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052 排除から保護対象

【治安維持用の高性能ガードロボットの存在を確認。先ほどの場所から上方向400mしか離れていません。アクセスします】


 ガードロボット?


 一瞬、視界が変わって狭い部屋に閉じ込められている視界になる。


 なんだここは?


【月基地の開発プラントのメンテナンスルームです】


 ルーム? 凄い狭いチューブに閉じ込められてる感じなんだが?

 と思った瞬間、グティ司祭とロメロ司祭の前の視界に戻る。

 月へ意識が行ったはずだが、また地球へ意識が戻ってしまった。


 どういう事?


【月のガードロボットを昇と私のデータを利用して起動しました。あとは私たちの分身に任せてルナとの件を先に終わらせておきましょう】


 お! 装甲車にインディの分身が入って勝手に動いていた様なものだな。

 了解した。


「グティ司祭とロメロ司祭、ルナにもう一度会いたいのだが良いか?」


 今までピクリとも動かなかった2人の司祭が、動き出す。


「ほう、なにか対策がおわったのですね。やはり始祖様は違う。今まで期間を設けた排除対象は再びルナ様に会いにいったものはいない。ルナ様に会いに行こう」


 ロメロ司祭が、満面の笑みで笑いながら返事をする。


「私は、排除までのノボルの監視しか命令を受けていないから排除までは、お前の自由だ。チエミはいつ来るんだ?」


「その件で、ルナと話す必要がある」


「ほう、では排除が早まる可能性があるのかな? では、行こう」


 ルナにそっくりな司祭服を着たグティ司祭が、無表情のまま応答する。


 ルナの謁見場所から、今いる場所へ移動した際と逆の道のりで戻っていく。


 地下に戻ったら、通信がまた出来なくなるのでは?


【既に月コロニーから月基地へ接続して、基地からこの施設のすべての通信網を利用できるようになっています】


 仕事が早いな。


【褒め言葉かしら?】


 インディが人間の真似をしているというよりも、本当に人間っぽいなと感じた。


 再び、ルナと謁見した場所へやってくる。

 前にルナが座っていた場所に、誰もいなかった。


「さきほどルナ様だった素体は、メンテナンス期間に入ってしまった。代わりに私がルナ様になろう」


 グティ司祭が、司祭服を脱いで全裸で先ほどルナが座っていた席に座った。


「もう戻ったのか、早いなノボル。チエミは連れてきたのか?」


 椅子に座った途端にグティ司祭が、別人のように感情豊かに微笑みながら質問してきた。

 全く別人みたいだ。何故裸!?


【あの玉座が、月の中央コンピュータとの直通アクセスポイントのようですね。司祭服に電磁シールドなどの付加機能があるようですので、脱がなくては通信障害を起こす可能性があるからだと考えられます】


 インディーが私の疑問に答えてくれた。


 多数のルナとなり得るロボットが存在していて、玉座に座ればルナになるというカラクリかな?

 ルナになってしまったら、元のグティ司祭は、何処にいくのだろうか?


【それは、情報の共有ですよ】


 どういう事?


【ものは試しですね。実際に感じればわかります】


 突然、月でのガードロボで3人を助けた記憶や月の歴史など、実際に月で自分の分身が行った記憶が増える。


 おお! 凄い。同じ時間軸で経験が2倍と言う事?

 記憶の中でも相変わらずインディが私の分身を辛口に攻めてる。


【理解できました?】


 理解できたが、なぜか記憶に違和感がある。私ならそんな行動をしないと思うところがあるんだが?

 本当に私なのか?


【それは、おかしいですね。コピーしてから長時間であれば判断分岐が起きると思いますが、この短時間でそこまで判断に差が出る事は無いはずなのですが? まぁ、昇だからランダム要素と不確定要因があったのかもしれませんね】


 昇だからってところに、悪意を感じたが新たな力を手にいれた気がする。でも自分がもう一人いると思うと少し怖いな。


【あら、自分が増えて怖いって不思議な事を思うんですね。私は既にかなり分裂していますし、元の開発されていた施設のオリジナルは時間経過でなくなってしまいましたよ。昇が体内のチップに私をインストールしてくれなかったら存在していなかったでしょうね。ありがとう昇】


 う! 初めてインディから感謝された気がする。なぜか照れくさい。


「それで、チエミは?」


 なかなか、しゃべらない私に対してルナが首をかしげて再度質問してくる。


「月とのアクセスに成功した。月コロニーからの回線を開いてくれ最終命令を更新する」


「なんだと!? しばらく待てくれ」


 全裸で椅子に座るルナが、目をつぶった。


【いま最終命令を更新しましたよ】


 一抹の不安がよぎった……素直に従ってくれるのだろうか?


「わかった! 最終命令更新、最優先事項。ノボルを保護対象に承認してロボット三原則厳守。命令系統をノボルの支配下に登録。今後の行動の全権限はノボルに委託。以上……ノボル……様……あなたは何者ですか?」


 ルナが驚愕した顔をして私を見つめる。


「ノボル様ではなくて、ノボルでよいよ。命令は現地住民の保護を優先してくれ。あと、地球でルナが知り得た情報の提供だな」


 ルナが困惑した顔をする。


【昇は、本当にダメですね。質問に答えてないから次の質問を考えてフリーズしてますよ】


 え? あ! 私が何者かと言う質問か? ルナが教えてあげた方が早くないか?


【なるべく私の存在は知られたくないですね。わかりました、月コロニー経由で送信します】


 ここまで来てインディは用心深いな。たしか、私の身体はかなりの禁忌を含んでいるから、ばれるとまずいことがあるのかもしれない。


「な! わかった。ノボルと呼ばせていただく。いま月コロニーからノボルに関する情報が届いた。全て納得したのでノボルの安全が損なわれないのであれば、命令に従おう」


 ルナがビックンと一度痙攣して、敬意を感じる返答を返してきた。


 どんな情報を送ったんだ?


【民間コードの記録に偽造した情報ですが、製薬会社アンベンの役員である事と、ルナのサンプルプログラムを開発したビッグテスラ科学者として教えました。支配権限は最上級になりますし、感情面でも人工頭脳のルナにとって、昇はお父さんとなったはずです】


 うあ! 騙すための行動も必要なんじゃ? ハードルが高い気がするが!?


【矛盾する情報は、存在しないので大丈夫です】


 では、まずは血清を作ってしまおう。チエミの救出が必要か?


【ルナから月コロニーに提供された情報であれば、あとO型の血清が完成すれば、すべの血液型に対するバイオハザードから防御が可能になります。チエミが最後の鍵となっています。チエミの状態は、ルナに月コロニー経由で情報を伝えました】


 説明しなくても便利だが、どの程度伝えたのかなどがわからない。インディはルナからデータをもらって理解しているかもしれないが、私は状況が全くわからないぞ!


【説明いります? いつも頭がパンクするからやめてほしいって言ってませんでしたっけ?】


 馬鹿にした口調でインディが確認してくる。


 これとそれは違う話なんだが!? 揉めた方が面倒なので、ここは素直に……はい、よろしくお願いします。


【了解。解析したデータを昇に直接送ります】


 え!?説明じゃないの!?

用語説明


分身

一つの本体が二つ以上に分かれること。また、その分かれて生じた身。


排除

おしのけてそこからなくすこと。


メンテナンス

システムを正常に動作させるために行う日常的な作業。


アクセスポイント

無線通信端末と直接交信を行うためのアンテナや装置などを含めた建造物のことである。


電磁シールド

導体製の障壁で二つの場所を仕切って、二つの場所の間を電磁場が流れるのを制限するための処理である。


オリジナル

原作者以外の人物による模写、あるいは偽作などに対する原作品を意味する。


情報の共有

個々のもつ情報を蓄積、共有、活用することを言う。


サンプルプログラム

標本、見本、例のプログラムである。

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