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018 遠い道のり

 川底から、川の浅瀬を経て川の淵に出てきた。


 ルクは、昨日からの出来事で疲れた為か、運転席で寝てしまった。

 運転席はベンチシートのような二人用だったので、私が降りて足を曲げて横に寝かせておく。


 座る場所を占領されたので、ハッチから外に出る。

 夕日が沈もうとしていた。


 上空の軍事衛星は、まだパスワードを突破できないために使えないが発電衛星とのリンクを調べる。

 ルクが寝ているので、脳内で会話しよう。

 インディ、確かめられるか?


【発電効率が高い電波の受信を確認しました。消費エネルギーよりも電波受信によるエネルギー供給がわずかに上回ります。これにより常時活動可能です】


 助かった。これで毎回ここにエネルギー補給で戻る必要はなくなった訳か。


 発電衛星は、他にどんな機能があるんだ?


【宇宙空間での太陽光線を発電に使用して貯蓄し任意の場所に対して人体に影響がない発電効率が高い電波を発信する機能と、GPSおよび高性能カメラによる上空からの衛星写真の取得が可能です】


 上空からの写真が見えるのか、今の位置の画像を送ってみてくれ。


 目の前に実際は無いが、視覚情報にインディが割り込んで上空写真が映し出される。

 大きな川の上流に私達がいるようだ。

 川を下って行くと村のような場所が6箇所

 町規模の場所が3箇所、海に出る河口に大きな都市のような場所に大きな城があった。


 まさか、この城がデシュタール帝国の首都なら簡単に行けそうだ。

 だが、それは勘違いであった。めちゃくちゃ遠かった。


 縮尺を調べたら、ここから城迄の距離が5000km……川自体は6000km超える大きな川だった。


 この川ってナイル川やアマゾン川級の世界最大の川か?

 今乗って来た装甲車の最高速度は、時速40kmである。

 水中だと時速15km……

 2週間走りっぱなしでやっと着く感じだな。


【当面の目標は、ルク用の食料一か月分になりますね】


 考えていることがわかってしまうインディが、回答をくれる。


 一番近い村のような場所へ移動しよう。

 距離がおよそ60kmである。水中を4時間で到着する計算だ。


 朝まで、周辺を散歩して朝に出発だな。

 今いる位置をズームすると、2km奥に道があって、馬車がこちらに向かっている。

 その背後を別の馬車が複数台、追いかけているように見えた。

 流石に画像が荒い為に、詳しくは見えない。

 夕日が沈み、周りが真っ暗になった。


 暗視機能で、私は昼間のように明るい。


「インディ、ルクを頼めるかい?」


【お任せください、バックアップを起動しましたのでこれで大丈夫です】


『起動確認しました。独立してルクをお守ります』


 装甲車からインディの声が聞こえる。


 ロボットになった筈だが、好奇心と言う感情もちゃんと移植出来たのだろうか? 仮想の感情だとしても、先ほど見た事が気になる。


 2km先の道へ全速力で駆け出した。

 2分で到着する……私の全力疾走は、時速60kmのようだ。


 予想通り、先頭の2頭立ての馬車を、背後の3台の馬車が追いかけている構図であった。

 先頭の馬車を引いている馬が限界で口から泡を吹いている。

 今は、先頭の馬車と執事の服を着たイケメンの私が、一緒に走っている構図である。


 追いかけている馬車がいる100m後ろから、叫び声が聞こえてくる。


「もう逃げられないぞ! 諦めて止まれ!」


「たっぷり可愛がってやるよ!」


 テンプレの悪役のセリフが聞こえる。


 走っている馬車乗り込んだ。

 中には、血だらけの意識が無いように見える女の子と軽装な兵士が2人乗っていた。馬を操作していない方の兵士が驚く。

 馬を操作している方は、気がついていない。


「だ、誰だお前は!」


「通りがかりの者ですが、何かお困りですか?」


「は?」


 会話の途中で馬が限界のために倒れ込んで、馬車が急停車する。

 急停車により兵士が馬車から振り落とされて、血だらけの女の子も外に投げ出されたが、私がキャッチして無事着地する。


 背後から3台の馬車がやってきて囲むように停車した。

 飛ばされた兵士は、気絶しているように見える。


 馬車からライトプレートで武装した9人と軽装の3人が降りてきた。最後に派手な服を着ている偉そうな男が現れた。


「全く手を焼かせられましたね!」


 派手な服の男が、気絶していると思われる兵士に蹴りを入れる。


「うァァァ!」


 何処かの骨が折れているのか痛みで兵士が目を覚ます。

 もう一人の馬車から落ちた兵士は、軽装の男が首を切断していた。


 こいつら、容赦しなくてよい人種だ。


「で、お前は何者ですか? 生贄を返してもらいましょうか」


「生贄?」


「生贄も知らないのか? 執事の姿から見て何処か貴族の者かと思ったが、低俗な輩か?」


「通りがかっただけで返せといえば返しますが、この子を殺すのですか?」


「殺すとは失礼な! ルナ様に献上するだけだ。ムーンクレスト教では最上級の行いである。生贄に選ばれれば、その魂を月へ送り出してもらえるのだよ」


 この人たち狂信者なのかな……

 先ほど蹴り飛ばした兵士が、叫ぶ。


「どなたかわかりませんが、姫を連れて逃げてください! お願い……」


 グチャ!


 ライトプレートを着た男が、ハンマーで男の頭を潰した。


 全員の目が、その叫んだ男に向いた瞬間に女の子を抱いて全力で逃げ出した。


「な! 消えた?」


「どこに行きやがった!」


「なんだと!」


 一瞬虚を突いた為、全員には消えたように見えたようだ。


 しかし、軽装の一人が私の足跡を指して痕跡を調べ始めた。


「ロメロ様、跡を追いますか?」


「当たり前だろう。だが奴は何者だ?」


「足跡も変なんですよ……まるで5倍程の体重があるかのような沈み方をしている。こんな足跡は初めて見ます」


「まぁ、我らムーンクレスト教に従わないのであれば魔女の手下だろう。すぐさま浄化しなくては! きいイィ……」


 ロメロと言われた男が頭を掻き毟る。

用語説明


ムーンクレスト教団

月を崇める教団であり、正しい行いをしていれば死後に月にて再度生命を得ると信じている。

生前に生贄として送られた場合は、月で上級職につける為に優秀な人ほど生贄として命を落とす。

基本は大変素晴らしい教団なのだが、生贄に関してだけは狂信的であり、教団で素晴らしい結果を残した人の親族は全て生贄にされる。

生贄に反対する者は魔女の手先であり、全て殺される。


発電衛星

静止軌道上にソーラーパネルを広げ太陽光線から発電して蓄電。貯めた電力を任意の電波で地上に届ける。


GPS(global positioning system)

地球上の現在位置を、人工衛星からの電波で測り知る装置。全地球測位システム。



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