冬の訪れ
緑はあっという間に色を変え、赤や黄色に染まった。
ふわふわと雪虫が舞うようになり、その翌週には雪が降った。
手袋の上に大きな雪の結晶が乗る。
「おーちゃん、見て。でっかい雪」
最近のオホランデはしょっちゅう眠っている。起きていても動きが緩慢だ。
「あぁ、それは雪蜘蛛だな。まだ根雪にはならないようだ」
オホランデの言葉に首を傾げながらも、雪の結晶をよくよく見てみると、蜘蛛の巣のような結晶の中にちょろちょろと動く白い点が見える。
「おーちゃん、これ蜘蛛なの? 飼える? 何食べるの?」
美紅の問いかけに、オホランデは面倒そうに答える。
「飼えないよ。暖かいとこだとすぐ死んじゃうんだ。エサは雪だ」
「え? 雪食べるの? どうして?」
「バカだな、美紅は。雪蜘蛛が雪を食べてくれなきゃ、ずっと雪が積もりっぱなしだぞ。毎年毎年、雪が無くならないで積もるから、地球がどんどん大きくなって重くなっちゃって空に浮いていられなくなるだろ」
美紅は目を大きく見開いて頷く。
「そっか、そうだよね。おーちゃんってすごいね、物知りだね」
美紅の褒め言葉に、いつものように得意気になる事も無く、オホランデは静かに目を閉じた。
「ごめん、美紅。俺やっぱり、春まで、眠る、か・・・・・・ら・・・・・・」
家に入り、ティッシュの箱に綿を敷き詰めて、その上にオホランデを寝かせた。
これだけじゃ寒いかな、と思って、ハンカチを何枚も重ねる。
長い、長い冬が始まった。