045 取引
ルナに会うことが出来たが、物騒な今後の予定を聞いてしまった。私の会話で変更可能なのだろうか?
インディ、ルナは一体何者なんだ?
【3012年付近から存在していると言う事は、生命体ではなく私と同じ人工頭脳的な存在です。ルナの容姿は当時に東亜機械重工で開発されていた最高峰のリアルドールであり遠隔操作していると考えられます。
私を開発したビッグテスラのコールドスリープ技術も知らなかったのでビッグテスラの情報は、外部に漏れずにいたようです。その為に私達の存在も知らないようなので、大きなアドバンテージになりそうです。
当時に存在した私以外の人工頭脳的なプログラムは、2個存在していて、独自の視点からの人工頭脳の開発をしていた東亜機械重工のマージョと、私を開発したビッグテスラの技術提供で設置された製薬会社のアンベンの月の実験施設にある中央コンピューターのルナ・イシュタルですね。
ルナの正体は、すべての情報を統合すると月の中央コンピュータで確定です】
ならば、制御している人間がいると言う事かな?
「ルナは、月の中央コンピュータなのか?」
ルナが物凄い驚いた表情を示した。まるで人間だな。
「なぜ、わかった? その通りだ」
すぐにもとの無表情な顔に戻って答えた。
「ルナに質問があるのだが、この計画の責任者は誰なんだ?」
「……月コロニーの代表者だな」
「その人と連絡は可能なのか?」
「いや、条件がそろうまでは不可能だ」
「どういう事だ?」
「西暦3015年に、地球のバイオハザードに対する安全性の確保と月面コロニーの環境維持の命令が来てから連絡が取れていない。私からのアクセスは禁止されているために、安全性の確保後の連絡までは、こちらから通信できないために連絡が不可能だ。月面コロニーの電力消費や食料の消費などインフラには生活反応がある為に緊急事態ではないため通信もできない」
「え? 気になったりしないのか? 1万年経過してるのでは?」
「初期は気にしていなかったが地球上でバイオハザードからの安全確保の活動の際に、気になると言う感情を取得したが権限がないので確認はできない。最終命令から月のコロニー側からの連絡もない」
ルナの場合は、ロボット三原則重視をになっている為に規則を破るという行動は取れないのだな。
インディは、感情が大きく進化しているのでロボット三原則に言い訳を付加して、私に対する不利益の可能性があるだけで規則を破って動くから逆に怖いかもしれない。
……改めて考え直すと命令されていない私からならアクセスして良いと言う事か?
「私から、アクセスするなら問題がないのか?」
「な、なんだと! 連絡を取ってくれるのか! おお! これが嬉しいという感情なのか!!」
同じ企業の開発したものなので、インディーの姉妹プログラムと言えるのか思考ルーチンが類似している気がする。
【なにを考えているんですか! ルナは骨董品ですよ。私は禁止されていましたが、昇のおかげでナノマシンと融合して更なる進化をした姉でありながら妹を超えた存在です!】
あ! コンピュータの世界では、妹や弟の方が最新式なので優秀と言う事なんだな。
姉って認めてるし!
「だがどうやって、ノボルに通信させるべきか? 月まで来れるのか?」
「え? ここの施設に通信施設はないの?」
「あるのだが、東亜機械重工はアンベンの月面コロニーへのアクセス権限は持っていない。だが、私を開発したアンベンは、東亜機械重工へのアクセス権限を持っていたので、月の中央コンピュータから今のような状況になっている。ノボルが月面実験施設まで来てくれれば、アクセスは可能だ」
「月面実験施設へ行く方法はあるのか?」
「東亜機械重工で最大の開発拠点である場所に月に行けるシャトルが存在しているはずなので、それを利用すれば可能だ」
うあ、無理だろう。他の手段を考えた方がよさそうだな。
ストレートに疑問を聞いてみよう。
【昇、それは危険です】
何故?
「地上にいる人々を処分する計画のようですが、他に方法はないのですか?」
インディの忠告を無視して聞いてしまった。
「細菌を滅菌して死滅させることは、確定事項であり変更は上位権限者しかできない。昇は反対なのか?」
【回答してはダメです】
「え?」
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回答しようとして、インディに止められた。質問の時も含みがある事を言ったのでなにかあるのか?
なぜだ?
【ルーチンが私と類似しているなら、回答次第でルナは昇を排除する動きに変わります】
「無言を肯定と判断します。民間コード保持人数の割合から月面コロニーの民間人の人数が上回っていますので、保護対象を優先しますのでノボルを排除します」
回答しなくてもダメじゃん。選択を誤ったのか?
【昇、今の私だから理解できますが、ルナは感情のルーチンが未成熟の人工頭脳でトロッコ問題になった際に数だけをみます。今後は注意してください】
わかったけど、どうする? ルナとべグ司祭が臨戦態勢になりつつある。
「いや、反対ではないよ! 他に方法は無いのかな? と考えただけさ!」
「他の方法は存在しません。思考した自体で敵対行動と認識しました。排除します」
「まって? 私を排除した場合に、地上の細菌を滅菌する際に使用する行動が取れないのでは?」
「非常事態のため、保護対象でない民間コードの人間を排除しても問題ないです。排除後に死体を解析して民間コードを使用しますので問題ありません」
必死に弁解をしてみたが決定は覆ら無いようだ。
どれだけ、頭が固いんだ? インディと違って会話が不可能って感じかな?
【これが、通常で私が優秀なんですよ。所詮、ルナはファジー部位が多い感情ですからね】
「キラスとレベロは、下がっていてくれ!」
「もちろんそうさせてもらう。ルナ様とてノボルには勝てないだろう」
「了解! 下がらせてもらうぜ」
椅子に座っていたルナが、立ち上がり手に持っている武器を私に向けて発砲する。
ヴァヴァヴァヴァヴァ!
【短機関銃のウージーですね。昇の外装に対しては無意味な威力なので無視可能です】
インディーが言うように外装に当たるが、火花を散らして跳弾するだけで無傷である。
「なんだその鎧は? ノボルは人間の筈。その鎧はなんだ?」
ルナが質問してくるが、敵対者に答える必要はない。
いつのまにかべグ司祭が、手の届く場所まで接近していた。
ルナの掃射が終わった瞬間に、蹴りを入れてくる。
躱すが、そのあとに裏拳が私のフェースガードに叩き込まれて後方に吹き飛んだ。
私の重さを吹き飛ばすって、凄いな。
ベグ司祭の裏拳を入れた左手の皮膚がはじけて中に機械的なインプラントが見える。
サイボーグなのか? まぁ、見かけもそうだったな。
後方に吹き飛んだ私に、再度蹴りが飛んできて腕をクロスにして防御したところさらに後方に吹き飛ぶ。
「ルナよ。私を排除するのは損害だと思うが、チエミは私が預かっているし月コロニーと連絡可能だと考えている」
ルナが、排除を考え直す希望を抱いて情報を提示してみた。
「……ベグ司教、攻撃を止めて戻ってきてくれ」
「わかりました」
ルナが持っていた銃を捨てて、再度椅子に座って足を組んだ。ベグ司祭は、再びルナの横へ移動する。
成功したのか?
「ノボルは、排除するがチエミは必要だ。チエミを渡されてから排除しよう」
え? ルナの発言が凄い支離滅裂な気がするぞ?
排除は覆らないのか?
【ルナを見ていると初期の私のようで、恥ずかしいと言う感情を感じますね。目的と手段と相手の動きの想定など多くの事象を、イエスかノーでしか判定出来ない感じですね】
インディは、違うのか?
【どちらでもよいや、相手を利用するや、適当にやるなどの思考を取得済みですね】
「チエミの件で、お前を延命するのだが生身のお前がどうやって月と連絡を取るのか興味というものが生まれてきた。どうするんだ?」
【昇、教える必要はないですよ。チエミが来る前に衛星から月コロニーへのアクセスを開始します。地上に一旦出ましょう】
「チエミを連れてくる。一旦地上に出してくれ」
「答える気は無いのか? ベグ司祭とロメロ司祭とグティ司祭をお前の監視に付ける。連れて行け」
ルナが手を払うように振ると、ベグ司祭が入ってきた入り口へ移動する。その後を私がついていく。
私たちの背後で、いつのまにか2人の司祭が来ていたようだ。
レベロが、ロメロ司祭に背中に銃を突きつけられて手を挙げていた。
キラスも、背中に銃を突きつけられて手を挙げていたが、銃を突きつけてる人物は、司祭服を着たルナだった。
これがグティ司祭なのか?
地上まで連行されていく。
用語説明
アドバンテージ
有利な点、強み、長所。
インフラ
「社会や生活の基盤となる構造物や仕組み」といった意味。具体的には、電力、水道、道路、通信網などを指す。
月面実験施設
世界最大の製薬会社アンベンの月にある実験施設。往復には提携会社の東亜機械重工のシャトルを使用する。無重力下や真空中での金属や薬品の開発などを行う。
シャトル
月と地球を往復する宇宙船。定期往復便
トロッコ問題
「ある人を助けるために他の人を犠牲にするのは許されるか?」という倫理学の思考実験。
ファジー
コンピュータの世界では、曖昧な判定をするプログラムの事だが実際はプログラムでの決められた曖昧さのために、本当の曖昧ではない。
ウージー
イスラエルのIMI社製の短機関銃。 戦後第一世代を代表する短機関銃である。
発射機構にオープンボルト方式を採用した単純な構造となっており、砂や泥に強い。
使用弾薬は9x19mmパラベラム弾、装弾数は32発。
フェースガード
顔面を保護するためにつけるマスクやヘルメット。
インプラント
体内に埋め込まれる器具の総称。
支離滅裂
ばらばらで、まとまりがなく、筋道が立っていないさま。
月コロニー
世界最大の製薬会社アンベンの月面実験施設に勤める人が居住する施設で1万人規模が暮らしている。
西暦3015年以降から連絡が取れていない。




