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062 接触

 船の艦橋(ブリッチ)で、モニター越しにマージョの本体らしき存在と対峙している。


「貴方がマージョなのか?」


『その通りだ。白鳥 昇』


「何故、私の名前を知っている?」


『過去の多くのデーター残っている。ロメロ司祭の情報から君を割り出した。今度は、私の番だな。君は何者だ?』


 名前を知っているのなら分かっているのでは?


【相変わらずの思考回路ですね。予測だとルナに渡した情報の一部から民間コードなどで昇の情報を引き出したようですが、昇がビックテスラに搬入される前の民間データベースからでしょう。ビックテスラ社の情報は、昇も私も極秘で開発されましたので全く持っていないのでしょう。隠蔽を推奨します】


 隠蔽と言っても何処まで隠す必要があるんだ?


『回答しないのか? これは質問ではなく命令だ。白鳥 昇。君は医療目的でコールドスリープしてビックテスラの施設に移動した事はわかっている。それ以降の話をしてもらいたい。ルナを従える権限保持は、月コロニーと研究所の管理者である製薬会社アンベンの幹部でなければ不可能だ。君の記録は西暦3000年から途絶えている』


 何処まで話して良いかわからない。

 インディ?

 インディが無反応である。

 何か特殊な感情の思考を感じる。

 怒り?


「コールドスリープから目覚めたら西の大陸に居て、民間コードを保持していたのでルナが従ってくれた。この程度ですよ」


『……それはおかしい。西の大陸は暴走した兵器を殲滅した後に多くの司祭を送り込んで調べているが、ビックテスラの施設は発見されていない。何処から現れた? ルナの対応は、君に対して完全なる従僕になっている。いくら民間コード保持者に対してルナに保護義務があっても従う理由にならない。そもそも君は何故生きている? 発病しないのか? その鎧が気密を保持しているのか?』


 私がエネルギー不足で硬化中に私が居たビックテスラの施設の入り口などが朽ちて完全になくなっていたのか?


【クソ……格下…破……】


 インディの様子が変だ。

 とりあえず、知らぬ存ぜぬを通してみるか。


「だが、これが全てだぞ」


『信じない。全てを語るのだ。君が助けようとしている対象は私の手の内だ。返答次第で対応しよう』


 ルクとチエミの事か?


【マージョ如きが!】


 インディの強い思考が流れ込んできた。


『な……貴様!! 馬鹿な選択をしたな。私は貴様ごとき容易に消し去れるの……』


 プチン!


 目の前のスクリーンに映っていた画像が消えた。


 何事?


【私と昇に命令……を……しやがったんですよ格下二流のマージョが……これが怒りですか? 瞬時に通信回線を逆探知してハッキングを仕掛けたのですが、気づかれて物理的に断線されました。良い情報と悪い情報がありますがどちらを先に聞きますか?】


「アハハハ!」


 良い方かな?と考えた瞬間にロメロ司祭が立ち上がって大声で笑いだした。


「何をしたのかわかりませんが、マージョ様が初めて取り乱した所を見ましたよ! 流石、ノボル様です」


 え? 更に混乱するんだが。


「どう言う事だ? ロメロ司祭は、マージョの配下ではないのか?」


「マージョ様の配下ですよ。ですがマージョ様の目的が、先日完了したと聞き及んでいます。そうなれば私達は消されるでしょう。ノボル様を知らなければ喜んで身を捧げましたが、新たにノボル様の存在を知ってしまったら貴方に従うのも良いかと思い始めていた所ですよ」


「消される?」


「マージョ様の目的は、元の地球に戻して地球外にいる始祖様を迎える事ですから。私達のように発病しないが感染している感染者は処分される予定です」


 ルナと目的がほとんど一緒なのだな。ルナの場合は月コロニーの人々だったが、マージョを従えている人間は何処に?


【昇、良い方から伝えます。マージョにハッキングした際に低レベルのセキュリティーでしたので物理的断線させられまでに、マージョの施設に私の分身を送り込むのに成功しました。施設を掌握するのも時間の問題だと思います】


 月に送ったインディコピーみたいな物か? 悪い話は?


【ハッキングの際に取得したデーターの中にルクとチエミが既に死亡していて、バイオハザードの細菌に対する血清の完成と治療法が確立されていました】


 は?

 嘘でしょ?


 ルクとチエミの顔が頭に浮かんだ。

 一瞬だけ哀しみと怒りが湧き上がるが、ロボットの為か鎮静化してしまった。


 短い期間だったが一緒にいたために無意識に思い入れがあったのだろう。

 ルナも同じような事を今まで行ってきたと思うが、ルナと違ってマージョに対しては何故か許す事が出来ない。


 原因は、何だろうか? インディも何故か過剰に感情的になっていた気がする。


「ロメロ司祭、この船はこのままマージョの所へ向かうのか?」


「少しお待ちくだい」


 ロメロ司祭が船の制御装置に近づいてコンソールを操作して調べている。


「不味いですね。マージョ様からの遠隔操作が停止しています。ただ前進しているだけで制御されていません。このままだと防衛装置などに攻撃される恐れがあります」


 それは、困ったな。インディの分身がマージョの施設を乗っ取る迄は、停止させて動かない方が良さそうだ。

 インディ、この船を制御可能か?


【昇、もう一つ悪いお話しがあります】


 やな予感がする。


【非常に乗員が少ないので船に何か仕組まれていると考えて船にアクセスをしていました。先ほど制御装置を掌握するのに成功しました。

 調べると爆発物が積載されていて、定期的に解除コードを入れないと爆発するようです。船には私達三人しか乗船記録を見ると乗船していません。初めから自爆を視野に入れて仕組まれたマージョの私達に対する保険のようですね】


 それって、マージョからの制御を失ったのなら爆発するから逃げなくてはいけのでは?


【積載されている爆破物が熱核兵器です。ただ離れるだけでは危険回避出来ません。衝撃波は回避出来ませんが海水でダメージをかなり回避する事が可能。ただちに海中の深深度へ潜水することを推奨します】


 そんな爆発力の物なのか? 爆発物の設置場所は?


【まさか、止めるつもりですか?】


 インディならどうにかなるのでは?


【いつ爆発するかわからない熱核兵器に接近するのは大変危険です。私達でも蒸発します】


 どうにかならないのか?

 ロメロ司祭やレベロを助けれるなら助けたい。


【……昇のらしい選択ですね。定期的に入力された過去のログを参照してコードを解析終わりました。30分おきに入力されています。次の解除コードを入力する迄は、23分ありますね。23分で解除コードを手に入れるか、爆発物の解体をするか、脱出するかの三択だと思います。例外でマージョが直接爆破コードを入れる場合も想定できますが、用心で私しか爆発物の回線にアクセスできないようにしましたので無問題です】


 インディは、次のコードを手に入れてみてくれ。レベロに連絡して航空機の格納庫に呼んでくれ。


【……助ける事には納得いかないですが、一番危険性が低い脱出なので了解しました。昇の危険度が限界水準を超えた場合は、こちらで対応させてもらいます】


 インディの水準が、どの程度かわからないがとにかく移動しよう。


「ロメロ司祭に聞きたいが、マージョの配下を辞めて私の配下になるのか?」


「勿論ですね。より正しい力ある者に従うのは、世界の理ですから」


 満面の笑みでロメロ司祭が即答した。

 それって、弱ったらすぐに裏切るって事では?


【この司祭の排除を進言します】


 まぁいいさ。どうにかなるだろう。


【昇の思考回路は、未だに理解できません。偽善行動ですか?】


 時間が不味いと思うので、インディとコミニケーションしてる場合ではない。


「ロメロ司祭、航空機の格納庫に案内してくれ」


「わかりましたが、航空機? 何処かに行かれるのですか?」


「理由は、あとで話すよ。とにかく急いでくれ」


「わかりましたノボル様。こちらです」


 ロメロ司祭が、足早に移動するのを私が追いかけた。

用語説明


従僕

一定の年限を決めて住み込み奉公する者のこと。


気密

外部の気圧の影響を受けないように装置を施して気体を流通させないこと。


配下

ある人の支配下にあること。また、その者。


遠隔操作

電気信号などを利用して機器・装置などの操作を、その機器・装置から離れた場所から操作すること。


解除コード

コード (code) とは、メッセージを特別な知識や情報無しでは意味が分からないように変換する秘匿手段の一つであり、暗号の一種である。

今回のコードは30分おきに爆発物に入力しないと爆発するので爆破解除コードとなる。

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