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ウエペケレ  作者: 柳瀬光輝
3/8

天狗

 北海道では、ゴールデンウィークが過ぎる頃、ソメイヨシノが咲き始める。

 オホランデにお願いされて、長い長い神社の石段を上り、やっと境内に着いた。

 そこにはたくさんの桜。


 だが、桜には細かい枝が密集して葉が茂っている。

 本来であれば葉が出るのはもうちょっと先のはずなのに。


「あぁ、みんな天狗巣病にやられちまってるな」


 美紅が首を傾げると、オホランデはポケットから出て来て、プンプン怒りながら木を押し始めた。


「美紅、手伝え。奴らを落としてやろう。これじゃせっかくの桜が台無しだ」


 何の事だかわからなかったが、オホランデの言う通りに桜の幹を押してみる。

 美紅の力では木を揺さぶることなどできないのだが、それでも一生懸命幹を押していると、ポコン、と、上から何かが降ってきて頭に当たり、地面に落ちた。


 ソレは、真っ白でもふもふとしていた。

 しゃがみ込んで両手で拾い上げてみると、ふわふわで温かだった。


「クゥーン」


 小さな白い生き物は、短い尻尾をぱたぱたと振っている。


「ワンちゃんだ!」


 拳大の真っ白な犬だった。

 犬を撫でようとすると、オホランデが美紅の手に登って来て、追い払ってしまった。

 犬は翼を広げてぱたぱたと飛び、桜の木の上の巣に戻っていった。


「あいつはな、天の犬、天狗ってやつだ。悪いやつじゃないんだが、あいつが巣を作るとせっかくの桜が台無しなんだよな」


 オホランデは残念そうに溜息を吐いたが、美紅は目を細めて桜を見上げる。


「あの、葉っぱのあるとこ全部にワンちゃんがいるの? ワンちゃんは何食べてるの?」

「お前・・・・・・エサ持って来ようと思ってるだろ。あいつら、花の蜜しか食わないからな」


 帰り道、美紅は梅や桃や水仙やたんぽぽや雪柳、色々な花が一斉に咲いているのを見ながら、これだったらワンちゃん食べるかな、あれだったらどうかな、と、いちいちオホランデに聞いてみたが、オホランデは呆れたように笑いながら頷くだけだった。


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