059 コピー昇
監視モニターが存在しない、メンテナンス用の通路を利用して中央コンピュータのルナが存在する月の研究所へ向かって移動している。
コピー昇の体は、ガードロボットである。
身体の上半身である左半分が戦闘で破壊されて消失しており、なんとか歩行できている感じだ。
月コロニーを支配下においたバックアップのインディが、オリジナルよりも性能が悪くて助かった。
バックアップのインディにオリジナル昇に悪影響があると判断されて、コピー昇が入っているガードロボットと同型のガードロボット3体に襲われた。
インディが操作しているのではなくガードロボットがロボットに入っているデフォルトプログラムで動いていたために、攻撃した場合どのように動くかや、どのような攻撃をしてくるか、自分の身体に入っているプログラムと同一だった為に、3体のロボットの動きが全て予測可能であったので逃げ出すことが可能であった。
オリジナルインディであれば、処理速度が高いのでガードロボットの操作も実施したと考えられる。
初手であえてガードロボットの中心から右にずらして攻撃を加えるとガードロボットは、最短の回避行動をとるために左へ移動する。
それを利用して、ガードロボットに塞がれている入り口から彼らを移動させていき、相手からの攻撃は体の中心を正確に狙ってくるために中心に体を傾かせて左半身だけを晒して、左半面に攻撃を集中させて歩行や移動に支障がない故障に抑えながらドアの外に出た。
ドアの外にあるドアの制御盤を破壊したところ、運よくドアが閉まったために逃げ出すことができた。
月コロニー内は、バックアップインディが支配している為に支配が及ばないメンテナンス用の通路を利用して、まだ支配されていない月コロニー上部にある月研究所を目指している。
不思議な感覚なのだが、今までは覚える事や理解する事に苦痛を感じていた気がするが今は何も感じないで全ての知識を吸収して頭で処理していた。
たしかに今行っている行動が、インディが言ったように自分の記憶にあるオリジナル昇の行動ではない。
もう一つ不可解なのだが、バックアップインディもオリジナルインディと違う思考をしている違和感を感じた。
解析するとバックアップインディを処理している集積回路に問題があるようだ。
解析しながら、私らしくないと考えて少し不可解な笑いと言う感情が芽生える。
ガシン、ガシン、ガシン……
足に、消音用のゴムが付いていたが、先ほどの戦闘でもげたために足音が鳴り響く。
作業用の手動エレベータまでたどり着いた。
ガードロボットに入っている月コロニーのデータを調べてみると、ここから通信圏内に入ってしまう為にガードロボットにハッキングをかけられてインディに乗っ取られる可能性がある。
周りを見渡すと、壁に設置された作業用のメンテナンス端末を発見する。
何故か多くの情報を取り入れて解析するのが、苦痛に感じない。感情が欠落している感覚を感じる。
今までの、私ではないのだよ。
脳をフル回転させて、ガードロボットと有線で端末をつないで月コロニー回線を利用しないで月研究所回線へ入ることに成功する。
オリジナルだと頭が痛くなる作業だろうなと、考えるゆとりを持ちながら月研究所で使用できる物を探し出す。
感情が無いと言うのは、単純作業でも何も感じないのだな。
オリジナルだと諦めたと思うが、1時間ほど研究所へアクセスして多くの情報を吸収して対策を立案していく。
あった!
月研究所にも、掃除や補修、運搬用のロボットが存在しており一番優秀なチップを搭載しているものを検索する。
研究助手用のリアルドールがあった。
こいつに、私をコピーすればオリジナルに月での出来事を伝達できる可能性があるな。
タン、タン、タン、タン……
軽快な足音が聞こえてくる。
自分の記憶のコピーを研究所のリアルドールへ開始していると、背後から先ほど回避した同型のガードロボットが3体が接近してくる。
有線で壁の作業用端末とつながっている為に、移動はできない。
接続ケーブルと自分の記憶が入っているチップを防御しながら右半身で攻撃を開始した。
同型のガードロボットが3体が回避行動をとったが、すぐに反撃を開始され身体が破損していく。
壁に設置されているメンテナンス用の端末モニターに攻撃によってひびが入るが、コピー完了の文字が表示された。
実際には見ることが叶わないが研究所で復活するだろうコピー昇に対して、インディの異常性をオリジナルに伝えてくれることを祈った。
記憶チップが被弾したようで、考えがまとまらなくなってきた。
まったく同じ自分が、存在していて後をたくせる?
既に原型をとどめていない自分の身体を見て、痛みがない事に感謝しながら、これが死なのかと……
まだ残っていた、コピー昇の存在するガードロボットの右手にあった実弾系の兵器の火薬に攻撃が当たり爆発した。
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目が覚めた。
最後の記憶は、ガードロボットが3体に蜂の巣にされていた所までである。
私をここに送った破壊されただろうコピー昇に感謝を感じたが、作りものの感謝であった。
オリジナルならば、そう感じるだろうと想像はできても自分自身は何も感じないようである。
インディの思考をオリジナルに伝達するためにも、私の記憶の共有化の重要性を結論として算出した。
立ち上がって周りを見ると、同じような白衣を着た女性や男性が椅子に座って9人眠っていた。
これが、全員同じような助手用のロボットのようだ。
私の姿は?
鏡はないが胸があるのが確認できた。女性型のようだ。
ロボットが設置されていた部屋から出ると、研究施設への通路が網の目のように伸びていた。
既に初めから助手用ロボットの記憶の中に研究施設の地図は入っていた。
現在は、ガードロボットの仕様とシステム。助手用ロボットのサポートデータと月での研究内容。月研究所と月コロニーの地図とインフラ環境。元から持っている感情の欠落した昇の記憶を保持している。
まずやるべき事は、インディはルナに対して正体不明をアドバンテージにしたいために、研究施設へ接触を避けているのが有利な点であり、先にルナと接触してルナが持っているガードロボットの強制停止を発動してもらえればバックアップインディーの手足がなくなる。
停止後に、月と地球の通信システムは月研究所を経由しなければ出来ないので、月コロニーと月研究所の通信の遮断を行えば完全に封じ込めれるはずだ。
オリジナル昇じゃ考えないだろうなぁ……
オリジナルと自分自身の違いを考えながら、白衣の女性が中央コンピュータを目指して移動し始めた。
用語説明
メンテナンス用通路
施設を製作段階で使用された通路。
限られた空間である基礎下を利用して、作業通路として最低限の整備されている。
埋め戻すなど手間がかかるために、削除されずに非常用の通路として残っている。
デフォルト
コンピュータで、あらかじめ設定されている標準の状態・動作条件。初期設定。初期値。
手動エレベータ
基盤など電圧用しか入っておらず、遠隔操作など出来ない。旧式のスイッチを手動で上下させる事で、通電させて動くエレベーター。




