プロローグ 人間の恐ろしさ
不定期更新です。評価していただいたりたりコメントをもらったりするとうれしいです。
『グオオオオオオオ(ぎゃーっ!人間出たあーっ!ムリムリムリムリっ!どっかいってー‼)』
漆黒の鱗を纏った、体長十数メートルはあろうかというドラゴンが咆哮(?)をあげると、大勢の人間が、ワラワラと逃げ始めました。
その様はまるで、上木鉢を持ち上げると隠れていた虫たちが、いっせいにごちゃごちゃ動きだすかの如く。ドラゴンさんのSAN値はピンチです。
人間が黒くてテカテカした奴らに生理的嫌悪感を覚えるように、ドラゴンさんは人間が嫌いなのです。
あのカラフルな毒々しい頭(異世界ですので)とか、不自然なキモい動き(武術や剣術のこと)とか、潰した時のべきょ、ぬちゃ(はじめは硬い鎧が潰れ、続いて柔らかい中身が潰れ、最後に体液が手にこびりつく感じ。さながらゴ⭕ブリを潰した感触。)な感じがまじでヤバ過ぎます。しかも、大抵群れで行動する。1匹いたら10匹いるところまで奴らにそっくり。
要するにドラゴンにとって、人間=ゴキ⭕リなのです。
さて、そんなドラゴンさんのパニックの理由など知るよしもない人間たちもまた、集落がいきなりドラゴンに襲われて大混乱。
我先にと無秩序に逃げ出す住人は、押し合ったり転んだりして、かえって逃げるのが遅れています。
このままでは、村を襲いにきた邪悪なドラゴン(足元を見ずに散歩してたら、村に足を突っ込んじゃっただけ)に皆殺しにされてしまう!(と、本人たちは思っている!)
そんななか、勇敢にもドラゴンに立ち向かう者たちがいました。たまたま依頼で派遣されていた冒険者たちです。
「ちくしょう!なんたってこんなときにドラゴンが出るんだよ!しかもよりによって黒はねえだろお!」
戦士の男が言います。
「しかもただの黒じゃありません。光だけではなく魔力線まで吸収しています。僕の魔眼にも黒に見えますからね。正直、僕も今すぐ逃げ出したいところですよ。」
魔法使いの男がそれに返します。男はどうやら魔力視の魔眼持ちのようです。
「バカいうな!俺らが逃げたらこの村は全滅だ。こうなりゃイチかバチか。あのドラゴンだって目までは鱗におおわれちゃいねぇ。すぐ回復しちまうだろうが、視界を奪って少しでも時間を稼ぐぞ!」
「仕方ないですね。それじゃあいきますよ。【フライ】」
魔法使いの男がそう呟くと彼ら二人の体が緑の光に包まれ、ふわりと浮き上がり、加速しながらドラゴンさんの顔にめがけて飛んでいきます。
嫌な予感がしますね。
『グオオオオオオオ(ひいいいいいっ!顔に向かってきたあ!)』
反射的に口を開けて悲鳴(?)をあげるドラゴンさん。
「なっ!おい!いったん止まれ!」
「ここまでスピードがてしまっては不可能ですよお!」
ついた勢いを止められず、そのまま直進する冒険者たち。
連想されるのは、壁際まで追い詰めたGの最後の抵抗。独り暮らし女性の多くが持つトラウマ。身の毛もよだつ恐ろしい事態。通称、『口のなかにGがスポッ。』であります。
冒険者inドラゴンさんのお口。
発狂したドラゴンさんが手加減なしのブレスを吐きまくり、辺り一面をやけ野原にしたことはいうまでもない。
次話からはエルフたちとの生活を書きます。