Mission-32 ”復讐”ノ・・zZz・zZ・・誓イ
大変お待たせしましたッ!
・・・エッ? チョッピリ早いィ〜?
いや〜実は、職場が変わった影響で、「仕事場に居るのに、仕事が来ない」という奇妙な状況になりまして・・・仕事が来ない代わりに、この小説を書いてても問題ない(?)ようなので、”書く時間”が劇的に増えた訳ですッ! エェ! 嬉しい事にッ!
・・・勿論、仕事を承った際は、迅速にその仕事を”終わらせて”から、これを書いてますので、ご心配をお掛けになった方は、ありがとうございます。
何しろ、自分は”面倒事”と”叱られる事”が何よりも嫌いな”真面目に不真面目な”人間なのでね!
(そうならないように”考えて”日々を頑張って生きています・・・ッ!(泣))
N:唐突にボスの頭に響く聲・・・
その声の主は、彼が振り返った時・・・少々おぼつかない足取りで二人の元へと近づき、二人を見つめるように佇んでいた・・・。
首の右側面の頸動脈に人差し指と中指を当て続けている”リフィル”の姿が・・・。
「リフィル・・・!? 大丈夫なのか?」
『今までありがとうございます・・・兄さん。後は任せてください・・・』
「い・・・いいのか? 弟さん・・・今も、結構・・・危ない状況なんだが・・・?」
『彼を開放してください・・・大丈夫ですから・・・』
「・・・いや、本当に・・・」
『大丈夫ですから・・・』
「・・・ハァ・・・分かった」
N:そう言うとボスはマウントを解き、ラフィルを開放した・・・。
離れていくボスを横目で睨みつけるように一瞥した後、彼はいそいそと姉の元へと近づいて行く・・・。
一方、リフィルは、彼と向かい合うと何故か両手で掛けていた”サングラス”を外すのであった・・・。
顔を上げた彼女の目には、光がない・・・所謂「虚ろな目」が姿を現す・・・。只々・・・本来は美しいであろう”エメラルドグリーンの瞳孔”はひどく濁り・・・”視力がない事”を主張するかのように、彼と同様の"三白眼"の目の中では、常にその大きな瞳孔の焦点は合わず、忙しなくキョロキョロと動き続けていたのであった・・・。
「姉ちゃん! 良かった・・・気がつい・・・」
~ヒュン・・・バシィ!~
「・・・エッ、姉・・・ちゃん・・・?」
N:再び、痛みを感じる頬を抑えながら、ラフィルは理解できないでいた・・・。
姉に殴られた・・・以前に、何故姉のため・・・両親のために、不届き者を倒そうと動いていたのに・・・何で姉に”拒絶されるんだ”・・・!? ・・・と。
それに答えるかのように、リフィルは空いた右手で、彼の左手を掴むと・・・
『聞こえますか・・・? ラフィル・・・』
「ッ!? ね・・・姉ちゃん!?」
N:どこで覚えたのか・・・ボスが”カルカ”に用いた特殊な「コール」の使い方を用いて、彼に語り掛け始めるのであった・・・。
『リフィル!? それ・・・どこで知った?』
『すみませんね兄さん・・・小屋で寝かせてもらっている際・・・僅かに意識があって・・・”カルカ”さんとの会話を聞いていたんです』
『それでか・・・。そして、これが大丈夫な理由か?』
『はい・・・』
『・・・ハァ・・・気をつけろよ』
『えぇ・・・心得てますよ・・・』
N:ボスとの「コール」の間、リフィルは眼を瞑っていたワケだが・・・これには事情を知らない”シスコン騎士様”は非常に困惑していた模様・・・。
ようやく彼女が目を開くと同時に、まだ困惑しつつも・・・再び彼女に語り掛け始めるのであった・・・。
「姉ちゃん・・・? この声は姉ちゃんなんだよなッ!?」
『えぇ・・・そうですよ、ラフィル』
「何で・・・何で姉ちゃんは喋れるんだよッ! それに何でこんな力があるんだよッ!? あのクソ人間に一体、何されたんだよッ!?」
~ヒュン・・・バシィ!~
(再びのビンタァァッ!)
『落ち着いて・・・ラフィル。貴方の質問にはキチンと答えます。
けど・・・その前に、その”クソ人間”や”クソネコ”などという下劣な言葉を・・・私たちの命の恩人である”ボスさん”と”オルセットさん”に言うのはやめなさい』
「何で・・・」
~ヒュン・・・バシィ!~
(更なる再びのビンタァァァッ!)
『口答えは許しませんよ?
(目を閉じ、首をかしげ、貼り付けたような笑顔で)』
「いやだから・・・」
~ヒュン・・・バシィ!~
(も一つッ、再ビンタァァァッ!)
『・・・やめなさい』
「・・・はい・・・(項垂れる)」
「・・・
(リフィルの圧力スゲェ・・・たぶん・・・だけど、普段は違うんだろうな・・・。明らかに姐さん、怒ってますワァ・・・)」
N:世の中・・・女性の<精神攻撃>程、恐ろしいものは”異世界”であろうと、変わりはしないのかもしれない・・・。
なんとなく、素直に同意するワァ・・・。
『フゥ・・・良いですか、ラフィル? まず・・・私が喋れるのもボスさんのスキルのおかげです。追々詳細は話しますが、彼のスキルを共有させてもらっているおかげで、今こうして貴方と喋れているんです・・・』
「共有・・・? 姉ちゃん・・・アイツに変な力を注ぎ込まれて・・・ッ!」
~ヒュン・・・バシィ!~
(もういっちょッ、再ビンタァァァァッ!)
『・・・次に、何故このような喋れる力があるのかと言えば・・・と言っても、先程の”共有”でボスさんから貸してもらっているとしか、言いようがないですね・・・』
「貸して・・・? おい姉ちゃん・・・あのクソ人間に”シャッキン”って奴を・・・」
~ヒュン・・・バシィ!~
(・・・再ビンタアァァァァァッ!)
『・・・最後に、何をされたか・・・と言う以前に、先程も言いましたが、私達は2度も、ボスさんと”オルセットさん”に助けられているのですよ?
助けられて、何かを要求される事も・・・虐げれられる事も・・・一切なく・・・。
私の聲が貴方に届かない間、ずっと見てきたでしょう・・・? ラフィル?』
「要求されない・・・? おい、姉ちゃん! 騙されんなよ! 心底助けられた挙句ッ! ど~せッ、あの時のクソ人間のように、オレ達は売り飛ばされるんだよッ! なのに・・・まだッ! コイツみたいな”クソ人間”を信用すんのかよッ!?」
~ヒュン・・・バッキャァッ!~
(・・・再ビン・・・回し蹴りィィィッ!? 顔にィィィッ!?)
ウエェェェェッ!? 一応・・・護身用にと思って、彼女に「CQC」のスキルを共有していたとは言え・・・エゲツねェなぁ・・・!
足の甲じゃあなくて・・・爪先で・・・ッて・・・。
普段の”物腰柔らか”な彼女からは想像できない一撃だなァ・・・おいッ!
「ゲホッ! ゲホッ! やめてくれよォッ! 姉ちゃんッ!」
ウワァ~ラル君、もう・・・身も心もボロボロやなぁ・・・。
これなら話を・・・って、アレ? じゃあ・・・あの死闘って一体・・・?
いや・・・やめとう・・・生き延びれたって事で喜んでおこう・・・うんッ!
悲しくなッちゃうからなッ! ・・・おっ、目以外は変化に乏しいけど・・・なんと言うか・・・養豚場の・・・イヤ、「あれは本気で見捨てるつもりの目だ!」・・・って感じの表情で、ラフィルを立ち上がらせてんなぁ・・・。
『(ラフィルの手を”強く”握りしめた状態で)
やめてくれ・・・? ラフィル・・・私はただ・・・貴方が何をしたか・・・貴方の愚劣で不名誉な行いを、態・々ッ・・・再現してまで、貴方に教えているだけですよ?
貴方は”ボスさん”達が”助けてくれる”という趣旨の言葉を何度も掛けてくれたにも関わらず・・・”ゴブリン並みの行動”でしか、返事をしませんでしたよね・・・? 更に、何度も・・・何度も・・・”やめて欲しい”とお願いしていたのにも関わらず・・・!』
「ウゥゥ・・・(蹴られた頬を抑えながら・・・)」
『態度を変えていない・・・と言う事を愚考してしまう事を、先に断っておきますが・・・。
リフィル・・・貴方は、その姿勢を変えないつもりなのですか・・・?』
「当たり前だフォッ! 姉ちゃん! フォレは姉ちゃんを守るファめに・・・!」
『思い込みも、人間不信も・・・大概にしてください』
「ファッてフォッ!」
『・・・フゥ・・・ラフィル、貴方が私を大切に思ってくれるのは、大変喜ばしい事ですが・・・それは今・・・余計な北風になってしまっていますよ・・・?』
「北風・・・?」
『そうです・・・天高く昇り・・・私を包みお守り下さる、”日の神の陽気”ではなく・・・備えなければ死を迎える”北風”のようにです・・・』
「・・・(何を思ったのか俯く・・・)」
『里を追い出され・・・お父さんとお母さんを失った今・・・”ボスさん”達を除いた下劣な人間達に蔑まれるこの世界で、私達が生き抜いてゆくのは非常に難しい状況なのですよ・・・。
なのに、ラフィル・・・貴方は”助けてくれる”・・・と、手を差し伸べてくれたボスさん達の手を払い除けてまでも・・・何を守りたいのですか?』
「・・・姉ちゃん・・・オレは・・・オレは、姉ちゃんのために・・・!」
『・・・何が”私のため”ですか・・・』
「・・・エッ?」
『・・・貴方が”私のために”と、動いてきた中で・・・”私のために”が守られる上で・・・貴方の所為で、一体、何人の”無実や無関係の人達”に・・・私が”涙を流した”か・・・ラフィル・・・貴方は考えた事がありますか・・・?』
「ッ!? そ・・・そんな事ッ! そんな事、どうだっていいだろッ!?
考えてみろよッ! 姉ちゃん! オレらの人生がどうだったのか! どんだけ”他人”の所為でクソな人生を味わされてきたのかッ! そう考えりゃあ、全部・・・全部ゥッ・・・! やってきた奴らが悪いんだろうがッ! だから・・・オレはァッ! 姉ちゃんのために・・・ッ!」
『・・・もう・・・いいです』
「エッ・・・!?」
『私が・・・私が過去に・・・貴方を歪めてしまったのかもしれないのですが・・・。
それでも・・・もう・・・私も・・・貴方に説明するのは・・・疲れました・・・。
本当は・・・貴方に説教するのも・・・暴力で訴える事さえ・・・この胸が張り裂けんばかりに・・・心苦しかったのに・・・』
「な・・・何を言ってるんだよ・・・? 姉ちゃん!」
『決めました・・・。もう・・・貴方を”家族”とは認めません・・・』
N:・・・ハッ!? この悲しげで、重苦しい空気から現実逃避したい余りッ、寝ていたッ!? 私は寝てしまっていたのかッ!? えッと、エェェ~ッとォォ・・・!?
ウッ、ウンッ!(咳払い)
物憂げで・・・非常に悲しそうに顔を歪めつつ・・・リフィルは器用にも左手に持つサングラスを再び掛け直しながら、ラフィルの背後にいる・・・ボスに向けて歩み始める・・・。
『私は・・・』
N:そして・・・その後を言い切る前に、繋いでいた手を離し・・・ボスの胸へと顔を埋め・・・抱きしめたッ!?
「・・・おい、なぁ・・・姉ちゃん、何してんだよ・・・! そいつは”ニンゲン”なんだぞ? オレらを売り飛ばそうとする”クソニンゲン”なんだぞッ!? 何ッ! ベッタリとくっついてんだよッ!?
離れろよッ! 危ないんだぞッ! 姉ちゃんッ!」
「・・・どうやら無駄みたいだぞ? ・・・ラフィル」
「クソニンゲンは黙ってろッ!
なぁ・・・姉ちゃんッ! 姉ちゃんッ! おいッ! 姉ちゃん!」
「”私は・・・生き抜いてゆくために・・・私が今、望む”本当の兄さん”に付いて行来ます・・・貴方に<思いやる心>が芽生えない限り・・・”。
・・・だってさ。お兄さんよォ?」
「クッ・・・ヌヌヌヌゥゥゥ・・・ッ! アアァァァァァァァァァァァァァァッ!
返せッ! 返せよッ! クソ人間ッ! 姉ちゃんを返しやがれエェェェェェェェェェッ!」
~ザッザッザッザッザッ! ブオンッ!~
(ボスに駆け寄り、顔面に殴りかかろうとするッ!)
『ウィドラマ・ウォーラ ッ!』
N:瞬間ッ! リフィルがラフィルに向けて振り向きつつ、手を伸ばすと、一瞬にして彼の周囲に白い乱気流が吹き荒れ・・・彼を地面から1m程浮かせると、箱状に彼を包み込むのであった・・・。
包まれた後、彼はまだ何かを叫んでいたようだが・・・魔法の効果なのか、やけに静かな風の音以外、他に聞こえるものはなかったのである・・・。
これには”大剣”の件とは一転して、ボスの”異世界スゲーッ!”に火を付けることになるのだが・・・彼女からの「コール」で現実に引き戻されるであった・・・。
『本当に・・・ラフィルがすみませんでした・・・』
「・・・いや、分かるけどさ・・・本当にあんな事していいのか・・・?」
『・・・いいんです。
私も・・・兄さんに会う前の6年間で・・・私も人間を嫌いにならざるを得なくなりましたが・・・嫌いだからと・・・何もかも憎しみ・・・絶望していては・・・私達が生きる希望は見い出せなくなりますからね・・・
ラフィルにも・・・分かって貰いたかったのですが・・・』
「随分と達観してんな・・・。
(・・・フォローになるか分からんねェが・・・一応言うか・・・)
けどまぁ・・・一応、ラフィルのためを思って「オレ達に協力してくれ」って言ったんだなッ! (「けどまぁ・・・」から、わざとらしく”大声”で言う)」
『(上目遣いにボスを見つめるリフィルの口角が、一瞬、僅かに上がり・・・)
えぇ・・・そうです。
本来・・・エルフは、神から授かった悠久の時を生きる生命力を活かして・・自然を育み守り続けてきました・・・ですが・・・ただそれだけです・・。
私は・・・そうではなく・・・エルフが・・・悠久の時を生きれるのは・・・只々、閉鎖的かつ・・・怠惰に自然の育みを見守るだけではなくて・・・全ての生きとし生ける者達の守り手として・・・共存し・・見守り続けるべき存在である筈だと・・・私は思っているんです・・・。
だから・・・例え、ラフィルの言うことが全て正しくとも・・・母が天へと旅立っても・・・”命を奪う”ことだけは・・・避けたいと思っているのですが・・・』
・・・よくある”自然壊すやつは許さないッ!”ってエルフ達から見れば、こりゃあ異端だな・・・これが”里を追い出された理由”なのか・・・?
いやッ、それよりも・・・その考えは素晴らしいが、こんな世界じゃあ・・・いつかその考えはリフィル自身を滅ぼしかねないな・・・。
『(スマンが、チョイと待ってろな・・・ラフィル・・・)
・・・それは、ラフィルが殺されたり、リフィル・・・アンタが死ぬ事があってもなのか・・・?』
『それは・・・。
(不安げに俯きつつ、目を逸らしてしまう・・・)』
『オレだって、アンタの考えには拍手を送りたいよ・・・。
だけど・・・それまでだ。こんな迫害だの、奴隷制だの、悪徳な絶対王政が蔓延しているクソッタレな世界のままだったら・・・”賛同”までするのは、御免だな』
『そんな・・・じゃあ・・・あの街の人々のような、虐げられ、朽ちてゆくしかない命を見捨てるしかないのですがッ!?
(ボスを抱きしめる力がジョジョに増しながら・・・)』
『・・・逆に聞くが、あの領主共を殺さずに、アンタは”民を救って!”・・・と説得しきれるのか?』
『それは・・・。
(再び俯きつつ、目を逸らしてしまう・・・)』
『ホント・・・その博愛主義的な考えは殊勝だが・・・。
悪く言うようですまないが・・・・それは”神”でもない限り、無理な話だ・・・』
『か・・・神様を愚弄するのですか!?』
『・・・いるなら信じたいが、生憎(あいにく」)・・・この世界に着て以降・・・純粋に有り難いと思える”神様の助け”を受けた事なんて、これっぽちもないからな・・・。
そう思っちまう以上・・・現実的に考えていくしかねェんだよ・・・』
『・・・そっ、そうでしたね・・・兄さんはこの世界とは違う・・・異世界・・・?
から、お越しになられたんでしたよね・・・?』
『そうだけどな・・・そん時・・・今持っている武器よりも強力なのを容易に出せる力を貰ってればな・・・もっと早くアンタ達の母親を救えたかもしれなかったんだがな・・・今更ながら・・・本当に・・・済まない・・・リフィル・・・
(言い終わるに連れ、ジョジョにボスの表情が暗くなって行く・・・)』
『そ、そんな・・・! 兄さんは全力を尽くしてくれましたよ!
少なくとも・・・私は・・・本当に、兄さんに感謝していますよ!
(身を乗り出すように、ボスに顔を近づけて)』
『・・・ありがとな。 (右手で頭を撫でる)
だが・・・こうなっちまったからには・・・ラフィルの”死んで詫びる”って事を突っぱねたからには・・・オレらは、ケジメを付けなっくっちゃあいけないんだよ・・・。
お互い・・・逃げずに、立ち向かわないといけないんだよ・・・!』
『ケジメを・・・付ける? 立ち向かう・・・?』
「責任を取るって事だよ・・・! オレを殺すだなんてッ! チンケなケジメの付け方じゃあなくてなッ! (再びわざとらしく”大声”で言う)」
『・・・どういうことですか?』
「何度でも言ってやるッ!
リフィルッ! ラフィルッ! お前達は悔しくないのかッ!?
クソ人間共の理不尽を押し付けられてッ! お前達の両親を失ってッ! 知能のない”野蛮人”呼ばわりされてッ! 悔しくないのかッ!?
話し合いも通じないッ! 自分の力も通用しないッ! だからって”泣き寝入り”してッ! 両親の直接の死に関係ない人間を甚振ってッ! 自身が惨めだと思わないのかッ!? 見返そうともッ! そのための”力”を得ようとも思わないのかッ! お前達はただの臆病者なのかァッ!? (大声かつ、ハキハキとした口調で)」
「・・・・・ッ! ・・・ッ! ・・・ッ!
(思うところがあったのか、少し俯いた後に再び喚き始めるが・・・魔法の効力か声は一切、聞こえない)」
『に・・・兄さん! 先程言ったばかりじゃあないですかッ!
わ・・・私はッ! エルフとして・・・ッ!
(ボスの襟首を両手で強く握りしめる)』
「騎士は”王族”を護りッ! 王族は”国”を守るッ!
だがッ! お前達に帰る国はないだろうッ!?
だけどな・・・”国”以前に大事なのは、”王”を支える<民達>だッ!
民あってこそッ! 初めて国は栄え、王族は”民”を守る義務が生まれてくるッ!
今もッ! 搾取や窮困で苦しむ、”城塞都市マケット”で生きる民達のようにだッ!
そしてッ! どんな国であろうと、話し合いなどの”知恵”だけではッ!(リフィルを見つめながら) 一国を滅ぼす”力”だけではッ!(ラフィルを見つめながら) 一方に偏れば、最終的には滅ぶことになるッ!
もう一度だけ言っておくぞッ! ラフィルッ! お前の姉は、あのクソ領主共にでも話し合って”平和的”に解決したいそうだが、オレも無理だと思っているッ! だから・・・ッ! オレを信用しなくても良いッ! お前の”力”と共にッ! あのクソ領主共を討ち果たす事を目標にッ! 仲間ではなくッ! 手を組もうッ! それが・・・今、最も”姉のためになる事”だッ!」
「・・・・・・
(喚くのを止め、ボスを睨みつけるようにボスと目を交わす・・・)」
『兄さんッ! 聞いてなかったんですかッ!? 私は・・・ッ! エルフとしてッ!』
『・・・お前も逃げるなよ・・・リフィル
(少々、憐れむような目つきで、見下ろしながら)』
『エッ・・・? (キョトンとしてしまう)』
『民達が虐げられて・・・ラフィルが傷ついていって・・・お前は涙を流す事だけしか考えなかったのか? 自ら助けようとは思わなかったのか?』
『わ・・・私は・・・ッ! (動揺して声がうわずっている)』
『リフィル・・・お前の”優しさ”はとことん殊勝な事だ・・・。
だがな・・・何度でも言うが、世の中は”優しさ”だけで回せる程、甘くは無いんだよ・・・。
どんな世界でも・・・最終的には”暴力”・・・<力>が物を言わせざるを得ない時があるんだよ・・・! 少なくとも・・・今もそうだが・・・オレが生まれる前の時代の人間達は、何度もその”過ち”を繰り返してきた・・・』
『過ちであるなら・・・兄さん・・・ッ! 何故しなくてはならないのですか・・・ッ!?
暴力こそ・・・争いこそ・・・私が言っている生命の育みに対して・・・最も妨げになる事なんですよッ! そのような事を・・・ッ!』
『終わりがあるからこそ・・・始まりがあるんだよ・・・』
『エッ・・・? (再び、キョトンとしてしまう)』
『アンタらエルフが大事にしている”自然”も、”生命”が増え過ぎれば・・・維持するためにその内、滅ぶ。・・・例えば、オレは今さっき小屋で食べた”鳥飯”のおかげでこうして元気に動けて、生きていられる・・・。
・・・殺した”鳥の命”を貰って・・・イヤ、<受け継いで>だ・・・。
・・・リフィル、アンタは何を食って生きてきているんだ?』
『・・・ッ! ・・・お父さんの狩り・・・ッ!
(数秒程、ボスの発言に困惑していたが・・・何かを思い出したように、ハッとする)』
『ヘェ・・・恐らく”間引き”していたんだろうな。
森の草食動物達にとっては、植物の新芽はご馳走だ。立派な花や木になる新芽を片っ端から食われていたら、将来、森はどうなる?』
『・・・そうでしたか・・・だから・・・お父さんとお母さんは・・・』
『肉を食っていたりとか・・・殺すのに躊躇いがなかったのか?』
『・・・はい。よく・・・私にも言っていました・・・。
”食べられる体を持っているんだから、余さず食べなさい”・・・と。
・・・母は良く吐いてしまっていましたけどね・・・』
『・・・ハハハ・・・なんとも豪快な・・・。
(エルフは”肉が食えない”・・・か。リフィルも含めて、他のエルフに会う事があったら気を付けるか・・・)』
『フフッ・・・それで、兄さん?
<生命は、”犠牲”と”継承”の循環で成り立っている>・・・という事を踏まえた上で、私に何を言いたいのでしょうか?
(少々、悪戯っぽく微笑んだ後、再び抱き付き・・・上目かつ、先程よりも清々しい表情で)』
『(・・・スゲェ、結構ぼかして話したつもりが、話の”焦点”を言い当てちゃったよッ!?)
そうだな・・・どんな世界だろうと・・・いや、何事も・・・「循環」と「均衡」で出来ている・・・ってのがオレの自論なんだが、よく当てたもんだな・・・。(口角が微妙に上がる)
・・・じゃあ、それを踏まえた上で改めて聞こう・・・(”SAA”を取り出しながら)
リフィル、アンタは・・・<人差し指だけで、”人間を殺せる力”>があったら、どんな風に使うんだ?』
『(SAAを見つめながら)
両親の・・・両親の仇を取るために使います・・・ッ!』
『・・・道中、多くの生命を”殺す”ような事態になってもか?』
『(少し俯いてしまうが、すぐにボスを見上げて)
・・・はい。
虐げられ、朽ちてゆくしかない命を救えるなら・・・結果的に・・・ッ! 多くの命を救えるなら・・・ッ! 私は・・・私は命を還す事に躊躇しませんッ!』
『(皮肉だが・・・”還す”なんて、綺麗な表現だな・・・エルフらしいと言えばいいのか?)
この力の所為で・・・お前の出生や評判に、更なる”悪評”がつく羽目になってもか?』
『・・・兄さん、私が・・・私が、王族かどうかなんて・・・どうでもいいんですッ!
もう・・・私は・・・私は・・・虐げられたくないんです・・・兄さんの話を聞いて・・・無力でありたくないんです・・・ッ! ラフィルに守られるのも・・・ラフィルが虐げられる事も・・・守られて・・・黙って見過ごし続けるのは・・・もうッ! 無力であるのは嫌なんですッ!
だから・・・貴方が・・・兄さんが、例えラフィルの言う通りの人だとしても、私は・・・私は、悪魔に魂を売る覚悟で貴方にお願いしますッ!
どうか・・・どうか、私にも、ラフィルを守る力を・・・ッ! あの街の人達を守る力を・・・私に授けて貰えないないでしょうか・・・ッ!?
(再び襟首を両手で強く掴まれ、必死の形相でボスに訴えかける)』
「・・・それが修羅の道・・・イヤ、確実に地獄にしか繋がらない・・・”失うばかり”の人生が先に待っているとしてもか? 確実に”死”が待つ運命だとしてもか?」
『・・・冗談はよしてください・・・。
私の”心”は、6年前から失っています・・・これ以上・・・私に何を失えというのですか・・・?』
「・・・”命”と言ったら?」
『私が”望む者達”が失われる事以上に・・・恐れる事などは・・・今の私には、ありませんッ!』
「(ニヤッと微笑んだ後に)
・・・いいガッツだ、それなら使い方を間違える事も無いハズだ」
彼女の覚悟が伝わってきた・・・。
・・・無意識に”そんなもんだ”と決めつけていたのかもしれないが、最初にリフィルの声を聞いた時は、無機質な・・・そう、まるで”心無きアンドロイド”が喋るような”機械的な合成音”に近い感じの声が毎回聞こえていた。
しかし、今のは違った・・・。
あの叫ぶ瞬間・・・「もうッ! 無力であるのは嫌なんですッ!」・・・と言う部分からそれ以降、全く聞こえなくなっていた。・・・聞こえたのは彼女の声らしき”弱々しくも芯が通ったような、意志ある声”が脳内に響いてきたのである・・・。
そんな声が聞こえてきては、これ以上オレが彼女を試すような事を聞き続けるのは野暮・・・を通り越して不粋・・・イヤ、下衆な域にまでなっちまうだろう・・・。
・・・なら、オレがやる事は一つ・・・ッ!
N:・・・そう心の中で決心したボスは、自身に抱きつく腕を優しく払い除けた後・・・右腕を伸ばし、その手を”赤く”光らせる・・・。
数秒後・・・光が晴れ現れたのは「フリピス」でもなく、「ブラバス」でもなく、かといって「SAA」でもない・・・およそ<”1m”以上、”1.5m”未満の長物>をガッチリと握っているのであった・・・。
そして・・・ボスは無言かつ、彼女に当たらないように注意を払いながら、その長物を天へと放り投げ・・・何事もなかったかのようにキャッチする。だが、それ以降はリフィル以外の人達も思わず息を飲まざるを得ないボスの行動に、皆の目は釘付けであった・・・。
無論、視力を失った彼女でも、精霊達が伝えてくれる”風の輪郭”から伝わる”光と色無き光景”に、思わず”視力が戻ったのか”・・・!? と、錯覚してしまう程のモノである・・・。
その行動とは・・・”アメリカ空軍の儀仗兵”が行う、ライフル銃を使ったパフォーマンスであった・・・。
多少、彼なりのアレンジが入っているようだが、右から左・・・手から一瞬落ちたかと思えば、一回転し、反対側の手に握られていたり・・・前転、後転、空中回転・・・! と、まるで数多の血の滲むような訓練を超えてきたかのような・・・一糸乱れぬその動きは、彼に”覚悟”を示した、ボスなりの彼女に贈る”敬意”の示し方なのだろう・・・。
最後に、空中から高速回転しながら舞い落ちた銃を、片手でしっかりとキャッチしたボスは、左手で銃の中央部を持ちながら上に引き上げて体の中央で構え、右手で銃の下部を持つ、アメリカ式の「捧げ銃」で・・・威風堂々と彼女の前に立った後、彼女に銃を差し出すのであった・・・。
「リフィル・・・お前の覚悟が揺るぎない、本物なら・・・この銃を手に取れ・・・」
N:そう聞いた彼女は、ボスを睨みつける勢いで、凛々しく・・・意志の込もった視線を彼に向けた後、銃に手を伸ばす・・・。
「・・・だがッ!」
『ッ!? (一瞬、ビクッとして、銃を握ろうとした手を、握る寸前で止めてしまう)』
「言っておくが・・・この銃を手に持ったら、もう・・・お前達が6年前まで味わえていた”幸せな生活”は、永遠に手に入らない物だと思え。
これを握った先にあるのは、限りない”自由を得るための力”と、その自由を手に入れるために血で汚れてゆく”屍を踏みつけて行く人生”だけだ・・・。
そんな”残酷な未来”しか待ってなかったとしても・・・お前は”自由という名の僅かな希望”を望むのか?」
『・・・諄いですよ、兄さん・・・』
「・・・しつこいぐらいにしないといけねェんだよ・・・。
それぐらい危険なんだよ・・・”銃”って<力>は・・・
(銃を持ちつつも、肩を竦めながら)」
『・・・慎重なんですね・・・』
「”臆病なヤツ程、戦場で生き残る”って言葉が、オレの世界で言われていたぐらいにな・・・」
『フフッ・・・不名誉なモノですね・・・』
「るせェ、”人命第一”なんだよ・・・コッチは・・・」
〜スゥゥ・・・ガシッ、チャキ・・・ッ〜
『・・・私は望みます。ラフィルや・・・無念に散った両親のためにも・・・
街の人達・・・いや・・・全ての生きとし生ける者達のためにも・・・!
・・・理不尽な”死”のない世界を望むために・・・私は戦いますッ!』
N:異世界来訪から、おおよそ1ヶ月・・・。
不穏に覆われていた曇り空の一部から、月明かりが射し始めた先には・・・
闇世の中・・・月明かりによって浮かび上がる・・・絶対的な決意を、表情に示すハイエルフ・・・「リフィル・ホープティア」の姿があった・・・。
そんな彼女が、ボスとの数多の冒険の末・・・<沈黙の狙撃姫>の異名で恐れられるようになろうとは・・・まだ誰も知らない・・・。
〜ピロン!〜
【称号〖Vow of revenge〗を獲得しました】
【称号〖Second bin`s〗を獲得しました】
【称号〖Vow of revenge〗の獲得を確認。
<遠隔操作魔法>
”スイッチ”のインストールを開始します】
〜その後・・・目覚めたリフィルに飯を振る舞うため、お湯で赤飯を温める最中・・・〜
「・・・そういえば、オルガはどうしたんだ?」
『心配しなくとも大丈夫ですよ、兄さん。
私が目覚めた後、回復魔法の「リキュア」を掛けて・・・私が横たわっていたベッドに寝かせておきましたよ・・・。
本当・・・ラフィルがすみません・・・』
「・・・(ホッとしつつも、オルセットの居る小屋の崩れた壁を見つめながら・・・)
(スマン、オルガ・・・リフィルに”ライフル”を渡すのに、残りの魔力”MP1000”を全部使う必要があったんだ・・・! オレ自身が回復できなくて・・・マジ、すまねェ・・・・ッ!)」
『・・・兄さん? どうかされましたか? 回復・・・掛けてあげましょうか?』
「いや・・・大丈夫だ。
それよりもラフィル、もう五分経ったから、赤飯、温まっていると思うぞ?」
『うわぁ・・・ありがとうございますッ!
(風魔法で鍋の中心に渦巻いた穴を開け、お湯の中から露わになった”缶飯”を、再び風魔法で取り出し、手に置いた後・・・)
アチッ、アチチ・・・・』
「ハハッ、落ち着け。
急いでも缶飯はなくなりやしないから・・・」
『(風魔法で、急速冷却させながら・・・)・・・はい・・・』
「・・・明日から、三日間・・・そこに置いてある”銃の”使い方を・・・ミッチリ教えるからな・・・」
『(缶飯についた缶切りで、ぎこちなくも缶を開けながら・・・)・・・はい・・・』
「・・・お互い・・・頑張ろう・・・なッ?」
『(開いた赤飯を見つめながら・・・)・・・はい・・・』
「暗く考えるな・・・今やるべき事と、明るい事を考える事だけに集中しろ・・・!
明けない朝がないように・・・明るく・・・前向きに考えれば、大抵はうまくいくハズだ・・・!」
『・・・私がやるべき事を・・・前向きに・・・?』
「失う命は・・・どう足掻こうと戻らないんだ・・・なら、その失った中で自分に向けて笑ってくれる・・・助けられた命の顔を思い浮かべれば・・・どうだ?」
『・・・フフッ、そう言われれば・・・そうかもしれませんね・・・』
「常に自身を明るく保ち続けろ・・・! どんなに屈強な戦士であろうと、心の闇には勝てない・・・。
暗く思い続ければ・・・それだけ、自分の”心の寿命”を縮める事になるぞ・・・?」
『・・・心の闇・・・心の寿命・・・?』
「・・・明日以降、また色々と答えてやるから・・・それを食って早く寝な・・・リフィル・・・」
『・・・』
「大丈夫だ。きっと上手く行く・・・!」
『・・・そうですよね・・・。(缶飯を握る両手の力が強くなる)
・・・スゥ・・・ありがとうございますッ! 兄さんッ! 明日から宜しくお願いします!』
「・・・おうッ、任せとけ・・・」
N:夜は更けて行く・・・彼女の覚悟と共に・・・!