表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/151

第十五幕 帝都の怪物 -女貴族、ミランダ。- 2

「よくやったな。ジェドッ!」

「そうだぞ、坊主っ やりやがったな? 三下っ!」

 ジェドは、ガザディスに頭を撫でられ、ベルジバナからこずかれる。他の生き残った盗賊達からも、それぞれ礼と賞賛の言葉を言われる。


 ジェドは……。

 かなり、衰弱していた…………。

 身体の所々が、やせ細っていた。


「すまんな、ジェド。俺が不甲斐無かったせいだ」

 ガザディスは、治癒魔法の篭もった杖を、彼にかざす。

「『魔剣・他人の(アンサラー)』か……。デス・ウィングも、随分と酷いものをお前に与えたものだな。それはお前の命を使い、敵に“死という結果”を残す存在なんだな?」

 ガザディスは、ジェドに渡された短剣に関して、冷静に分析していく。

「とにかく、生き残れて良かった。……だが、やはり帝都と戦うには、まだまだ俺達は弱過ぎる。ミランダ、凄い女だったな。あんなのが帝都の貴族グループ『パラダイス・フォール』にはゴロゴロいるんだろうな。次元が違い過ぎる」

 ガザディスは、改めて、自分が何と戦っているのかを考えて、暗澹とした気持ちを拭いされなかった。……今回も、仲間達に多くの犠牲者を出してしまった。……みな、ある程度の覚悟をしているとはいえ、自らの失態以外の何物でもない。


「そして、(カシラ)。帝都と戦うという事は、協定を結んでいる大悪魔ミズガルマとも戦う事になるかもしれませんよ」

 ベルジバナは言う。

「ああ、そうなるだろうな……」

 ガザディスは深く溜め息を付いた。


「だが、いつか絶対に、レント・シーカー(市民から金を略奪する金持ち)の、人でなしどもを倒してやる。俺は、大地の為に、森の精霊の為に、美しき自然の為に、貧しき者達の為に、……やつらを倒さなければならない。ベルジバナ、みんな、俺に付いてきてくれるか?」


 ガザディスは配下の者達に強い眼差しを向ける。

 彼の配下達は、喝采の声をあげた。



「この私に此処までの事をするとは……。下層階級の塵芥がっ!」

 ミランダは怒りに打ち震える。

 彼女は煮え滾る油を操作して、配下の者達に八つ当たりを行い始める。配下の執事達は彼女を怖れていた。何とかして、機嫌を取ろうと必死だった。


「絶滅収容所を今すぐ製造しろっ! 大スラムの連中を清掃してやるっ! 駆逐してやるわ。奴らに与える餌は、王宮地下の実験生物や人肉や糞尿や昆虫でいいでしょう! 人間が何処まであらゆる人体実験に耐えられるのか試してやるっ!」

 ミランダは、油の中に松明を投擲する。

 すると、液体操作によって浮遊していた油が燃え上がり、彼女は炎のカーペットを空中に作り出していた。


「そ、それが、今、パラダイス・フォールは、作戦会議の最中です。ゴミを始末している余力は今、ありませんぞ?」

 執事の一人が、ミランダに告げる。


「バザーリアン国王も、ジャレス様も、ロギスマ将軍も、ドラゴンと魔女達に手を焼いています。未だ、魔女達の牙城が突き崩せず、西から出現したドラゴン達は何やらルクレツィアを侵略する為の計画を進めている。ミランダ様、どうかお怒りをお沈めくださいっ!」


「まあ、いいわ」

 ミランダは笑顔になる。

「ドラゴンと魔女、どちらかを私が殺しに行くわ。それで私の顔に塗られた泥は取れるわね」

 彼女は薄ら笑いを浮かべていた。


「ロギスマ将軍に伝えなさい。私が力を貸して作り上げた、侵略の大巨人クレデンダを解き放て、と。あれを邪精霊に向けなさい。ドラゴンと魔女は私自らが向かうわ」


 そして、ミランダは唐突に両手を掲げる。

 ルクレツィアで流れる、聖歌を歌い始める。

「ああ、我らの偉大なる砂漠の都市よっ! 不滅の栄光よっ! 大いなる恵みよっ! この私は力による支配を求めている。この帝都こそが全て。この帝都こそが神の大義。おお、我らは凱旋を始めるっ! おお、我らは大地を血で染め、苦難な勝利を収めるっ!」

 ミランダはうっとりとした表情で、聖歌の一節を歌う。

 彼女は自らの生み出す力によって、周りにいた執事達の血肉を床、壁、天井にぶちまけて、どろどろに混ぜ合わせていた。




ガザディス「おーい。ジェド。お前の呪われた武器。ちょっと借りるぞ。ん、おい、お前ら、何読んでいるんだ?」



『異世界英雄ハーレム! 空から落っこちたら、エルフの大きな胸の上でした!?』



ジェド「あ、あの。このライトノベル……、帝都で流行ってまして……」


ガザディス「ううん、少し借りるぞ。…………。…………、冒険者ギルドの成り上がりの話か。お前ら、頼むから、中身のある本読んでくれよ」



ベルジバナ「ガザ兄。これ面白いですぜ。……あ、ジェド。おい、この盗賊団すげぇ、ムカ付くなっ! こいつら全員、打ち首だ、打ち首っ!」


ルゴ「冒険者ギルドの受付のメイドさん可愛いんですよっ! カシラっ!」


ジェド「この盗賊団、腹立ちますけどっ! 主人公がチート武器で瞬殺するんですよっ!」


ベルジバナ「マジか!? こいつらクーデレのエルフ、ヒロインを痛めつけようとしやがって、絶対に許せんっ! さっさと成敗だああああっ!」


ルゴ「……でも、俺、実はサブだけど、この可愛い男の子が好きで……。主人公とくっ付いちゃ駄目かな……?」


ジェド「ハーレムなんで大丈夫です! ちなみに、このチート武器、欲しくないですか!? 魔王を一刀両断するんですよ!」


ベルジバナ「おい、ちょっと待て、この野郎っ! ネタバレをするんじゃない!」



ガザディス「お前ら、帝都が攻めてくるっていうのに、平和ボケも、いい加減にしろおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ