表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
71/151

第二十一幕 闇の天使、シルスグリア 1

 それは、オーロラと呼ぶべきものだろうか。


 どうやら、何者かの誘導によって、オーロラはギデリア付近に運び込まれていたみたいだった。


 ミントを抱えたメアリーは、唖然としながら、その光景を見ていた。

 ルブルの城が、オーロラによって、次々と崩れ去っていく。

 正確には、死体を縫合して繋いだ城は、死体が次々と変形していき、四足歩行の化け物となって、アンデッド化したまま、砂漠へと勢いよく走り去っていくのだった。

 城は、既に三分の一以上が、次々と、別の怪物の大群へと変えられてしまっていた。


 城の当主は、何処にいったのだろうか。

 メアリーは辺りを見渡す。


「なんで?」

 メアリーは訊ねた。

「リコットよ。覚えている?」

 メアリーの背後に、一人の人物が佇んでいた。

 翼を有する、何体かの縫合ゾンビを背にして、真っ黒なドレスの女がいた。

 ルブルだった。

 彼女は左手に、男の子の人形を持って、崩れゆく城とメアリーと、メアリーが肩に背負ったミントを眺めていた。


 やがて、城は完全に解体されていく。

 城から無数のアンデッド化した獣が生まれて、砂漠へと走り去っていった。


「オーロラが去っていくわね」

 メアリーは呟いた。


「リコット。頭蓋切開で遊ぶだけじゃなく、ちゃんと殺しておくべきだった。私達の城に向かってきたのよ。あの謎の緑のオーロラを連れて。化け物になって、私達に復讐に来た。ちゃんと、始末しておくべきだった。…………」

 ルブルは愕然とした顔で、地面に腰を下ろした。


「それよりも、ルブル。一刻を争うの。治療道具とか作れないかしら?」

 メアリーは、ルブルの背後にいる縫合ゾンビを眺める。

「無理ね。この子達は、治療器具の代わりにはならない。ねえ、それよりも、私は落ち込んでいるのよ。慰めてくれないかしら……」

 ルブルはどんよりとした顔で、地面を眺めていた。


 メアリーは街の病院を探す事にした。

 今から襲撃して、ミントを治療する為の道具を探さなければならない。

 しかし、間に合うだろうか。


 一陣の風が吹いて。

 一人の人物と、一体の怪物が現れる。

 頭に角の生えた兜を被った魔道士と、彼に付きそうように立っているドラゴンだった。


「俺の名は暗黒魔道士シトリー。後ろにいるのは、ドラゴン魔道士のザルクファンド。呪性王ってギルドのメンバーだ」

「あらそう? 病院でも紹介してくれるのかしら?」

「お前らの活躍みていたぜ。あのジャレスをボコボコにしていただろ? ロギスマが悔しがっていたがな」

「覗き見?」

 メアリーは怪訝そうな顔をする。

「何言ってやがる? あんな派手なの、近くにいれば、嫌でも眼に付く。それよりも、俺達のアジトにこないか? 面白ぇえもんを見れた礼に、匿ってやるよ。背負っているの、受胎告知の娘だろ? その傷、厳しいんじゃねぇか? 早くしないと死ぬぞ」

 シトリーは少し楽しそうに言う。


「分かったわ。私達みんなを匿ってくれないかしら」

 メアリーは、大きく溜め息を吐いた。


「じゃあ、お前ら会ってくれないか? 俺達のギルド・マスター、闇の天使シルスグリア様にな」

 シトリーは告げる。

 彼の背後、ドラゴンの魔法使いの隣から、闇の亀裂が生まれた。亀裂から、四つ脚の翼を持った悪魔が現れる。彼はシトリーの盟友だった。闇の中は下へと続く、階段になっていた。どうやら、此処に共に向かえ、という意味らしい。



 ミランダは愕然としながら、その光景を眺めていた。


 オーロラが魔女の城に触れて、魔女の城は崩壊し、アンデッド・モンスター達は、次々と、邪悪な四足歩行の怪物へと変形していく。

 魔女の城は破壊され、崩されていく。


 オーロラの向こうには、何十頭、下手すると何百頭ものドラゴンが空を舞っているのが見えた。


 報告によると、ミランダが派遣した、冒険者ギルドの者達も、次々と、オーロラの餌食になっていった。

 彼らは全身が変形して、四足歩行する獣へと変わっていく。全て、サウルグロスの力によって、モンスターの先兵へと変えられていったらしい。


「うーん、うーん……」

 ミランダは、踵を返す。

「何をどう考えても、あんなものに勝てるわけないわよねえ。命あってのモノダネだし。そもそも私は兵士でも何でもないから、名誉とかどうでもいいのよね。私、少し、旅行にでも行くって、周りの者達に伝えておこうかしら」

 そう言うと、女貴族ミランダは、その場から去っていった。


挿絵(By みてみん)


メアリー

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ