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044 対談

 私とベグ司祭とレベロとキラスを乗せた大きな床が部屋ごと下へ降下を始めた。


 すでに10m程の降下していて、上部の壁から元の床があった部位に左右から再度床がせり出してきて、上部を塞いで真っ暗になった。


 壁に設置されたライトが点灯する。


「な、なんだ壁が光っている。ランプか? それにしては白いな?」


 レベロが、見慣れぬ電気式の照明に戸惑う。


「まさか、神殿に再び行ける時が来るとは! ノボル……いや始祖様のおかげか? まさか本当にいらっしゃるとは……」


「始祖様とは何者なのですか?」


「え? 始祖様ではないのですか?」


 トンチの問答のようだ。ベグ司祭に質問しても曖昧に答えるだけだな。


【昇の質問が悪いだけですね。始祖様の条件を聞いてください】


 何者と言う訳ではないと言うことか?


「始祖様となる条件は?」


「始祖様とは、私達の神ですよ。私達は造られた人類です」


「どう言う事だ?」


「ルナ様にお聞きになるのが良いかと思います。ルナ様の言葉の一部から推測しているだけですので、私ですら理解しきれていません」


 造られた人類? 神!?

 理解不能だが、ベグ司祭は改造人間っぽいので造られたがしっくりくるな。


 それから数百メートル降下したところで、視界がひらけた。

 物凄い大きな地下空間の壁へ、降下している床が出た。


「ジオフロント!?」


 向こうの壁が霞んで見えるほどの広大で、天井までの高さも100m超えている。

 大きな地下空間に天井を支える建造物が、かなりの間隔で並んでいる地下都市が現れた。

 空間に多くの近代的な建物があり、驚くことに草原や森まで存在していて、天井からの照明で昼間のように明るい。

 これを、今の時代の人が見たら、神殿に感じると言うか別世界に感じるだろうな。

 ムーンクレスト教に狂信的な人がいるのが納得できる。


 建物に看板的な名前が、何箇所かに書かれていていた。


 漢字? 東亜機械重工?


【東亜機械重工は、私が開発されていた時代の世界第2位の兵器メーカーですね。第1位のビッグテスラが私が開発された兵器メーカーです。当時は、国よりも民間企業の方が力を持っていた時代でした】


 お! 凄いな。当時の施設がそのまま残ってるのか?


 よく見れば人型ロボットが、建物の補修などをやっているのが見える。


 地下施設の最下層に到着した。


「神殿に案内しますので、ついてきてきください」


 目が見えないと思うベグ司祭が、しっかりとした足取りで地下空間の中心に位置する建物へ向かって歩き始める。

 結構な距離があるな。


「ノボル、ここすげーな。家の建築も勉強した事があるがありえない作りだぞ。人間が作ったのか?」


 レベロが、驚嘆して口が開きっぱなしだ。

 私の生きていた時代でも、ここまでの施設はコストがかかりすぎてつくらないだろうと考えていた。


 人工的に作られた草原や森を抜けると地下空間の中心にある、天井まで伸びた柱のような太い建物の前に出た。


 建物には、窓などが一切なく入口と思われる大きな門があるのみだ。


「昔は、常に開いていましたが第二王子の内乱があってから、謁見許可がある場合以外で開くことが無くなりました。世界各国の多くの美術品が提示されているルナ様との謁見の部屋へ行く扉です」


 私たちが、扉へ接近するとゆっくりと扉が4つに分かれて、まわりながら外壁に取り込まれて開いていく。


「扉が勝手に開いてるぞ! 凄いな! こんな宗教だったのか!」


 レベロが、施設に対して感動しまくっている。ムーンクレスト教に入りそうな勢いだ。


 建物の中に入ると、多くの美術品が並んでいて、200mほど奥に謁見用の部屋への入り口なのか豪華な扉があった。

 美術館の中に、私の裸像があった。

 ロメロ司祭反応は、これが原因だろうな……


 その扉も接近すると、上部へ扉が流れて開いていく。ルナレクイエム神殿の謁見用の部屋にたどり着いた。

 集会が出来るほど広い部屋の奥に、立派な椅子に座った白銀の髪に白銀の目をした長髪の美しい少女がこちらを見ていた。

 近代的な軍服を着ていて、手にはマシンガンの様な武器を持っている。


「御久し振りでございます。ルナ様」


 べグ司祭が膝をついてお辞儀をする。


「べグ司祭か? あとは、こちらで処理するから探索の業務へ戻ってくれ」


「ルナ様のお言葉には従いますが、この者達とルナ様だけを残してここを離れるには不安が残ります」


「……何故、そう思う?」


「ノボルと言う黒騎士の正体が、私にはわかりません」


「確かに、そうだな。ここに居るのを許す。私の横にこい」


 べグ司祭が立ち上がって、ルナの座っている椅子の横で仁王立ちになる。


「さて、キラス・デシュタールと、メロウ・ミミテルと……民間コードを持っている貴方は誰?」


 レベロの本当の名前も知っているとは! 既に来る前から知っていたのか?


「ノボル・シラトリだ。過去からやってきた」


「過去か……ロメロ司祭からもらった情報で、初めは私と同じ機械的な存在かと思ったが、まさか民間コードを保持しているとは思いもよらなかった。地球上で人間が生き残っている可能性はゼロだと結論が出ている。なぜ、ノボルは生きている?」


「コールドスリープと機械化のせいかな? 人間が生き残っていない? 地上にいるのは、みんな人間では? 『西暦3012年から来た。仲間を探している』という伝言でここまで来たのだが?」


 ルナの目が大きく開かれる。驚いているのかな?


「民間コードの検索許可をいただきたい。東亜機械重工には、ノボルの民間コードデータは存在しない。しかし民間コードデータは暗号化されているので偽証は不可能です。情報保護の観点から社外の過去のデータにアクセスするには、対象の許可が必要です。許可しますか?」


 さっぱり、状況が呑み込めないがどうするかな?


【許可して大丈夫ですよ。ルナの正体がわかりましたから大丈夫です】


 ほう、インディの知識になにかヒントがあったんだな。


「かまいません、調べてください」


『操作末端004からの認証情報を音声で確認、月のデータのバックアップデータからコードの検索を開始します。結果は操作末端004へ転送します』


 謁見室に、合成音が鳴り響いた。


「なにか、凄い事に巻き込まれている気がするな。ノボルに会ってから興奮が止まらない」


「ノボルに会ってから酷い目にしかあっていなきがするな」


 キラスとレベロが、独り言をぼそっと言っている。


「……なるほど……ノボルのデータがあった。それによると西暦2027年生まれ……民間コード登録年数が西暦2500年……住所が機密事項になっている。現在は西暦で言えば、12057年だ。実年齢10030歳なんだが間違えはないのか?」


「あってますね」


「そうか、コールドスリープしている人間がいることはデータに残っていなかった。だがこれで全ての条件がそろった。地球の再生が可能だ。あとはチエミを確保して、今いる人間もどきを全部処分すれば解決だな」


「まったく、内容が分からないのですが?」


「説明義務か...久々の人間の出会いに我をうしなってしまっているようだな。これが歓喜という感情なのだろうか? 西暦3012年に始まった世界大戦で使用された細菌兵器に対する治療方法がチエミと言う個体が持つ細菌に対する抗体を分析すれば完成する。完成すれば月コロニーに居る人々の治療対策が可能のため安全係数が移住可能になる。あとは、移住する人々の為に病原菌のキャリアの動物を全て処分して大気を洗浄すれば良い。しかし、処分する方法の最終決定に人間を挟まなくては実行できないのだがノボルが現れたので解決した」


「ん? キャリアの動物って?」


「地球にいる、抗体を作るために作成された人間に似ている生物の事だ」


「レベロとキラスみたいな人って事か?」


「おお、理解力が高い。人間はこうでなくてはいけない。デシュタール帝国など作って抗体を探していたが科学をわからないサルのような者ばかりで、ストレスと言う感情を感じていた。ノボルに会ってからまるで今までのストレスが嘘のように、興奮と歓喜と言う感情が発生してる」


 ちょっとまてよ。チエミが来るとバイオハザードの細菌に対しての治療法が分かる。そして月に居る感染していない生き残りの人間が地球に戻ってくる。治療方法が分かっても感染させないために、細菌に感染している人は全員殺すって事かな?


【昇にしては、理解してますね。ルナの言葉から今まで想定していた内容に誤りがある事が判明しました。私のナノマシンを同化させているパルとレベロから生体情報を取得して解析していましたが、DNAの情報が通常の人類の配列と異なっていました。そのために民間コードなどの付与は不可能なDNAでした。

 私の予想と違って、地球の人類は、昇が眠っている間に全員滅亡したようです。死滅後に何者かが、細菌に対する抗体を作成するために人間に類似した生命体を作って今の世界を築いたと想定できます】


 何者かってルナの事?


【確定するほどの情報がありません】


 とにかく、結構物騒な内容である。今いる人を全員抹殺するって事だよな?

 会話で修正可能なプランなのだろうか?

 物凄い不安が込み上げてきた。

用語説明


始祖様

ムーンクレスト教で使用される言葉。司教達がルナの発言で存在することをを疑っている存在。

ルナ様が出来ない事が可能で、ルナが昔仕えていた人々だと思われている。

司祭たちは、ルナが抗体と共に探している一つとして認識している。


ジオフロント

(Geofront) とは、地下に作られた都市


東亜機械重工

西暦3012年のころには世界第二位の兵器メーカーである。多くの国と取引をして大戦を拡大させた原因となる大型企業。各地に秘密の開発場所を持っている。


ビッグテスラ

西暦3012年のころには世界第一位の兵器メーカーである。世界で一番大きい2か国とだけ取引をして大戦を終わらせようと抑止力的な規格外の兵器を多数作ったが、使用されてしまう。

実用段階のナノマシン技術と、インディーの人工頭脳のルーチンは、ビッグテスラの企業秘密であり現存するのは昇とインディだけになる。


アンベン

世界最大の製薬会社である。西暦3011年に東亜機械重工と提携して、ミサイルの弾頭にのせる化学兵器産業に参加を始める。バイオハザードを引き起こす原因細菌を作った複合企業である。

無重力下や真空中での金属や薬品の開発などを行うために、月に開発用の施設として1万人規模のコロニーを作っている。


民間コード番号

人類が西暦3012年に細菌兵器のバイオハザードで滅んだ時まで運用されていた世界共通の個人識別コード。

各国に結ばれた協定では、軍事コード番号の人間以外の攻撃は全て禁止されていた。

昇は、民間コード番号が付与されており民間人扱いである。


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