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061 対面

 部屋で待機していると、軽い振動があって船が動き出したようだ。


【船室では、充電効率が著しく悪いので甲板へ上がることを推奨します】


 特にする事も思いつかない為に、甲板に上がることにした。

 階段を上がっていき空母の様な航空機が離着陸出来る広い甲板がある階層へたどり着く。


 これは広いな。

 広い甲板には、航空機などは存在せずにただ広い。


【航空機は、甲板端にある大型エレベーターで艦内に収容していると思われます】


 それにしても、人気が無い。

 甲板に来るまでに、誰にも会わなかった。


【……おかしいですね。私のセンサーに全く反応がないです】


 船全体に不穏な空気を感じた。

 なんだろう?


 ロメロ司祭を探しに艦橋に行ってみよう。


【何かがおかしい気がします。甲板に来るまでに生命反応が、皆無でした】


 最小人数と言っても、この規模の船で見当たらないというのもおかしい。

 レベロと合流するのが良さそうだ。


【レベロの場所なら、わかります。そこの昇降口を降りて船室エリアに移動してください】


 インディに案内されるままに、船室へ移動してレベロがいる船室に入る。


 ベットで呑気にレベロが寝ていた。


「レベロ、特に変わった事はなかったか?」


「ノボルか? 変わった事って言われても、ノボルに出会ってから全てありえない感じだぞ。あの司祭かなりヤバイ奴だったな。あれは人間か? それよりもノボルについていくと言ったものの、これから何処に行くんだ?」


 レベロの片目はナノマシンの義眼である。視覚に文字を投影してインディと対話出来るのだが、インディから何も説明を受けていないようだ。


【説明しても理解出来ないと判断して説明していません】


 そうだよね。


「過去の存在に関しては、どこまで理解しているんだ?」


「過去に凄い文明が進んでいる時代があってルナ……様やノボルがその時の人物だった事までは理解しているつもりだが、この船もスゲーが、どこまで凄いかはわからない。空の星まで飛んでいけるって言われても信じるかもな」


 信じる以前に、本当に星まで行っていた時代なんだが説明する気になれない。インディが説明しなかった理由もわかるかな。

 レベロでもすぐに理解出来るレベルの説明をしておこう。


「ルナとは、同郷の関係で仲良くなったが、もう一人マージョと言う奴がいるんだ。まだ、敵か味方かわからないが会いに行く途中だな」


「ルナ様以外に、まだいるって事か? おお! 腕がなるね!」


 ジャリン!


 レベロが指を硬化させて、指と指をぶつけた。

 ナノマシンで構成された指を使いこなしているようだ。

 私より器用なんじゃないか?


 背後のドアが開いてロメロ司祭が、入ってきた。


「ここにいましたか、ノボル様。船が無事に出航できましたので、今後のことでお話にきました。従者の方は外してもらいたいのですが?」


「私は、このままでも構わないがレベロに聞かれると不味い話なのか?」


「少しでも用心したいのでお願いできますか?」


「わかりました」


「では、艦橋でお話しします。レベロ様は、ここでしばらくお待ちください」


「了解。ノボル……様。ここで待ってるが、話が終わったら少しは聞かせてくれよ。俺だけ何も知らないのは、やだな」


「わかった」


 レベロを置いて、ロメロ司祭と船の艦橋へ移動した。


 艦橋は、航空機の離着陸の管制塔としても利用されるために視界が大変良い。

 改めて船の全体を見渡すとかなりの大きさなのが理解できる。


【移動中も私達以外に、生命反応は皆無でした。船の操縦はオートパイロットになっておりマージョが設置されていると考えられる東亜機械重工の秘密基地で最大の基地であるオンタリオ島へ31ノット移動中です】


 30ノット前後だと約55km/hぐらいかな?インディが現状を教えてくれる。


「さて、ノボル様。こちらにお座りください」


 場所的に船長が座るような椅子があり、そこに案内されて腰を下ろした。

 ロメロ司祭が横に立つと、小型の端末を操作した。


 ガッコン! キューン……


 天井から大型のスクリーンが降りてきた。

 精密な上空写真が表示されて、中心に今から目指している島らしき場所がある。

 左下に大きな大陸が映っていて、大陸からすぐ横に出航したばかりの私たちが乗船している船がいるのが分かる。

 驚いたのが、島の右上に今までいた大陸と同じ規模の大陸が存在していた。


「さて人払いも終わりましたから、いろいろお話しましょう」


 ロメロ司祭から情報が引き出せそうだな。

 遠回りは、苦手なのでストレートに聞くことにした。


「今から会う人物とは、マージョの事ではないですか?」


「え!」


 ロメロ司祭が、驚愕の顔をしたと思ったらすぐに真顔にもどった。


「流石、始祖様ですね。ノボル様がどこまで知られているか存じてませんが私の本当の立場は、これから行くマージョ様に仕えております。そして、西大陸のルナ様の管理を受け持っております」


 おっと、そうだったのか。


【そうでしょうね。そうでなければ辻褄があわない事が多いですね】


 インディは知っていたのか?


「それでは、初めて会った時に言った魔女とは?ルナの妨害をしていた魔女とは何者なんだ?」


 ピシリ!


 ロメロ司祭が右手で頭を叩いて申し訳ない顔をする。


「まさか、ノボル様が始祖様だと思っていなくて勘違いしましたよ。順を追って話します。地球は地殻変動などで、現在は西と東の大きな大陸と島が点在しています。過去にあった大規模なバイオハザードで始祖様達は滅びかけました。

 マージョ様のいる島に残された始祖様達は、この地球が回復するまで地球から脱出なされました。マージョ様は、地球復興に取り組みました。

 まずは、地球に残された暴走している兵器を取り除く事を開始しました。

 長い年月をかけて、バイオハザード内でも生活出来る始祖様に似た生命体を作り出し、私のような暴走した兵器と戦える人工生命体を作りだしました。

 地上には、暴走している兵器を生産する拠点が多く残っておりマージョ様と兵器の戦いが継続していきました。

 西の大陸の兵器を全て破壊して東の大陸の攻略に移る際に、内乱が起きました。

 生殖可能な人工生命体の一部がマージョ様の使い捨てのような扱いに対して異を唱えたのです! 尊敬すべきマージョ様に許せない行動です!」


 ロメロ司祭の顔がみるみる赤くなっていく。激怒しているようだ。


「そいつらは、マージョ様の命令に従わず離れていきました。稀に我らの行動を妨害するのですが理由は不明です。西大陸では、マージョ様に仕える司祭の中で、そいつらを魔女と呼び抹殺の対象になっています」


 ロメロ司祭が激昂していたが、しばらくして落ちついたようなので質問をしてみる。


「初めに言われたルナ様の眷族も気になるのだが?」


【昇? 私に聞けばよいのに。既に解析は終わっていますよ】


 インディは、ルナの情報を全部持っているが、私は断片なのでわからんよ!


「西大陸には、他にもノボル様のように過去の遺跡から現れるルナ様の様な存在もいらっしゃって、ルナ様と会う事でルナ様の眷属として説得して仲間に入れております。まさかノボル様のような民間コードを保持した始祖様が現れたのは初めてです」


【ルナの記憶では、過去に3体ほど人工頭脳ではないファジー回路が入った人型ロボットが確保されていますね。三体とも改造されてルナの記憶を入れる器になっているようです】


 なるほど。ルナが外出用の素体に使用していると言う事か?


「では、話の続きを。数百年間後に西の大陸で活動していた私達の仲間からバイオハザードを引き起こした細菌に対する抗体を持つ者が現れました。

 いつか戻られる始祖様の為に、血清を製作する計画が立案されました。

 そこで西に大陸に抗体を作りやすい人工生命体を繁殖させる計画が実行され、残された東の大陸の攻略を並行して実施してきました。途中でルナ様が月から来訪なされて西の大陸で人工生命体の国を作りましたが、マージョ様と目的が同じ事がわかりましたので、ルナ様にはマージョ様の事を隠蔽して西の大陸を納めてもらっていました。ルナ様には申し訳ないのですが誤情報をお渡ししてマージョ様と上手くバランスをとっております」


 なるほど西の大陸には、『マージョの司祭』と『ルナの配下』と『魔女(マージョから脱退した西の大陸攻略時の生き残り)』の3個の勢力があるという事だな。


「東の大陸の暴走した兵器の除去は何処まで進んでのですか?」


 ロメロ司祭が渋い顔をして振り返る。


「私は、西の担当なので詳しくはわかっておりませんが、膠着状態が数千年も継続していると聞き及んでいます」


 マージョに会わないと全てはわからないようだな。


「ルナが何度か島へ行こうとしたが攻撃された話は、嘘なのかな?」


「それは、本当の事ですね。安全な航路以外を通れば過去に残された防衛装置や島自体の防衛装置に自動で攻撃されますから。今回は、攻撃はされない予定にはなっております。あとはノボル様しだいかと」


 私次第?


 目の前のディスプレイに映っていた航空写真が突然消えて、どこかの大きな空間が映し出された。


 空間の中心に大きなコンピュータのような物体の上に水槽が3個あり、それぞれに人間の脳のような外見の大きな物体が培養液に浸かって存在していた。

 脳には、多くの針のような電極が刺さっていて、時折スパークの様な青い光を発光していた。


【マージョはバイオテクノロジーを使用して構築された人工頭脳と聞いていましたが、まさかこんな仕様とは。これは、外部に情報が残っていないわけだ。極秘にしなくていけない存在だったのですね。存在自体が当時の法律を三ケタは違反していますね】


 マージョ? これがそうなのか?

 インディの嫌悪感が感じられる思考が頭に響く。


「マージョ様、ここにおられるのが始祖様のノボル様です」


 画面に向かってロメロ司祭が、膝を床について頭を下げる。


『外見が人ではない? 鎧か? 初めまして昇。白鳥昇であっているかな?』


 デスプレイの向こう側に居るマージョだと思われる存在が、艦橋にあるスピーカーから話しかけてきた。


 私の名前を知っている?


【これは、ルナとは比較できないほどの存在かもしれませんね】


 初めてインディから焦りの思考が伝わってきた。

用語説明


甲板

船舶の上部の、鉄板で張りつめた、広く平らな床。デッキ。


艦橋

甲板上の檣楼内など高所に設けられた指揮所。


管制塔

航空交通管制を行う施設である。航空交通の指示や情報を航空機に与える業務を行うところ。


辻褄

合うべきところがきちんと合う物事の道理。


ファジー回路

多値論理の一種で、真理値が0から1までの範囲の値をとり、古典論理のように「真」と「偽」という2つの値に限定されない。

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