Mission-40 WWI(前編)
大変お待たせしましたッ!
ちょっと早いメリークリスマスッ!
新章である第3章を、2回に渡ってお送りいたします!
「WWI」 → 「ワールド・ウォー・ワン」
……それは、今から100年近い昔、1914年7月28日〜1918年11月11日のおおよそ4年間……この戦争の発端となった「サラエボ事件」から勃発して行ったこの戦争は、<クリスマスまでには終わる>という楽観論が、当時の民衆達の頭の中を占めていた。
……だが、そんな楽観論はいともたやすく崩れ去ることになる……。
それは、この戦争が起こる前に、当時のドイツ帝国首相であった「オットー・フォン・ビスマルク」の血の滲むような努力によって築かれ、当時のヨーロッパの平和を保たせていた「ビスマルク体制」によって、この時代のヨーロッパ各国の国家元首達はある共通認識を抱いていた……。
<戦争とは、”外交”でコントロールできるものである>
……と言う、蜂蜜以上に甘ったるい共通認識は、ブレーキどころかハチミツでヌルヌルと滑りまくり……世界の在り方を永遠に変えてしまった惨劇を呼んでしまうのだ……!
1888年、当時のドイツ帝国の初代皇帝だった”ヴィルヘルム1世”が死去……その後、孫であった”ヴィルヘルム2世”が即位すると、1890年……この皇帝陛下は<孫を頼む>と、祖父に期待されていた程のビスマルク首相を、即刻クビにしてしまったのである……!
その理由は至極単純、この男は<権力、暴力、支配>の言葉一色に頭が染まっており、「全世界を支配してやる!」……と言っても過言じゃあない、外交に関しては帝国主義と、アフリカなどを植民地化する事を徹底的に追い求め続け、「WWI」勃発のキッカケの下地を作りやがった、史上最悪の”クソ皇帝”が彼の正体だったのだ……!
当然、その支配を望まないと思った”イギリス、フランス、イタリア、ロシア(終戦間際にアメリカ、大日本帝国も参戦)”を主にした「連合国」VS……当時、連合国に東西から挟まれる形にあった……。
”ドイツ帝国、オスマン帝国、オーストリア=ハンガリー帝国”の「中央同盟国」の図式があれよあれよという間に、完成しまい……!
そして、黙示録の如き地獄がヨーロッパを中心に巻き起こって行き――ジョジョに世界を股にかけた……世界初の泥沼の大戦争が繰り広げられて行くのであった……!
だが、そんな地獄の中で……最も忘れてはならないのは、その「戦争の犠牲者の数」だ。
何故、これに着目するのかと言うと……これは当時、「国家総力戦」で戦争の計画を立てるのが当たり前だったからなのだ。
「国家総力戦」をザックリ簡単に”現代日本”で例えれば……「自衛隊だけじゃあなく、警察は勿論、君達一般市民も含めた国家総動員で戦争に勝つため協力してね? 勝たなきゃ死ぬよ?」……と半ば脅し気味に言っていたようなモンなのである。
ドイツ軍、イギリス軍、ロシア軍、オスマン軍だけじゃあなく、その軍の国民全てを巻き込んでの大戦争だったのである……!
そして……このヨーロッパ各国の首相達のクソッタレな程に甘い共通認識により行われた威嚇外交や、戦争政策諸々を……とことん侮蔑するのならば、
”Dirty_deeds_done_dirt_cheap”
……(通称”D4C”)と言えるであろう……!
そして……それによって、地獄の大釜を閉じるのに払われた犠牲は「約3780万人」……ッ!
その内訳は、”戦死者”「1600万人以上」、”戦傷者”「2,000万人以上」……。
……更に細かく言えば、「約1,000万人以上」の”軍属”、「約700万人以上」の”民間人犠牲者”がおり、更に負けた「中央同盟国」よりも、勝った「連合国」の方が”戦死者”、”戦傷者”を合わせ「約600万人以上」の犠牲者が出ていたのであった……ッ!
……止めに追い討ちを掛ければ、この犠牲者の約3分の2は、”名誉の戦死”などでなく……戦闘中に発症した”病気”によって命を落とした者がほとんどであった事から、当時の戦場の過酷さや悲惨さ……医療技術の未発達さが伺える事であろう……。
「The war to end all wars」
1914年、開戦直後……当時のイギリスの新聞に載ったこの言葉は、この「WWI」――<第一次世界大戦>を一言で体現していた……現代では”皮肉”となってしまっている言葉である。
当時の誰もが、「祖国を守るために」……と願い、命を散らして行ったであろうこの欧州大戦を……。
……後の大戦と比べられ「忘れられた戦争」と呼ばれてしまう、この最も忘れてはならない世界大戦を意識した上で聞いて欲しい……。
異世界へと飛ばされても尚……!
ボス達を守るために戦う……歴戦の銃器達の英雄譚を……ッ!
About two months after reaching another world ...
(異世界到達から、約2ヶ月後……)
10:12 AM
Forest about 300m northwest from the commercial city of Maquette
(商業都市マケットから、北西約300mの森)
〜ギャッ、ギャギャギャギャ……〜
……落ち着いて欲しい。
これは、私の頭がおかしくなった訳じゃあない。
森の中にある少し”開けた場所”で屯している、とある”魔物”の声だ。
〜ザシャッァッ! ザシャッァッ! ザシャッァッ! ……〜
粗末な皮製の腰蓑だけを身に纏ったその魔物は……。
日本の小一男児にも満たない小柄で小太りな”体”……。
一眼見ると一瞬、角かと錯覚してしまいそうな――”急傾斜のように尖った耳”……。
そして極め付けは、初見ではまず可愛いとは思えないような――醜い形状をしたイボ塗れの大きな鉤鼻と……人間の瞳孔と強膜の色が逆転した、ギョロギョロと動く大きくて醜悪な見た目の”目玉”が最も特徴的な……!
ファンタジー界の”ザコの中のザコ”……「キング・オブ・ザコ」であり……!
〜ズバシャッァッ! ……ドタン、ズリズリズリズリ……〜
最弱な魔物として有名な、緑の小鬼――「ゴブリン」であったのだ……ッ!
そして、彼らは今し方まで「パルト・ディアー」を惨殺していたのだ……ッ!
……えッ? ただ、ゴブリンが狩りをしていただけ……?
そう思うだろう――そう思う○者の諸君が多いと思うかもしれないが……。
これが地味に、この世界の人間達を困らす”問題”の一つであったのだ。
「……ねぇ、キミ達? そのお肉をどうするつもりなの?」
……おっと、そんなこの世界の問題を語ろうとした所で――最も最優先で語るべき人物の一人である、「オルセット」君が来てしまったようだ……!
彼女が来てしまったからには、語るべき話の”フォーカス”を――彼女に戻さなければならないのだが、安心して欲しい。
この話は近い内に、”ある人物”の口から語られるべき物であるのだから……!
「ボ……じゃなかった、ボクが”大切に思っている人”はこう言ってたんだよ?
”狩りで殺めた命は、その命に感謝した上で――余す事なく美味しく頂け”……って。
……君達は、そのグチャグチャな狩り方で狩った”お肉”を――どうするつもりだったのかな……?」
……と、多くの木陰に覆われた森の奥から突如として現れ、ゴブリン達に話していたオルセットは……穏やかながらも少し青筋を立てながら、語っていた。
……いつの間に、彼女は”お肉”にこだわりを持つようになったのであろうか……!?
……とまぁしかしながら、よく見てみると彼女は、一ヶ月前の「マケットの反乱」時と比べ――見違える程に変わっていた……ッ!
首元を開けさせ、着流したオレンジ色の”ボタンダウンYシャツ”……。
防御力を意識したのか、少し厚手の”革製チョッキ”……。
よりスッキリとしたシルエットの、黒い”スリムフィットカーゴパンツ”……。
そして足元はカッコ良いスポーツシューズ風の”タクティカルブーツ”……と、以前の服を踏襲しつつも、全体的に”現代的”な物に置き換わっていたのだ。
一言で表現するのなら……さながら、海外に居そうな”お洒落な私服刑事”風と言った感じだろう。
だが……最も変わっていたのは、彼女の両太腿と腰周囲に装着された――”レッグホルスター”と”様々なポーチ類”であろう。
〜ゲギャ? ゲギャギャギャギャアァァッ!
グギャ〜アァァァァッ!〜
「……って、言っても通じないか……。
ハァ、ボスに頼まれてやってるケド……何度目なんだろうな……コレ?」
獲物を引き摺っていた二匹のゴブリン逹が怒りらしい声を上げる……。
すると、その周囲に居た8体のゴブリン達が、思い思いの”粗末な武器”をオルセットに向けて構え始めた……。
更に言えば……口周りをベロベロと舌舐めずりしながら、この一ヶ月でより良い”肉付き”と”適度な筋肉”が付いて健康的に引き締まった彼女の全身を、舐め回すような”嫌らしい目付き”で見始めていたのだ……ッ!
無論、ここにいるゴブリンは全て”雄”だと言えば、この醜態の意味は自ずと分かるであろう……。
そして当然、オルセットはこのゴブリン達の行動に一瞬ビクッとしながらも、非常に嫌悪感を感じたようで……自然体でいた手を”レッグホルスター”に伸ばし始めていた……!
「じゃあ、聞くけど……キミ達の中でボクの言葉が分かる……ゴブリンクン? ……は居るかな……?
居るんだったらその武器を下ろしてね? そうしないと……」
〜ゲギャアァァァァァァッ!〜
引き摺っていた一匹が雄叫びのような耳障りな声を上げると、いつの間にか彼女の左右に移動していた”二匹のゴブリン”が一斉に襲い掛かったのだッ!
〜……サッ! ブンッ! ゲシッゴボギャァァァァァァ! 〜
……しかし、その後ゴブリン共による”いけないエ◯チな本”的な展開が、彼女の身に起こる事はなかった……!
ゴブリン達が飛び掛かってきた瞬間! 彼女は、何気無いように”バックステップ”で躱したのだッ!
すると――同時に飛び掛かってきた二匹は、その勢いの”慣性”を止められる事もなく、感動の再会の余り”熱烈なキス”をするかの如く……二匹は空中で打つかってしまったのだ……ッ!
無論、その瞬間を彼女は逃す事もなく、すかさず二匹のぶつかった胴体の中央目掛け、”バックスピンキック”を叩き込み、そのありえない光景に呆気を取られていた他のゴブリン達の背後にあった”樹木”へと、吹っ飛ばしたのだッ!
「……今のは手加減したけど……これは警告だよ?
いい? 今すぐ、武器を降ろして。
じゃあないと、次にキミ達がボクに襲い掛かろうモノなら……!」
〜ゲギャアァァァァァァッ! ザッザッザッザッ……!〜
しかし、悲しいかな……。
彼女の言葉はゴブリン達には届かず、むしろ先程の行動から”宣戦布告”と奴らは受け取ってしまったようだ……!
再び、一匹のゴブリンが怒りの声を上げると、彼女の正面に居た先程とは別の二匹が、彼女目掛けて突撃して行くのであった……ッ!
〜パパンッ! パパンッ!〜
……しかし、それは果てしなき”無謀”として終わったようだ。
二匹が駆けてきた瞬間、彼女は「レッグホルスター」の中身を抜き放ち、瞬時に襲ってきたゴブリン達に向けて発砲したのだッ!
〜ドドサッ!〜
……そして、糸の切れた操り人形の如く倒れ付し、芝生のようなその場の短い葉の草むらに――頭から"血溜まり"を作って行く二匹のゴブリン達を余所に……。
彼女が抜き放っていたのは「フリピス」でもなく……! 「SAA」でもない……! 全く新しい銃なのであったッ!
<ゲルガーP08 アーティラリー>
全長 約33.4cm
重量 約1.05kg(銃のみの重さ)
装弾数 ”32+1発”
使用弾薬 9x19mmパラベラム弾
供給コスト MP:0
(「フリーバイチケット」を使用。本来は<MP:6200>)
ドイツ帝国製、1904年からドイツ海軍、1908年からドイツ陸軍に採用された自動拳銃。
「汝平和を欲さば、戦への備えをせよ」<Si vis pacem, para bellum>と言う、ラテン語の警句(言事)を元に名付けられた「9mmパラベラム弾」は、現代では最も多く使われている拳銃弾であり、この銃の元となった「モデルP1902」と共に、本銃は世界初の「9mm弾を使用した拳銃」と言っても過言ではない。
また、銃の最も特徴的な”トグルアクション式”の給弾機構から「尺取虫」の愛称で呼ばれていた。
熟練職人の手作業による”削り出し加工”によって作り出され、組みげられたそのドイツらしい精密な機構から、”故障しやすい”、”互換性が効かねェ”と揶揄される事もあるが……それを補って余る程の”命中精度の高さ”を誇る名銃の一つである……!
更に彼女が現在使用しているのは「アーティラリー」もしくは「ランゲ・ラウフ」と呼ばれる8インチのロングバレルを備え、長距離射撃も想定した重装モデルであり、なぜこれを使用しているのかと言えば……スネイルマガジンを用いた上記に書いてある”装弾数”の多さにある。
ボスはその”装弾数の多さ”から――2章以降、見事な射撃を披露しつつも……やっぱり”狙い”に自信がないと密かに愚痴を零していたオルセットに対し、「下手な鉄砲、数撃ちゃ当たる」精神で、彼女の機敏な動きに合うこの”二丁拳銃”のスタイルを勧めた事から、現在のように使っているそうだ……。
「……ボクは”ケイコク”したからね?
君達がオソってくるって言うなら……ボクは”ヨウシャ”しないよッ!」
<Round1>ッ! Fightッ!
〜カアァァァァァンッン!〜
(ゴングの鳴る音。ボス達には聞こえていない)
<DIEジェスト>
1ゴブ目
(射殺。先程のオルセットの「ゲルガーP08」によって”胸→頭の順”に、秒足らずで撃ち込まれる)
2ゴブ目
(射殺。”1ゴブ目”と同じだが、左手による操作だったためか”腹→頭の順”に、秒足らずで撃ち込まれる)
一瞬にして同胞の二匹(?)がやられた事に、一瞬たじろぐゴブリン達。
しかし、”最弱の魔物”の異名は伊達ではなく、何の対策もナシに――奴らは武器を掲げ”ゴギャァァァァ!”などの思い思いの雄叫びを上げながら……再び”無謀な突撃”を彼女に仕掛けるのであった……ッ!
〜パパンッ! パパンッ! パパンッ! パパンッ!〜
3ゴブ目
(射殺。駆けて来た最中に右手の銃で”顔に2発”、秒足らずで撃ち込まれる)
4ゴブ目
(射殺。駆けて来た最中に左手の銃で”腹→頭の順”に、秒足らずで撃ち込まれる)
5ゴブ目
(射殺。駆けて来た最中に右手の銃で”胸→頭の順”に、秒足らずで撃ち込まれ……)
〜ババスンッ! ゲギャアァァァァァァッ!〜
「おっと! ニャアァァッ!」
〜ゲシャアァァァァッ! ゴロンゴロンゴロンゴロン……ガササッ!〜
6ゴブ目
(撲殺。偶然、彼女の銃弾を避ける事に成功し、飛び掛かって得物の錆びた鉈で頭をカチ割ろうとしてくるが……。
易々と”サイドステップ”で躱され、すれ違い様に”バックスピンローキック”を着地した瞬間――後頭部に喰らい、サッカーボールのように先にあった茂みの中まで転がって行った……!)
「……フゥ、これで6匹目……」
〜ゲギャギャアァァァァァァッ!〜
「ッ! ニャッ!」
〜バッ! クルン……パパンッ! パパンッ! 〜
7ゴブ目
(射殺。1,2ゴブ目前の”蹴り飛ばされるも生きていた二体”の内の一体。
空中での熱烈なキスを促された挙句、蹴り飛ばされた怒りか……気絶から顔を上げた時に目にした”彼女の背中”を見た瞬間、怒り狂いながら突撃していたッ!
しかし、彼女が2m級の”宙返り”で自身の頭上を跳んでいた事に気づかず……すれ違ってキョロキョロと辺りを見回している最中に、左手の銃で”頭上に2発”、秒足らずで撃ち込まれてしまう)
8ゴブ目
(射殺。1,2ゴブ目前の”蹴り飛ばされるも生きていた二体”の内の一体。
7ゴブ目同様だが一番後ろに居た性か、彼女が”宙返り”で自身の頭上を跳んでいた事に気づき……目で追っていた最中に、右手の銃で”ポカンと開いた口の中→眉間の順に2発”、秒足らずで撃ち込まれてしまう)
〜スタッ!〜
「フゥ、危なかった……これで8匹目だよね?」
唐突に挟むようで申し訳ないが、先程からオルセットが「胸→頭」の様に、態々二回――ゴブリンに向けて撃っているのが気になっている◯者の諸君もいるだろう……。
これは、”無駄撃ち”などではなく、「タップ射撃」というチャンとした射撃技術なのだ。
「タップ射撃」とは、彼女が使用している銃の「9mmパラベラム弾」の様な威力の低い拳銃弾などで、確実に相手を殺すために考案された射撃方法である。
基本的には人体の急所となる”頭”に、二回連続して弾を撃ち込むのが基本なのだが……。
状況によっては、彼女が行った様に”体”に撃ち込んで一瞬、相手の動きを止めた後、透かさず頭に撃ち込んで止めを刺す……ッ! と言ったやり方もある。
とある伝説的な殺し屋などが当たり前の様に使用する、殺意マシマシなコレを……現状、全く出番がない程――慎重になっているボスから1ヶ月掛けて叩き込まれ、実践している彼女なのであった……。
〜ガシィィ!〜
「ッ!?」
〜ゲギャアァァ……ッ!〜
「あ、ちょ!? やめてッ! 離して! 脚に組みつかないでよッ!」
〜ブンッブンッブンッブンッ! ゲギャアァァアァァァッ!?〜
……最弱の魔物相手に残酷? ヤリ過ぎ?
忘れていそうな◯者の諸君に改めて言っておこう……!
そんな”最弱の魔物”相手でも、万が一”勝てなければ”待つのは<死>のみ。
――それが、この異世界なのだ。
〜ブンッブンッブンッブンッ! ゲギャアァァアァァァッ!?〜
「あぁぁあぁん、もうッ! キモチワルイッ!」
〜ブンッ! ゴロンッ、グンッ、ドゲッシャアァァァァァッ!
……パンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパン……ッ!〜
9ゴブ目
(撲……もとい射殺。彼女の眼前に居ず、狩りをしていた群れから離れていた一体。
見張りをしていたのか……はたまた、臆病な個体だったのか……今まで隠れて様子見していたのだが……1,2ゴブ目前の”7,8ゴブ目”が怒り狂い、彼女の背後目掛け突撃するのを見て好機だと思わず、そのまま静観していたが……!
7,8ゴブ目を射殺後、偶然自身の近くに着地して来た彼女の足に纏わり付き……ネバつき薄い緑色をした唾液に塗れたボロボロの歯で、決死の噛みつきを喰らわそうとしたが……。
圧倒的な力で組み付いた脚が振り回され、それに目を回す程に翻弄された挙句……振り解かれてしまい、地面に転がり立ち上がった瞬間……!
彼女の”踵落とし”で杭の様に地面に埋め込まれた後、2丁のゲルガーで尽く頭に連射され、憐れ――オーバーキルされる……)
〜カチカチッ、スカッ、スカスカスカスカスカ……〜
「ハァ、ハァ、ハァ……キモチワルかったぁぁぁ……ッ!」
……まぁ、2丁計”46発”もの残弾を……踵落としで埋め込まれたゴブ君の頭が、”蜂の巣”になるまで撃ちまくるのは……流石にヤリ過ぎではあるが……!
「……ハァ、けどホントにもったいないなぁ……あのお肉……」
しかし、驚く事に彼女の興味は既に”倒したゴブリン達”にはなく、胴や頭に出来た……無数の切り傷や刺し傷によって、無残な肉塊に成り掛けていた”パルト・ディアー”にあった……。
……将来、”お肉”に釣られて、誰かに騙されないか心配である……!
〜 ザッザッザッザッザッ……!〜
「?」
――だが、そんな束の間彼女の背後から駆けて来る足音を、彼女の耳が捉える!
〜 ゲギャアァァァァァァッ! 〜
「えッ!? 生きてたのッ!?」
――なんとビックリ! ”撲殺”したハズの<6ゴブ目君>が生きており、覚束無い……フラフラとした足取りながらも、彼女目掛けて猛突進して来るではないかッ!
しかしながら、彼女は”生きていた事”に驚きはしたものの……素早く冷静に両手の「ゲルガー」を構えると、無策に突撃して来るゴブリンに向け、再び引き金を引いたのであったッ!
〜 スカッ、スカスカスカスカスカ……〜
「……ッ!? ウワァァァッ!? しまったッ!
さっきビックリして、撃ち過ぎちゃってたんだッ!」
……何と憐れ……!
これをゴブリン君だけでなく、彼女にも言わなくてはならない時が来るとは……!
この時の直前まで彼女は、狩りの獲物を運搬しようとしていた10体のゴブリンを、”既に始末し終えた”と思い……気がぬけたのか、無残なお肉に哀愁の念を感じていた彼女は、すっかり2丁の「ゲルガー」の”リロード”を忘れていたのだった……!
「ゲルガーP08」は、回転式拳銃であった”SAA”とは違い……あらかじめ弾を込めた箱型弾倉を、握り手内の空弾倉と入れ替えるだけで”リロード”が完了する「自動拳銃」ため――圧倒的に”攻撃を再開する”のは早いのだが……!
〜 ザッザッザッザッ、バッ! ゲギャァァァァァァッ!〜
「えッ!? ウソッ、ちょ、待ってよッ!?」
――慌てて「レッグホルスター」付近のポーチに刺さっていた、予備の”スネイルマガジン”を引っこ抜こうとし、ゲルガーのリロードを試みようとしていた彼女よりも早く……ゴブリンは迫っていた……ッ!
大口を開け、ネバ付いた唾液を撒き散らしながら――今度は彼女の顔に噛み付かんと、飛び掛かっていたゴブリンは、既に彼女の眼前にまで迫っていたのだ……ッ!
これには思わず、両腕を交差させ、防御体制を取ってしまうオルセット……!
しかしこのままでは、致命傷はなくとも不摂生なゴブリンの唾液により、”感染症”など何かしらの病気は避けられないのだが……ッ!?
〜ブゥォォォォォォンッ! ビシャァァァッ! ……ドタンッ!〜
「ウゥゥゥ……あ、アレ?」
しかしながら、奇妙な事に飛び掛かったゴブリン君は彼女の腕を捉えたものの……噛み付く事はなかった。
……何故かって? それは、彼女の腕に不潔な唾液を残しながら、地面に落ちたゴブリン君を見れば判る。
彼女から見て右側頭部、その”こめかみ付近”に団栗大の大きさの穴が、いつの間に空いていたのだ……!
……フム、はてさてこれは一体どう言うことやら……?
「……油断してんじゃあねぇよ、猫女?」
またまたなんと!
オルセット君に悪態付きながらも、彼女同様木陰に覆われた森の奥から”ラフィル君”が現れたのだ!
……しかも、珍しい事に、肌身離さず持っていた”大剣”は持たず……それじゃあない物で彼女を助けていたのだ!
……そんな彼の服装だが、大幅にモデルチェンジした"オルセット"とは異なり、腰のベルトに”いくつか追加されたポーチ”と手に持つ”新たな銃”以外、特に大きな変化は……ないようである。
「ボッ……ボクはオルセットだよッ!? いい加減ちゃんと名前で呼んでよ! ラル君ッ!」
「……食えもしねェ”残骸”に気を取られていた、"アホ猫"の名前なんて覚えてられるかよ……」
「モォォォォッ! まだそんな事を言うのッ!? バカエルフッ!」
「……フンッ、知るか。
こちとら、姉ちゃんも守らず、剣も一切使わずに――”コレ”でお前の援護をしろって……ボスから言われてイライラしてんだよ!」
〜 ジャ、コンッ! 〜
<オリバンスター M1894>
全長 約96.8cm
重量 約2.9kg(銃のみの重さ)
装弾数 ”12発”
使用弾薬 45LW弾
供給コスト MP:8940
アメリカ製、1851年に製造された「ヴォルカニック連発銃」から実に43年近い”開発”と”改良”を重ねた末に1894年に誕生した、レバーアクション式ライフル。
レバーアクション式とは、この以前に紹介したオルセットの「ゲルガーP08」の「トグルアクション」の機構を、上下逆さにした物を銃の内部に組み込み、それを「トリガーガード」と一体になったレバーを操作して、手動で動かし排莢、装填する……と言った機構の事である。(今し方、ラフィルがイラつきながらも行なったように……!)
ただ、前置きで述べなかった様に当時のアメリカ軍に”フルサイズのライフル弾を撃てない強度、威力不足”と”機関部が多く露出し、泥や埃などの汚れに弱い”……などと言った理由で採用されなかった不憫なエピソードがあるが……。
それでも当時の拳銃や散弾銃を圧倒的に上回る”装填数”と”連射力”の高さを誇った事から、「Gun that won the West」とも呼ばれ、2章でボスの「SAA」と共に、西部開拓時代を代表する銃の一つとして多くに知れ渡っている。
因みに、最も多く知れ渡っているのは当時の西部開拓時代で活躍していた「M1873」と言う改良前のモデルなのだが……これをボスが勧めた理由としては、”SAAと同じ45LW弾”が使え、その”無煙火薬Verに対応している”からであり、ラフィルが”ボルトアクション式……? それが合わないから、それよりも更に多くの弾を撃てる物なら使ってやる”……と言っていたためなのである。
「でもでもッ! ボスがラル君の事を思ってだって、言ってたよッ!
ホラッ! その”レバー付きのジュウ”だって、ボクみたいにボスがワザワザラル君のために用意してくれたようにさァッ!」
「……勝手に飛び出し、戦闘を始めた癖して……よく言えるな? アホ猫?」
――図星なのか、一瞬ビクッとなった後……両手に”ゲルガー”を持ったまま、胸の前で上下にブンブンと振り回して憤慨しつつも、必死にラフィルに弁明を始めるオルセット……!
「うッ……だってだって!
お肉がムダになって行ったんだよッ! ボク……だけじゃあなくて、カルちゃん達が居るマケットのみんなのためにさァッ!」
――しかし、そんな事何処吹く風と聞き流し……彼は周囲をサッと見渡した後、ローレディポジションに携えていた得物を右肩に担ぐと、流し目に彼女に話し始めた。
「フンッ……それよりも、アホ猫?
さっき姉ちゃんが、まだゴブリンが来るって言ってたぞ?」
「えッ!?」
『そうですよオルちゃん、気を抜かないでくださいッ!
先程の二人の銃声に気づいた、およそ一個分隊の”ゴブリンの一団”がこっちに向かってます!
オルちゃんから見て、11時、12時、1時の方向から最初の増援が来ますよ!』
――と、新たな事実をマヌケに驚愕していたオルセットを叱咤するかの如く……。
何処からともなく、”リフィル”からの「コール」が彼女の脳内に響くのであった……!
「……リルちゃん、それって……ほぼ正面だよね?」
『合ってますけど……しっかりしてくださいよッ!』
「ハァ……おい、アホ猫」
「ボクは、オルセットッ!」
「ゴブリン共が来るのは、お前が見ていた”正面の方向”で良いんだよな?」
「えッ? ……ウン、そうだけど……」
「なら、オレが相手しておく。
その間、サッサとそのお前の銃をリロードしておけ」
「えッ? ……でも」
「……いいから、サッサとやれ。
それとも何だ? まともにゴブリンと戦えず、襲われるのがお前の趣味なのか?」
「もぉぉぉぉッ!
何であんな”キモチワルイ”ヤツらに、ボクがヤラレなくちゃいけないのさッ!?」
「サッサとしろ。
戦えるのに、戦わない奴なんぞ、オレは一切助ける気はないからな?」
そう言うと彼は、前に伸ばした左手で銃身の半分を覆う木製の”被筒”を握る。
続いて、引いた右肩に木製の”銃床”を押しつけ、銃口付近にある棒状の”照門の先端”が、撃鉄付近にあるリング状の”照星の中央”に重なるよう……右頬も銃床の上に置いた。
そして、左足を前に出して軽く前傾姿勢――所謂、小銃の「スタンディングポジション」の構え方を取ってゴブリン達に対する迎撃準備を整えるのであった……!
嫌々ながらもボスに叩き込まれたのであろう……その姿は意外と様になっていた。
だが、その一方でどこ吹く風的な彼の横暴な態度に、オルセットは膨れっ面をしながら睨んでいたのだったが……再びリフィルからの”コール”が脳内に響き渡る。
『オルちゃん……ラフィルが言っている事は癪に障るでしょうが……理に適ってます。
……ですから、私からもお願いします……。
オルちゃんがリロード中、もし”不意打ち”にあったとしても……私の”新しい銃”の弾薬は貴重ですから……助けるための弾数が足りるかどうか……!』
「……うぅぅん、リルちゃんがそこまで言うなら……」
『ありがとうございます、オルちゃん。
……けど、オルちゃん? 兄さんが言ってたように敵に情報を渡さないためにも、例え相手が”小鬼”だろうと……戦闘中は基本「コール」を用いて喋ってくださいね?』
「あぁ、そうだった!」
……何処までも私に”憐れ”と言わせたいのであろうか……。
まぁ、それはともかく……! いい加減学んできたであろう彼女は、右手に持っていたゲルガーを自身の左脇の下にしっかり挟み込むと、左手のゲルガーを右手に持ち変えた。
そして、右手で握った際に伸ばした親指に当たる「マガジンキャッチボタン」を押して滑り落ちるスネイルマガジンを左手で受け止め、左足のホルスター付近にあるポーチに入った弾入りスネイルマガジンと入れ替えると……。
とまぁ、ボスがレクチャーしたのであろう独特な”二丁拳銃”のリロード方法を彼女はしているのだ。
ただ、先程の慌てぶりもそうだが……まだ慣れていないのか、不意打ちに襲われそうになった際引き抜こうとしていたマガジンは、ポーチに収まったままだった。
彼女に取っては尺であろうが、どうやら彼女はこのまま”ラフィル君”に、少しの間守ってもらう必要性が出て来てしまったようだ。
〜 ガサッガサガサ……ヴァサァァッ!
ザッザッザッザッザッザッ……ゲギャァァァァァァッ! 〜
「……来たな」
――そうこうしている内に、リフィルが言っていた援軍が駆け付けたのであろう。
ラフィルが見つめていた先の茂みの中から、四体のゴブリンが思い思いの武器を振りかざしながら飛び出して来た。
そして、各々が汚らしい雄叫びを上げながら……二人目掛けて突撃して行くのであった……ッ!
〜ブゥォォォォォォンッ! ジャコンッ! ブゥォォォォォォンッ! ジャコンッ! ブゥォォォォォォンッ! ジャコンッ!〜
11ゴブ目
(射殺。駆けて来た最中に「オリバンスター M1894」による精密射撃で”おデコに付近に1発”、秒足らずで撃ち込まれる)
12ゴブ目
(射殺。駆けて来た最中に”オリバンスター”による精密射撃で”眉間付近に1発”、秒足らずで撃ち込まれる)
13ゴブ目
(射殺。駆けて来た最中に”オリバンスター”による精密射撃で”右目に1発”、秒足らずで撃ち込まれる)
拳銃……そして黒色火薬とは違った”無煙火薬”が爆ぜる音と、弾頭を撃ち出す役目を終えた空薬莢を排莢させる”レバーアクション”の、小気味良い駆動音を交互に響かせながら……ラフィルは素早く、正確な照準で、瞬く間に三体のゴブリンを永遠に寝かしつけたのであった……ッ!
〜ブゥォォォォォォンッ! バスンッ! バッ! ゲギャアァァァァァァッ!〜
……しかし、最後に走って来た個体は、どうもまだ夜更かしをしたいようだ。
再び走っている最中に身を捩らせ、運良くラフィルの放った凶弾を避ける事に成功し……ワンパターンになりつつもあるも、握っていた粗末な石槍をラフィルの顔面に突き刺そうと――飛び掛かって来たのだッ!
「……フンッ」
〜ジャ、クルン……バギッ! ……コンッ!〜
……あ…ありのまま、今起こった事を話すぜ!
「ラフィルは”スピンコック”で、飛びかかるゴブリンに”カウンター攻撃”を決めた」……ッ!
な…何を言っているのか、わからねーと思うが……おれも何をされたのかわからなかった…。
本来”スピンコック”は、バイクや騎乗時など両手で「レバーアクション」を操作できない時に行う”苦肉の策”か、単なる”ロマン技”に過ぎないのだが……。
彼の”ダークエルフ”の筋力が為したのであろう、その”一つの立派な技”が出来た光景に頭がおかしくなりそうであったが……”催眠術”だとか”超スピード”だとかそんなチャチなもんじゃあ、断じてねえ……! ある意味……恐ろしいものの片鱗を味わったぜ……。
(因みに、真面目な話をすれば……”スピンコック”は、レバーアクション機構を痛めてしまう操作方法なので、常時多用すると破損を早めてしまう恐れがある)
〜ゲシッ! ゲギャギャ、ギャアッ!?〜
「ゴブリン如きが……甘いんだよ……!」
〜ブゥォォォォォォンッ! ジャコンッ!〜
14ゴブ目
(射殺。飛び掛かって来たゴブリンに、カウンター気味に”スピンコック”で、アッパーカットを決めるように顎に銃床を殴り当てた後……回転しながらうつ伏せに落ちたゴブリンの背中を踏みつけながら”後頭部に1発”、捨て台詞を吐かれた後に撃ち込まれる)
「……ボスがやたら練習していた”この技”を試してみたが……。
やっぱり、この”銃”とやらを使ってると戦った気にならないな……」
スピンコックを行う際……無言ながらも、口元に軽く笑みを浮かべた得意げな表情でやっていながら、何を言っているのであろうか……このダークエルフは?
後、それは恐らく”出して嬉しかったテンション”で、ターミ◯ーターごっこをボスはやっていただけだと思うぞッ!?
……つまり、何を言いたいのかと言えば……「それはただの”勘違い”」だ。
「……んッ?」
〜サッ、ブゥォォォォォォンッ! ジャコンッ!〜
15ゴブ目
(射殺。奥の茂みから追加で来た一体。
目視し、オリバンスターを構えたラフィルに一目散ッ! ……する事なく、ジョジョに走る軌道を逸れ、未だリロード中だった”オルセット”目掛けて突進して行くところを、彼から見て”左側頭部”を撃ち抜かれる)
「おい、アホ猫! まだリロードが終わらないのかッ!?」
「ちょ、ちょっと待ってよ! ラル君ッ!
これ……ワキの下に挟んでやるから、やりにくいんだよ〜!」
――と言いつつも、ホールドオープンしていたゲルガーの、折り曲がった特徴的な遊底を引き、初弾を装填させた。
実際、本当に慣れきれていないのであろう。
その証拠に、ラフィルが話しかけた時……彼女はようやく”左脇に挟んでいたゲルガー”を同じ手順でリロードし始めていた所だったのだ、
「早くしろよ! オレは後、六体しか抑えられないからな!?」
「え〜リボルバーと同じ数ゥ? 今ので終わったっぽいし、ラル君もリロードしなよ〜」
「……何でそんな、甘えたいようにいうんだよ?
……やらねぇよ、お前に言われて――やる気が失せた」
「え〜でも、ボスは”リロード出来る時は、こまめにリロードしとけ”……って言ってたじゃ〜ん」
「……口より、手を動かせよ……アホ猫。
後、そう言われんのは、さっきお前が無駄弾を撃ちまくっているからだろうが……!」
「……キモチワルかったんだから仕方ない……ッ!?」
〜……ヴァサァァッ! ザッザッザッ! ゲギャァァァァァァッ! 〜
「ラル君ッ!」
〜 バッ! グルンッ……ゲシャァァッ! ゲギャアァァアァァァッ!? 〜
「ッ!? ちょ……ッ!?」
〜ヒュ〜ン……サッ、ブゥォォォォォォンッ! ジャコンッ!〜
16ゴブ目
(射殺。オルセットの左奥茂みから追加で来た一体。
リロードする手を休めていた彼女の右側面の死角から、奇襲を仕掛けたのだが……。
僅かな茂みが動く音からか、直感で察知した彼女に、飛び掛かった所を”サマーソルトキック”で回避しつつ迎撃される……ッ!?
そして、蹴り飛されたゴブリンはクレー射撃の的の如く、無様な叫び声を上げながら……ラフィルの真横を”大きな弧を描く”よう飛んでいき――その光景に驚きつつも、彼は”ヘッドショット”を見事に決め、撃破する。)
「……っと、お〜! ラル君、ナイスショットッ!」
――と、着地した直後……先程撃ち抜かれたゴブリンの姿から、彼の腕前を満面の笑みかつ右手で”サムズアップ”を突き出しながら、素直に称賛するオルセット。
「……このッ! バカ猫ォォォッ! テメェ何してんだよッ!?」
――しかし、それとは対照的にワナワナと震えた後、賞賛なぞいらんッ!
……と言わんばかりに、彼女を怒鳴り付けるラフィル。
「……えッ? だってボク、まだリロードし終わってないし……」
「それ以前の問題なんだよッ! バカ猫ォォッ!
合図も無しに何、人の目の前を通り過ぎるよう――汚らしいゴブリンをブッ飛ばしてんだよッ!?」
「……でも、ボク”ラル君ッ!”……って合図していたし……。
……撃ち抜けているんだから、結果オーライじゃん!」
「……お前は”頭を使え”……ッ! チャンと話をしろよッ! クソ猫ォォッ!」
「あ〜ッ! まぁ〜たッ! ”クソ猫”って言ったァァッ!
ボクはオルセットだって、何度も言ってるでしょ! このクソエルフッ!」
「……だからァッ! 話の焦点がズレてきてんだよッ! クソ猫ォォッ!
いい加減サッサとリロードしろよッ! さっき言ったように、お前は口よりも手を動かせよッ!?」
「やァァだッ! 未だボスは”ボス”……って、良く呼んでも、ボクだけは”オルセット”や”オルちゃん”ってマトモに呼んだ事が一度だってあるゥッ!?
なぁいでしょッ!? だったら、今日こそラル君から呼ぶようになってもらうからッ!」
「んな、くだらねェ事にいつまでも固執してるからッ、呼びたくないんだろうがッ!?
というか、今はどうでもいい事だろ!? 本当にリロードしろよッ!? 本気でもう襲われても守ってやらないぞッ!?」
「やァァだッ! ラル君ずるいィィッ! 今日こそ呼んでもらうんだからァァァッ!」
〜ブゥオォォオォォォォンッン! ビシャァァァッ! ヒュウゥゥ……ドタンッ!〜
『……いい加減にしてください、二人共!
いつまで、そのような醜態を繰り返すつもりなのですかッ!?』
……えッ? 誰がいつの間にこの小説が「Goblin May Cry」や「オルネッタ」になったんだって……?
※出て来たゴブリンの数に矛盾があったため、辻褄が合うよう「9ゴブ目」の文章を変更しました。