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第三幕 国家を滅ぼす者達。 4


 ルクレツィア北西にある小都市、ギデリア。

 そこでは、兵士達の第二部隊が養成されていた。

 所謂、基地が点在している。

 その周辺には人々の居住区もあり、商店街などもあった。この辺りは貧民街とは違って、比較的中流層が住む街だった。


 人々が商店街を歩いていた。

 夜の街だった。

 仕事に疲れた者達が飲み屋街などで酒をあおっている。


 民の一人が、空を見上げる。

「なあ、あれ何だと思う?」


 スフィンクスや、鳥、空魚の類では無い。

 明らかに、おぞましい何かだった。


 それは、骨だけの竜だった。

 背中には、一人の女が馬にでも跨るように乗っている。


「此処を硫黄の渦に変えに来たわ」

 天空高くを飛翔していた女の声は、地上を這う者達には届かないみたいだった。だが、何名かは何か危険を察したのか、この場から不安がって去ろうとする。

 女は指を鳴らす。


 すると。

 街全体に、ゆらゆらと、炎に包まれていく。

 まるで、蜃気楼のような炎だった。実体を伴っていない、映像のようだった。

 人々は混乱している。

 何か、誰かの大掛かりなイタズラでは無いかと思っている者達ばかりだった。それでも、危険を察知して逃げ出している者達もいた。

「さて、私の幻影が実体化するまでには、少し時間が掛かるのよね。手持ちの武器くらいなら、一瞬で出せるけれども。こんなに広い場所全体を、となるとねえ?」


 炎は、少しずつ形になっていく。

 突然、何名かの者達の全身が発火していく。

 次第に、炎によって焼かれる者達は増え続ける。肉が溶けて、人間が炭化していく臭いが充満していく。


 街全体が火の海になるのに、そう時間は掛からなかった。


 甲冑を纏った、スフィンクスが現れた。

 その背には、同じように甲冑を纏ったミノタウロスの戦士が両刃の斧を振り上げていた。

「俺は街を守護するギルドの者だっ! 貴様は何者だっ?」

「死にゆく人に名乗る名前は無いわ」

 

 メアリーも、いつの間にか手に鉈を持っていた。

 何度か、刃物と刃物が交差する。

 

 ごろりっ、と、地面へ、スフィンクスとミノタウロスの戦士の頭がボールのように落下していく。


 人々が炎から逃げまどう中、全身が焼け爛れた死体達が人々を襲った。死体達は兵士の格好をしていた。彼らは歯で肉を喰い千切る代わりに、人々へと抱き付く。すると、死体の内部が高温を発して、人々を熱によって焼死させていく。


「遅れて、ごめんごめんっ!」

 ルブルが、別の骨のドラゴンに乗って、メアリーと合流する。

「あらあら、どうしていたの?」

「ふふう。兵士育成の訓練所にも、先に遊びに行ってきちゃった」

「あら、抜け駆けね」

「別にいいでしょう? メアリー、貴方が遊ぶ分は沢山、残してあるからっ!」


 炎に塗れたゾンビ達は群れを作って集まっていく。そして、みな折り重なっていく。何体も、何体ものゾンビ達が積み上げられる。

 しばらくすると、炎の城が作られていく。


「て、帝都に仇なす者達よっ! そっ首、落としてやるわっ!」

 銀色の兜をかぶり、鋼の甲冑を纏った、トロールの戦士が二人の眼の前に現れる。

「なあに? 貴方?」

 メアリーは、ハルバードのような斧の柄を地面に付き立てながら、首を傾げる。

「我の名はバルジャックッ! 同胞であるミノタウロスの戦士、ガルゾドの仇、討たせて貰うっ!」

「ふうん? ねえ、醜い顔の鬼さん。私はお前のようなゴミに興味が無いのよ。人間の美少女をバラバラにしたいわ。見逃して上げるから、何処かに消えてくれない?」

 トロールの戦士は、巨大な戦斧を構える。

「ルクレツィアの神と、大地の為に、貴様ら忌むべき者達には消えて貰うっ!」




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