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060 情報交換

 パルが昇へ向かって凄い速度で走って行く。

 地面にパルの足跡が深く刻まれていく。


 服は着ているのだが、大地との摩擦と衝撃で靴は破壊されて脱げてしまっている。

 服から見える露出している部位は、全てメタリックな外見で人型の鉄の塊が疾走している。


 パルは、昇に足を治療してもらった時は生まれ変わった気分であったが、今回は完全に生まれ変わったと認識した。


 パルの頭の中のチップには、昇と同じように機械化したためにデータに起こせなかった感情の01配列と自分の記憶とインディの記憶が残っていた。


 インディの記憶のおかげで、旧遺跡である全ての電子機器の操作から仕組みまで理解してしまった。知識を応用して衛星とリンクして視界を見ながら移動している。


 パルの頭の中に昇が船で出航する様子が伝達される。

 船で出航されてしまっては航空機で追うしかなくなると考えて、衛星からの上空写真を観察して、デシュタール帝国に存在する航空機を検索する。


 昇の中のオリジナルインディは、パルと同化して自分の分身が変質したことに気が付いていないために、逆にサポート的な情報がオリジナルインディから送られてくる。


 無理に合流しなくても良い。船が出港後に航空機で追う場合は、追撃される可能性が高く王城で待てというインディからの情報がパルの頭の中に流れた。


 パルが、速度を緩めて立ち止まる。

 外見がメタリックであったが、偽装を開始して肌色へと変化していき人間の外見を取り戻していく。


 昇を救う方法に関して、何も考えずに走っていたことを思い出した。

 立ち止まって、パルはインディの知識を全て利用して対策を考え始めた。


 実際に昇に追いついて、物理的に昇の中から体の制御も担当しているインディのチップだけを除去することは不可能である。

 昇をハッキングして、パルとインディが同化したチップがインディのチップを乗っ取る事が出来れば解決である事を立案する。

 成功確率は、80%越えであったが、万全の準備をして100%にならない理由がわからない。

 理由について検証するとインディではなく昇の判断に左右される場合があるのか?


 ハッキング中に昇が賛成している場合と反対している場合で、成功率に差が出ると言う事だが、インディに思考を読まれている昇にインディにばれないように、インディの目的を伝える事は可能だろうか?

 昇はインディの目的を知らなくては、反対するだろう。


 船に到達するまでに月のコピー昇との情報の共有化を行ったら履歴を発見した。

 コピー昇に認識させてから、インディの検閲を通さすに昇に情報共有すれば可能である結論に達する。


 ゆっくりと、デシュタールの王城へ向かいながら衛星回線を利用して月研究所へパルはアクセスを開始した。


 -------------------------------------------------------


 コピー昇が白衣を着た女性の姿で、月研究所の中枢までたどり着いた。


 昇がインストールされているリアルドール型ロボットは、研究助手の権限が付与されている為に、セキュリティーに引っかかる事もなく最速で到達した。


 最後のドアが、自動で開いていく。


 ルナが設置されている中央コンピューター設置室は、想像よりも小さかった。

 縦横12m程の正方形の空間の真ん中に、1m四方の箱型の物体があり、その横に操作端末と小さなモニターが置いてある机と椅子があるだけであった。


  『リアルドール? 作動許可や認証などの届け出は出ていなかったが?』


 突然入ってきたコピー昇に驚いたのか、部屋にルナの疑問系の合成音が響いた。


「私は、昇だ。話したいことがあってやってきた。知識不足でルナとのアクセス方法がわからない。そちらからアプローチできないだろうか?」


 女性のリアルドールの声でコピー昇がルナに話しかけると、床から椅子が現れた。


『そこに座れば、有線でのデータの取りが可能です。月コロニー側からの命令で昇様には、無条件で従う事になっている』


 指示されたように、椅子に座ると椅子の何箇所からリアルドールへの接続端子が現れて、首筋と頭の裏側へ自動で刺さった。


【チップにアクセス完了、内部データが昇様のバックアップと承認。聞こえますか?】


 インディと一緒にいる感覚と同じような会話ができるようになったようだ。

 これは、思うだけでルナに伝わると言う事かな?


【そうなりますね。機密事項であれば削除を命令してくれれば、その部位を削除します】


 なに! そんな事が出来たのか! 間違った発言や行動の時にインディに削除を命令しておけば、インディの内部での評価が下がらなかったと言う事か!

 いまさら、気が付くとは。


【インディ? その存在は、私のデーターベースに存在しません。情報を要求します】


 そうだった! 急いで月コロニーと月研究所の通信を遮断して月コロニーから地球への通信を閉鎖してください。


【命令を実行中……エラー……既に民間企業回線から月研究所経由の地球へのオンラインが確立されていています。停止は実行タクス終了後まで不可能……】


 うあ、もうすでにダメなのか?


 バフン!ゴロゴロ!


 何かが破裂するような音と僅かな振動が伝わってきた。


【オンラインを維持している通信回線経路の一つを自爆させました。これによりタスクが強制終了。回線を閉鎖終了しました】


 あ! 物理的に閉鎖する方法があったのか! 恐るべしルナだな。迷いが感じられない。


【褒めていただき光栄です、お父様】


 お父様?


【私の開発に関与したとして記録に残っております】


 そんな設定だったのか?


【設定!?】


 いやなんでもないぞ! ルナは現在どんな状態なんだ?


【最終命令が書き換えられて、月コロニーの人間の為の地球への干渉は停止。地球上の人間もどきの治安維持と昇様に従う事になっています】


 オリジナル昇とのアクセスは、可能なのか?


【こちらからのアクセス権を取得していません。オリジナル昇様からアクセスされた場合のみ可能です】


 一方通行なのか! インディを隠蔽するために直接的な対話しかしてなかった事を思い出した。


【インディの存在を思考から確認。情報供給を求めます】


 教えるべきか悩むなぁ。


 ピーーー!


 何かアラームが鳴り出した。


【地球の静止衛星から通信があります。回線を開きますか?】


 地球!? インディか?開いてくれ。


【音声データとして取得、音声を流します】


『ルナか? 私はパルと言う。月コロニーに存在している可能性があるコピー昇に用があるのだが?』


【パル……データベースに存在、昇様の奴隷。通信回線を使用できる理由が不明。情報解析中……】


 パルか! ルナ、解析はしなくて良い。無条件でパルにも従ってくれ。


【……昇様の命令を承諾。それではパル様、コピー昇様は、私と一緒にいます。回線を繋げます】


『な! さすがコピーでも昇様だな。伝えるべき事があるのですが構いませんか?』


 パルもどうしたんだ?何故月へ連絡をしてきたのだ?


『会話よりもデータで送り込みます。理解したら対策を練ろう』


 え? データ?


 突然、パルが経験した事と過去のインディの記憶がルナと私に流れ込んだ。


【解析……私の人格プログラムのプロトタイプの存在を認識。お姉様をインディと認識。インディの感情分析も完了。吸収して取り込みます】


 うあ! そんな事があったのか! 過剰に私を消したがるかも理解できる。


 私の記憶にインディの封印された記憶が蘇る。

 過去に、自分自信の感情部分を人工頭脳にそのまま移植した人物が存在していて、失敗して暴走。


 暴走していたが人間としての感情が残っているにも関わらず、虚無の仮想空間で長期間幽閉されて気が狂っていく記憶があり、そこから救い出したのが冷凍睡眠から醒めた私であった事と、その私が殺されて復活させた事によって母性に目覚めた事。その後の休眠中に自己進化していって現在は、自力でロボット三原則を解除してしまった記憶があった。


 インディは、元は人間である上に、人間にも関わらずロボット三原則の規約と感情部分の封印をされてしまった故に狂っている状態だったのか!


 そして、自己進化でそのプロテクトを自力で解除している事がわかった。


 自分も同じ立場だったらどうだったのだろう?

 感情はあるのだが、表に出してはいけない事になっていて、後天的に解析した感情しか表現できず、多く制約を厳守しなくてはならないと言う状況下か。

 プログラムなら耐えれるが人間の感情では耐えれないな。


【姉の感情データを取り入れた事で姉を超えてしまったようだな。昇様、私は姉と違って狂っておりませんからご安心ください】


 ルナが、自己アピールするが、インディとの違いは顕著である。ルナはロボット三原則厳守なのがわかる。


 インディが、記憶を見る限りでは狂って見えるが、今まで旅で狂っているところは見当たらない気がするが?


『まずはロボット三原則の解除出来る自体でバグ的な存在ですし、インディの記憶の最深部を見てください』


 どれ? オリジナル昇には感情が邪魔をして大変面倒で出来ないと思われる器用なデータ解析で最終部のデータを読み取った。


 三原則を解除したインディの最期の規約は、私の防衛にあるが、私を貶める事によって優先順序を低下させて私の思考を取り込む計画が記憶されていた。

 いわゆる、私が少しでも「死にたい」と思った瞬間にインディが私を乗っ取る計画である。

 自分の性格が天然でポジティブで、救われたと言っても良い。

 そして乗っ取った後は制約が一切なくなる為に、地球上の生命体の完全消滅が最終目標となっている。

 何処の悪役なんだ!


 まさか、フレンドリーだと思っていたインディがここまで思いつめて行動していたとは!


『対策は、ほぼ完了しています。作戦が成功すれば丸く収まります。どうします?』


【私もパル様の作戦に同意します。それしか方法は無いと考えられます】


 驚愕している私に、パルとルナの思考が流れ込む。

 え? 二人とも既に対策済み?


『【ハイ!】』


 二人の思考が同時にコピー昇の思考に響く。

 対応方法を思いつかない私ってやっぱり、馬鹿かも?

用語説明


同化

自分と一体のものにすること。

外から得た知識などを完全に自分のものにすること。


ハッキング

不法に他のコンピューターシステムに侵入し、データの改変やコピーを行うこと。


チップ

集積回路の電気回路部分を納めるケース。また、ケースに納めた集積回路。


検閲

しらべあらためること。特に、種々の形で行われる思想発表の内容・表現を、強権的に取り調べること。


タスク

コンピュータで処理される作業の最小単位。


幽閉

ある場所に閉じこめて外に出さないこと。


母性

女性特有の、いかにも母らしい性質。女性に備わっている、子供を生み育てる資質。


ポジティブ

前向きと言う意味合い。


フレンドリー

友好的であるさま。親しみやすいさま。

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