した5人程の黒い司祭服の人物を連れてきた。


「バドム教官! ロメロ司祭の関係者のようなのですが、どうしましょうか?」


 囲んだ司祭の一人が、黒い司祭の一人に質問した。


「ま、まさか! あの爆発で生きているのか? 貴様、どうやって脱出した?」


 新しく来た教官と言われている司祭が、手に持っている銃器の銃口を私に向けて質問してくる。


 強制揚陸艦の自爆を知っているという事は、私の事情を知っているのだな。すぐにマージョに連絡がつきそうだな。


「あの程度では、私に対して意味がない。マージョと話し合いがしたいのだが案内してもらえないか?」


「わかった、少し待て」


 服から通信機を取り出して何やら会話を始めた。

 会話内容を聞こう思ったが知らない言語で話し始めた。


【暗号ですか? 私の知識に無い言語です。解析までに時間がかかります】


 まぁ、内容を知っても対応は変わらないと思うけど気にはなるね。


「わかった。マージョ様がお会いするそうだ。ついてこい」


 しばらくして、安心できる回答が来た。

 無用な殺生は避けたいので大歓迎である。


【昇は脳天気ですね。罠だと殺されますよ】


 罠だと思うかい?


【ほぼ罠ですが、マージョ如きに私と昇が倒される訳がないので問題ありません】


 なんだよ! だったら文句を言われる理由がないのでは?


 バドム教官が、通信機をしまって武装を解除した。

 四人の黒服の司祭に囲まれてバムド教官のあとをついていく。


「先ほどの司祭は何者ですか?」


 若い10人の司祭の事が気になって聞いてみた。


「東の大陸の攻略組で、3年生だな。4年生になると選抜されて毎年100名が東の大陸に派遣される」


 東の大陸で暴走している古代兵器の始末を定期的にやっている話だったな。

 西の大陸と違って全ての除去に時間がかかってる理由はなんだろう?


 案内されるまま、学校のような建物に入りエレベーターに案内される。

 乗り込む際に、バムドと言われる人物以外の4人は乗り込まず、私とバムドだけが乗り込んだ。


 ドアが閉まって、しばらくしてから違和感が襲った。


「ん?」


 下降の感覚があったが、今は横に動いている感覚があった。


「この移動装置は立体的に移動する。すぐに到着するから安心してくれ」


 一言、言っただけでバドムが悟って答えてくれた。

 この人、かなり優秀かもしれない。


 結構な時間移動するとエレベーターが、開く。地下だと思われる大きな空間に出た。

 大きなコンピュータのような物体の上に直径5mを超える水槽が3個あり、それぞれに人間の脳のような外見の大きな物体が培養液に浸かって存在していた。

 脳には、多くの針のような電極が刺さっていて、時折チェレンコフ光の様な青い光を発光していた。


 その水槽の前に、死んだはずのルクとチエミが司祭服で立っていた。


『私がマージョだ。お前が、昇か? 昆布?』


 全身が昆布まみれなの忘れてた。


【まあ……昇は外見に無頓着でしたね。ここに来るまで施設の分析をしましたが、私の分身は乗っ取りに失敗したようですね。想像以上に旧式の施設です。ハイレベルの私が動けない程の低水準の技術です。それをマージョの能力で対応して無理やり動かしている感じですね。東の大陸の攻略が進まないのも理解できますね】


 インディが、呆れた感じで教えてくれる。

 インディが開発された時ですら東亜機械重工は、ビックテスラより技術力が低かったのだから当然と言えるのか?


『一度は敵対してしまったが、ここにやって来たが敵意が無い所を見ると和解か? 私も一方的な判断だったと思い、君が必要な2人を用意した。今後について話したい』


「ノボル、マージョ様は素晴らしいお方です。是非お話を聞くべきです」


「ノボル、マージョ様は人間の未来を見据えた行動をしているだけだ。敵対する必要はないぞ」


 ルクとチエミが、話しかけて来た。

 記録では死んだはずでは? 死者蘇生?


【どうやら、マージョは機械工学よりもバイオテクノロジーに特化した存在のようですね。生体の蘇生には、嫌悪感がありますが話を一度聞いてみますか?】


 珍しく、インディが穏和路線である。


【昇は状況が見えてないようですが、ここで敵対した場合の生還率は低いですよ】


 そうなのか? インディが散々技術力を馬鹿にしているので、話している内容に違和感がある。


【あははは。 本当に昇は、面白いですねぇ。戦闘力の話じゃないですよ。ルクとチエミは、保護対象だから洗脳されていて襲われたら反撃できないですよ。まぁ、もういいですよ。私の名前は……ヒルク・モシト!】


 ヒルク? インディ?

 突然、全身の感覚がなくなり右手に黒い剣が握られていると思った瞬間。


 ルクとチエミまで一気に移動してルクを真っ二つにしていた。

 移動速度があまりに速かった為に身体にまとわりついていた昆布が全て飛び散る。

 すぐにステップして移動して横にいたチエミに歩み寄る。

 チエミの、首を一瞬で刈り取った。


 え!?


「ノボル……」


 上半身だけになったルクが、血を吐きながら名前を呼んだ。

 チエミは既に即死している。

 ルクの目から生気が失われていく。


【ああ、面白い。50%を超えたと思ったら既に支配率が60%を超えた。全く昇は面白い】


 体が全く言う事をきかない。

 インディ……どういうことだ!!


 さらに、バドムがいる場所へ走り寄り剣を構える。

 バムドが突然の事に、判断が出来ないがとっさに手に持っている銃器を昇に発砲した。

 信じられない正確さで剣で弾丸を剣で弾いて銃器ごとバムドを真っ二つにする。


『なんだというのだ! 騙したのか昇!』


「私は昇ではないよ。二流企業のポンコツ頭脳。お前の情報は全て頂く」


 マージョが、声を荒げて話しかけてくる。あまりの状況の変化に対応できていないようだ。


 一気に走り出しマージョの本体と思われる水槽を叩き割り中の脳の形の生体に剣ごと右手を差し込む。


『なんなんだ! お前は!なん……』


 空間を照らしていた照明が全て落ちて、周りが暗闇に包まれた。


 黒い鎧の右手が液化してマージョを侵食し始めた。


 馬鹿な! 全く体の自由がきかない。

 説明しろ! インディ!!!

用語説明


昆布

こんぶ属の褐藻類の総称。寒い地方の海岸近くの海底岩に生え、おび状。


銃器

個人で持ち運びする、小銃・ピストル・機関銃などの武器の総称。


脳天気

空に雲一つないようになにも考えていない様子を言い表している。

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