表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/151

第四幕 竜王、イブリア 1


 デス・ウィングは、ミントと話をする数日前に、彼女はある人物の下へと向かっていた……。



 夜の出来事だった。

 窓は開かれ、闇はこの寝室の中へと、突如、入り込んできた。


「お前は何者だ? “使いの者”か?」

 ルクレツィアの国王、バザーリアン・ルクレツィアは、贅沢な椅子に座りながら、窓を開けて入ってきた狼藉者に訊ねた。

「使いの者、か…………」

 国王は、沢山の書類の置かれたテーブルを殴り付けた。

 

 彼女は煤けた長い金色の髪を、靡かせていた。

「代々、この国は、国王が権力を行使し、統治を行ってきた」

 彼女は、闇は、とても楽しそうな口調で述べていく。


「そして、大悪魔ミズガルマの力によって、この国ルクレツィアは栄えてきた。そして、竜王イブリアに、外敵から身を守られてきた。国民達は、この両者は邪悪なる怪物だと信じている」

 

「使いの者かと聞いているっ!」

 国王は怒りに震えていた。


 突如、乱入した者は、この国の秘密に付いて語っていく。

「大悪魔ミズガルマから“資源を貰い、この国の金持ち達は栄えてきた”。まさに悪魔との契約というわけだな。そして、貧困が広がる。みなこの国を支持している。それは何故か? それは来世に期待を抱くという宗教があるからだな?」

「な、何を………!?」

 国王は黒く長い口髭を弄りながら、眼の前に現れた者を恫喝(どうかつ)しようとしていた。

「今、ルクレツィアは、悪魔ミズガルマと竜王イブリアの戦争に巻き込まれようとしている。国民には公式には知らされていないがな。しかし、私は、その意味を考えていたんだ。お前は巨人が村一つを壊したというのに、平然とした顔をしているんだな。まあ、そうか。お前の安全は保障されているものな。どちら側にもな。ただ、お前の国民達は違うんだろう?」

 男は、調度品の壺やタペストリーを拳で殴り続ける。

「そして、巨人クレデンダ討伐の為の部隊を編成した。兵士は貧しき者達から募ったそうじゃないか? 最高だな。お前と大悪魔が繋がって共謀している。巨人クレデンダを倒す為に、お前は随分と、武器を買う為に、自国民から奪った税金を使ったそうじゃないか。そして、兵士達の武器を売り、作ったのは、敵対している筈の、大悪魔ミズガルマの下で働いている者達だと調べてきたのだが…………」

 闇は、本当に楽しそうな顔をしていた。

 その瞳には、悪意が凝縮されているかのようだった。

「この“構図”は観ていて、とても楽しいよ。本当に、面白かったよ」

 悪意は今にも、吹き出しそうな顔をしていた。

「もう一度、問う。お前は使いの者か? 違うのか?」

 ルクレツィア王は、怒りに満ちた形相で、狼藉者を見据える。


「違うよ……」

 デス・ウィングは薄ら笑いを浮かべていた。

「悪魔からでも竜王からの使者でもないよ。私はただの“傍観者”だよ。勝手に、国民にさえ知らされていない、この国の内部事情を調べて、一人で動いている。私は誰にも仕えないよ。ただ、安心していい、私は傍観者だ。だから、私はお前のやる事に興味が無いんだ」


 ルクレツィアの王は、衛兵達を呼ぼうとしたが、止めた。

 彼には分かっていたからだ。

 眼の前にいる者が、人の手によって勝てる相手ではない事に…………。



 ルクレツィアという国の中身は腐っている。

 いや、元々、見せ掛けだけの綺麗さを糊塗(こと)していっただけだったのかもしれない。


 国内が腐っているから、国民の関心を国外に向けさせる。

 大悪魔ミズガルマが放った怪物、昆虫型の巨人クレデンダ。

 あれから、消息は無い。

 むしろ、ルブルとメアリーの脅威の方が、国民全体を不安に陥れている。


 その意味する処は、彼女二人は、ルクレツィア国王と悪魔ミズガルマの計略を大いに狂わせたという処だろう。それどころか、そもそも計画を白紙に変えてしまったと言ってもいい。それがルクレツィアの国民全体にとって、吉と出るか、凶と出るかは、デス・ウィングには分からない。……もっとも、不幸が別の不幸に変わっただけなのだろうが。


 ……、ふふっ、あの二人、とても楽しそうだな。さて、あのクレリックとしばらく話した後に、あの二人の魔女とも話してみようかな?

 デス・ウィングは夜風にあたる。

 夜の風は、とても心地が良い。

 しかし、それにしても、永久凍土の砂漠といっても、この場所、ルクレツィアの領土は朝になり、夕方までは日の光が昇る。そして人々は日に焼かれる。

 あの空の太陽は、何か強大な力で創られたものではないのか?

 彼女は、満月を眺めながら、そのような事を考えていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ