049 月コロニー
城の中庭の庭園でグティ司祭とロメロ司祭の前で、棒立ちのままで、軍事衛星経由で月コロニーとの通信を開始した。
もらった時間は、12時間である。
時間オーバーすれば、ルナとの全面戦争になるので早めに対応したい。
【昇、大変です。月コロニーの通信回線は、物理的にコロニー側から全て閉じられているので、交信不可能です】
……え? 駄目じゃないか!!
あ! インフラは? 生活反応があるという話してた気がするが?
【昇のくせに良いところに目をつけますね! 今調べます】
インディは対話的な通信しか考えていなかったようだが、コロニーの生活反応がわかるという事は、逆にそれを調べる方法もあると言う発想は出てこないようである。
【今、馬鹿にしませんでしたか? 昇と違ってやる事が一杯あるんです! 自分で調査しますか?】
自分の体内に存在している通信モジュールの使い方なんか、わかるわけがない!
すみませんでした!お願いします。
【わかれば良いです】
しばらく時間が経過すると、反応があった。
【主要施設の通信回線は、駄目でしたがコロニー内のクリーンビューティと言う会社にあった、お掃除ロボの遠隔操作が可能になりました】
え!? また以外な方面のアクセスだな! 他には?
【皆無ですね。運搬がベルトコンベアの為にコロニー内部で動かせるのは、お掃除ロボットのみになります】
なんだそれは! だが面白い!
【定期的にコロニー内を掃除します。では、一緒に行ってみましょう】
突然、視界がオフィースビルの一画に変わった。
私の身体は大丈夫なのか!?
【何か異常があればすぐに、身体に戻れますよ】
あまりに視界から感覚までが、いきなりコロニー内のお掃除ロボットになったので困惑する。
周囲を見ると、同型機が沢山並んでいる。
身長が1m程の2足歩行ロボットである。
背中に自分と同じぐらいの大きさのゴミを貯めるタンクが付いて、充電ケーブルがタンクに刺さっている。
顔は、各種センサーがむき出しになっていて、いかにもロボットと言う感じである。
威圧感は、身長1mと小さい為か全然感じない。
右手の先が掃除機の先端ノズルで、左手の先が回転ブラシと水を出す装置が付いている。
【感覚器官がマイクとカメラとバランス重力センサーしかないので、触った感覚やロボットが壊れても気が付かない感じです。本来の仕事時間は、5時間後ですね。5時間以内に戻って来ればエラーにならないはずです。エラーになると破棄処分されて新しいロボと入れかえになります。行動可能時間は、最大6時間ですが掃除機の機能を最大に使用すると2時間で行動できなくなります】
感覚がないので違和感があるか、特に問題なさそうだな。
(絵:しさとん。)
取り敢えず、動いてみよう。
前進すると、充電ケーブルが背中のゴミタンクから抜ける。
戻った時に、ここに座ればケーブルが勝手に刺さるようになっていた。
背中には、まだ何も入っていないためか重心を後ろにしないと前に倒れそうだ。
ガチョン、ガチョン、ガチョン!
前進して部屋から出ようとするが、ドアの前で開け方が分からず停止する。
【掃除機のノズルの先端に非接触の解除キーが埋め込まれてますので、ドアに当ててください】
右手を動かしてドアに近づけるとドアが開いた。
いざ、外の世界へ。
外に出て驚いた事に、全く生活感がない綺麗な地下都市が存在していた。
巨大なドームに覆われていると思っていたが月のコロニーは地下都市だったのか?
天井までは20m程で、天井から照明の明かりが照らしてくる。建物は15m程の構造物がランダムに乱立していて、低い建物も多い。
道路には標識や信号もあるが、走行しているものはいなかった。
死の街みたいだな……
【月のコロニーは、月面基地の地下に作られた基地で働く人の為の町です】
へぇー。
【そんな基本的な事も知らない昇が凄いですね】
私の生きてた時代には、なかったし!
インディの冷やかしを無視して、探索を開始しよう。
かなりの範囲を1時間かけて、探索するが人に会えない!
食料は消費されていると言っていたはずだ。
食料の配給とかあるのか?
【食料は食堂と配給センターで配られている筈でする。同じ場所にある施設なので行ってみましょう】
道には誰もいなかったので、食堂と配給センターがある建物に入り調査を再開する。
建物の中に入ると、物凄い大きさの食堂と嗜好品などの食べ物を配る配給センターの場所を案内図で発見する。
何箇所かのドアをくぐって食べ物を配る場所へ行って見ると、無人のセルフシステムになっている。沢山壁に付いている端末を操作して指定すると端末の下から出てくる仕組みだ。
だが、誰もいないな? どういう事だ?
【駄目ですね。お掃除ロボットの性能が悪すぎて配給端末にアクセス出来ません】
仕方がない食堂へ行こう。
食堂の入り口前に、12歳ほどの3人の子供が数人いた。
【昇、人間を発見しました】
見ればわかる。だが子供達の風貌が異常である。
全裸の上に、生まれてから髪を切っていないのか全員長髪だ。手には、多くの嗜好品らしき包みを持っている。
「あ! いつものきたぞ!」
「やった! 入れる」
「かー様、に早く渡したい」
こちらを見て子供達が口々に話す。
インディ? このロボットって喋れる?
【喋れません……が、エラー時のブザーを鳴らすビープ音を出す装置が付いています。無理やり合成音で人間の言葉らしき音は出せるはずです。今演算して昇の声を出せるようにプログラムを作成しています……完了! 喋れませんが発音出来ます】
微妙な内容だな? 話してみよう!
「コンニチワ」
「喋った!!!!」
「うあああ!」
「管理人が喋ったああああ」
3人が尋常じゃないほど驚く。
「ココデナニシテル」
一文字づつの発音なので、アクセントなどはつけれない。
「管理人が、ドアを開けるを待ってたんだよ」
「開けにきたのではないのか?」
「早く開けて! かー様が調子悪いの」
かなり焦っているようだ。
大型の食堂の中に全ての秘密がありそうだ。
「ワカタ……アケル」
右手の非接触キーをドアに接近させると、ドアが開いた。
3人が入った後に、私が入るとドアは、勝手に閉まっていく。
サッカーグラウンドが何個も入りそうな大きさの大きな食堂に500人ほどの人が存在した。
だが、全員全裸で髭や髪は一度も切られていないような人ばかりであった。一部ハゲな人がいたが例外だろう……
机と椅子が綺麗に整列されていて、空いたスペースに人々が全裸でゴロゴロ寝ている。
「かー様薬持ってきた!」
「戻ってきたよ」
「かー様?」
先ほど先に入った3人が、誰かに話しかけていた。
かー様と言われていた20歳ぐらいの女性が全裸で倒れていたが、全身を殴られた跡が付いていた。顔が一部陥没している。
「餓鬼ども、そいつは駄目だ。俺に逆らったから病気になった。もう死ぬんだよ」
この集団のボスの様な感じの裸の筋肉隆々の男が、突然現れて子供に向かって話している。
移動して倒れている女性をカメラで観察すると、呼吸していれば腹部か胸部の起伏運動が見える。わずかに動いているので生きてはいるが重篤な状態だ。
「その管理人は、なんだ? 動きが変だぞ?」
男が、通常の動きをしていない掃除ロボットを見て疑問に思ったらしい。
ここでは、お掃除ロボが管理人と言われているようだ。
【昇、今までの画像からの解析結果が出ましたよ。食堂内に468人の存在を確認。ドアを開ける手段がない為に、この食堂にこもっている可能性が高いです。コロニーのドアは、非常時には気密まで可能なほど強いために破壊は難しいです】
なんで、そんな状況に?
【まだ、情報量がたりません。そこの人達を使って外部通信システムの回復をすれば、外部から入れます】
まずは、対話からか……
「さて、クソ女の餓鬼ども!約束を守らないで外に出やがったな!!」
男が先程部屋に入れた3人子供を蹴り飛ばし、持っていた嗜好品を3人から奪った。
「女の死体と一緒に追放だ!!みんな運べ!!!」
「やだ……」
「助けて……」
「かー様!」
食堂の自動配給は、セルフシステムのようで、壁の端末に内容を入れると壁から食料が配給されて、食べ終わったらゴミのダストシュートに入れて流す様だ。
そのダストシュートへ女性と子供たちを運んでいく。
「すまない」
「逆らった同じことに」
「ごめんなさい」
「恨まないでくれよ」
食堂の隅にある、人が1人ちょうど入れるダストシュートに虫の生きの女性と子供達を、食堂の人達が謝りながら男に従って入れた。
【昇、助けるんですか?】
思考を読んだのかな? 当然助けれるなら助けよう。
急いで、食堂から外へ出た。
「なんだ、あの管理人? 変な動きしてたな故障か?」
背後でドアが閉まる前に男の話し声が聞こえた。
【ダストシュートの出口は、4階層下のリサイクルプラントです。6時間おきに活動しています。あと数十分で起動する可能性があるので急ぎましょう】
走りたくても、ちょっと早歩きぐらいしか出来ないお掃除ロボットでリサイクルプラントを目指した。
用語説明
クリーンビューティ
月面コロニーの清掃を一括して任されている民間企業。オートで動くお掃除ロボットを使用して定期的に清掃を行う。
遠隔操作
離れた場所から、機械的あるいは電気的な方法によって機器類を操作すること。
アクセス
情報処理での操作。記憶装置など周辺装置や他のコンピュータに接続すること。
ベルトコンベア
輪状にした幅広のベルトを台車の上で回転させ、その上に運搬物を載せて移動させる装置。
オフィースビル
オフィス(事務所・業務)を主用途として建てられた建築物のこと。
嗜好品
栄養を取るためでないが、好きで、食べたり飲んだりするもの。
セルフシステム
自動ではなく、自分で行うためのシステム。
ダストシュート
築物に設置するごみ棄て装置。各階で投入されたごみはチューブを通して下に集積される。
リサイクルプラント
廃棄物を処理して無駄なく再利用するための施設。月面では6時間集積して起動するために、6時間おきに廃棄物処理が始まる。




