Mission-41 WWI(後編)
本日、続けての2話目。
どうぞ、お楽しみ下さい!
(後、今年最後の投稿になる可能性が高いです……! 毎回、執筆が遅くてすみません……!)
――と、空中から既に頭が弾け飛んでいたゴブリンが降ってきた事に、口論をしていた二人が目が点になる中……その控え目な怒鳴り声は唐突に”オルセット”の脳内に響くのであった……!
その一方で、二人からおよそ500m離れた先……木陰に覆われ、暗闇と言っても過言ではない樹上の太い枝の上にリフィルは座していた。
それは奇しくも、「マケットの反乱」直前に狩猟小屋で”100人近い兵士に奇襲”された際、彼女らも狙撃による奇襲の為……その時の”座射”とほぼ変わりないの姿勢だった……!
ただ……違う点があるとすれば彼ら同様、”新たな銃”と”一ヶ月近く研鑽された、狙撃術”という点であろう……!
そして、それらを駆使し……彼らをゴブリンの決死の奇襲から救っていた成長という意味では……大きく違っていた……ッ!
<Gar98>
全長 約125cm
重量 約4.09kg(銃のみの重さ)
装弾数 ”5発”
使用弾薬 8mmヴィルゼル弾
供給コスト MP:12500
ドイツ帝国製、1898年から1935年までの実に「37年間」ものの間、ドイツ軍の制式小銃であり……第一次世界大戦の間はドイツ軍歩兵の主力小銃であった、ボルトアクション式ライフル。
彼女が初めて使用した「ドライゼ銃」から「57年」近い技術の研鑽を経て開発された、現代スナイパーライフル達の始祖とも言える「ヴィルゼルアクション」と言う発射機構を備えているのが特徴的だ。
その中でも「旗安全器」と言う、安全機構が最も称賛されている。
これは、この銃を構えた際に眼前にある”旗”のような”平たいレバー”を<左・中央・右>に操作する事で、第一次世界大戦の中では”最も優れた安全装置”として機能していたのだ。
これで<左は、撃針を固定して銃を撃てなくする>
<中央は、ボルトハンドルだけを動かし、撃針が動く心配なく”弾を装填or弾を抜く”事が出来る>
<右は、銃のロックを解除し、発射状態に出来る>……と言うものであった。
これは、自衛隊で採用されている「64式小銃」の開発者の一人が”理想的”と大絶賛する程物なのだ。
……それ以前に、使用する「8mmヴィルゼル弾」は”軍事”は勿論、”狩猟用”にも使われるフルサイズの弾で、その強力さから来る「拳銃弾」を圧倒的に上回る”威力”と……「ドライゼ銃」を圧倒的に上回る”射程と精度”が何よりの強みだ。
簡潔に言えば……現状のボス達の装備の中で、最も威力と射程に優れた銃と言えるだろう。
〜カチャン、パシッ、シャコン〜
――ヤンチャにジャレ合う二人に喝を飛ばしつつも……手慣れた手付きで”ドライゼ銃”よりも簡略され、最適化された”ボルトアクション”を素早く操作し、飛んでいく”空薬莢”を左手で掴み取るリフィル。
そして、彼女もまた腰に多く追加されたポーチの内、先程と同じ空薬莢が複数入っていたポーチに入れると……再びその暗闇の中、無数の白い線によって表現された「盲目の視界」に”不届き者”が入ってもいいよう、”ガル98”を構え直すのであった……。
しかし、そんな彼女の耳に、幼き頃から聴き慣れた……無邪気で可愛らしい声が入って来るのであった……。
うわぁ〜! スゴいよ、リフィ〜! 今日も頭に当たったね!
……フゥ〜、ただいま、リフィー。
相変わらずボスさんがくれる武器はスゴいけど……やっぱり、”野蛮”だね……。
……仕方がない事なのですよ、アラナ。
これがあるからこそ、”非力な私”でも……兄さん達を助けられるんです……。
自然の営みを見守る私たちが、金気や火を好まぬ事は重々承知だろうと……それを捻じ曲げてでも、もう……私は守られるだけではありたくないんです……!
――盲目の視界の中、自身の目の前に悠然と入ってきた……”白い二つの光球”に手を差し伸べながら語るリフィル。
言わずもがな、盲目の彼女の”目”となり”耳”となり……幼き頃から彼女を見守り続ける「双子の風精兄妹」――妹の「エナ」と、兄の「アラナ」がそれぞれ感想と心配を述べに来たのだ。
けど……アラナ、エナ?
貴方達には本当……「マケットの反乱」以降、ずっと私の射撃のために……毎回、危険な場所に行かせているのは……感謝しても仕切れない事なのですから……。
ここの発言に気になる”◯者の諸君”が居そうなので説明しよう!
2章でもそうだが、盲目の彼女は「本当に聴覚のみで狙撃をしていたのか」……!?
……実は、否なのである。
だが、彼女のエルフとして超人的聴覚が、無駄になっていたわけでは無い……。
手順としては、こうだ。
1、まず「彼女の聴覚」か、「風精兄妹」が察知した標的を”盲目の視界”で捉える。
2、次に、「風精兄妹」のどちらかが標的まで飛んで行き、リフィルが指示した”頭”などの標的の部位に纏わり付く。
3、そして、現状……「半径50km」先まで「風精兄妹」が移動可能かつ、リフィルが視認可能な”盲目の視界”の中で動く標的の輪郭と……纏わり付いた風精の白い点が浮かぶ、”標的の狙撃部位”の動きに注意しながら……点に照準を合わせ、引き金を引く。
……と、最初は本当に己の”聴覚”と”盲目の視界”から見える”標的の輪郭”だけで狙撃していた彼女が、ボスからアドバイスを受け……劇的に命中率が向上した、彼女の狙撃術の絡繰なのである……!
……まぁ、端的に言ってしまえば「ゼ◯ダの伝説 時の◯カリナorムジ◯ラの仮面」の「Z注目システム」(携帯ゲーム版では、「L注目システム」)と似たような物と言えるのだが……。
……うぅん、そんな事ないよ。ボク達だってラフィーと同じように……。
リフィーを守るタメだもぉ〜んッ!
……本当に、ありがとうございます。
……しかし、本当に大丈夫でしょうか……?
たまに、私の銃弾が当たってしまう事があると言うのに……?
……それが不思議なんだよね〜。
その”ジュウ”って武器、魔力で出したハズなのに……出した後は一切、魔力を帯びてないんだよね〜。
だからだから〜魔力で出来たワタシタチには全ッ然ッ! イタく無いから、バンバンウッてもダイジョウブだよ! リフィーッ!
……撃たれる度、肝は冷えるけどね……。
あッ、でも……ボク達精霊だから、肝がある事自体……分からないけど……。
……アハハ……本当、毎回すみませんね……。
そして……二人共、本当にありがとうございます……!
『で、でも……リルちゃん……』
――おっと、風精の二人と話している間は時間の進みが、極端に遅いのか……。
はたまた、叱られて呆然としていた”オルセット”が……ようやくスイッチが入って彼女に抗議を申し出たのか……!
とにかく、「コール」の使えるオルセットが、リフィルに話しかけて来たのである……!
『(ごめんなさい、エナ、アラナ……一旦戻りますね……)
でも何もありませんよ! オルセットさんッ! ここ数日、兄さんに何回も注意されたでしょうッ!』
『だってェェェェ〜!』
『厳しく言うようですが、未だ戦闘中なんですよ!
今さっき、私が”樹上からの奇襲”を掛けようとしたゴブリンを撃ち抜かなかったら……お二人はどうなっていたのですかッ!?』
『うぅぅぅ……』
『……危なかった。この一言に尽きますよね?』
『で、でもでもッ! リルちゃんだって……!』
『あり得ません。
……私は”狙撃手”と言う立場上……貴方達以上に、自身の周囲を警戒しているんですよ!』
『そ、そうじゃあなくて……!』
『……良いですか? これは訓練と言っても……実戦訓練なんですよ……ッ!
兄さんが私達に課した……もし、兄さんがいなくなったとしても……私達だけでも……戦い、生き抜いて行けるようにと……ッ!』
『う……うん……』
『訓練と言っても……”本当の戦い”の中、命を落としかねない訓練なんです……ッ!
……オルちゃん、私が兄さんみたいに厳しく言うのは……ゴブリン如きとは言え、もうこれ以上……”私達の両親”の他に、兄さん達を失いたくないからこそ……厳しく言っているんです……ッ!』
『……リルちゃん……!』
『……だから、ラフィルにも言っておいて下さい。
”貴方の我儘で、私以外の仲間を失おう物なら……次は本当に、母さんを追って自害する”……とッ!』
『……分かったよ……リルちゃん……』
『オルちゃんも、私や兄さんが遠くから見守っているとは言え……油断しないでくださいね?』
『……でも……』
『?』
『ホントに……しないでね? ……リルちゃん?』
『……オルちゃん達が生きている限り、何回聞こうが……私は生きてみせますよ……』
『……フフッ、じゃあ……戻るね。オルガ、アウトッ』
『……はい、気をつけて下さいね? リフィル、アウト……』
……フゥ……兄さんも、私たちの指揮を取る際……このような”気苦労”をされているのでしょうか……?
――子供を叱り終えた後、自身の行いを後悔する母親のように……リフィルは少し気怠げな哀愁を感じ取っていた……。
……そして紛う事なく、リフィルさん――貴方の予想は当たってますよ……。
……だから安心して下さい、ボスはきっと肩を叩いた後――涙して理解してくれますよ……!
……”ホント……あのバカ共には、苦労するだろう……?”……とッ!
……リフィーは良く頑張ってるよ。
……よして下さい、アラナ……。
私はただ……”兄さんの真似”をしているに過ぎないですよ……それも、まだまだ不出来な……。
……ん〜でも、リフィー?
……んっ? どうかしたのですか、エナ……?
さっき、オルちゃんが言いかけた事……気にしなくて大丈夫?
……確かに、私が遮ってしまいましたが……何を言いたかったんでしょうかね……?
……たぶん……リフィーの後ろに来ているヤツじゃない?
……えっ?
〜 ゲェェェ〜ギャギャギャギャ……ッ! 〜
……ッ!? キャアァァァァァッ!?
〜 グラッ、グルンッ! ヒュューンッ! 〜
……これも、”オルセットの直感”による物なのだろうか……ッ!?
……「空中から? じゃあリルちゃんだって、木に登っていたのなら……」
……そう、彼女が注意しようとしていたのは――「ゴブリンが樹上に登った事」であったのだ……ッ!
……えッ? 「盲目の視界」で、既に感知していたんじゃあないかって?
いやいや、聖徳太子が”十人の話を同時に聞く”ような……逸話並みな感じの万能さじゃあないのだ……!
……確かに、彼女は盲目ながらも――”双子の風精兄妹”のおかげで、最低限の視界を得られ、更に”兄妹の視覚”も共有できるスキルを得ている……!
しかし、それは”360度”……常に己の周囲と、その他の遠方を見ているような物ではないのだ……!
例えるなら……そう、<”2機の無人偵察機”を飛ばし、その偵察機のカメラと自身の視界を”監視カメラのモニター”のように、切り替えて見ている>……これが、彼女が盲目でも見えている……「風精の聲」のスキルの正体なのだ。
だからこそ……死角まで見ていない部分は、伝えるのに遅れたりするのである……!
〜 ……ヒュューンッ……スタッ! 〜
――まぁ、「猿も木から落ちる」と言う諺があるように……真面目で勤勉な彼女でも、たまに天然ボケ的な事をしでかしてしまう物だ……。
……無論、再び”10m近い樹上”から頭真っ逆さまに落下したとしても――エルフである彼女にとっては、空中で体勢を変え……安全に着地する事は、造作もない事なのだが……。
フゥ……ビックリしてしまいました……!
リフィー! 落ち着いている場合じゃあないよ!
そうだよ! 上ッ! 上ぇぇッ!
……えっ?
〜 ……ヒュューンッ……ゲエェェギャ〜ギャギャギャッ! 〜
ッ!? うわぁぁぁぁぁッ!?
〜 ガシィィッ! バタンッ! 〜
……ホラ、言わんこっちゃない……!
先程の奇襲のように、ゴブリンが”木に登れる”のなら――また、木から飛び降りるのも考えられる事……!
〜 ゲェギャッ!? ギャッ、ギャッ、ギャッ! 〜
や……やめて……! やめて下さいよ……ッ!
……そしてその後に、仰向けにマウントを取られ……顔面に噛みつこうとして来るゴブリンに対し、彼女は持っていた”ガル98”をゴブリンの口に噛ませる事で、何とか防いでいた。
無論、そのゴブリンの”ボロボロの歯”が彼女の”ガル”を、噛みちぎる事は不可能とだけ言っておこう。
……しかし、彼女は”自身の力”が目の前に迫るゴブリンを――軽く投げ飛ばせる程、上だと言う事をすっかり忘れていた。
何せこの一ヶ月、彼女は狙撃手と言う立場上……一度もゴブリンに襲われた事もなく……。
更に現状、歯の隙間から粘付き滴り落ちる、薄緑色の唾液が顔に掛かる”嫌悪感”に思考を乱され……彼女は恐怖に抗うよう、必死に考えていた……!
兄さんなら……こんな時にどうする……!? ……とッ!
〜……ブゥンッ! ドゲシャアァァァッ! ガッ、ゴッ、ゴロゴロゴロゴロ……〜
――だが、そんな彼女が答えを導き出すよりも早く……彼女は助かった。
……何故かって? それは、彼女の眼前に居たゴブリンが突然……視界に入ってきた誰かさんの脚の”サッカーボールキック”によって、左脇腹を豪快に蹴られ――シュートされてしまったのだ……ッ!
『……慢心とは、感心しないぞ? リフィル……』
ッ!? あぁぁ……ッ!
――そして、真っ先に彼女が思った事は……思考を乱す元となっていた――ネッチョリとした”ゴブリンの唾液”を拭う事よりも……襲われた際に押し殺していた”恐怖”が解放された事による、”安堵感”だった。
……何故かって? 言わずもがな、自身に課せられるハズの「畑の肥やしとなる」……と言う残酷な”運命”を、見事に叩き壊し……兄のラフィルと共に自身を救ってくれた……!
『……兄さんッ!』
――彼女の”目”に! 耳に! 我らがボスのッ!
その姿と声が飛び込んで来たのだからッ!
『この一か月間、狙撃手兼司令官代理として良くやってくれた。
……だけどな、リフィル? お前も言っていたが……”ゴブリン如き”とは言えど、どんな相手や状況だろうと――常に最悪の事態は想定しておけって、オレがお前達に口を酸っぱくして言ってただろ?』
『す……すみません……兄さん』
――襲われた彼女の手を掴み、引き起こしながらも――厳しい評価を物申すボス。
それに対し――反論の余地がない事に、自身を救ってくれた”英雄”が向ける視線から、思わず地面へと目を背けてしまうリフィル……。
『だからこそ……今回みたいな”最弱の魔物”に襲われ、潜伏場所が露見してしまう”……その事に関しては、最悪の評価だと言わせてもらうぞ』
『……』
――続く”辛口評価”に、思わず押し黙ってしまうリフィル。
しかし、ボスは彼女の態度に対し我関せず……彼女の傍を通り過ぎると、肩に掛けていたスリングを外し……背中に背負っていた”散弾銃”を両手に持つのであった……!
「……だが」
〜……シャッ、コンッ!〜
「一切使う予定のなかった、この下ろし立ての”ショットガン”と……一切助ける気のなかった”オレ”を、突き動かす程に……!
組み付かれようとも……必死に”生きよう”と抗うその姿……!
それはオレ達、傭兵団としては――大いに”ハナマル評価”と言えるべき事だ……ッ!」
『……ッ! 兄さん……!』
――背中を見せたまま……リフィルに横顔を向け、嬉しそうに歯を見せながら微笑むボス。
それに対し……最後までボスの言葉を聞いた瞬間、感銘に似た”喜びの感情”が全身に駆け巡るのを感じ――思わず気持ちと共に沈み込んでいた頭をバッと、素早く上げるリフィル。
「……よく頑張ったな。
後はオレに任せて、”ジェーン・ドゥ”は場所を変えて、”ジョン1”と”ジェーン1”の援護に戻ってくれ」
『は……はいッ!』
――そう言うや否や、リフィルは”ガル98”を一度振り払って、唾液を払い落とすと……銃に付けていたスリングを肩に掛け、背中に背負った。
すると――目を見張る程の速さで、先程落ちた樹木を駆け上り……次々に樹上から樹上へと、猿以上の速さでボスの目が届かない程の遠くまで移動して行くのであった……!
因みに余談だが、「ジェーン・ドゥ」や「ジョン1」など……ボスが唐突に言い出した呼称は、暗号名である。
先程のように、ボスがどうしても喋らなくちゃあいけない場合を考慮し、考案した物だが……暗号名と言えど、結構単純かつ簡単な物である。
「ジェーン」は”女性”……「ジョン」は”男性”をを表し、「ドゥ」は”司令官”や”現場指揮官”、「1などの数字」は割り振られた”各隊員”を示している。
「”リフィル”は場所を変えて、”ラフィル”と”オルセット”の援護に戻ってくれ」……と、先程のボスのセリフを解読するとこうなる。
地球人にはバレバレそうな物だが、異世界の住人達には十分過ぎる程……”意味不明”ではあるだろう。
ついでに言えば……「ジェーン・ドゥ」、「ジョン・ドゥ」は日本語に訳すと、「名無しの権兵衛」となる。
……どうやらボスは、基本的に傭兵団は<存在しない組織>として扱いたい見通しがあるようだ。
……余計な事、言うなよ……。
〜 ザッザッザッザッザッ……バッ! ゲギャアァァァァァァッ!
グッ、ドパァァァァァァァァンッ!〜
……オルセット達にも話してない事なのによぉ……!
〜……シャッ、コンッ!〜
<オリバンスターM1897>
全長 約98.5cm
重量 約3.3kg(銃のみの重さ)
装弾数 ”5+1発”
使用弾薬 12ゲージショットシェル
供給コスト MP:9880
アメリカ製、第一次世界大戦以前から”狩猟”や”自衛”用に活躍していた、ポンプアクション式散弾銃。
伝説的な銃器設計者である「ジョン・ウィドニング」が<ポンプアクション機構と共に>設計した世界初の実用的なポンプアクション式散弾銃で、この銃の前身である同じ機構の「M1893」では機関部の強度不足などで商業的な失敗をしていたが……それらの”改善点”を諸々克服したのがこの銃なのだ。
「オリバンスター M1894」のレバーアクション同様、この銃のポンプアクションも操作すると、構えた際に”撃針が眼前に飛び出して来る”と言う、地味に精神衛生上、宜しくない機構はあるが……それ以上に魅力的なのは「スラムファイア」と言う機構を持っている事だ。
これは、当時の水平二連散弾銃の”連射力”に対抗するために考案された機構だそうで、トリガーを引いたままポンプアクションの操作部品となる”フォアエンド”を引いて戻した瞬間、即発射されるのだ!
(ある意味「SAA」の”ファニング”のテクニック似た機構と言える)
これを素早く繰り返す事で、水平二連散弾銃に負けない速さで”6発”の散弾を連射する事が出来るのだッ!
そして……その「12ゲージショットシェル」から繰り出される威力は、リフィルの「Gar98」並の遠距離で比べると、雀の涙程でしかないが……真の威力が発揮される至近距離での威力は、「Gar98」に並ぶかそれ以上になる。
更に一粒弾を使用すれば、「Gar98」の口径を軽く上回る威力を持った、”小さな大砲”の出来上がりだ。
18ゴブ目
(射殺。リフィルに組みつき、ボスに蹴り飛ばされた個体。
最早ワンパターンと化しつつあるが……ボスに蹴られたゴブリンが、ようやく起き上がり――ボスの顔面に飛び掛かろうとしたのだが……。
それよりも早く彼は「オリバンスターM1897」を構えて散弾をブッ放し、ゴブリンの頭を”潰れたトマト”に変えた)
……ハァ、これで1発「5千近く」の魔力がパァか……。
『兄さん! 安心しないで下さい!
兄さんから見て”6時の方向”! 兄さんの背後から二体のゴブリンが接近してますよッ!』
〜……サッ、クルッ、バッ!〜
<M1911>
全長 約31.3cm
重量 約1.13kg(銃のみの重さ)
装弾数 ”7+1発”
使用弾薬 45ACP弾
供給コスト MP:7500
アメリカ製、1911年からアメリカ軍に採用された自動拳銃。
また、「オリバンスター M1894」の生みの親である「ジョン・ウィドニング」が開発した……彼の代名詞とも言える傑作自動拳銃としても、名高い。
採用されて以来、その信頼性の高さと「45ACP弾」から繰り出される「ストッピングパワー」の高い一撃から、後の「ウォレッタM92F」に正式採用の座を譲るまでは、実に70年近い採用年数を保持してきている。
また、正式採用後も独自にカスタマイズされた物が、アメリカ海兵隊の一部の部隊でボスが地球にいた頃も使われていた事から、海外では主に「ナインティーン・イレブン」の名称で親しまれている他……。
「100年拳銃」、日本での通称である「コルトガバメント」の愛称で呼ばれたり……はたまたアメリカの歴史に深く根付いている事から、「45ACP信仰」と呼ばれてもおかしくない”盲信”と”普及率”を誇り、その圧倒的な人気から最早……「拳銃の王者」と言っても差し支えないだろう……!
だが、忘れてはならないのは――この銃が”アメリカ人”向けに作られた銃であることだ。
異世界に来てから”力”の上がった日本人であるボスだからこそ、違和感なく快適に使えてるのであって……各国の「最適な拳銃」と言うものは、日本の警察で「45ACP」よりも弱い「38sp弾」を使用した回転式拳銃――世界では、「45ACP」とほぼ同じ威力の「9mmパラベラム弾」を多種多様な自動拳銃に採用している事から伺える。
そして、この”M1911”含め……何より、全ての銃と武器に通じて言える事は、決して”戦いの道具”であった事を……その握り締めた時に感じる重さから、忘れてはならないという事だ……!
〜……パァァパァァンッ! キンッ、カンッ!
スッ……パパァァァンッ! パパァァァンッ!〜
19ゴブ目
(射殺。リフィルが探知していた内の一体。
ボスの元を視認するや否や、錆び付いた手斧を投擲し、ボスの頭をカチ割ろうとして来るも……?
ボスもまた、投擲された手斧を振り向いた瞬間に視認すると……素早く抜き放った”SAA”の片手撃ちで、飛翔する斧を撃ち落とした後、”ファニング”がしやすい腰辺りに構えを変えて――”眉間→おでこ”の順に、走って接近してきたゴブリンを”ダブルタップ”で仕留める)
20ゴブ目
(射殺。リフィルが探知していた内のもう一体。
”19ゴブ目”と同時に錆びた斧を投擲した事と、”左目→右目”の順に、ダブルタップで仕留められた事以外――撃たれる寸前までは”19ゴブ目”とほぼ変わらない)
……おやおや!? どうした事であろうかッ!?
せっかくの銃器紹介があったのにも関わらず、ボスは腰の右側面の”ヒップホルスター”から「M1911」を抜き放つこともなく……代わりに左肩に装着していた”ショルダーホルスター”から「SAA」を抜き放つと、ファニングによる掃射でゴブリン共を一掃したではないかッ!?
一体どう言う事なのであろうかッ!?
……そりゃ、俺だって”ガバメント”をメインウェポンや、サイドアームにしたかったよ……。
……けどな? さっきの”ショットシェル”を補給する時をボヤいたようにな……?
……高ェェんだよッ! ”45ACP弾”がッ!
現代だと、大体1発「80円」前後だってのに、大体何で「フリーバイチケット」で出した銃の値段の半額が、”弾代”になるんだよッ!? それだと1発「3750円」近くも掛かるんだぞッ!? どんだけボッたくってるんだよッ!?
スキルは見直したであろうか?
んッ?
いや、何でもない。
しかし、無限弾化したのが「9mm弾」とはある意味”英断”ではあるな?
……んまぁ、だろ?
なんせ、「9mm弾」は現代にある星の数に迫る”拳銃以外にも、多くの”短機関銃”にも使われていたからな!
それに、このSAAの”無煙火薬ver”を撃てるように――「フリーバイチケット」で出した武器なら、使える弾種はタダかつ自由自在に選べるしな!
だから、まだまだ威力不足だろうが……鎧とかの防具持ちには「9mm」の”FMJ弾”、生身でタフな相手には、威力の高い「45LW弾」の”HP弾”……って、地味に使い分けられるからな!
そして……後々の最新鋭の銃を供給した時に、弾代に困らずトリガーハッピー出来るよう――投資だよ投資ッ!
……弾丸の種類まで意識しているとは……! ミリオタめッ!
うるせぇ。
では、「ゲルガーP08」なんて骨董銃を選んだんだろうか?
格好良さや知名度も含めれば、「ウォレッタM92F」なんてのは選ばないのか?
アメリカ軍でも採用されていたぞ?
……「スライド破損事故」があったからな。
「M92F」以降のモデルでは改善されたらしいが……それでもだ。
後「ガロック17」とかの銃も却下だ。
ポリマー製で軽いし、ハンマーのない「ストライカー式」で、構える際に”服に引っかかりにくい利点”があったりするが……命中精度の固体差が激しいってな事を本で読んだ事があるからな……。
……事実であっても、それは建前であろう? 一番の理由は?
……オルセットが”カッコいい”って言うから……。
……であろう?
後! 最新鋭の銃の値段が軒並み高いってのもあるしッ!
”ドラムマガジン”が付いている銃を明確に覚えていたのが、これしかなかったんだよッ!
フルオート機能のある「ガロック18」にも、ドラムマガジンはあったハズだが?
……早く言って欲しかった……。
『兄さん……大丈夫ですか?』
『……リフィルか。
どうだ? 二人は大丈夫だったか?』
『兄さんが無事そうで何よりです……。
はい、お二人の事ですが……あの後すぐに戻りましたが……。
更に追加されたゴブリンの1個分隊に、襲撃されていました……』
『何ッ!?』
『……けど、お二人共……問題なかったですよ。
やっとリロードの終わったオルちゃんと一緒に、ラフィルがあっと言うまに制圧していましたから……。
……あッ、今し方……ラフィルが蹴り飛ばした最後のゴブリンを、オルちゃんが”ダブルタップ”して止めを刺しましたね……。
……えっ? ……顔に当てるつもりだった?
……ラフィル……! ……もうっ……』
『ま〜たジャレ合ってんのか、アイツら……!』
『……すみません、兄さん。
私じゃあ、これ以上介入しても……収拾は治められそうにないので、二人が居る広場まで……御足労願えないでしょうか……?』
『……そんな敬語、意識してオレに使わなくてもいいだぞ?』
『……私の癖のような物です。
それに……兄さんだからこそ、私は使いたいんですよ……』
『……尊敬はいいが、崇拝する事だけはやめてくれよ?
何度も言うが……オレは英雄じゃあない』
『……本当、ダメダメな英雄さんですね……』
『……うるせぇ。
それよりも、他のゴブリンはどうだ? 接近してないのか?』
『……今さっき倒した分隊で最後みたいです。
後は……私が探知できる範囲内では、今の所確認できません……』
『了解した。
いつも、偵察ありがとな。
エナちゃんとアラナ君にも、いつもありがとう……って、伝えといてくれ』
『……私こそ、兄さんにありがとう以上の事を伝えたいですよ……』
『んッ? 何か言ったか?』
『い、いいえッ!? ……ひっ、引き続き、私は周囲の哨戒に戻りますね……。
お二人をお願いします……兄さん。
リフィル、アウト……』
『あぁ、頼む。ボス、アウト』
――おやおやぁぁ? ようやっと、傭兵団らしい”会話”や”動き”が出来る様になった中……通信中の、あからさまな”好意”を気付かないとは……まだまだボスも、ニブチンですなぁ。
……無責任な”ラブコメ系”や”ハーレム系”の主人公よりかは、敢えてオレはマシだと言わせてもらおう。
……オレがイスラム人や、アフリカ人だったなら話は別だったかもしれないが……。
少なくとも……オレはまだ日本人のつもりだ。異世界に来ようともな……?
だから……あの生涯、”背中を預けるパートナー”を一人に絞れない……優柔不断の甲斐性なし共と、オレを一緒にするな。
……随分酷い言いようだな?
では、本当に”オルセット”や、”リフィル”が君の事を好いていたらどうするのだ?
……<ありえない 現実は非常である>……とだけ言っておこう。
……だが、そう願いたい以前に――オレら傭兵団はまだ”放浪者”だ。
……マケットという仮拠点はあれど……まともに腰も落ち着けてない内に、色恋沙汰なんて考えてらえるかよ……。
もし、それが原因で……仲間が死ぬような目に遭えば、オレは……!
「あっ! ボスゥゥゥゥゥッ!」
「オレは……ドホォォォォッ!?」
――あらあら、私との会話に夢中になりながら歩いていた性か……。
オルセットと、ラフィル君が居る広場へとついた瞬間――いつもは間一髪で躱せている、オルセットの「大好きダイビングアタック」を躱せず……地面へと仰向けに押し倒されてしまうボス……。
えッ? 好いているなら別にやらせてもいいんじゃあないかって?
……◯者の諸君、それは――当たる度に彼の”生命力”が、ゴリッと1〜3割り近く削れる程に”強力”であろうとか?
少なくとも……彼女は本気を出さずとも”馬並み”に走るのは、余裕なぐらいなのである。
……そんな”彼女の突進”をだぞ?
「お……おい、オルガ……頼む……! 放してくれぇ……!」
「いやぁだッ! 今日だって頑張ったんだから、ボスの匂いを嗅がせてよ〜!」
「……いや、この際……お前の性癖は……どうとかはもう…言わないから……”回復魔法”を掛けてくれ……! 今日はもう……4割近く…減ったぞ……!?」
「フゥゥゥゥ……スゥゥゥゥ……フゥゥゥゥ……スゥゥゥゥ……。
……ハァァァ、やっぱり”ボスの匂い”は落ち着くゥゥゥ〜」
「……いや、話聞いてくれ……! 頼む……! オルセット……!」
〜ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ……〜
「……ハァァ、ダッセェの……」
〜ガッ、グイッ!〜
「ウワァァァッ!?」
――ゴブリン分隊を殲滅後、ボスの胸に飛び込んだまま埋まり……勝手にご褒美として”ボスの匂い”を貪るように嗅いでいたオルセットは、急に重力に逆らったかのように起こされた。
それは、悠然と彼女の背後に近づいた後……彼女の背中を無造作にむんずと掴み、引き起こした”ラフィル”君なのであった……。
そんな引き起こした彼は、「オリバンスターM1894」を左手に、自身に何が起こったか見当もつかず、キョロキョロとしていた彼女を仏頂面に睨んでいた。
「おい、アホ猫……。
お前は、命の恩人を殺す気か?」
「あっ! ラル君だったのォォッ!?
もォォォ! せっかく、ボスの匂いを嗅いでいたのに、邪魔しないでよッ!」
〜ブンッ、ゴッ!〜
「イッッッッタァァァァァァッ!?」
――ら、ラフィル君……容赦ないな……ッ!
軽くとは言えど……持ってた”オリバンスター”のストックで、彼女の頭上をブッ叩くとは……!
そもそも、ストックとは……肩付けし、照準を安定させたり、銃の反動を受け流すなど効果で、命中精度を向上させる用途の他に……敵兵の頭を殴りつけるなど格闘戦の武器として、現代でも用いられているのだぞッ!?
……下手すれば、”鈍器”で殴り殺すのと変わりないだが……。
流石、異世界と言うべきか……頭を抱えて、痛そうに踞る程度で済む程、頑丈だとは……!
「あのなぁ……アホ猫? お前……本当、馬鹿か?
死ぬかもしれないって言ってんのに、退かないとか……本当、馬鹿か?」
「うぅぅぅ……」
「それとなぁ……さっきも言ったが、お前は考えなさ過ぎ何だよ!
頭を使えって、オレもボスも言ってただろうがッ!?」
「うぅぅぅ……だって、だって!
ボスとの”約束”だったんものォォッ! ゴブリン討伐の訓練が終わったら、ボクと付き合ってくれるってッ!」
「……付き合う以前に、死んだら――それもなくなると思わないのかよ……?」
「うぅぅぅ……ラル君のバカバカバカァァァッ! ボスは死なないもぉぉぉんッ! ボクと”約束”してくれたんだからァァァァァァッ!」
「フンッ、勝手に言ってろ……」
「……オルガを苛めるのはそこまでにしてくれないか……? ラフィル……?」
――と、一向に回復魔法を掛けてくれないオルセットに痺れを切らし……渋々、自身で回復魔法を掛けながら、ラフィルを止めようとするボス。
一方で、未だに「ボスは死なないんだから……」と小さく愚図り、踞りつつある彼女を余所に……ラフィルは掴んでた”オリバンスター”を右手に移すと、肩に担ぎながら――呆れたようにボスに話し始めた……。
「……おい、ボス。この一ヶ月間、ゴブリン共を相手に訓練訓練言ってるが……。
正直、弛み過ぎじゃあないか?」
「……オレはお前に、お礼を言いたかったんだが……何を言いたい?」
「……傭兵団としての在り方だよ。
規律とか、模範とか……そう言った上の者が下の者に忠実に従う……ッ!
オレが父さんから、聞いて憧れていた「犠精騎士団」ってのは――そんな厳格な組織だって聞いていたのに……何だよコレは?
言う事を聞かない”アホ猫”に、それを真面目に叱ろうとしない”人間”……挙げ句の果てには、本当は守るべき対象の”姉ちゃん”を偵察にと……! 危険な目に合わせなければならないぐらいに、人数が圧倒的に足りていない!
こんな真面な体裁も取れず、”傭兵団”なんて言えるのか?」
――と、私も思っていた”ド正論”に対し、ボスは少し顔を逸らして苦笑した後……彼の質問に対し、こう答えた。
「……耳が痛い事は確かだ。
現状……オレ達には、傭兵団としての事が……何もかも不足している。
だけどな、ラフィル? オレらは”まだ始まった”ばっかりなんだ。
言い換えれば……この傭兵団は、発展途上中なんだよ……!」
「未だに依頼された”巣”も、見つけられていないのにか?」
「ウッ……!」
「テメェこそ……!
甘言で、オレらを唆かすように言ってんじゃあねェよ……人間」
――人間……。
ラフィルの”憎悪の対象”となる言葉を聞いた瞬間、ボスはそれ以上言おうとした事を押し黙らせるしかなかった……。
「え? 誰のおかげで、この一ヶ月間ゴブリン共を”毎・日”……見つけては、狩れていると思っているんだ?
え? 言ってみろよ、人間。”お前”が全部見つけているのか……?
それとも、そこのイジけている”駄猫”が見つけてるのか……?
……違うだろ? 全部、姉ちゃんが見つけてくれたんだろうがッ!?」
「……そう言うお前も、一切見つけられていないんだな?」
「……おい、人間……。
今更テメェの”笑えない頓知”なんて聞きたかねェんだよ……ッ!
いいか? 真面目に答えろ。お前らは”ゴブリンを見つける事”が出来たのか……ッ!?」
「……リフィルには……いつも世話になっている」
「そうじゃない。お前はッ! どうなんだよ……人間?」
「……見つけられてねぇよ……」
「……だろ? 言わずもがな、そこの駄猫もだ。
……”匂い”で見つけられたとしても、今回みたいに頭よりも本能が働いちまっている始末だ……! 使えてねぇ……」
――まるで、厳格な父親の説教を受けているかのように、ラフィルの吐く毒を耳に飲み込む度……互いの頭が垂れていくのを感じていく”ボス”と”オルセット”……。
その一方で、ラフィルはようやく……一ヶ月も溜まっていたのであろう、ボス達に溜まっていた鬱憤を少し晴らせたのか、小さな溜め息を吐くのであった……。
そして、どう言うことか……腰のベルト部分に新たに追加された小さなポーチの中身に、左手を突っ込んだ後――”小さな赤い塊”を2、3粒取り出すと、片手で跳ねさせるように弄びながら――再び、ボス達に語り始めるのであった……。
「……いいか? 再確認しておくが……ボス?
オレがお前らに協力しているのは、”命を助けられた恩”なんて、甘っちょろい考えじゃあねぇ……。
況してや……今オレが持っている、こんな”卑怯な武器”を使えて”うわ〜ありがとう!”……って浮かれている訳でもねェ……!
……いいか? 全ては姉ちゃんのおかげだ。
姉ちゃんが、お前らに”全力の信頼”を置いていて……その姉ちゃんが”お前らに協力しろ”ってしつこく言い続けるから……オレは仕方なくお前らに従っているだけだ……」
――そう彼は語るも、ボスは先程の”人間”と言う言葉を反芻してしまっているのか……未だ押し黙ったままだった。
……オルセットの方も、”言わずもがな”……である。
「オレが一番大事に思っているのは”使命”だ……!
自由の身となった今も、”姉ちゃんを守り続ける”と言う使命だ……!
……それ以外に、オレはお前らに何ら感情を持っている事はないッ!」
――しかし、ボスはまだ押し黙っていた……。
一方でオルセットは、ボスが散々に言われて居る事に――そろそろ堪忍袋の尾が切れてきたのか、”フゥゥゥゥ……!”……と威嚇し始めそうになっていた……!
だがしかし……そこはラフィルがよそ見をした際、ボスが”静かに……!”と、ジェスチャーで彼女に伝え、何とか抑えていたのであった……!
そして、一人語り状態になっていたラフィル君はと言うと、もう言いたい事はほとんど言い終えたのか……ボス達の傍を通り過ぎた後、振り向き様にこう言い放つのであった……。
「オレは姉ちゃんを探しに行ってくるが……いいな? 忘れるなよ……?
”ラフィル・ホープティア”は、お前ら傭兵団とは”協力関係”にあるだけだ……。
いいか? テメェらの性で姉ちゃんに何かあれば……オレはお前らを容赦なく叩っ斬らせてもらう……ッ!
仲間じゃない……。それを努々忘れるなよ……!?」
――そうして、右手で弄んでいた”赤い塊達”を一気に口に放り込んだ。
そして、それを苛ついたように咀嚼しながら、その場をそそくさと去って行くのであった……。
一方ボス達は、嵐のようにやって来て、嵐のように去って行った彼に対し……長時間の正座によって痺れた足から解放された後のように――各々が思い思いの事を言い始めるのであった……!
「……もぉ、ラル君ってばぁ……ボスに言いたいだけ言っちゃってェェェェェッ!
何よッ! 協力関係ってッ!? エラそ〜に言っちゃてッ!
ボスが助けてくれたのにだよッ! ねぇ! ボスは何とも思わないのッ!?
それに! 今食べた物だって、ボスが出してくれた物だって言うのにィィィッ!」
「……大目に見てやろうぜ、オルガ。
悔しいが……アイツが言ってる事は正しい」
「何よ! ボスゥ! ここ一ヶ月……最ッ高ッにッ!
ボロクソ言われたクセして、悔しくないのッ!?」
「……オルガ、忘れちゃならないが……。
オレらは”失敗”してるんだ……ラフィル達の母親を助け出す事に……!」
「……あっ、そっか……」
――思わず頭部の耳と共に、項垂れてしまうオルセット。
……そう、ボス達は自分らを”傭兵団”と名乗る前に――エルフ姉弟の母親を救出する事に”失敗”していたのだ……。
……だからこそ、ボスは必要以上の反論をしなかったのだ……!
自分達も、ラフィルを悪く言えない……”罪”を背負っていたのだから……!
「……だろ? だから……あれぐらいの文句を言わせることぐらい……オレらは我慢しなきゃいけねぇんだよ……!
それに……そう言う事とかであのトマト狂いが、オレを認めてくれなきゃあ……いつまでもあの調子なんだからな……」
そう、余談とはなるが……。
あの時……彼が口に放り込んだのは、「ドライトマト」であったのだ。
数日前の”炊き出し”の際、ボスが出した「イタリアン風お好み焼き」を食べた際に、彼は偉くトマトの味を気に入ったようで、この1週間中、ずっと悪態を吐きつつも、三食”カプレーゼ”か、”トマト料理”を出すよう――ボスにせがむ程になっていたのだ。
そして、その催促に頭を悩ませ始めたボスは……仕方なく、彼に先程の袋入りスナックタイプのドライトマトを渡し、自身に飛ぶ”怒り”と共に、彼の”催促”を鎮めようと試みているのだが……。
因みに、余談ではあるが……彼が食している”ドライトマト”は、デパートセールで出したせいか無駄に豪華なのである。どれぐらい豪華かと言えば……普通のトマトの3倍、蜜柑に迫る糖度とリコピンを含む「高級フルーツトマト」を、じっくり1週間近く”天日干し”させた物なのだ。
……噛めば噛む程、濃厚な”トマトの味”と”甘さ”が口の中に広がって行くと言う……もはや、ちょっとした高級スイーツに値する物を、ストレス解消のためとは言えど……有り難がらず、愚痴を言いつつ軽く頬張るとは……チョッピリ度し難い物なのである……。
『……本当、お二人にはご迷惑をお掛けします……』
――二人がチョッピリお通夜ムードに沈み込んでいると……今までの会話を偵察の片手間に聞いていたのか、急にリフィルの声が二人の脳内に響いたのであった。
『……リフィルか、どうした?』
『オルちゃん、兄さん……母の事は気に病まないで下さい……。
勿論、ラフィルが言っていた事も……』
『……リルちゃんはいいの? ボク達の事……いやにも思っていない?』
『……仮に……兄さん達と会うのがもっと早くて……それでも、助けられなかったとしても……。
私は、兄さん達を恨まなかったと思いますよ……?』
『……本当にか?』
『……はい。あの6年に会ってきた人間達と比べれば……兄さん達は、神様みたいでしたから……』
『……そうか。
しかし……人間か……。
ラフィルにはまだオレがそう見えてるのかな……?』
『ヒドイな〜ボクはラル君が”バケモノ”に見えちゃうよ……』
『そんな単純な話じゃあないんだよ、オルガ。
それに、ラフィルがああ言ってくれる方が、オレの方も有り難い』
『えッ!? そ……そうなんですか?』
――あからさまに驚きを隠せないリフィル。
それに続くようオルセットも「ボスゥ、どう言う事……?」と聞くと、ボスは答え始める。
『一つ聞きたいんだが……お前達、無意識にオレが提案する事を何でも”正しい”……って、思い込んでいたりしていないか?』
『……あっ!』『……んんッ?』
『……どうやら、リフィルは思い当たりがあるようだな?』
『どう言う事? リルちゃん?』
『じゃ、じゃあ、今まで兄さんがくれた”地球の本”とかは全部、嘘の情報で……!』
『あ〜そう言う事じゃあないんだ、リフィル……。
いや……半分は当たっているか?』
『えっと……どうしてですか? 兄さん……?』
『何て言えばいいかな……?
……リフィルに「デパートセール」であげた本の内容は、大部分は合ってはいる筈だが……。
本によっては、たまに”嘘の情報”が入っているって事だ』
『えッ!? じゃあ……やっぱり……』
『落ち着け、大事なのはこっからだ。
じゃあ……二人は”嘘の情報が入っている”って言われた本を、全部そうだと信じるのか?』
『……あっ!』『……んんッ?』
『……オルガ』
『んッ? なぁ〜にぃ〜? ボスゥ〜?』
『ラフィルの言う通りだ……お前はもっと頭を使え』
『えぇぇぇッ!? ボスもラル君の味方なのォォォッ!?』
『フフッ……じゃあオルちゃんは、兄さんの言う事を聞いてどう思ったの?』
『えッ!? えぇぇとぉ……”ウソの情報が入っている”って言われた本は……全部……”正解”って信じちゃダメって……事ォ? ボスゥ……?』
『……まぁ、模範解答的だな。
……オルガにしては良くやったよ……』
『うぅぅ……やっぱりボクの事、”おバカ”だと思ってるでしょ……ボスゥ……!』
『そんな事はない。答えは合ってるよ。
けど……やっぱり、オルガには”頭脳労働”よりかは……”前衛としての戦闘”を努めてもらう方が、お似合いだな……』
『……やっぱり、バカにしてるでしょ……ボスゥ……?』
『フフッ、オルちゃん?
兄さんは、戦闘ではオルちゃんよりも強い敵はいない……って、オルちゃんを”褒めて”くれてるのよ……?』
『……ホントに? リルちゃん?』
『あぁ、ホントさ。リフィルの言う通りだ。
戦闘じゃあ……お前達”前衛チーム”の右に出る者はいない』
『……ラル君よりも?』
『……あぁ。(今は合わせるしかないな……)
だが、二人で協力した時には、”もっと強い”って事でだ』
『やったぁ!』
『まぁ、つまりだ……オレが言いたいのは……。
「オレの言う事や指示が間違っていたら、遠慮なく言って欲しい」……って事だ。
……だからこそ、今回のオレの怠慢を指摘してくれた”ラフィル”には感謝してるんだ……。”勉強になった”……って事だ』
『……だからラフィルに感謝しているんですね……! 驚きです……!』
『オレは英雄でも、神様でもない……! ……ただちょっとラッキーなだけの人間だ。間違った事を言う可能性はある……!
だからこそ……お前達にはちゃんと自分の考えを持って、オレに間違いがあったら指摘して欲しい……!』
『……じゃあ、ボスゥ?
今日の”夕食のお肉”はボクの分を増やして……』
『それとコレとは話が違うぞ、オルガ?』
『うぅぅぅ……ボスゥ、”言って”言ったのにヒドイよォォ……!』
『……オルちゃん、しっかりしてくださいよ……。
ところで……兄さん、それじゃあ……これからはどう言う指針で行くのでしょうか……?』
『……まずは、リフィル』
『はい!』
『お前は、お前を探しに行った”ラフィル”を見つけ出しておいてくれ』
『……えッ? もう見つけてますけど……』
『……じゃあ、済まないが……二人でオレらがいる広場付近の”空薬莢”の回収を頼む。
……後、「デパートセール」で”灯油”を出していいから、ゴブリン共の死体から"魔石"を回収後、焼却も……』
『”銃を知られないための証拠隠滅”ですよね、分かりました。
……その間、兄さん達はどうするんですか?』
『あの”トマト狂い”の”シスコン騎士さん”を認めさせるためにも……リフィル、お前の力に頼らず――今日は”ゴブリンの巣”を探そうと思う』
『……兄さん、”適材適所”って言ってたじゃあないですか……。
ラフィルの言う事は気にせずに……!』
『お前だって不便してるんだろ? ラフィルと話す時……!』
『……否定はしませんけど……』
『だろ? だったら、一回はオレらを信じて任せてくれ。
……大丈夫、当てはある』
『……どんな”当て”何でしょうか?』
『今日は”3個分隊”近くのゴブリンと戦ったんだ。
コレは今までの戦った数の中で、一番多い……!
なら……巣も近くにあるハズだ……!』
『……やっぱり……私が探した方が……!』
『大丈夫だって。
オルガ、散々ゴブリンと戦ってきて”匂い”を覚えて来たよな?』
『……”ウ◯チ”よりもヒドイ匂いだったけど……』
『……覚えたんだよな?』
『……うん……』
『なら、儲け物だ。
オルガ、今すぐにでも”ゴブリンの巣”を見つけに行くぞ!』
『えぇ……うっ、うんッ!』
『行くぞ、オルガ!
見つけ次第……”カルカからの依頼”を遂行する……ッ!
……ボス、アウト』
『了解、ボスゥ! オルガ、アウトォッ!』
『……心配ですが……お二人共、ご武運を……。リフィル、アウト……』
――そうして、二人は駆けて行く……!
木陰に覆われた森の闇へと……ッ!
参考文献
*Amazon.co.jpの書籍情報を引用しています。
書名:公立高校教師YouTuberが書いた 一度読んだら絶対に忘れない世界史の教科書
ISBN-10: 4797397128
ISBN-13: 978-4797397123
参考動画
動画名:「【ゆっくり解説】人類史上初の世界を巻き込んだ大戦争「第一次世界大戦」勃発の理由をきめぇ丸がざっくり紹介!」
作成者:「ゆっくり実況chしまたろう」
動画URL:https://www.youtube.com/watch?v=cmNpwiw8IgU
<Record>
「Boss」
→射殺 = 3体
→殴殺 = 2体
→刺殺 = 7体
(”殴殺”、”刺殺”はオルセット、ラフィルを襲った以外のゴブリン分隊での数)
〜計 14体〜
「Orsette」
→射殺 = 13体
(”射殺”の作中にない個体はリフィルが”コール内”で語っていたゴブリン分隊での数)
〜計 13体〜
「Refill」
→射殺 = 5体
(”射殺”の作中にない個体はオルセット、ラフィルを襲った以外のゴブリン分隊での数)
〜計 5体〜
「Lafil」
→射殺 = 19体
→殴殺 = 5体
(”殴殺”は、”射殺”の作中にない個体を含め、オルセットと合流する前での数。)
〜計 24体〜
<result = 56体>
…ところで余談ですが……。
作中ボスが「45ACP弾」の値段を言っていましたが、他の仲間達が使っている銃の弾を、日本の現代価格で表記するとこうなります。
「9mmパラベラム弾」 → 約29円
「45LW弾」 → 約84円
「45ACP弾」 → 約80円
「8mmヴィルゼル弾」 → 約88円
「12ゲージ バックショット」 → 約147円
……大体、「マ◯クの100円バーガー」を我慢すれば、”1発”は射撃出来るリーズナブルさですよね〜。
因みに補足しておくと、参考にした海外サイトであった値段は「1ドル=100円」換算で、計算しています。(また「○rds」と、”一箱◯発入り”とまとめ売りされています)
更に、たまに聞くであろう「FMJ」や、「HP」、「JSP」などの弾頭の種類、「gr」表記の弾頭の重さの違いなどなど……。
「45ACP弾」と一口に言っても、無数の細かな違いのある弾の中の一種類の値段……と言う事を頭に入れておいて下さい。
なのでそれを含め、年ごとに値段が違う事がある為、ここに表記している値段はあくまで一例なのはご了承下さい。
最後に、一応参考にさせて頂いた海外サイトのURLを貼っておきますね。
→https://www.ammunitiontogo.com/
(注! <英語表記>のみです!
英語に強い人か、グー◯ル翻訳先生に助けて貰いながら、読むのがオススメですよ!)