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050 救出

 リイサイクルプラントへ、鈍い移動で到達する。


 食堂から4階層ほど降りた場所で、なんのセキュリティーもなくエレベーターで、到達した。

 考えれば、月コロニーに入る時点で厳重なセキュリティーがあるために、内部はセキュリティーなどの対策などは不要なのだろう。


 最下層のかなり大きな集積箱に、上部からゴミが定期的に降ってくる。

 箱の前に、大きい落下物を受け止める落下防止ネットがあり、そこに先程の女性と子供達3人が引っかかっていた。


 集積箱の横に大きなコンソールがあるので調べてみる。


【このコンソールで落下防止ネットを動かすことができると思いますが、どうやって操作しましょうか……】


 私は現在、右手が掃除機で左手が回転ブラシである。

 カメラに映っている両手を見て途方にくれるが、なにか方法を考えなくてはいけない。


 コンソールに表示されている2:00の表示が緑から赤に変わり1:59となって、集積箱の上部のゴミが落下してくる口が閉まっていく。


 これって、まずいんじゃないか!?


 と思ったら、落下防止ネットが動き出してフロアの下まで移動してきた。


 処理前に自動で降りてくるようだ。

 心配して損した!


【昇は、アホですね! 下に降りたと同時に高圧洗浄されて戻っていきます。その合間で降りないと高圧洗浄で細切れにされますよ】


 なんだって!


 落下防止ネットが、床から1m付近まで降りてきて、集積箱の横にある高圧洗浄コーナーへ移動をはじめた。


「ソコニイルトアブナイ」


 あまり大きな声ではなかったが、発音した。なんとか伝わって子供が意識がない女性を引きずって移動中の落下防止ネットから落下する。

 床までの高さがあまりないので怪我がなさそうだが、子供の一人が足にネットが絡まっておりれていない。


 まずい!


 急ぎたいが少し早歩き程度でまでしか歩行速度が出ない!イライラしながら移動のネットに接近して、左手の回転ブラシを利用して足を網から外してあげる。


「ありがとう!」


 髪が長すぎて顔が見えないが、助けた子供が笑っているきがする。


 最後の子供も落下防止ネットから無事に降りることができた。

 だが、助けた際に回転ブラシがネットに引っかかって、引きずられていく。

 インディ? この左手って外せる?


【昇...悲しいお知らせですが、そんな都合がよい機能は無いです】


 うあ! 必死で左手を絡まったネットから外そうと足掻くが、不器用な掃除ロボットのためにうまくいかない。

 高圧洗浄機まであと1m!


 バキン!


 私の左手が根元から破損する。

 助けた子供が、落下防止ネットに引っかかっていた棒状の物を取って私の左手を破壊してくれた!

 ナイス!


 すぐにネットが巨大な高圧洗浄機に入って高圧の水で洗われていき、ネットに引っかかっていた大型のゴミが吹っ飛んで回収場所へ高圧の水流と共に流れて行った。


 巨大な集積箱は、そこが抜ける音が聞こえたと思ったら中が落下する音が聞こえる。

 落下防止ネットは、再び動いて集積箱の上に移動していった。


 コンソールに表示されていた時間が、360:00と表示されて緑に変わる。


「管理人、助けたくれたの?」


「左手壊してごめんなさい。危なそうに見えた」


「かー様が起きないの。どうすれば良いの?」


 3人ともかなり疲弊していて、ここに来るまでに怪我をしたのかあちこちから血が出ている。

 かー様と言われている女性は、大変まずい状態だ。


 インディ? どうにかできるか?


【旧時代の月コロニーなど回線がひらけば、すぐに支配する自信がありますが回線がひらかなければ難しいです】


 周囲を見渡すと、非常用の緊急停止スイッチらしきものを発見した。


 急いで、調べに行こうとしたが左手が破損している為にバランスが崩れて、まともに歩けない!


【あら! 昇のくせに! 良い方法に気が付きましたね。あのスイッチが動けば緊急回線がひらきますね。緊急回線を使用できる民間企業を検索中……ありました。リサイクルフロンティアという民間企業がこの回線を使用しています。緊急時は地球の本社と回線を開くようになっています。その本社のダミーを構築中……】


 不安そうに3人が私を見つめる。


「アンシンシロタスケル」


 安心させるために伝えた。


 驚いた顔をして、子供の中で一番年齢がたかそうな一人が、私が行こうとしている目的地を予測して緊急停止スイッチまで、たどり着く。


「管理者さん、どうすれば良いんだい?」


 ガラスで蓋をされていて中にレバーがあった。


「ガラスヲワテ……レバヲタオス」


「ガラスを割ってレバーを倒す?」


 先程、私の左手を破壊した棒でガラスを割ってレバーを倒そうとするが、硬くてレバーが倒れない。


 他の2人も駆け寄って、一緒にレバーを倒そうとする。


 ガッチャン!!


 レバーが倒れると、視界が真っ赤になった。

 照明装置が非常用に切り替わったようだ。


『緊急停止装置が起動しました。自動判断機能で調べます。本社との回線を開きます。本社からの再始動許可を受諾したのちに停止装置を解除してください……繰り返します。緊急停止装置が起動……』


 システムアナウンスがリピートで流れ始めた。


【ハハハハハ! 私がストレスを感じるなんて! これがストレスなんですね! 昇とのここでの行動に莫大なストレスを感じました。責任取ってくださいね。本社のダミーにアラートを確認。アクセスを開始します】


 なんの責任だ! そんなイライラさせる行動取ったのか?


 突然視界が戻って目の前に2人の司祭が棒立ちになっている中庭に意識が戻された。


 え? あの3人は?


【目的は達成しました。月面コロニーとの通信回線を確保しましたので、コロニーから昇の民間コードでルナへ命令すれば、ルナが昇の支配下にはいります】


 だから、あの人々は?


【!?理解不能です。何故、助ける必要性があるかわかりません】


 さっきは、3人を助けるのを反対しなかったのはなぜ?


【掃除ロボットでは、コンソールの操作が不能であると判断。現地での回線回復までのサポート的な必要性でストレスは感じていましたが、救助していたと判断していましたが?】


 ……根本的にインディと価値観が違う感じだな。

 では、先ほど緊急停止レバーを倒してくれた3人を保護対象にするから助けに行くぞ。


【……了承できません。ルクやチエミおよびパルなどは、昇のサポートが可能な場所に居ますが、3人はサポート不能で役に立ちません。昇の安全確保が最大の優先事項なので関与しない為に対象にできません】


 ん! ひらめいた! インディの感情プログラムのプロセス向上に助けに行こう!


【……承認! 不可解な昇の行動に関しての対応に関して適切に判断できるアップデートの可能性を導き出しました。3人を保護対象に登録して救助に向かいます】


 なんだ、価値観の違いではなくて価値観の欠落というものか?


【私は、完璧です。昇が異常なだけですよ。ですが異常な昇の行動を予測するためには必要なプロセスだと判断したまでですよ】


 インディと言い合いしても勝てないのは分かっているので、考えるのを止めよう。


【治安維持用の高性能ガードロボットの存在を確認。先ほどの場所から上方向400mしか離れていません。アクセスします】


 ガードロボット?


 突然視界が、また変わって狭い部屋に閉じ込められている視界になる。

 なんだここは?


【月基地の開発プラントのメンテナンスルームです】


 ルーム? 凄い狭いチューブに閉じ込められてる感じなんだが?


【先ほどの場所までの落下経路の算出が終わりました。移動開始します】


 え? うおおお!


 パカ!……シューーーー


 足元が開いて滑り台のように穴を落下していく。

 数分で、先ほどの3人がいた場所の天井へ到達して落下する。


 なんなんだあああ!


 ドカン!


 リサイクルプラントの床に全身を叩きつけられて床が凹む。


【到達しました。高性能ロボットM58-29が起動します】


 目の前に、自分の全機能が表示されて操作方法がインディから無理やりインストールされた。


 頭がパンクするっって……操作方法と機能が全部わかるよ……

 インディ! 何も聞かずにインストールやめて!


【昇はアホを通り越して、病気じゃないですか? 昇のチップの空き容量から考えてパンクするわけないでしょう?】


 いや……それを言ったら人間が勉強嫌いの理由を言ってくれ!


 もらった知識から、身長2mほどで2足歩行のロボットだが、手の代わりに4本のアームがあって2本が攻撃用でありレーザーと実弾兵器が付いていて、2本が細かい作業を行うアームで指が7本付いている。

 全てのセンサーから発音可能な装置となんでも付いてる本当に高性能ロボットだった。

 だが、外見は外装がないので骨組みにコードが大量に付属している感じである。


「大丈夫か?」


 3人が、かー様と言われた女性を介護していた。


「違う管理者が来た!」


「初めて見る!」


「かー様助けて!」


 適応力が高いと言うか、いろんな種類のロボットがコロニーの管理をしているようで違和感無いようだな。


 かー様と言われる女性をセンサーでチェックする。

 骨折が数か所あって、頭蓋骨折による慢性出血で脳を圧迫している。

 手術の必要性があるが、医療用のナノマシーンがあればすぐにでも対応できるが月コロニーにはナノマシーンは存在しない。


【所詮、製薬会社の研究施設ですからね。生体実験施設に連れて行けば自動で手術可能ですね。連れて行きましょう】


 インディは、東亜機械重工と製薬会社アンベンになにか競争心があるのか?


【私を創造してくれたビッグテスラよりも、はるかに遅れている技術で、彼らが世界を牛耳っている気になっていた時は、そんな感情はありましたが今は憐みですね。1万年で昇の中で研究した英知は無限ですよ。ウフフフ】


 怖いんだけど!


「治療に運ぶからついてきて」


「わかった! 管理者さん!」


 掃除ロボットの時に助けてくれた年長の子供が答える。


 細かい作業用のアームで女性を持ち上げて、生体実験室へ移動する。


「私の名前は昇という」


 そういうと、驚いた顔をして答えた。


「管理者さんに名前があったのか! ノボルだね。覚えたよ! そこの子がステラでこの子がコアだ。私がスパルだ」


 身長と外見が似ているのでステラとコアの違いが判らないが、スパルは身長が少し高いので覚えた。


「月コロニーで、何があったんだ?」


「月コロニーってなんだ? 3個の食堂があっていつも皆争ってるんだ。他の食堂を攻める事に反対したかー様がリーダーのべトウにやられてしまったんだ。いつも、おいしい薬を持ってくると怪我がなおるからべトウに隠れて取りに行ったらこんな事になってしまった」


 うむ! 理解できん! インディ?

用語説明


集積箱

月コロニーのダストシュートから流れてきたゴミを一時的に集める場所。

集まったゴミは6時間おきに、再利用するための施設へ流れる


落下防止ネット

謝って落下した物を受け止めるネット。

リサイクルプラントでは、大型ゴミの分別に使用されている。


高圧洗浄

汚れを強力な水圧で洗い落とす。


高圧水流

超高圧でノズルから噴出させた高速の水流で柔らかいものであれば切断される。

硬質の物でも、圧力によっては両断する。


緊急停止スイッチ

オペレーターの安全を確保するために、機械設備を緊急に停止させるための「非常停止システム」のスイッチ。


ダミー

実際のデータを格納するまで確保しておく仮の領域。必要なデータが準備できたら、逐次置き換えて格納される。


アラート

ユーザーの操作に対し注意を促したり警告を与えたりするために表示されるメッセージ。重大なエラーが起こる可能性があるときに表示する。


コンソール

コンピュータの制御卓である。


ガードロボット

製薬会社アンベンのが設置している月の治安を守るロボットである。民間コードや軍事コードなどで人を識別して対応する。

月基地の開発プラントのメンテナンスルームに30体ほど設置されており、緊急時に落下シューターで瞬時に目的地に落下する。


掃除ロボット

民間企業のクリーンビューティーが設置しているロボット。全ての地形と物の位置を記憶しており定期的に自動で掃除する。故障しても自己判断して他のロボットと交代され不足分のロボットは自動で製作されていく。登録された形状と異なる部位を見つけた場合は、別の下請け会社の修復用ロボットに情報が伝達されて、修理される。


プロセス

過程。工程。方法など、物事を進めていく順序・段階。

また、作業のはかどりかた。


M58-29

製薬会社アンベンのが設置している、月の治安を守る高性能ロボット。単独で開発された当時の軍隊一個小隊レベルの戦力を有する。当時の法律で民間に許可されていない兵器を多数装備している。


生体実験施設

生きている生物や検体に対して実験する施設

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