Contact-36 躙リ寄ル”処刑人”
大変お待たせしましたッ!
二ヶ月近くお待たせしてしまい申し訳ありませんッ!
先に言っておきます・・・今話中盤以降、またまたやり方が変わっている箇所があります!
まぁ・・・実験的でもあるですが、執筆時間短縮兼、短い文章でも面白くッ!
・・・と言うのをそろそろ意識していかなきゃなぁ・・・と思ったので・・・ハイ。
具体的に言えば語り口が目立ちますが、その他にも<N:>の、”ナレーション中”、<「」>などの”セリフカッコ”が入り、その部分では「ナレーター」に混じってボス達が”セリフ”や”心の中の声”を、「彼らが喋っている」シーンになります。・・・そこだけは、フリーダムな”Mr.N”じゃあありませんよ?
主に”細かな会話”に使って行き、”空白”数の削減をして行くのが狙いです。
感想やツイッターで意見してくださると嬉しいです。
今後も宜しくお願いします・・・。
(注:今回、「三万字」近くあります。お時間のある時にじっくり読むことをお勧めします・・・)
<Immediately after firing · · ·>
〜 ビッシャァァァァッ! 〜
「うわぁッ!?」
〜 ドンッ、ゴロン ザシャアァァァァァッ! 〜
「フン、雑兵に助けられるなんて、運がいいな? 野蛮人・・?」
「クッ! 黙ってろッ! クソ人間ッ!」
N:一方その頃・・・シスコン・・・もとい”ラフィル”君は、青き豚相手に終わりの見えない・・・未だに続く激しい剣戟を繰り広げていた・・・!
上のワンシーンは、ちょうど前話の最後・・・彼の姉である”リフィル”が発砲したライフル弾が、彼の背後から奇襲を仕掛けようとした私兵の頭に命中ッ!
一進一退の剣戟に没頭していた彼を見事に守るのであったが・・・青き豚の大剣ラッシュを裁くのにとことん夢中だったようで、彼は背後に待つ予想外の”障害物”によってバランスを崩し、転倒・・・ッ!?
しかし現状、傍若無人であっても、彼もまた”騎士”を名乗る者である・・・!
仰向けに倒れつつも、そのまま綺麗な”後転”で障害物と地面の上を転がり、ボンレスハムになる権利を障害物君に譲るのであったッ!
おっと、3話前辺りで"リフィルの服装"について話したが、別に彼はボスが嫌いだからと言って、潜入時から全く着替えずに参戦している訳じゃあないぞ?
むしろ・・・彼女に似た服装で参戦している事が驚きだ。
ただ、その意味は女装している訳じゃあなく、こう・・・身に付け方が逆だったり・・・色々と斜に構えた着こなし方だったり・・・靴が裸足に近い特殊な物だったりと・・・まぁ、色々あるのだ。
〜 ガンッ! ガウィィィン! ゴワァァァァァンッ! 〜
(”袈裟斬り”をラフィルがガード、バインドの状態から大振りの”片手斬り上げ”で、敵の剣を弾き、上段から全力の”縦斬り”を叩き込むッ!)
「(”縦斬り”を防がれ、再びバインドに持ち込まれる)
チッ、いい加減叩っ斬られろよッ! クソッタレェッ! ・・・グッ!?」
「(バインドのまま、剣を上段に滑らせ、切っ先の彼の”喉元”に突きつけながら)
ハッ、やっぱり野蛮人だな。そんな風に喚いて考えないから、こうやって俺様に詰まれるんだよォッ!」
「詰まれてなんか・・・グウゥゥッ!?」
「ホ〜レホレ、どうしたァ〜? もっと踏ん張んないと〜このまま”ブッスリ”とッ! お前の喉を、串肉みたいに刺しちまうぞ〜? (戯けつつ、バカにした口調で)」
〜 グンッ! ギ・・・シシャァァァァ! 〜
(仰け反りながらも、バインドするラフィルの両手に力が入り、僅かに切っ先の高さが下がり始める)
「おぉ・・・?」
「だから・・・詰まれてなんかいねェ・・・って・・・言ってんだろォッ!」
〜 グオンッ! ブワァ! 〜
N:なんとォ! ここでラフィル! バインドする相手の大剣を台にッ! 棒高跳びのように飛び上がるゥゥゥッ!?
そしてそのままァ!? 体を横回転させながらァ・・・?
〜 フォンフォンフォン! ドバキャァァッ! フウォン、ドギャァァッ! 〜
N:「浴びせ蹴り」を脳天に叩き込んだァ〜ッ! しかし、それだけでは終わらない!
高飛びのために突き立てた大剣の柄を軸に、クルリと、ポールダンスのように1回転して体勢を立て直すと・・・続け様に”大剣を壁にした”「ドロップキック」を青き豚の顎目掛けて喰らわせるッ!
「エルフの剣術を舐めるんじゃあねェッ!」
N:大剣を引き抜き、そう叫びながら跪く青き豚目掛け、奴の頭に突進突きを喰らわせ、トドメを刺さんと駆けて行くッ!
〜 シャィィィィィンッ 〜
「ほぅ・・・”体術”を入れるのがエルフ流なのか? なら・・・!」
〜 グンッ! バタンッ ブゥゥンッ! ゲシャアァァッ! 〜
「グアァァァァァァッ!?」
N:しかし、奴の「王国近衛騎士団」という称号は本当に伊達ではないようであった・・・ッ!
跪く奴が地面に突き立てていた剣により、ラフィルの突進突きは滑るように流され・・・奴の右頰を薄く斬り裂くだけに止まってしまう・・・ッ!?
そして、急接近し驚く間もない彼の右脚に組み付き、押し倒すように投げ飛ばす! そして一瞬、石畳の上で無防備になった彼に無慈悲な「サッカーボールキック」を、彼の”左脇腹”見舞うのであった・・・ッ!
奴が身に付ける上半身全てを覆う”厚手のコート”と違い、彼が身に付けているのは、”革製の胸当て”のみ・・・つまりは剥き出しの腹に直に蹴りを喰らったのだ・・・! 彼が石畳の上でのたうち回るのも無理はない・・・!
「フンッ、野蛮人がこの程度で身悶えるとは・・・やはり大した事はないか・・・。(嘲笑を浮かべながら、躙り寄る)」
「・・・コロコロ態度変えやがって・・・グッ・・・ムカつくぜ・・・ッ!
(蹴られた脇腹を抱え、うずくまりながら青き豚を噛みつかんばかりに睨みつける)」
「・・・果て、何のことやら・・・その耳障りな言葉で罵しろうが、さっぱりなのだが・・・?」
「(奴が、ラフィルの言葉を理解している事に気付き)
・・・クソ野郎・・・ッ!」
「フンッ・・・そうだ、丁度良い。一つ問答でもしようか・・・?
(彼のそばにしゃがみ・・・)
野蛮人よ、何故あんな珍妙な男の元に付く? 何故私達に盾突くのだ・・・?」
「クソ人間なんかに・・・ブフォアァァッ!? (頰を殴られ)」
「フム・・・何やら望む答えを言ってなかったような気がするな・・・?」
「グッ・・・姉ちゃんが・・・同じ過ちを繰り返さないためにだよ・・・! クソ野郎・・・! ブフォアァァッ!? (再び頰を殴られる)」
「・・・なるほど、しかし血迷っているのか? エルフより下賤なダークエルフが、エルフを姉など・・・やはり、ゴブリン以下の知能しかないというのは本当か・・・」
「ッ! (腹を抱える手が、拳に変わる)」
「まぁいい。
・・・で? その姉と呼ぶ野蛮人を、あの男から守るためにいるというのか?
なるほど・・・なるほど・・・泣ける話ではないか・・・?
(くつくつと笑いを堪えながら)」
「・・・(拳に変わった手に、爪が食い込み始める)」
「なら、良い提案がある。
こんな無益な争いを止め、私と組まないか・・・? 二人掛かりであの男を八つ裂きするのだ・・・!」
「・・・(歯軋りし始める)」
「そうすれば、姉を守り・・・ある条件を満たしてくれれば、姉と共にお前たちを解放して・・・」
〜 ゲシャアァァッ! ブゥゥンッ! ガキィィィン!〜
N:”我慢の限界”、それを体現するかのように、ラフィルの左脚が青き豚の顎を蹴り上げる!
そして、そのまま自身の背後に転がっていた大剣を右手で掴み、振り向き樣に振り抜くのであったッ!
しかし、ある種の呪いかと思えてしまうように、再び奴の大剣にその刃は阻まれてしまう・・・!
「・・・流石に何度も話を遮られると、温厚な私でも我慢の限界という物を・・・
(地面に立てた大剣が倒れないように、立膝に直りつつ踏ん張りながら)」
「何が”温厚”だよ・・・! クソな本性、隠した奴がァ・・・見当違いな事言ってんじゃあェよッ!」
〜 グググ・・・ギャィィィンッ! ガキャァァァン!〜
(刃を押し込み合いながら、両者が立つ。完全に立ちきった後、ラフィルがバインド中の大剣の刃を寝かせると、右足を寝かせた大剣の腹に乗せて”蹴り込む”のであったッ!
押し離した後、再び袈裟斬り気味に叩き込むが、またまたバインドにもつれ込んでしまう・・・!)
「ほう・・・何が”見当違い”なのだ? あの男を斬り殺したくないのか?」
「・・・クソ人間が憎いのは確かだよ・・・!
けどなぁ・・・! 叩ッ斬る以前に・・・ッ!」
「ッ? (小馬鹿にしたように、首を傾げる)」
「家族を殺したゴミクソ人間共と一緒ってのが・・・一番ッ! 気に食わねェんだよォォォッ!」
N:そう雄叫びを上げたラフィルは、再び腕に力を入れて青き豚を押し返し突撃して行く・・・!
これを見た奴は、チャンスとばかりにすかさず、逆に叩き切り返してやろうと「屋根の構え」をとって待ち構えたのだが、その目論見はたちまち崩壊してしまう・・・!
奴が振り下ろそうとした瞬間、彼はダークエルフが持つ強靭な脚力を駆使し、奴の大剣の射程圏内ギリギリで奴の右側面に回り込んだのだ!
そして、彼は引きずるように下段に構えていた大剣を、頭上で水平に一回転させ・・・奴の頭部右側面に叩き込んだのであるッ!
剣道で言えば「切り返し」に近い技法、ドイツ式武術の「はたき切り」に似たこの一撃は、確実に入る! 振り下ろし切る一撃では、ガードできない・・・! これでようやく親の仇を討てる・・・! そう彼は確信した・・・!
〜 ガキャァァァン!〜
N:しかし、そう現実は甘くなかった・・・!
青き豚は、振り下ろし切った後、ラフィルの大剣が迫る方向に剣を振り回し・・・まるで重なった剣が”十字架”を描くような素早いかつ正確な剣捌きで、彼の渾身の一撃を防いでしまったのだ・・・ッ!
しかし、憎らしくも見事な剣技の裏腹に、奴の表情は先程と比べ・・・急に”影が差した”かのように暗くなっていたのである・・・。
「それはこっちのセリフだよ・・・野蛮人・・・! (失望したような冷淡な声)」
「アァッ!?」
「残念だったなァ・・・お前はオレと同じ”匂い”がしたと思ったのに・・・」
「・・・ハァ?」
「とぼけるんじゃあねェよ・・・! 人を殺したくて、殺したくて堪らない・・・! 戦いの中でしか”生”への充足感を得られないような・・・血に塗れた”兵士”の匂いだよ・・・! (失望しつつも、愉悦とした表情と声で)」
「何だよ・・・それ?」
「お前、”戦う事”だけしか知らないだろう? 憎い人間様を殺してきた以外に・・・嬉しかった事はあるかぁ、んん・・? 私は・・・いや、もういいや・・・俺様はサァ・・・さっきのお前の答えを聞いて思ったんだよ・・・!
気に入らない奴、憎らしい奴、そうでない奴であろうと・・・殺して、殺して、殺し続けてなくっちゃあ、生きている感覚を味わえない俺様と同じだって・・・ッ!
(頭部側面付近で構えた剣と腕の隙間から覗く、”獰猛”な目つきでラフィルを喜々と見つめる)」
「・・・(表情が暗くなるが、腕に込める力が増す・・・!)」
「なぁ・・・考えてくれよ〜? こんだけ俺様と張りあえる野蛮人なんだ、今すぐにでもクソ兄者達を見限って俺と組めば・・・一生、戦場で面白おかしく・・・楽しみながら生きていける・・・ってッ!」
〜 ゲシッ! ブゥゥンッ! ガキィィィン! 〜
(前蹴りで少し距離を離した後、再び「はたき切り」斬り掛かるも、再びバインド状態に・・・!)
「・・・野蛮人はテメェだろ・・・ッ! さっきからオレはこの剣で答えてんのに・・・! 一向に理解もしてねェ・・・んだからなァァァァァッ! (大剣に力を込める)」
「フンッ・・・俺様の剣を盗んでおいて良く言える・・・なァッ!?
(大剣に力を込め、押し返す)」
「黙りやがれッ! ゴミクソ野郎ッ!」
〜 ガッ! ガッ! ズザァァァァァァッ 〜
(両者、ほぼ同時に前蹴りを喰らい、お互いが大きく後退する)
「・・・(睨み殺さんばかりに見上げ、両手握る大剣に更に力を込める)」
「・・・(見下すように睨み付けつつも、唇を一瞬舐める)」
「「ウオォォォォォォォォォォォォッ!」」
〜 ブゥゥンッ! ガキィィィン! ガキィィィン! ガキィィィン! ガキィィィン! ガキィィィン! ガアィィィン! ガキャァァン! ガキィィィン! ガキィィィン! ガキィィィン! ガアィィィン! ガアィィィン! ガキャァァン! ガキャァァン! ガアィィィン! ガアィィィン! ガアィィィン! ガキィィィン! ガキィィィン! ガキィィィン! ガキャァァン! ・・・・〜
N:これはスゴイッ! ラフィルの放つ「はたき切り」に、青き豚の放つ「はたき切り」が大剣を防ぎつつも、彼の頭を狙うッ!
しかし、彼もまた上下左右と斬りこむ角度を変え、決定的な一打を逃すまいと押し込み続けるッ!
両者、一歩も譲らぬ「はたき切り」の応酬だァァァッ!
「ハハハハッ! そうだッ! もっとッ! もっとだッ!
(斬り合いつつ、獰猛な笑みを浮かべながら)」
「・・・ッ!? (斬り合いの中の奴の態度に、驚愕の表情を隠せない・・・!)」
N:これはもう・・・”突き”ならぬッ、”斬り”の早さ比べであるッ!
「なぁ・・・! 楽しまないのかァ・・・ッ!?
一瞬でも気が抜ければ腕や脚、頭なんかが体から”おさらば”しちゃう・・・ッ!
この命の張り合いによォォォォォォォォッ!」
「・・・クッ! (剣戟の中、実際にも歯を食いしばる)」
N:止まらぬ”剣戟のラッシュ”だァァァァァァッ!
「なァァァ!? 答えてくれよォォォォォォッ! 俺様によォォォォォォッ!
そうしかめっ面してないでさァァァァッ!? 苦しいんだろォォォォォッ!?
悲鳴を上げたいんだろォォォォォォッ!? 野蛮人が一生勝てない人間様にサァァァァッ!
気圧されてェェェェェッ! ビビってきてんだろオォォォォッ!? (煽るように叫ぶ)」
「・・・ (続く剣戟の中・・・黙りつつも、奴の眼を睨み続ける)」
「ホラァァ! 言っちゃいなよォォォォォッ!? ”助けて”ってよォォォォォ!? ”苦しい”ってよォォォォォ!?
悲鳴を上げちゃいなよォォォォォォッ! 野蛮人ちゃ〜んッ!」
〜 ガキャィィィン! ギ・・ギギッ・・・ギッ・・・〜
(両者の「はたき切り」が打つかった瞬間、ラフィルが大剣を下方向に押し込み、歪な形のバインドに持ち込むッ!)
「・・・黙れよ・・・! (低く、ドスの利いた声で静かに言う)」
「アァァんッ!? オイオイオイオイ、こんなところで止めるなよォ〜野蛮人ちゃ〜んッ!?
”これから”だぞ!? 本当に面白い所は・・・」
〜 ツプ・・・グサッ! 〜
(先程のバインド状態で、奴の喉付近にあった大剣の切っ先が、当たった瞬間、押し込まれるッ!)
「ガプッ・・・アバッ・・・ッ!?
(溢れ返る血が気管にも入り、声を出す事が出来ない!)」
「黙れって、言ってんだろうがァァァァッ!」
〜 バッ! ズパァッ! ブゥォォンッ!〜
(刺したまま飛び上がり、空中で回転して大剣を引き抜く・・・! そのままドッシリと大剣を構える"憤怒の構え”をとって・・・)
「・・・"月弧"オオオォォォォォォォォォォッ!」
N:この一撃で決めるッ! 家族の仇を一人討ち取ってやるッ!
・・・そういった思いを込め、ラフィルは全身全霊の一振りを青き豚のガラ空きになっている頭上に見舞うのであったッ!
〜 ガキャァァァン! 〜
「ッ!?」
「残念だったな・・・」
N:ラフィルは、虫の息のハズの青き豚がまだ動く事に驚愕した・・・! ・・・が無理もない。
彼がこの青き豚の”不死性”を直に目の当たりにするのは、今回が初めてであったのだから・・・! 故に、その事実を知らなかった彼は、屍に等しい致命傷のハズの奴の首の刺傷がみるみる治って行く中、何事もなかったかのように大剣の左右を両手で握り、しっかりと彼の全身全霊の一撃を防ぎきった事実を・・・一瞬、”悪夢”かと思ってしまった程に、彼は驚いていたのだ・・・!
致命傷を防いだ大剣の下で、邪悪な笑みを浮かべていた奴は、ジョジョに彼が押し込んで行く大剣を平然と受け止めながら、語りだす・・・。
「所詮、野蛮人か・・・剣を使う雑魚共よりかは面白いが・・・結局、この程度・・・」
「クッ! この・・・ッ!
(”シーソー”に近いような形で、柄に力を込め、絶妙なバランスを取って浮いていた)」
「残念だな〜残念だったなぁ〜結局、俺様を一撃で倒したあの”珍妙な男”が使う魔道具に及ばない・・・ちゃちな技術だって事がよ〜く分かっただろ?」
「黙れよ・・・! このォォォォォッ!」
「フン、じゃ〜あ今、無様に己の力だけで浮いている野蛮人ちゃんに、それがただの”曲芸”だって事を教えてやろうかァァァァッ!?」
N:そう語った青き豚は、切っ先を握る手を離した。
すると支えを失った大剣は、振り子のように垂直に垂れ・・・そして、己の体を支える”台”を失ったラフィルもまた、垂直に落ちて行くのであった・・・!
人間離れした”ダークエルフ”の身体能力を持つラフィルであろうと・・・重力に逆らうことはできない。しかし、無情にも迫る「はたき切り」を空中回避する術も彼は、とっさに思い付く事が出来なかったのである・・・!
このまま彼は横真っ二つの”ボンレスハム”になってしまうのであろうか・・・ッ!?
ラフィル・・・ッ!?
N:だが、彼を想う存在はまだ彼を見放してはいなかった・・・!
彼には届かない声が響いたかと思えば・・・・
〜 プパァァァァァァンッン!!! ビッシャァァァァッ! 〜
N:その無慈悲、無情さをつんざくような銃声が響き、大剣を振るう青き豚が仰向けに倒れ始めるのであった・・・ッ!
〜 ・・・ぐらっ・・・ズバッシャッ! ・・・バタンッ! ドスンッ! 〜
「グアァァァアァァアァァァァッ!?」
N:・・・「失わなかった命」と引き換えに、「瀕死の重傷」を負う・・・そんな運命の悪戯に翻弄され、物語は進んで行く・・・!
ラフィルゥゥッ!
『すみません! 兄さんッ! 私、ラフィルを助けに行きますッ!』
『おっ、おい! ちょっと待て何があ・・・』
N:「コール」での通信が終わりきる前に駆け出したリフィルは、すぐさま”ドライゼ銃”を片手に屋根から屋根へと飛び下って行き、死に瀕した弟の元へと急ぐのであった・・・!
やがて、彼の元に辿り着いた彼女は駆け寄り、改めて目の当たりにする彼の傷の酷さに息を飲む・・・。
自身の手で大切な弟を失わずに済んだ・・・しかし、その代償に彼の腹は、奴が仰向けになる際、”斬り上げ”になるような形で振り抜かれた一撃によって、パックリと・・・横一文字に、”腹”から開いた傷よって、大量出血が引き起こされているのであった・・・!
駆け寄った際に触れた”彼の血”に、彼女は再び恐怖に飲まれそうになるが・・・一瞬拳を握り締めた後に、彼の安否を確かめ始める・・・!
『ラフィルッ! ラフィルッ! しっかりしてッ! ラフィルッ!
(軽く揺り動かしたり、彼の頰に触れて安否を確かめる)』
「・・・姉・・・ちゃん・・・?
(斬り裂かれた腹を強く抱えて、蹲りながら、やや虚ろな目で彼女を見る)」
『ッ! 良かった・・・! しっかりして! 今治してあげますから・・・!
(魔法を発動させようと、彼の肩に触れながら目を閉じ、集中し始める)』
「姉ちゃん・・・オレはいいから・・・早く・・・逃げろ・・・!
(触れる手を払い、その場から逃げるように促す)」
『・・・ラフィルッ! 今は、貴方の我儘を聞いている場合じゃあない・・・』
「・・・ハァァァァ・・・! とんだ邪魔をしやがって・・・!」
「『ッ!?』」
N:その声の主は、ラフィルの視界の先・・・あるいは、リフィルの背後・・・とでも言うか、そこで今寝起きたかのように、ムクリと上半身を起こしながら・・・憎々しげな口調で悪態を吐く。
◯者の諸君には、もう言わずとも分かるであろうが、三途の河を門前払いされた青き豚が起き上がったのである・・・!
だが、リフィルは背後で起き上がる邪悪な気配に驚きを隠せないでいた・・・! 遠方から見はしたが・・・信じたくはなかった・・・。
彼女もまた、ラフィル同様に奴の”不死性”を”直に”目の当たりにした事がなかったからだ。
「(大剣に付着した血液を眺めた後、舐め取ってから・・・)
・・・ハァァァァ・・・! これだ・・・! これだよ・・・! この味・・・! この感覚・・・!
アァァ・・・堪らねェ・・・! (恍惚に満ちた表情で・・・)」
N:血による恐怖は乗り越えられた彼女であったが・・・強大な敵を前にした恐怖には抗えなかったようだ・・・。頭頂部付近に開いた銃創から流れ出る血を拭い・・・舐め取りながら、のっそりと立ち上がる奴を前に彼女は・・・只々、自身の震えを抑えるため、両手で「ドライゼ銃」を握り締める事しかできなかった・・・。
『こ・・・来ないで! 来ないで下さい!
(ラフィルを庇うように背を向けながら、ドライゼ銃の銃口を奴に向ける)』
リフィー! 伝わってない! 伝わってないよォ〜!
「お前かァ〜? 逃げてからチマチマと俺様の雑兵共を殺して回っていたのはァ〜? (大剣を引きずりながら、ゆっくりと歩き迫る)」
ア・・・アァ・・・! (照準が乱れ始める)
「姉ちゃん・・・早く・・・逃げろ・・・ッ!」
ッ!? (背後のラフィルの声を聞き、一瞬、彼の顔を見て)
・・・ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・来ないでッ!
(意を決したかのように呼吸を整え、体の震えを抑えてから・・・)
〜ググッ! プパァァァァァァンッン!!! ビッシャァァァァッ! 〜
ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・(息を整えながら、撃たれた奴の動向を探る)
N:リフィルは願っていた・・・「お願いだから・・・それで倒れて下さい・・・!」・・・と。
たったの数時間で、異常な戦場に慣れゆく彼女であったがそれでもまだ”精神の動揺から立ち直った直後”は、無理が生じているようである・・・。
呼吸を整え、急に構え直してから放った一撃は、奴の右肩、その”首の付け根付近”にヒットした事が・・・その動揺を裏付ける紛れもない証拠なのだ。
しかし、「そんな・・・ッ!?」・・・と、青き豚の”不死性”を完全に把握していない彼女は、再び恐怖に呑まれ始める・・・! 何気なく奴が傷口に左手を宛てがい、その掌に付着した自身の血液を手首から指の先まで・・・満遍なく舐め取ったのである・・・!
その奇怪な動作に、彼女の目が左手に集まり・・・舐め取った瞬間のあまりの気色悪さに、目を逸らした瞬間、彼女は絶望する・・・! 弾丸が貫通し、弾け飛んだはずの肩が、何事もなかったかのように・・・抉れた輪郭が元通りになっていたのだ。
絶望に染まりゆく彼女は、何度も「ドライゼ銃」の引き金を引くが、無論・・・単発式の「ドライゼ銃」は発射後、即座にリロードをしない限り、ただの棒である。
そんな彼女に、絶望は・・・無慈悲にも・・・引きずる大剣をゆっくりと・・・振り上げながら、陶酔したかのような猟奇的な笑みを浮かべ語り出す・・・!
「もっとだ・・・! もっと・・・! お前らの苦悶に満ちた悲鳴や、ほとばしる血飛沫で・・・! もっと・・・もっと・・・! 俺様に生きている実感を・・・味わせてくれェェェェェェェェェッ!」
N:そして、振り上げた大剣が頂点に達した時・・・彼は無慈悲な”斬り下ろし”を、姉弟目掛けて見舞うのであった・・・ッ!
〜 パァァァァンッン!!! ビスゥゥゥッ! 〜
N:しかし・・・天は奴に最後まで味方しなかったようである。
「おいッ! こっちだクソ野郎ッ!」
「クッ・・・アァァァァァァッ! 何だよォォッ!? プッ!」
~キンッキンキキンッ! カラカラカラカラカラ・・・~
(着弾したSAA弾の弾丸が吐き出される・・・!)
N:その証拠に、リフィルの頭上に直撃する寸前に、大剣の振りが止まり、奴の首背面に激痛が走ったのだから・・・! 悪態を付きながら、振り向いた青き豚の視線の先には・・・右肩を抑え、肩で息をするも、奴に対し、決してその銃口を下ろす気のないボスが居たのであった・・・!
第二回、開幕である・・・ッ!
〜カアァァァァァンッン!〜
(ゴングの鳴る音。ボス達には聞こえていない)
・・・何、通りすがりの怪物ハンターっぽい、ナレしてんだよッ!?
明らかに作品が違うだろッ!?
N:しかし、ドラ○エなどのJRPGみたいな”甘い展開”は多くあっただろうか?
”ひのき〇ぼう”や、”ロ〇のつるぎ”は貰えてヌルゲーになったか?
いや、”ひのき〇ぼう”は、どう考えてもハズレだろッ!? んなんどうでも・・・
N:・・・いいのは、確かである。ナレの語り口を模索・・・いや、なんでもない。
それよりも、いまにも迫る”危機”というのは、その通りすがりの怪物ハンターに通じる<ダークファンタジー>というカテゴリでは、君の物語も同じような物だと思うのだが・・・?
いまにも迫る危機・・・?
〜 ブゥゥンッ! ガキィィィン! 〜
N:例えば、この”N”によそ見していて忘れていた青き豚とかである。
「グゥゥゥゥ・・・早く言えよ・・・! クソタッレェッ!」
「ハッ! 誰に対して言ってんだァ!?」
N:”迫る危機”と言ったのだが・・・まぁ、良い。語りに戻るとしよう・・・。
ボスは、急に流れた風切り音の方向に目を向けると、血走った目で大剣を振り下ろしてくる青き豚を目にしたのであった・・・! それに対し、彼は素早くハンマーの両端を掴んで掲げ、咄嗟のガードをする事に成功する・・・!
悪態を吐きつつも、この窮地から逃れようと思考を巡らせるが、いかんせん魔力の消費を抑えようと未だに治療しない”左肩”の性で、目の前の狂人を相手にするに精一杯であった・・・。
だが、それを完全に”悪手”だと思わないのがボスという男であった・・・!
このままでは支えきれず、鋼鉄製の柄でも押し込まれるのがオチ・・・と考えたボスは、痛む左肩の方の力を緩めて大剣を受け流し、再びポケットにしまい込んでいた”SAA”の連射をお見舞いしようと試みるッ!
~ ガキィィィン! ガシッ! ~
「クソッ・・・放せ・・・ッ!」
「クハハハハッ! お前を斬り殺せないのは残念だが・・・この方が魔道具を使われずに済むよなァ・・・!?」
N:甘くなり過ぎないシリアスかつ、リアリティあるテイストが、<ダークファンタジー>の醍醐味である・・・!
大剣を一撃が地面に吸い込まれた瞬間、青き豚は、意外や意外・・・ボスの抜き撃ちよりも早く、”彼の首を鷲掴み”にして持ち上げ・・・そのまま締め上げ始めたのである・・・!
このシンプルな攻撃は流石のボスも予測していなかったようで、只々、逃れようと必死にもがくしかなかった・・・ッ!
「グッ・・・クソォォォ・・・グッ・・・。
(右手のみで、奴の掴んだ左手を外そうと躍起になる)」
「クハハハハッ! いいぞ! いい~ぞォォォッ!
もっともっと・・・お前の悲鳴を聞かせてくれェ! (掴んだ左手の握力が更に強まる)」
「グァァァ・・・グッ・・クァアァァァ・・・ッ!
(脚をバタつかせ、更にもがくが・・・力尽きたのか、両手両足がダラ~ンと伸びてしまう・・・!?)」
「アアァァァンッ!? なんだ、もうおしまいかよ・・・!?
オイッ! 死ぬなよッ!? もっともっと苦しみ抜いて・・・悲鳴をッ! 叫びをッ! 俺様の火照った体を冷ましてくれる断末魔をッ! 聞かせてくれよォォォォォ!
(「オイッ!」 辺りから、前後にボスをシェイクし始める)」
~ パァァァァ・・・ ~
(ダラリと垂れたボスの”右手”が、”赤く”光り始める・・・!)
「なァァ~オイオイオイオイオイオイオイオイオイ・・・グボォッ!?
(シェイクし続けていたが、唐突に口に”何か”を突っ込まれる!)」
「ゲホッ、ゴホッ・・・じゃあ・・・聞かせてやろうか・・・?」
~ カチッ、カチッ・・・ ~
N:突き刺すように、青き豚の口に突っ込ませた”何か”の”撃鉄”を右手の親指のみで2つ上げるボス・・・ッ!
黒光りするそれは、二丁同時に合わせ持った”SAA”ではない・・・ましてや、切り詰めた「ドライゼ銃」でもない・・・!
1850年代直前に開発されたこの銃は、多くの駅馬車・・・現代的に言えば、”現金”や、”旅客”、”郵便物”などの数多の輸送物を守るために、奮闘してきた・・・水平二連式散弾銃・・・。
「テメェの脳味噌が弾け飛ぶ音をよォォォッ!」
~ググッ! ドッパァァァァァァァァンッ!~
N:またの名を・・・「コーチガン」という・・・。
~ブシャャャアッ! ドシンッ!~
(後方に様々な頭の内臓物をブチ撒けながら、仰向けに倒れる)
「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・ゴホッ、もういい加減・・・起きないで欲しいモンだが・・・ど~せ蘇るんだろッ!?」
N:水平二連式散弾銃特有の「両引き」と言う、2発同時に散弾を発射する危険な射撃方法で、立ちはだかる人間要塞をついに討ち果たすボス・・・ッ!
だが、反動で痺れた右手と共に両手を前屈みに膝に当て・・・呼吸を整えつつ悪態づく彼は、不安を拭い切れなかった・・・。しかし、そんな事も言ってられない彼は一旦落ち着こうと背筋を伸ばし、「コーチガン」の引き金上部にある、開閉レバーを右方向に捻りながら左手で銃身を掴み、折るように開く。
すると、折れた根元の銃身側に明らかに違う色をした”2つの丸”が埋め込まれているのが見えた。
彼はそれを即座に2個共引っ抜くと、左手を赤く光らせ、2発の金光りする小さな筒を供給した・・・。
これが、この銃の弾薬、「10ケージ」の散弾だ。現代で主流な”12ケージ”よりも口径が大きく、10種類以上ある散弾の口径内で、4番目程に大きいこの真鍮製の弾薬は、現代の「紙」や「プラスチック」タイプのケースが主流になる、「無煙火薬」が開発される以前の物で、この中に”黒色火薬”や”散弾”などがたっぷり詰まっているのだ。
彼は、その散弾を空薬莢が入っていた穴に突っ込むと、痛む左肩に鞭打ちながらも銃身を下から上に”カチッ”・・・と鳴るまで持ち上げ、銃を元通りに戻した。これで再装填が完了である。
「ハァ・・・さて、後は此奴の首に改造した”奴隷の首輪”をハメ込めば・・・っと・・・
(ウェストポーチを開けて左手を突っ込み、中身をゴソゴソと探しながら)」
『兄さん! 伏せてッ!』
「ッ!? (疑問を抱きつつも、即座に伏せる)」
〜 ぐぐグッ! プパァァァァァァンッン!!! ビッシャァァァァッ! ぐらっ・・・バタンッ!〜
「(着弾方向を見ながら)
また弓兵だったのか・・・『助かったリフィル。ありがとう』」
『え・・・えへへ、今度は・・・外しませんでしたよね・・・?
(以前に行った、仰向けに立てた右膝の上に、銃口乗せるようにした状態で・・・)』
『バッチリ頭に当たっていたぞ・・・いいセンスだ、リフィル。
ところで、ラフィルはどうだ!? 無事か?』
『アァ・・・まだ息はあります。(起き上がり、彼の首の頚動脈を触れながら)
今すぐにでも私の<息吹の蝶>のスキルを使えば・・・』
『そうだったな。
確か、リフィルに触れていれば他者も自己再生させて、全回復させるんだったよな?』
『はい、そうです。
ですので・・・一旦、ラフィルと一緒に安全な場所に避難したいと思うのですが・・・どうでしょうか、兄さん?』
『賢明な判断だな、リフィル。
(前屈みに地面に向いていた視線が、戦闘中のオルセットの方に向き・・・)
オレはこの後、ヴァイオに”奴隷の首輪”を付けた後、オルガと一緒にここの私兵と冒険者を片付けてから・・・』
『に・・・兄さん! 後ろ!』
『後ろ?
・・・いや、リフィル、オレの後ろの民家の壁に何があるって・・・ッ!?』
N:唐突に驚く間もなく、ボスは首に強烈な圧迫感を再び感じたのであった・・・!
慌てて首から伸びるその圧迫感を与える主を見た彼は、驚きの余り目を見開く・・・!
「いくら何でも早すぎだろッ!?」心の中で毒づくも青き豚の急速に血走って行く目と、鷲掴む手の力は留まる所を知らない・・・ッ!
「(クッソ、壁が背だったからそっちの方かと思ってたぜ・・・!)
野郎・・・ッ! (コーチガンを再び顔に向けようとするが・・・)オワァッ!?」
〜 グン・・・ブオンッ! 〜
「ウワァァァァァァァァァァァァァ〜ッ!?」
「ヤァッ!
(蹴りで冒険者を吹っ飛ばした後、ボスの叫びに気づき)ッ!? ボスゥッ!?」
『兄さんッ!?』
〜 バァァァンッ! ドゥガッ! バキャアッ! ドゥガラシャ〜ンッ! 〜
「ゲホッ、ガハッ! あぁ・・・クッ・・・ソ! ”メディケア”・・・!」
~ ホワワワ~ワァ~ン ~
N:この展開に既視感を感じた◯者の諸君には、流石と言う拍手を送ろう・・・!
オルセットが叫び・・・リフィルが”冒険者ギルドに投げられ行く輪郭”を目で追ったように、ボスはギルドの入り口にあったウェスタン風のスイングドアを、空中で回転しながらブチ破るのであった・・・!
しかし、それでも止まらず・・・跳ねるゴムボールのように複数の椅子や机を破壊しながら、突き進んだ末にギルドのカウンターにブチ当たって、ようやく止まったのであった・・・。
上記の台詞は、ようやっと止まった末に絞り出した物だったのだ。
これ以上のダメージはマズイと、応急処置魔法である”メディケア”を唱え、左肩の矢傷と共に全身の打ち身の治療を行う彼であったが・・・それでも彼はまだ全身に染み渡る、鈍い痛みに顔をしかめずにはいられなかった・・・! しかし・・・
「チンタラしていたら、奴の思う壺になる・・・!」 そう思った彼は、すぐさま周囲の状況確認を仕出すのだが・・・。
「アァァァッ!」
「アッ?」
N:ふと上を向いた瞬間、カウンターの上から覗き込み、目があった瞬間に叫ばれた女性に・・・ボスは半ば口を開けつつ、キョトンとするしかなかった・・・。
「な・・・何をしているんですか! 貴方はッ!?」・・・と、罵倒するように尋ねる女性。
「突然で済まないが・・・受付嬢さん、今直ぐここから逃げた方が身のためだぞ?」・・・と、首だけを上に向かせ目線を合わせながら、焦らず冷静に返すボス・・・。
「話を逸らさないで下さいッ! 外が騒がしいと思っていたら、突然飛んできて! ギルドの扉を壊した挙句、中の机や椅子も半分以上ッ! 滅茶苦茶にしたんですよッ!? もう、どうしてくれるんですかッ!?」・・・覗き込む性で、ずり落ちる鼻眼鏡をずり上げつつ、赤いお下げ髪を振り乱しながら彼女・・・”冒険者ギルドのトアル受付嬢”は、怒鳴り込む。
「悪いってのは分かってるよ・・・! だけどなぁ・・・アンタの身を思って・・・」
「半分ですよ! 半分ッ! 貴方ッ! 理解してますかッ!?」・・・彼が喋り切る間もなく、喰い気味に話に割り込む受付嬢・・・内心、この騒動後に律儀に弁償する気でいた彼であったが・・・それでも余程”始末書”的な物を、彼女は書きたくないのであろうか・・・?
しかし・・・こんな”コント”的なほんの僅かな幕間も、迫る不吉な足音によって終わりを告げようとしていた・・・!
〜 ドガッ、ドガッ、ドガッ・・・バキャァァァァンッ! 〜
「ハァァァァァァァァァッ!」
「ッ!?」「ヒィッ!?」
N:入り口のスイングドアを大剣で豪快に破壊して、佇み・・・怨嗟塗れる呼吸と、カウンター方向に睨み殺さんばかりの視線を向け始めた青き豚に、ボスは一瞬たじろぎ、受付嬢は恐怖に身を震わし始める・・・!
「ゔぁ・・・ヴァイオ様・・・ですよね?」・・・恐る恐る尋ねる受付嬢・・・。
「ハァァァッ・・・ハァァァァッ・・・ハァァァァァッ・・・!」・・・受け答えず、只々荒い呼吸を繰り返す青き豚・・・!
「おい・・・悪い事は言わねェ・・・今直ぐ逃げろ・・・ッ!」・・・恐怖を感じるも、一向に危機感を抱かない受付嬢に催促するボス・・・! ・・・何と言う三者三様であろうか・・・!
「あ・・・貴方こそ! ヴァイオ卿の前ですよ! あ・・・あの〜今日はどのような御用で・・・?」・・・一瞬、ボスを睨みつけた後、一瞬で見事な営業スマイルへと変わる彼女・・・ッ!? 何と言う日・・・違った、何と言う変わり身の早さだろうかッ!?
「ハァァァッ・・・ハァァァァッ・・・クソ罪人がァァァァァッ!」・・・しかし、青き豚卿は営業スマイルをご所望ではなかったようで、大気も震えそうな怒声を挙げつつ・・・ジョジョに歩みの速度と大剣を振り上げながら、カウンター目掛けて突っ込んで来るッ!
〜 ダッ、ダッ、ダッダッダッダッダッダッ・・・ブゥゥゥンッ! 〜
「早く逃げろッ!
(自身に振り下ろされた凶器が僅かに逸れたのを感じたボスは、咄嗟に受付嬢を突き飛ばす!)」
〜 ガッ、ドゥガメキャアキャアァァァァァッ! 〜
N:ボスのとった行動はある意味最適解であっただろう・・・。何故なら、青き豚の持つ大剣によってボンレスハムならぬ、”豚ミンチ”になったのは、哀れなカウンター君の一部だけであったのだから・・・!
「な、な、なんで・・・私が・・・!?」この状況に付いて行けず・・・カウンターの裏の地面で本格的な恐怖に震え始める受付嬢・・・!
「・・・いい声が聞こえるな・・・?」・・・先程の興奮したゴリ・・・野生動物のような態度が嘘のように、冷静な声を出す青き豚・・・!
「少しは・・・俺様の慰めになってくれるよ・・・なぁぁぁぁッ!?」
〜 グサァァッ! 〜
「ッ!?」
「なぁ・・・なんで・・・こんな・・・ゲホォッ!」
〜ビシャアァァァァ!〜
N:何と言う光景だろうか・・・ッ!? 2つの奇妙な音の後・・・受付嬢が向ける視線の先には、血に染まる床と脚・・・! そして、彼女の腹に突き刺さり、抉られ始める青き豚の大剣が・・・!
「ア・・・アアァァァ・・・アァァァァァッ・・・!
(腹筋を断ち切られているため、上手く叫び声を上げられないでいる)」
「いいぞォォ! もっとだ・・・もっと・・・! あんなクソな魔道具で・・・断末魔を聞き損ねた俺様の傷心をォォ・・・そのか細い悲鳴で癒してれェェェェ・・・ッ!
(血走った目で、獰猛かつ、口が裂けんばかりの笑みを浮かべながら・・・)」
「野郎オォォォォォォォォォォォォォッ!」
〜 パァァァァ・・・! ジャキッ! パパパパパパァッンッァァッン!!! ビビビビビビスッ! 〜
N:この一連の光景に、一瞬で怒りの温度が臨界点を突破したボスは、新たな”SAA”を供給し、即座にファニングによる6連射で、青き豚の後頭部を蜂の巣にするのであったッ! 奴が倒れる間もなく、奴を引き倒しながら対面の受付嬢目掛け、彼は駆けつける!
「済まない! 本当に済まない! 今直ぐ治療する!」・・・今にも泣き出しそうな表情で何度も会釈し、抉られた傷口に手を当て、”メディケア”を発動させ始めるボス・・・!
「良い・・・ですよ・・・備品の弁償を・・・して下さる・・・ゴホッ! ・・・なら・・・!」・・・自身が聞き的状況にも関わらず、職務を全うしようとする受付嬢・・・! 鏡かッ!? 受付嬢の鏡かッ!?
「分かったから喋んな! 後・・・治したら直ぐにでもこのギルドから出るんだ・・・!」
一度の”メディケア”でみるみる傷口が治っていく光景に、両者共内心驚きつつも表情は平静に、彼女に注意を促すボス・・・! しかし・・・そんな束の間の安息さえも、青き豚は許さないようであった・・・!
「ハァァァァァァァァァ・・・ッ! (より怒気を孕んだ声で)
クソ罪人がァァァァ・・・ッ! (ジョジョに雄叫んで行く・・・!)」
「(受付嬢の両肩を掴みつつ)早く逃げろッ!」
「で・・・ですが・・・」
「命が惜しいなら、とっとと逃げろッ!」
N:そう言い放ちながら、ボスはカウンターの砕かれた部分から受付嬢を無理矢理押し出し、逃げるように促した。押し出された勢いに彼女はよろけ、転びそうになってしまうものの、複雑そうな表情で彼の居るカウンターを一瞥した後、冒険者ギルドの入り口へと駆け足で逃げて行くのであった・・・。
だが、そんな彼女を呑気に見送る暇もなく、再び振り下ろされ始める青き豚の大剣にボスは対処せねばならなかった・・・!
〜 ブゥゥゥゥンッ、バッ、ズザァァァ、ドゥバッキャアァァァァァンッ! 〜
N:ボスの行動も待つ間もなく、彼が居た場所に大剣が振り下ろされる!
・・・しかし、それとほぼ同時に、ボスがカウンターから滑り出ると、地面に着地したと同時に受け身を取り、散乱する椅子や机の中・・・ギルドのほぼ中央から、青き豚と対峙するのであった・・・!
「・・・おい、何であの無関係な受付嬢を刺した?」・・・出したての”SAA”をリロードし始めながら、眉間の血管がはち切れんばかりに睨みを利かせるボス。
「・・・あぁ? それはお前の所為だろ?」・・・木製の床にメリ込んだ大剣を引き抜きながら語る青き豚・・・。
「お前が俺様に良ィイ断末魔を聞かせずに、俺様を苛つかせたからだよ」・・・肩に大剣を担ぎ直しつつ、彼と同じように対峙し始める青き豚・・・。
「おい、テメェ・・・! それ・・・正気で言ってんのか?」・・・一瞬、リロードの手が止まるも、語気を強めて威嚇するように言い放つボス・・・!
「だから、それがどうした?」悪びれる態度もなく、青き豚は平然と言い切る・・・!?
「全部、全部・・・テメェが悪いんだよ・・・ッ! そんなことも分かんないのかアァァァッ!? ・・・ハァ・・・クッ、クク・・・こうなると・・・ククク、怒りを通り越して・・・クハハッ、笑えてくるぜッ!
クッハハハハハハハハッ! ハァ~フゥ~ハァ~、ゴホッ・・・これだから、騎士の俺様と違って、無学なクソ罪人は・・・クッハハハハ・・・!」・・・それどころか、左手を額に添え”ヤレヤレ”・・・と言わんばかりに首を振りつつ、自身が騎士であることを誇りながら、笑って馬鹿にする始末であった・・・!
・・・だが、ボスは怒り出す素振りも見せず、ようやく最後の排莢を終え、ウェストポーチからSAAの弾を6発を取り出すと・・・ゆっくりと弾を込め始めるのであった・・・。
「お前・・・"騎士道"って知ってるか?」
「はァッ?」
「騎士はこうあるべきってのを、示した”掟”みたいなモンだよ・・・。
そん中の「騎士の十戒」ってモンで簡単に言えば・・・こうだ。
優れた戦闘能力、正直さや高潔さ、誠実または、忠誠心、寛大さに、信念、礼儀正しさや親切心、崇高な行い、統率力、そして勇気。
後は、清貧、気前のよさ、信心、弱者の保護・・・なんてのもあったな・・・」
「ハァンッ! そんな聖人君子な貧弱騎士様がいるなら見てみたいモンだぜッ!」
「・・・だろうな、オレも見た事がない・・・。(4発目を込めながら)
じゃあ聞くが・・・テメェは、この十戒の中、始めの<優れた戦闘能力>以外、何が騎士として当て嵌ってた?」
「・・・ハァッ? (血走った目で横目に睨みつつ)」
「聞こえなかったか? お前が言う野蛮人・・・オレの仲間の”ラフィル”と比べて、テメェはどれだけ「心」で勝ってるかって、聞いているんだよ・・・ッ!?」
「オイ・・・チョ〜シに乗んなよ? クソ罪人・・・! 俺様をあの負け犬の野蛮人と比べようなんざ、巫山戯た真似を抜かすなら・・・ッ!」
「”俺様の大剣で叩き斬ってやるぞ! クソ罪人がッ!”・・・だろ?」
「ナッ!? (目を見開いて驚く)」
「”台詞の先を読まれる”、”必要以上に相手を痛め付ける”、”下に見下した相手は敬意を払わず、徹底的に扱き下ろす”・・・。
これが<テメェ>なのに対し、<ラフィル>がやって来た事は、”不平不満を言いつつも協力する”、”ぶっきらぼうながらも、子供に優しく接した”、”悪態吐きつつも、常に家族を守ろうと必死だった”・・・。
・・・どっちが「野蛮人」なんだろうな・・・? (軽く嘲笑しながら)」
「だ・・・黙れッ! 俺様が野蛮人だとでも言いたいのかッ! ”力”以前に、”心”でなんだかんだ言う軟弱なクソ野郎は・・・!」
「・・・そんなんだから、近衛もハブられ、クビにされたんじゃあないか? (5発目を込めながら)」
「ググググググッ! (歯軋りと共に、ジョジョに怒りが募ってゆく・・・!)」
「お〜お、よっぽど近衛騎士な事はァ〜、アンさんの”誇り”みたいでんがな〜? (陽気に煽る)
でも〜、成れずに燻っているんじゃあ・・・そんなのゴミも同然の埃だ。
(じゃあ・・・辺りから低く、シリアスな口調に)
特に、主君も人も想いやれない・・・テメェみたいな下衆野郎はなァ・・・?」
「グ・・・グギギギ・・・グギグゥゥゥゥゥッ! (髪の毛を掻き毟りながら)
調子に乗るなァァァァァ! カス罪人がァァァァァァッ!」
「(6発目を込め、シリンダーの”蓋”を閉じて)
・・・処刑外で、500人以上も殺しておいて良く言うぜ・・・」
N:吹き溢れる憤怒に身を任せ、突撃してくる青き豚に対し、ボスは冷静に”レベルアップしたスキャン”により得られるようになっていた、青き豚の”罪状”を端的に吐き捨てると、彼は”SAA”を奴の眉間目掛けて発砲する!
〜 チュィィィンッ! チュィィィンッ!〜
「舐めるなよォォォッ! カス罪人がァァァッ!」・・・なんと! やっとこさ学習したのか、唐突に両逆手で大剣を持って頭を覆い隠し、”一回休み”を青き豚は未然に防ぐのであった! これはピンチかッ!?
「クハハハハッ! 残念だったな! そんなバカの一つ覚えに俺様の頭を狙うなんざ・・・」・・・2発目も防ぎ、既に勝ち誇っていた青き豚は、愚かな罪人に渾身の振り下ろしをしようと構え・・・
〜 ダッ! ブゥオォォン! バッキャアッ!〜
「・・・「バカの一つ覚え」は、こっちの台詞だ」・・・そう言いつつ、青き豚の眼前へと飛び上がっていたボスが掴んでいたのは、”砕けゆくギルドの椅子”であった! 奴との遭遇時から、ずっと”急所”である頭を狙い続けていた彼は”確実”に倒す事は勿論であったが、”必ず頭を狙うと思い込ませる”事も計算に入れて撃ち続けていたのであったッ!
その彼の思惑にまんまと嵌った奴は、彼から見て頭部右側面に”ギルドの椅子”を叩きつけられ、大きくバランスを崩し始めているのであるッ!
〜 パパァッンッァァッン!!! ビビスッ! パァッンッァァッン! ビスッ! ゲシャアッ! ガラゴトォォンッ!〜
「グウォァァァッ! クソォォォォォッ!?
(右手首を押さえながら叫ぶ)」
N:当然、ボスは大きくバランスを崩した隙を見逃すハズなく、着地後、即座に青き豚の構えを支える後ろに伸びた右脚に、SAAを2連射して完全に態勢を崩した後、大剣を保持する右手首に発砲。
握る力をなくした直後に下段回し蹴りで、右手を蹴り飛ばし、武装解除に成功したのであったッ!
「両手を上げて降参しろ・・・って言っても聞かないよな?」・・・奴の頭に銃口を向けたまま、彼は皮肉げに語る。
「クソがッ! 騎士の俺様が降参だとッ!? 誰がそんな事を聞くかッ!?」・・・突然の窮地に陥り、スキルによって治ったハズの右手首を、まだ押さえ続けながら噛み付くように叫ぶ青き豚。
「あっ、そ。じゃあ・・・降参しないなら・・・しないなりの覚悟しておけよなァァァァァッ!」・・・SAAをポケットに仕舞い込み、雄叫び始めた彼は両足に魔力を集中させつつ、立て膝状態になっている奴の眼前に飛び上がり・・・
「”スクリュー・・・ストライク”ゥゥゥゥッ!」
~ ドドドドドドドドッ! ヒュウゥゥゥゥゥゴウィィィィンッ! ドフグォォォォォンッ! ~
N:地下拷問室内の死闘で編み出した”竜巻を帯びし、螺旋のドロップキック”、「スクリューストライク」奴の顔面に向けて叩き込むッ!
すると喰らった奴は、悲鳴や断末魔を上げる間もなく、頭を中心に巨大な扇風機のように体を振り回されながら、周囲を抉り、巻き込みつつ、ギルドの壁へと激突して行くのであった・・・ッ!
「グウゥ・・・オォアァァァッ! カス・・・罪人ガァァァァァッ!」
N:巨大扇風機となり、身体中の体液をシェイクされたという、まず生きてられないような現象に関わらず、この「暴力の権化」とも呼べそうな男、青き豚は、壁付近にあったカウンターと隣接する階段の手すりに掴まりながら、自身の体を立たそうと必死だった・・・。
何もスキルによってジョジョに治ってはいたのだが、両肩は脱臼し、地面に何度も打ち付けられた両脚は複雑骨折寸前・・・極め付けは、「スクリューストライク」を叩き込まれた頭だ。
口と眼が連なるラインにクッキリと、ボスの両足の足跡が残っており、そこを中心に螺旋状に皮膚が抉られ・・・骨が陥没し、理科室の人体模型が如く・・・表情筋が剥き出しになっていたのだ・・・!
この間の経緯を知らない人物が、奴を見ようものなら、それは醜悪な活屍・・・あるいはただの暴君か・・・瀕死の状態ながらも彼を睨めつけ続けるその眼から復讐者とも見て取れるような様であっただろう・・・。
しかし・・・何故、彼を睨めつけ続けるのか? 復讐心? それは勿論だが・・・奴の視線の先に注目して欲しい。
その先にあったのは、意外にも彼ではなく・・・彼が得意げに地面に突き立て、柄頭に顎を乗せている、奴の大剣であったのだ・・・!
「ヴァイオ君、これな〜んだ? (陽気に問いかける)」
「て・・・テメェ・・・! その剣に・・・何する気だッ!?」
「・・・何って? 見れば判るじゃん・・・。
ただこうやって、オレの「顎乗せ機」にしているだけだって」
「アゴノ・・・セキ・・・!?」
「そっ、これ中々ヒンヤリしていて良いよね〜。
人を斬るよりも、こう使った方が平和的で良いからねェ〜良いオモチャだよ〜」
「巫山戯やがってェェェェェェェェッ!」
「おっ、怒っちゃってる〜? イイネェ〜どんどん怒れよォ〜
けどなァ・・・オレはそれ以前に・・・”バンディット”」
〜スリャリャリャ〜ン〜
「オアァァァァァァァァァァァァッ!? 俺様の剣をどこにやったァァァァッ!? (リアルに、両手で頭を抱えながら叫ぶ)」
「何処にって・・・オレの魔力に変えただけだけど? (首を傾げながら)」
「ハァッ!?」
「て言うか・・・お前のオモチャ、ショッボイな・・・。
壁を斬っても折れない耐久力があるから・・・相当な名剣かと思って、”一万”近く魔力が回復するかと期待していたのに、たったの”百”って・・・。
お前・・・鈍モンを”名剣”って謳ってないよな? プッハハハハ!
(腹を抱えて笑い出す)」
「クウゥゥゥゥゥッ! 俺様の最後の一振りをォォォォォォッ! 騎士の誇りをォォォォォォッ! (頭を掻き毟りながら)」
「オォ〜? ようやく余裕をなくしたか〜。
イイぞォ〜どんどん怒りやがれェッ! (腕を組みつつ、右手で奴を指差しながら・・・)
オレはテメェの”ゴミみたいな埃”以上に、腸煮え繰り返ってるんだよッ!」
「俺様の・・・俺様の生きてる・・・象徴を・・・ッ!
(頭を掻き毟りながら蹲り、うわ言のように言う)」
「まさか、剣がないからもう戦えまチェ〜んッ! ・・・なんて言わないよな?
御託をほざいてんじゃあねェよ・・・。オレに恨みがまだあんのなら、とっとと掛かって来いッ!
(両手を眼前に出し、「オレに・・・」辺りから、ファイティングポーズを取りつつ雄叫ぶ)」
「カス野郎・・・カスカスカスカスカスカスカスカスカスカスカスカスカスッ!
カス罪人がァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!」
N:自身のちっぽけな誇りを奪われ、後がないとようやく自覚した青き豚は、手負いの猛獣の如く、ようやく治った右腕を振りかぶりながら、ボスに向けて突貫するッ!
しかし、忘れてはならない・・・!
〜ドグオォォォォッ!〜
「オゴッ!? (体を若干”くの字”状に曲げながら、悶える)」
「・・・チッ、やっぱりか・・・「タフネス」ッ!」
N:金属を殴った感触に若干顔をしかめつつも、身体強化の青いオーラを身に纏い、青き豚の突進を「右カウンターボディブロー」で跳ね除けたボスは、「数百人の冒険者を相手にたった一人で無双した”オルセット”の”師匠”」であり、同時に「「CQC」のスキルによって、魔物以外の対人戦においては、無敵に近い対応力」持つ男になっていたのだッ!
そうである彼は、殴った感触に若干戸惑うも、その隙をなかった事にするかの如く、その後の奴に反撃の隙を与えなかったッ!
「カス罪人がよくも・・・フオォッ!?」・・・よろけ後退した奴に、駆け寄った瞬間「右金的蹴り」を喰らわし・・・。
「こんな・・・卑怯な・・・アゴオォォォッ!?」・・・お辞儀するように下がった頭に、髪をむんずと両手で掴んだ状態からの「左膝蹴り」で顎を砕き・・・!
「フォボえて・・・ギャッ!? ブフォォ!? グワアァァァッ!」朦朧と喋る奴に対し、冷酷かつ淡々と「右フック→右裏拳→左後ろ回し蹴り」を喰らわし、後方へと吹き飛ばすと・・・仰向け状になった奴に、彼はマウントを取る・・・ッ!
「オレェ・・・言ってたよな? 地下の拷問室で・・・?」・・・目に影を落としながら語るボス・・・!
「近い内に・・・テメェを何十発と殴った後に、必ずテメェら・・・兄弟諸共・・・絶ッ対にッ! 絶望の淵へとブチ込んでやるッ! ・・・ってなァァァァッ?」・・・溜まりに溜まった怒りを、ここぞとばかりに爆発させ、青き豚にブチ撒けるッ!
「ま・・・待てよ! やめろ! そんなに強いなら・・・俺様と一緒に組んで・・・!」・・・彼の怒りにとうとう気圧されたのか、怒るどころか、信じられないぐらいに委縮した・・・弱々しい声で、今にも殴り掛かろうとする彼を止めようとする青き豚・・・! だがしかし・・・
「”待てよ”と”やめろ”・・・か。
そう言われてお前は、拷問を待ったのか? 尋問と言う名の虐待を止めた事が・・・あるのかァァッ!?」・・・静かに、そしてジョジョに呆れを通り越して再び乗状に怒りが連鎖爆発して行く彼の拳は、もう・・・止まる事はないだろう・・・。
「ま・・・待て! やめろ・・・!」
「恨むなら・・・過去の自分を恨むんだな・・・」
「ヒィッ!?」
「オラァッ! オラァッ! オラァッ! オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァァァァァッ・・・!」
エルフ姉弟・・・約束を守れず、救えなかった母親・・・そして、理不尽にこの街に縛り付けられた、領民やカルカの思いを・・・無念を、その両拳に乗せて殴る・・・ッ!
どれだけ迷惑かと殴る・・・! どれだけ苦しんだかと殴る・・・! 右左右左右左・・・と交互に、その肉と骨を突き通して、魂までにも”お前は悪党だ”と刻み付けるかの如く・・・ボスは奴の顔面を殴り続けたのであった・・・ッ!
「・・・ハァ、ハァ、ハァ・・・」
N:青き豚の哀れかつ、惨めな命乞いも聞こえなくなった頃・・・ボスはようやくその拳を止め、白目に伸びる奴をマウントした状態のまま、見下ろしながら息を整えていた・・・。
百発近くは殴ったのであろう・・・その凄まじさは、彼の拳が”返り血”によって、ほぼ真っ赤に染まり上がっている事が物語っていた・・・。
・・・が、そんな状況でも彼は奴の首の頚動脈に手を添え、血の流れが残っている事に安堵すると、再びこの猛獣に対しての切り札である「改造した”奴隷の首輪”」を取り出すのであった・・・。
「・・・これで、今度こそ・・・!」・・・両手で首輪を閉じる金具に力を込め始めるボス・・・だが・・・ッ!?
〜グルン・・・ギロッ!〜
「カス罪人がァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!」
「ッ!? マジかよッ!? ガッ・・・!?」
〜ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ドダァァンッ!〜
N:ああ・・・何という往生際の悪さであろうか・・・!
突然、エンストから息を吹き返した”1tトラック”のように、青き豚が覚醒したのだッ!
覚醒直後、血走った・・・不気味な目の動きでボスを睨み恨み殺さんばかりに凝視したかと思えば、彼にSAAや他の手を与える暇もなく飛び起きつつ・・・彼の首を両手で掴み、ギルドのカウンターの上へと叩きつけたのだ・・・ッ!
その威力は、叩きつけられた衝撃で、カウンターに彼が嵌りこんでしまう程である・・・ッ!
「クハハハハハハハハッ! こうなりゃ”騎士”がどうだこうだなんざ、どうでもいいッ!
カス罪人! 貴様というカス野郎を殺さなきゃあッ! 俺様は一生後悔して、天にも登れそうになかったんでなァァァァッ!? 遥々、地獄から・・・殺しに舞い戻って来てやったぜェェェェェッ!」・・・スキルの効果が止まったのか・・・中途半端に治りかけた醜悪な顔で、彼を締める手の力がドンドン増していきながら・・・異常な狂喜さで語りかける青き豚・・・ッ!
「・・・お前・・・絶対・・・ストーカーとかした事が・・・あるだろォ・・・グアァァ」・・・平静を保つためなのか・・・こんな危機的状況でも軽口を嗜むボス・・・!
「クハハハハハハハハッ! ”ストーカー”なんざ知らんが、カス罪人共からはとことん好かれていたぞォォォッ! 痛め付ける度に、喜んでいたからなァァッ!?」
「・・・アッ・・・ソ・・・ッ! (イラついた口調で・・・)」
「クハハハハハハハハッ! この前は油断したが、どの道この状況ッ! あの魔道具も割り込めないようなこの至近距離の中ッ! 俺様から抜け出したいのなら・・・魔法の一つか、二つでも使ってみるんだなァ! このッ、マヌケがァッ!」
「グッ・・・それ・・・オレが・・魔法を・・・使えない・・・って事で”マヌケ”って言ったのか?」
「クハハハハハハハハッ! 良いなァァァッ! 傑作だッ! ああそうだッ! さっきのチンケな風魔法を纏った蹴りなんかは、この状況じゃあ繰り出せないだろッ!?」
「心外・・・だ・・・な・・・ッ!」・・・そう言うとボスは、唐突に引き剥がそうとする両手の内、左手を離し、「指パッチン」を行う。
「オレ・・・がッ! 風・・・魔・・法しか・・・使え・・ないと・・・で・・も・・・思ったか・・・ッ!?」・・・首を絞められ、途切れ途切れかつ・・・それでも必死に声を張り上げようとする彼の左手の人差し指には、いつの間にか小さな火が灯っていたのであった・・・!
「クハッ、クハハハ・・・クハ〜ハハハハハハハッ! 最高だ! ホント、傑作だなッ!? クゥゥリッカーって!? そんな雑魚魔法で、何するつもりなんだ!?
俺様の鼻を焦がして脱出するつもりかァ〜? それともそれで自害でもするのかァ〜?
・・・だが否だァァッ! どちらでもなァァいッ! どの道、クソ罪人ッ! テメェは俺様に惨たらしくブッ殺される運命なんだよォォォォォォッ!」・・・紛う事なき勝利を確信した青き豚はその勝利を実現させるべく、渾身の力を手に込め、彼の首へし折り始める・・・ッ!
「・・・良かっ・・た、宿命じゃあ・・・なく・・て・・・」・・・掠れ始める声の中、彼の右手の中で、”黄色い”光がジョジョに溢れ始める・・・ッ!
「アアァン・・・?」
「人は・・・運命なら・・・誰・・だって、変える・・・事ができる・・・!
この・・・雑魚魔法で・・・テメェ・・を・・・ブッ倒す・・ように・・・なッ!」・・・そう言い切った直後ッ! 彼の手の中で光り輝いていた、”黄色い”光が「円柱状の何か」に形を成し、その円柱の頭頂部を"クリッカーの火越し"に、押したのだッ!
~プシュウゥゥゥゴォォォォォォォォォォォォォォッ!~
「ギィヤァァァァァァァァッ!?
なんだこの魔法はァァァァァァァァァァッ!?」
N:円柱から放たれた”何か”は、青き豚目掛けて放たれて行き、火を通り越すと”大きな火炎”に化け・・・奴の狂喜にそまった”顔面”から、お高くとまったオールバックな”髪”まで・・・頭全体を焼き尽くし始めたのだッ!
「ゲホッ! ゲホッ! ・・・”科学”って、魔法だよッ!」
〜クルッ、ブンッ! ズポォォッ!〜
「フォゴオォォォォッ!?」
N:ボスは握っていた円柱を、器用に半回転させると・・・驚愕の表情に染まりきっていた青き豚のマヌケ面の中で、最も印象的な開けた大口目掛け、円柱を力一杯押し込んだのであったッ!
そして、突っ込まれた衝撃で奴がよろけて行く中・・・奴の燃え盛る”髪”によって一瞬、円柱側面が照らされた事により、それが何か判明したのだ!
そう! それは大用量の「殺虫スプレー」であった!
多くのスプレー缶はひと昔前までは、オゾン層に優しくなく・・・不燃性の”フロン”ガスを使うのが主流であったが、現代では可燃性の「LPG」、平たく言えば・・・家庭のコンロを点けるのに使う”プロパンガス”が今の主流だ。
そこまでの歴史のどのうこうのは、割愛させてもらうが、コイツを薬剤や殺虫剤を噴霧させる噴射剤として使う為、火を使った料理中にディナーにありつこうとガサゴソする「G」さんに向けて”キャーッ!?”・・・っと、噴射しようものなら・・・Bang!
・・・・火達磨になり兼ねないのでご注意を・・・。
まぁ、それはともかく、彼はこの「殺虫スプレー」が、可燃ガスがたっぷり詰まった”小型焼夷爆弾”となり得る事も知ってたワケで・・・!
「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・(前屈みに肩で息をした後、右片手で”SAA”を構え・・・!)果てろッ!」
〜 パァッンッァァッン!!! カンッ! シュゥゥ・・・ボッカアァァァァンッ! 〜
N:SAAに残っていた最後の1発は、泡を食ったように頭を掻き分け、消化活動をしようとしていた青き豚の両腕を掻い潜り・・・見事、スプレーの底面にヒットッ!
弾痕から、内部に残っていた可燃ガスが一気に漏れ出すと、燃え盛っていた髪に引火し、口の中で一気に破裂・・・ッ! そこから、頭全体を一瞬、巨大な火球が包み込んだのであった・・・ッ!
・・・しかし、これが”主人公補正”ならぬ、”異世界補正”という奴なのか・・・
〜 ・・・グラ、バタンッ! 〜
頭に漂う黒煙が消えぬ中・・・両手を挙げたまま、仰向けに倒れた奴の頭は驚く程に綺麗に残っていたのだ。
ただ、”端正”だとかじゃあない。
白目を剥いた立派な”間抜け面”になっている事は大前提だ。勿論、上手に焼けている。
ただこれに”鼻水”でも垂らしてでもいれば、より男前だったであろう・・・。(プクク・・・)
「ハァ・・・ハァ・・・ホント、”G”以上にしぶといな・・・! (絞められた首に左手を当てながら)
少なくとも、フラグが爆発したように、口の中は”スプレー缶の破片”でズタズタになって、風船みたく一緒に破裂するハズだろ・・・!? なんでこう、原型保ってんだよッ!?
”コーチガン”でブチ撒けたのと、何の違いがあんだよッ!? テメェの不死身はァッ!?
(「コーチガン〜」辺りから”SAA”で奴を指を刺すように、何度も右手を突きながら)」
N:今まで青き豚に対する理不尽さが爆発したのか、何故か”倒れ方”に対し文句を言い始めるという、暴挙に出たボス・・・! そんなにこの勝利に納得していないのであろうか・・・ッ!?
言いたくなるわッ! けど・・・エルフ姉弟の事を思うと、吹っとばなくて良かった・・・って、複雑な気分になるな・・・まぁ、勝手な自己満足か・・・コレは・・・。
N:そう思ったボスは、”ハハッ”・・・っと、自嘲気味に軽く笑うと、青き豚の元へと歩いて行き、再びマウントを取った状態で今度こそ「改造した”奴隷の首輪”」を取り付ける事に成功するのであった・・・ッ!
「・・・よしッ! 少し短くて嵌るか心配だったが・・・なんとかオッケーだな・・・。
これで、あと一回再生した後・・・此奴はここから動けなくなる。
後は、あの赤い服を着た”モバ何とか”って奴と、リフィルが撃ち抜いた後、気絶したままの”黄色い豚野郎”を捕まえれば・・・!」
『ボスゥ・・・! ボスゥッ!』
「・・・オルセットか・・・? 『どうした、オルガ? 冒険者は倒しきったのか?』」
『うん、何とか倒しきったけど・・・』
『スゲェじゃねェかッ! 100人相手に良く頑張ったなッ! ホント、助かったぜッ!
(嬉し気な口調で労う様に褒める)』
『エヘヘ・・・って、そうじゃあなくて、大変なんだよ! ボスゥッ!』
『どうした? 何があったんだ?』
『急いで! ボスゥ! ボクが冒険者を倒しきった時に、あの「赤い服のワルイヤツ」が、カルちゃんを引き摺って、お屋敷の方に逃げてったよッ!』
少々不規則な形態の仕事に変わった事と、その仕事が忙しい関係で更新がまた長くなる可能性がありますが・・・早く出せるよう努力します・・・。
最長で「一か月」、最短「一週間」更新を目標に頑張ります・・・!
(ただし、あくまで不定期更新。それをを廃止するとは宣言しませんので、そこはご了承を・・・!)