第十三幕 死のフーガ 2
……あのミノタウロスの勇者ハルシャとミントを殺し合わせて、ミントにハルシャを殺害させるか。それとも、ハルシャにミントを殺害させるべきか。
……ミントとメアリーの殺し合いは、もう魅力的な感じがしないな。あの二人、もう仲良くなってしまえよ。その方が面白いだろ? ……待てよ、ミントとメアリーが仲良くなり過ぎれば、ルブルがミントを殺しに行くだろうから、それでルブルとメアリーを険悪にさせるの面白くないか?
デス・ウィングはタロット・カードを引きながら、思考を整理していく。
カードから、邪悪としか言えない禍々しい魔力を帯びていた。
……ジェド面白くないんだよな。さっさと、誰かに殺されてしまえ。ミントはハルシャに殺させる方が心が踊るんだよなあ。『他人の死』の馬鹿が、やる気が無いのが問題だな。あいつの気まぐれのせいで、予定が狂ったからな。
……ガザディスは気に入ったから、別枠だよな。シトリーの方が興味があるな。シトリーをサレシアの処に仕向けたら、サレシアの実力を離れるな。もう、少し奴らに関わってみるか? 待てよ、シトリーの所属しているギルド・マスターと接触してみるか?
……ガザディスやハルシャのような奴を見ていると、邪悪な知識を与えたくなるな。奴らが強大な力に振り回されるのも、見てみたいな。だが、最優先は他の奴らだな。……待てよ、ミントを殺したハルシャを狂わせて、ハルシャにガザディスを殺させて、ハルシャを血塗られた英雄にしてやって……。
デス・ウィングは平気で、思考を切り替えた。お気に入りの人間でも、殺し合いをさせた方が面白いと思えば、そう仕向けたい……。
……待てよ、当初の目的に戻らなければ……。ミントを覚醒させるのが無難だな。あいつの母親が言うには、面白そうだからな。だが、ミントをどうすれば……。覚醒した、あの女、大悪魔ミズガルマの軍団よりも強いのか? ……待てよ、ミズガルマの軍団を煽って、ミントを襲撃させて。ミズガルマの処に向かおうか? その際には、メアリーの協力が必要になるな……。私がメアリーから恨みを買うのは、今、マズイな。
……それよりも、ミントの母親から聞いたミントの情報を、誰に売り付けるかだな。当初は色々な奴らに教えて回ろうと思ったが、駄目だったな。……無作為にやっても、与太話として大衆は処理するからな。つまらない。……一番、情報が知れ渡ってはいけない連中だな。……それを探り当てないと。…………
……ヒドラのラジャル・クォーザと、邪悪なドラゴン、サウルグロスの全力の戦い見てみたいな。巨大モンスター同士の戦いは凄そうだな。怪獣大決戦とか言う奴だな。だが、あいつら意外にも喰い合いとか爪とか尻尾とかじゃなくて、遠距離からの魔法で戦いそうで、面白くなさそうだな。モンスターらしい事をやれよ、ふざけるな。……待てよ、竜王イブリアと接触したいな。どっちが強いんだ?
デス・ウィングは、中々に自分が仕向けようとした劇の”プロット”が進まない事に苛立ちを覚え始めていた。思い通りに動いてくれないのは、中々につまらない。
まったく、他人を何とも思っていなかった。
†




