表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/70

030 レックとルナ(回想)

 レックは、ルナに出会って空飛ぶ鉄の箱に乗せられて、海に面した河口の平野に降り立った。


「ルナよ、生まれて初めて空を飛んだが、お前は何者なんだ?」


「人間もどきに話しても仕方がないが、人間を守るべき存在だ。既に感染しているお前たちは、単なるゴミでしかないがな」


 ガッコン! ジー……


 着陸した空飛ぶ箱ごと、地面が広範囲で沈んで行く。


「な、なんだ?」


「作業用のエレベーターだ。無知と話すのが苦痛でしかない」


 通常で、味わったことがないゆっくり下に落ちて行く感覚をレックが味わっている。


 先程、立っていた場所がはるか上部に見え、左右から鉄の蓋がせり出して閉まって行くと真っ暗になった。


 バヒュウ……


 突然、全てが明るくなる。

 沢山の白く光る明るいランプが周囲を照らしている。


「ここは、神の住む世界なのか? 神殿なのか」


 レックは古代の科学力に陶酔し始めた。


 ルナは黙ってレックを施設の検査室へ誘導した。


 それから月日が経過した。

 レックは、ルナから多くの遠距離でも弓のように相手を倒す不思議な武器を渡されて傭兵団を結成する。

 圧倒的な武力で、海に面した川沿いの支配者になった。


 神殿だと感じたルナと初めて来た場所は、ルナレクイエム神殿として命名した。

 その上に巨大な傭兵の街を作った。


 さらに月日が経過してレック・デシュタールは、デシュタール帝国を建国した。

 そして、初代デシュタール帝国の皇帝となって行く。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ルナ様、今日はどのようなご用件でしょうか?」


 珍しく、神殿の奥に引きこもっているルナに呼び出されて機嫌が良いレックがいた。

 ルナに出会ってからレックの運命は、良い方にしか動いていない。


 レックは50歳になろうとしているが、ルナは出会った頃の白銀の髪に白銀の目をした長髪の美しい少女ままの容姿である。

 ルナは、戦争を無くすために世界を統一しようと考えていたレックに、神が遣わされた天使だと思っていた。


「ムーンクレスト教団の話は知っているか?」


「それは、知っていますよ。ルナ様の奇跡で助けられた人々が集まって出来た教団です。今は私の息子の第二王子が教祖をしていますよ。もはやデシュタール帝国の国教に近いですね」


「この施設には、私の許可なしでは入ってはいけない事になっているはずだな?」


「そのようにしていましすが、どうしました?」


「武器用の倉庫にムーンクレスト教団の者が無許可で立ち入って、武器を持ち出している。契約を違えたお前はどの様に責任を取る?」


 突然、重い雰囲気の空気変わる。

 この空気は何度も味わっている。ルナが怒っている時だ。


「教団の責任者を呼んで弁解と責任を取らせます」


「わかっているなら良い。しかし、今の教祖……お前の息子だったか? 十分気をつけろ、私はどうでも良いがお前は油断すると殺される」


 出会ってから初めてルナに心配された気がする。

 何故かレックの目に涙が出てきた。


「大丈夫でございます。ルナ様、では直ちに対応してきます」


 足早に城へレックは戻った。その顔には生まれて初めて認められた者の笑みが張り付いていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 謁見の間に、皇帝のレックと衛兵が4人いた。

 反対側に第二王子であるルジ・デシュタールと教団の司祭5人が立っている。


「なぜ、呼ばれたかわかるか? ルジよ」


「わかりませんね。父上」


「神殿にルナ様の許可もなく侵入した輩がいたが、それがムーンクレスト教団であると報告があった。申し開きは?」


「あはははは!!」


 突然、ルジが大笑いを始めた。


「なぜ笑う?」


「笑うしかないじゃないですか! 全部茶番だ。デシュタール帝国が建国されて強い武力で世界を統一しようとしているのに、その国のトップがあのルナと言う小娘の詐欺師に頭が上がらないのですよ!」


「な! なにを言っているんだお前は!! ルナ……ルナ様は詐欺師ではない!!」


「じゃあ、なぜ皆の前に顔を出さない? なぜ父上の背後から指示をだすのだ?

 不思議な武器も古代遺跡から偶然発見して、それを自分の力のように見せかけているだけだ!

 実際に奴の倉庫から多くの武器を持ってきたが、ルナの小娘が居なくても皆が使えるし、奴が何をしたというのだ?

 奇跡と言われる治療だって古代遺跡の薬でも使用したのだろう?

 奴の姿が年齢で変化しないのは一人だけ不老不死の秘薬でも飲んでいるからだ!!」


 薄笑いをしてレックをにらむルジに対して、最終勧告を行う。


「言い分はわかった。ルジは、ルナ様の許しがあるまで幽閉。教団は私が引き継ごう」


 衛兵が、ルジを取り押さえようと駆け寄った。


 パン……パン、パン!


「うあ!」


「ぎゃぁ」


 火薬式の拳銃であるM1911を懐から取り出して、衛兵に発射したルジが叫ぶ。


「父上がいけないのですよ。帝国は私が引き継ぎます。安心してお休みください」


 撃たれた衛兵が、目の前で虫の息で横たわる。


「な、ルジ!」


 これがレックの最後の言葉となった。


 パン、パン、パン……


 ルジと一緒に来ていた司祭も全員、拳銃を構えて倒れている衛兵とレックに発砲した。

 レックと衛兵が血だらけになっていく。


 レックの消えていく意識の中で、最愛のルナが微笑んでいる顔が浮かんだ。

用語説明


人間もどき

人間に見えるが、本当は人間ではないという比喩表現。

この世界の人間は、細菌感染して変質しており過去の人間とは異なる事を表現している。


ルナレクイエム神殿

レックが、初めて古代文明に触れて感動した際に命名した神殿の名前。

実際は、過去に月への旅行などを企画していた世界的な大企業の地下開発施設である。

簡易な物なら作成が可能なシステムが残っており、西暦2000年付近の武器などは生産可能。


M1911

旧アメリカ合衆国の銃器設計者であるジョン・M・ブローニングの設計に基づき、銃器メーカーのコルト社によって軍用に開発された大型自動拳銃である。


人物紹介


ルジ・デシュタール

レックの二人目の子供である。デシュタール帝国の第二王子。

小さいころから優秀で、どうして絶対的な力を持っている父上レックがルナと言う小娘に従っているのか、最後まで知ることができなかった人物。

ムーンクレスト教団を設立して教祖まで地位を取得する。

父上にあこがれて彼を追い、最終的に最悪の結末をむかえる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ