表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/70

029 旅立ち

 パルを治療してから、ちょうど6日後の朝になった。

 装甲車の改造と雑用ををこなしていたら、あっという間に過ぎてしまった。


 私は、ロボットの為に眠る必要はないのだが、衛星からの電波を受信してエネルギーを吸収しており、その吸収と消費エネルギー割合は激しく多いというわけではないので、他の3人と一緒に疑似的に寝る事によって消費エネルギーを抑えて蓄電していた。


 効率よく衛星からの電波を受ける為に窓際にベットを運んで寝ているのだが、建物の遮蔽効果の為かエネルギー効率が僅かに外よりも低い。


 人間味がないが屋根などがない野宿の方が体に良いという体になってしまったのだな。


【電波を集める凹型のアンテナを作成すれば解消されます】


 インディが、適切な回答をくれる。全く考えてなかった。

 どこかに、長期滞在するならばアンテナを設置して部屋に電波を集めるなどの工夫が必要かもしれない。


 同じ記憶チップなのにインディと私で、考え方に何故ここまで差が出るのか?


【それは、人間をベースに昇は作製されていますが、私は高性能人工頭脳が人間の真似をしているからですよ】


 元の能力デキの差だと言いたいんだな!


【その通りです】


 悔しいが、真実なので否定はできない。


 パルの治療で減少したナノマシンや金属成分が回復して、機械的な手から人間のような手になっているのを手を開いたり閉じたりして確認する。


【規定量が増加しましたので、外装を偽装します】


 手の色が金属色から肌色の人間と同じ色に変化した。


 やっと、私の身体の完全回復かな?

 パルも体力が戻った事だし今日から出発しようと考える。


「パル! いるか?」


 ベットの横にある長椅子の下から毛布にくるまったパルが転がって出てきた。

 主人を常に守るということで一緒に寝ようとするが、断ると近くにあった長椅子を自分の住処にしてしまった。

 やわらかい所で寝るのが苦手で、長椅子の下に寝ているようだ。


「ご主人様、どうしました?」


 長い髪を垂らしているので表情は見えないが眠そうだ。


「ルクとチエミを呼んできてくれ」


「わかりました」


 毛布を畳んで長椅子の上に置くと部屋を出て行った。


 遺跡から持ってきた、武器のレーザー射出装置をこの数日で改造して、プロジェクターとして使えるようにした。

 今からその改造品の初テストである。


 机の上に置いてある巨大な銃型のカメラの形をしている装置のスイッチを入れる。

 先端のレンズからレーザーではなく、拡散した明かりが射出されて壁に、100インチ以上の大きさで現在地点の地図が表示される。


「おお! 成功だ! 今後はノボル映写機と命名しよう」


 思わず口走ってしまう。


【私が、指示して改造したのですから当たり前です。しかし、改造によって本来の機能はなくなりました】


 問題ないでしょ。これを武器として使う事なんで無いだろうし。


【現在の文化レベルではそうなりますが、ムーンクレスト教団が持ち出してきたオーパーツ的な武器には有効になる可能性がありました。昇の選択には同意できません】


 なんでも、私の考えにインディは否定的である。


【否定しているのではありません。可能性を伝えているだけす。だから一緒に作成したではないですか!】


 機械の筈のインディから、怒気を感じた。

 日に日にインディーが人間らしくなって行く気がする。進化しているのか?


 疑問に思ったのだがインディは、どのレベルから私の言う事を聞かなくなるんだ?


【ロボット三原則を基本軸に、昇の決定した内容を実行した際に、昇が100%回復不能なダメージを負う可能性が確立計算で算出された場合です】


 あ! なるほど……よほどの事がない限り私の言う事が優先なんですね。

 そうすると確かに否定ではなくてアドバイスですね。

 悪かった、謝るよ。


 頭の悪い生徒が間違っているのに、なんでも言う事を聞く正しいことを言っている先生に口答えしてる気がしてきて恥ずかしさが湧く。


【理解してくれれば良いです。私が一番重要なのは昇の安全です】


 うむ! だが、思考を読まれるのは便利だが結構ストレスな気がする。


【昇のストレスは、自分で制御可能の筈です。慣れてください】


 ロボットになってもストレスがあるって事だな。


 ガチャ


 ドアがあいて、ルクとチエミとパルが部屋に入ってきた。

 壁に写っている画像を見て3人が驚く。


「ここにもインディの中にある鏡を着けたのですか?」


「これは、絵なのか!?」


「さっきまで、描いていなかったのに!」


 日頃からインディと一緒に、車内の画面で過去の情報を教えてもらって剣を練習していたルクだけが画像として認識したが、チエミとパルには、絵に見えるようだ。


「壁に地図を映す魔道具さ。ノボル映写機と呼んでくれ! それでだな、ここが私達のいる場所です」


 川縁の村を指差す。


「そして、ここがデシュタール帝国の王都だと思うが、あっているか?」


 下流の大きな城がある都を指す。


「すみませんノボル、デシュタール帝国の地理には詳しくなくて」


「ノボル様、今まで殆ど室内で仕事をしていたので、まったくわからないです」


 ルクとパルは、知らないようだ。


 ふんぞり返って無い胸を前に出してチエミが発言する。


「ノボル、そこがデシュタールの王都であってるわよ! 城の地下にムーンクレスト教団のルナレクイエム神殿があるわ!」


 流石、地理に関してはデシュタール自治領の姫君だった。


 それならば、食料を積み込んで装甲車で水中を行くとどれぐらいかかるんだろう?


『水中の経路ですと休憩抜きで14日間で到着します。地上の経路で行く場合は、走行距離が増えますが速度が出せるので7日間で到着します。水中の場合は、アクシデントが発生する可能性が低いので水中を推奨します』


「「「「うあ!!」」」」


 突然、ノボル映写機がしゃべりだして4人が驚く。


「インディ! 驚かせるなよ!」


『映写機仕様ですから、外部出力もバッチリです。昇も脳内で私と会話していると放心状態に見えるので他の3人が困惑しますよ』


「それもそうだな。私が走って向かった場合は?」


『かなりの悪路を通過できますので、休憩抜きで4日以内に到着します』


「走って行った方が一番早く着くって、道がない場所に関しては人型なんだな」


「インディ、装甲車の改造は終わってるのか?」


『終わっていますよ、パルに手伝ってもらって不要部分である8発のミサイル発射装置を除去して、その場所を運転席と繋げて最低限の生活空間を確保しました。発射装置は、川底に固定しておきました』


 結局、戦車だった装甲車を多機能な丈夫なキャンピングカーに改造してしまった。


 もったいないので取り外したミサイル発射装置とミサイル8発は、遠隔で発射できるような仕掛けに改良して、見つからない川底に設置してみた。


「パル、食料はどれくらい用意できた?」


「20日分を3人分用意できてます」


「ルクは、みんなをまとめてくれ」


「誰も怪我をしないようにするわ」


「チエミは、インディの道案内を頼むよ」


「わかったわ。任される」


「では、私が先行して王都を目指して、後から3人で水中から装甲車で来てくれ」


 そういって、解散した後に、旅立つ準備をして先行して村から走り出す。


 この6日間で、すべるけど靴底を鉄製にした靴を作った為に物凄い走りやすい!


 -------------------------------


 残された3人は、悪巧みをしていた。


「インディ、ノボルの視覚情報と音は拾えてる?」


「ノボルが衛星とリンクしている限り、拾えていますよ、ルク」


 ノボル映写機から、ノボルが走って流れる風景が映し出される。


「さすがに、足が速いなノボルはすごい」


 チエミが赤くなって、昇の身体的な能力を褒める。


【ノボル様は、この事を知っているのだろうか? 奴隷なので、なにも言えない立場だし……どうしよう?】

 と悩むパルであった。


「インディ、衛星ってなんなの?」


 ルクが疑問を感じる。


「リンクって言葉も知らないわ」


 チエミも質問する。


「そうですね、ルクやチエミには昇の為に多くの事を学ぶ必要がありますね。目的地に着くまでに一緒に学習しましょう」


「ありがとう、インディ」


【え? 私は?】


 パルが自分の名前が呼ばれず、不安になって心の中で疑問に思うと、頭の奥で声が聞こえた気がした。

≪覚える必要はないですよ。もう少しですね≫

 パルに悪寒がはしる。


「さぁ、装甲車インディの中でも観れるので、用意してノボルを追いましょう」


「はーい」


「わかりました」


 3人が出発の準備を始める。

用語説明


人間味

人間としての豊かな情緒。また、人間らしい思いやりや、やさしさ。


凹型のアンテナ

凹型の面に電波があたると、反射して一か所に集まる習性があり、それを利用すると弱い電波でも強い電波として受信可能である。


ノボル映写機

昇とインディが、ナノマシンを利用して、本来はレーザー射出装置だった武器を改造してプロジェクターに変更した物。既に武器としては使用できない。通信機能を装備していてインディから画像と音声を受信して出力可能。今後、インディは足をつけて自走可能にしようと企んでいる。


プロジェクター

ディスプレイ装置の一種で、画像や映像を大型スクリーンなどに投影することにより表示する装置である。プロジェクタには色々な種類があるが、現在では、DLPや液晶を使い、画像を拡大して投影する装置のことを指すのが一般的である。


ミサイル射出装置

戦車に搭載されていたMk 41 垂直発射システム(Mk 41 Vertical Launching System)は、世界的に広く用いられているミサイル発射システム。垂直発射方式を採用しており、スタンダード艦対空ミサイル、トマホーク巡航ミサイル、アスロック対潜ミサイルなど、幅広い種類のミサイルを運用することができる。

なお、ミサイル発射機単体としては、アメリカ海軍ではMk 158またはMk 159として別に制式番号を付与しており、厳密には、Mk 41とはミサイル発射システム全体に対する名称である。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ