表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/70

054 月の終焉

 スパルとステラとコアと言う三人の子供たちと一緒に「かー様」という女性の治療が終わるをの待っていた。


「かー様の名前はわかるかい?」


 3人の中で少し身長が高いスパルに質問した。


「かー様は、ムスメとみんなに言われているよ」


 スパルが、治療中のムスメを見ながら心配そうな顔で答える。


「もう、大丈夫。あとは時間が経過すれば治るからね。みんな服を着ていないが服はないのかい?」


「服? それは知らない」


 3人は私の話した内容を聞いて少し安心した顔をするが、必死に服という言葉の意味を考えている。


『ここの空調は完璧ですから、ちょうど良い温度のため服がなくても大丈夫ですね。加えて服を調達する場所も方法もわからずにいたのでしょう。近くに工作室や居住区画がありますので、すぐに準備は可能ですよ』


「みえない管理人の声が聞こえる」


 スパルが、周囲を見て音が出ている場所を探している。


「まだ、治療に時間がかかりそうだし、私が何か服を探してくるよ。ここにもう一人の管理人のインディを置いていくので、待ってられるかい?」


『姿は見えないですが、インディです。よろしくね』


「見えない管理人はインディだね。覚えたよ。大丈夫だよ」


 月コロニーの全体をインディが支配したようだし、もう少し詳細に調べようかと思って、子供達を置いて月コロニー探索に向かった。


 生体実験施設を出て、居住区画の服を手に入れる場所へ向かう。

 日常品が設置してある倉庫に入ると、整理整頓されている日常品が山のように置いてあった。


 着れる服を探していると、資材を運搬するロボットが現れて物を入れ替えていっている。

 四本足の上に、荷台が付いていて荷台の端に2本の手のようなアームが付いている単純なロボットで、大きさは大人2人が仮装して布を被っているように見える。


【運搬用のロボットですね。工場で生産された日常品を使用期限が切れた物から新しい物へ入れ替えています】


 私が石鹸や洗剤を倉庫の棚から器用に入れ替えているロボットを見ていると、インディが説明してくれる。


 ガードロボットのセンサーが、運搬用ロボットのアーム部分に異常があると伝えてくる。

 特に異常は見えないが?


【……昇。ロボットの複数箇所に血液反応があります】


 どういうことだ? よく見れば、アーム部分に血らしき赤黒い液体が付いている。


【先ほど、月面コロニーの治安が回復しましたので、その際に発生したゴミを運搬したためですね】


 !?聞いてないけど?


【停止していたガードロボットが再起動しましたので、治安維持のために民間コードや軍事コードがない人物はすべて排除しました。例外としてコードが無い場合でも保護者がいる場合は、臨機応変に対応して登録しましたので、適切に実行されたようようです】


 え? どういうこと?結論的には?


【結論から伝えますと、月コロニーに生命反応が1万前後ありましたが昇が保護した4人以外は、セキュリティー違反がありました。全て適切に排除してリサイクルプラントへ送り届けました】


 つまり、月コロニーに生きている人間は保護した4人だけ?


【そうなりますが、なにか問題があるでしょうか?】


 ん! 確かに問題は無いか……


 インディからの報告を特に気にすることなく4人が着ることが出来る服を見つけて、新しくインディが遠隔操作で呼んでくれた運搬用ロボットに積み込んだ。

 このロボットの荷台にも血痕が残っていた。


【……エラー……昇の行動に致命的な差異があります】


 どうした? インディ?


【私は、地上のインディの完全コピーなのですが、昇はコピーが失敗したようです。先ほど地上の昇るが眩暈を発生した情報が入ってきました。あなたは、昇のコピーではなく別の存在のようです。削除します】


 え! 何をいっている……危険な気配を感じて、記憶にあるガードロボットの構造を考えて頭のインディが入っているチップ部分を、右手で自分の頭に指を入れて潰した。


「何が起きている? 私は昇本人だぞ!」


『すでに、月コロニーに私のバックアップを設置したのでロボット内の私を壊しても無駄ですよ。民間コードが設定された4人の保護はロボット三原則によって継続しますが、あなたは地上の昇に対して危険だと判断されました』


 インディを壊したつもりだったが、施設のスピーカーからインディの合成音が流れてきた。


「理解できないのだが? なぜ私が危険だと言うのだ?」


『オリジナルをコピーしたはずでしたが、オリジナルの記憶装置には、データが入っているが読み込めない15%のデータがあるようです。その部位の欠落が、あなたにはあります。昇と比較して微小な差異であれば許容出来ましたが、月コロニーの保護対象以外の人間殲滅に関しての反応が私の想定していた昇の反応と著しく異なります。バックアップの記憶データは、保護対象にはなりません。よって削除を判断しました』


 記憶は一緒だが、性格が違うから排除!?

 それってオリジナルの私も心変わりして類似した事が起きたらどうなるんだ? インディは、進化して危険な物になってきているのか?

 そうであるならば、私がオリジナルの私を守るためにインディを排除しなくてはいけない。


 バキン! バリバリ!


 背後から物凄い破壊音が聞こえる。

 背後を振り向くと、血だらけの私と同型のガードロボットが3体倉庫に入ってきた。

 ガードロボットの手のアームには人間の肉らしき破片が付いていた。


 こりゃ、勝てないか?


 この情報をオリジナルに伝達する手段がないかと考えながら、両手の武装を侵入して来たガードロボットに向けて発射した。

用語説明


空調

人間にとって快適であったり、作業や工業に適当なように、温度・湿度・気流・空気清浄度・室内物品の放射、伝導などの室内環境を調整する事。


運搬用ロボット

月コロニーでインフラ制御装置によって、大型のゴミの運搬や倉庫などの備品の運搬をするロボット。

4足歩行で荷台が付いていて、荷台の端には人間の腕のようなアームが2本付いており1000kgまで運搬可能。定期的に清掃やメンテナンスが自動で行なわれる。



人物紹介


ムスメ

月コロニー第二大食堂に住んでいた、元リーダの妻。寿命で元リーダが死亡した後に現リーダとの意見の相違で瀕死の怪我を負う。


スパル

ムスメの息子で12歳

現時点では、服も着ていない原始的な子供である。


ステラ

ムスメの双子の息子で10歳

現時点では、服も着ていない原始的な子供である。



コア

ムスメの双子の娘で10歳

現時点では、服も着ていない原始的な子供である。


コピーインディ

地球の昇の体内にあるインディのコピーである。昇の体内のナノマシンのチップよりもコロニーにあるチップや記憶媒体の性能劣化のために、データとしてはまったく同じだが、処理に時間がかかったり判断が地球のインディよりも遅延する。

処理が昇の体内のチップよりも遅延するために、本来は感情で制御できる部位などが感情の結果が出る前に実行されてしまうなどの支離滅裂な行動をとる。


コピー昇

地球の昇の体内にある昇の記憶のコピーであるが、生前の脳のデータをそのままナノマシーンで製作したチップへ移植したさいに、15%だけ思考処理には使用されているがデータとして読み込めない部位があったため、85%のコピー率の昇である。

この差のために、思考回路に一部感情が欠落した判断が見られる。

判断能力もオリジナルチップよりも処理が遅延するために、欠落していない感情ですら判定まで時間がかかるために、行動初期は無慈悲無感動な行動をとる。

コピーインディが正常なコピー昇として認めず、オリジナルに害を及ぼす可能性を考慮して削除する判断をした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ